「……質問だ。君はこんなところに長居するべきではないと、私はこれまで何度言ったと思う?」
初夏の夜風が香る城壁都市ライツェ。リンドール王国首都から少し離れた都市の酒場では、あちらこちらでグラスのぶつかる音や笑い声が聞こえてくる。
つい数時間前まで戦争をしていたとは思えない活気だった。見れば、大した治療も受けずに仲間と酒盛りをしている阿呆もいるようだ。ため息が出る。どうやらポーション類が足りていないらしい。
まだ素材は残っていただろうか…そんな事を考えていると、優しいんだな、と緩んだ声がかけられる。声の主――目元まで伸びた濃墨の如き黒髪に、無駄を削ぎ落としたかのような細くも隆々とした肉体の偉丈夫――は美味しそうに豚のナッツ炒めを食べながら、向かい側の席に座って私を見ていた。
「いやいや救国の英雄くん。私は優しくなどない、ただ死体処理なんて重労働は御免なだけさ」
そう返せば、それを優しいって言うんだよ、と柔く微笑みながらさらに返される。視線で、俺は英雄じゃないよ、とも。
いいや君は英雄だろう。こんな薄汚れた酒場で私とツマミを食べているより、王都で何処かの令嬢と大恋愛を遂げるのが似合うような。
「私のことはどうでもいいんだ。それより依頼のものは出来ているから、さっさと受け取って愛する人に会いに行きたまえ」
会話を戻す。私――ただの薬師――と戦争終結の立役者たる彼が酒場で一緒に座っているのは、一重に頼まれていた薬を渡すためであった。
「昔から共に過ごしていたが……いやはやなんとも感慨深いよまったく。私なんぞに触れることすら躊躇っていたというのに、まさかコイツが入り用になる日が来るとはねぇ…」
ゴトリと重厚な音をたてて置かれたのは、装飾のないピンクがかった涙滴状の瓶。封印処理をされてなお触れるだけで淫靡な魔力が伝わってくるそれは、飲む奴が可哀想になるくらい強く淹れられた媚薬だった。
薬効も即効性も持続力も、そんじょそこらの市販品とは格どころか次元が違う。サキュバスの蜜液に匹敵すると言っても過言じゃあないだろう。
「無論誂うつもりはないぞ? 良いじゃあないか、大人の甘さだ。君は昔から他人と話すのが苦手だが、人を見る目は誰よりもあった。なら君の愛する某だって素晴らしい相手なんだろうよ」
この世界での媚薬は感度の上昇が主な薬効だが、それ以外にも筋肉を弛緩させる効果がある。そんなコイツを欲しがったということは、生娘を相手取るつもりなのだろうか。
彼は火遊びに勤しむようなタマじゃあないだろうし、不慣れ同士がヘタに行為に及ぼうものならお互いを傷つけてしまう。ならば、忌避される可能性があれど使うのが某のためだ。
大切にしているんだねぇ、と冗談交じりに締めくくると、大切だよ、と彼は至極真面目な表情をした。受け入れてくれるかは分からないけれど、僕自身はとても好きだよ、と。
「……おいおいなんだ、遠くから愛を囁こうと相手には伝わらないぞ? 惚気ならその人の元でやりたまえ」
諦めたつもりだった。だがこうも目の前で惚気られると某が羨ましくなる。
これからは残党を狩るのに忙しくなるだろうし、長い間彼とは会えなくなる。想い人のこともあるから、ともすればこれが今生の別れになるかもしれない。まあ、縁の切れ目とするには良いタイミングだった。
「んー、何をやっているんだい?」
叶いっこない想いを引き摺り続けるとは何と無意味な、なんて自虐に耽っていると、一向に動く様子を見せない彼が媚薬の蓋を開け、徐に中身を手元のジョッキへと注いだ。いや何をやっているんだい。
「あー、その、瓶のデザインが気に入らなかったのかな。それは済まないことをした……けど君ねぇ。だからといってジョッキは違うんじゃあないかい?」
それじゃあ色気も何も無いじゃないか。せめてもっと洒落た物に……ああほら魔力が舞い始めた! とりあえず蓋代わりの何かを持ってくるから。奇行の理由を問い詰める前に、眼前の危険物を処理するべき。そう考えて席を立った。
だがいつの間にか脇に居た彼に、問答無用とばかりに座らされた。
「いやステイステイじゃあないよこっちの台詞だそれは。えっなんだい持てと? ジョッキを両手で? いやそりゃ落としたら一大事だけどもねって……は?」
おうなんだいそのコールは。ちょっとー良いとこ見てみたい、じゃあないよ。
まるで飲めと言っているようじゃないか、媚薬を。
「えっ、えっ飲めと? こら待てコールのテンポを上げるな周りも乗るな! お前ら彼が幾ら払ったのか知らないだろう!?」
酔っぱらいを巻き込みやがって。作れ直せなくもないが金も時間もかかる代物だぞコイツは! いや本当に待ってくれ、君は何をしたいんだい!?
「分かった分かった! 飲むから一旦落ち着け!」
原色のように濃い媚薬から魔力が伝わってきて、なんだか変な気分になってきた。
ええいままよと流されるように呷る。やたらに甘ったるく感じる粘性の液体が喉から胃へと落ちていき、そして火を灯したようにその効果が表れた。
「う、お……さすがの一言だな、コイツは。半分だけでもクラクラするよ」
息を整えてからもう一度呷り、やっとの思いで飲み干した。飲みながら軽く果てたのは内緒である。想定よりも薬の効きが早かったのだ。
さて申し開きを聞こうか。衣擦れによる痺れを無視しつつ彼と向き直り、いったい何がしたいんだと問う。
「君は、君の思い人のため私に媚薬を注文したんだろう? なんだってそれを私に飲ませたんだい」
まさか私が
……なんで何も言わないんだ。おい待て、なんで顔を赤くする。えっいやいやいやいや。
「一応、聞いておくが……君が好きなのって誰かな?」
彼は耳まで真っ赤になった顔を上げ、私を見据えた。さっきのコールが嘘だと思えるほどに小さな声が、口元からぽろりと溢れて、私はそれを聞き逃さなかった。聞き間違いも、きっとしなかった。
「え、ちょ、待ちたまえ」
結婚して欲しい、と彼は言った。諸々の段階をぶち飛ばしているし、なにより媚薬飲ませてからプロポーズとか正気か君は。
「君は、自分の価値ってものを……」
英雄の肉体、その価値を考える。おいそれと付き合うことすら叶わないのに、結婚だなんて。いやいや、いや。結婚ということは彼とずっと一緒にいられるということで、抱かれるということで、つまり。
じぃっと彼に見据えられて急速に居心地が悪くなる。熱と静寂に耳が痛くなりそうだ。明確に求められている。
「……分かっ、たよ。用意するから少し待っていてくれ」
そう言うと、周りの酔っぱらい共に死ぬほど囃し立てられた。おめでとうじゃあないぞ、まったく。
◇
男性器が「剛直」と例えられる理由を、今なんとなく理解した。
なるほど確かに「剛直」だ。腹に押し付けられた彼の性器は剛健に、怖気づきそうなほど直線的に肥大化している。
「…は、ずいぶんと大きいな。これ入るのか?」
息が弾むのは媚薬の影響だけではないだろう。夜風の匂いとキリギリスの鳴き声、そして自らの興奮と恐怖がそうさせているのだ。
現在私たちは酒場の二階、設けられた部屋のベッドの上にいる。当然性行為を行うためにいるのだが、これは昔からの言い伝えに、プロポーズを受け入れられた夜に行為をすると仲が深まる、というものがあるからだ。
媚薬を注文された際、長期保存できなくていい、と彼から伝えられていたが成程そういうことか。彼も私も、そういうスピリチュアルな事柄を信じたい質らしい。
「いや臍まで余裕で届くじゃあないか。いや、いや、うわ…本当に大きいな……」
何枚か重ねたタオルに跨って、スリスリと剛直を撫でる。芋虫のようにも見える先端と、殺す気かと問いたくなるほどキツい返し。その根本を辿っていくとハッキリと血管の浮いた硬い肉茎に触れる。
大きいな…今からコイツが挿れられるのか。剛直が己の腹に収まる様を想像したが、どうにもコミカルで莫迦らしい姿ばかりが頭に浮かんでしまう。
何せそもそもの長さが長さだ。挿れたらすぐに私の最奥へとたどり着き、その勢いのまま子宮口を突き上げグリグリとすり潰してしまうだろう。
彼のことだし、びっくりして跳ねた私に遠慮して腰を引くのだろう。けれど張り出した傘が私の膣壁をガリガリと抉って掘り壊し、その快感に私は幾度となく果てるのだ。媚薬の効果は特に体内へと作用し、彼によるストロークの一回一回を致命的な快楽に変換するが故に。
こうして触れているだけで、秘部がトロついていくのがよく分かった。いつか読んだ書籍のように、よがり狂うことになるんだろうな、私は。
「その、前戯とかは…要らないか。なら好きな体位とかあるかい? 今なら大概の姿勢はとれると思うんだが」
色気もムードも無い問いかけだが、あいにくこの手の経験が薄いものでね。思いつくのは下品極まりない台詞ばかりで、それを吐けるほど羞恥心を捨てられてやしないのだ。
それじゃあ普通ので、と彼は言って私の体を抱える。そのままヨイショと持ち上げて、狙いを定めるかのように正面へと持っていった。ちょうど彼の剛直の真上だった。
「いや待て。
つくづくムードの無い夜だった。
今から殺しますよと言わんばかりに屹立した性器が秘部に押し当てられ、ぷちゅりと水音を鳴らす。自らの初体験がこれとは、燻っていた幻想が轢き壊されたかのようで少し寂しかった。こんななし崩しで経るようなイベントじゃあないだろうに、初体験とは。
それにどう考えても私には大きすぎる。いくら媚薬で柔らかくなっていても…と反射的に腰を引いたが、私を持ち替えた彼に抱き留められ逃げ場が無くなってしまう。
「ッ♡前戯は不要とは言ったがね。慣らしくらいは必要だなあなんて思うんだが、ひっ♡いっ♡」
クチュクチュと黙らせるように肉蕾が撫でられ、挿れるよ、と声。
「ちょっ♡待っ♡―――――――――ぎゃゔッッ!??♡♡♡♡」
破城槌で殴られたような衝撃と焦げるほどの快感。たったの一突きだというのに、それが背骨を奔り脳へ届いた瞬間私は絶頂した。
敏感になったポルチオと彼の亀頭が触れ合う。痙攣する私は自然と腰をくねらせて、結果より深く繋がって。数秒と経たずまた絶頂した。
「あ"ぃ♡……っう?♡♡これ♡し♡あ"ぁあ!!♡♡♡」
一呼吸の間に何度達しただろうか。あまりの快感に脳がショートし気絶するもさらなる快感で叩き起こされる。
見れば、彼は挿入して以降まったく動いていなかった。私の背を確かめるように撫で、ゆっくりと首筋に唇を落としているだけだ。なのに、それだけで私は息も絶え絶えに喘がされ続けている。
絶頂から戻ってこれない。洒落抜きで死ぬかもしれないと、そう思えるほどに気持ちいい。
「ふざ、ま、うごくなぁぁあ!♡♡♡ふぁっぃぎ!♡♡ぅぅううううぉ♡おあ♡ぅお?!♡♡」
足に力が入らなくなってきた頃、動くよ、なんて気の抜けた掛け声と共に優しくストロークが始まった。
あんまりにゆっくり剛直が引き抜かれたものだから、肉笠が私の内側をカリカリと逆立てる感覚を一々意識してひどく感じてしまう。
獣のような喘ぎ声が口から零れて、涎や涙で顔もぐちゃぐちゃになっていく。火が出そうなくらい恥ずかしいけれど堪えることができない。必死に彼の体に縋りついて、隆々とした背中に傷が付くぐらいしがみついて、今にも蕩けて消えそうな理性を繋ぎ止めなければ狂いそうだった。
「お♡あ"―♡やめ♡あさっ♡ぃひぐ!?♡♡」
いわゆるGスポットを丹念に擦られ、続けざまに一気に最奥まで挿入。ギャグのように膨れた腹をオナホールみたいに使われる。
ばちゅん、ばちゅん!と脳を震わせる肉感的な音が何度も鳴った。彼の子種の行き先な筈の子宮を壊しそうなくらいに力強く、それでいてねちっこく、私を犯し殺そうと彼の剛直が前後する。呼吸がままならないくらいに苦しいのに、どうにも愛しさや気持ちよさが溢れて止まない。目線が合って、何方ともなくキスをした。
「ぇあ♡♡きみ♡したが♡ふぁ♡♡あついんだな♡」
ぎちちち、とポルチオから音が聞こえるほどに亀頭が押し付けられる。マグマでも流し込まれたかのような快楽の中、貪るように互いの口へ舌を突っ込んだ。
媚薬の効果が口腔まで及んでいたのか、彼の舌と触れ合い唾液が混ざるたび頭が痺れる。くちり、と淫らな水音が鼓膜を反響して心地いい。蛇のように絡み合った後名残惜しげに離れれば、透明な橋が互いの舌に架かっていた。
「ぷはっ♡まったく♡ドキドキするなあ♡」
それそれと腰を前後させ腟内の剛直を刺激し、彼に絶頂――射精を促す。正直こうしているだけで意識が飛んでしまいそうだが、こいつに好き勝手鳴かされたのが何より癪だったもので、どうにかして快楽を贈ってやりたかった。
ぴくん、と彼の顎が跳ねた。砕きそうなくらい私の腰を強く抱いて、お前を孕ませると主張するかのように剛直がさらに大きくなる。射精しそうなんだと、直感的に理解した。
「んく♡は♡ほらだせ♡♡だせ♡はやく♡ぅ♡いけ♡いけ♡いけ♡いけ♡♡」
首筋に歯を立てられながら、ひたすらに甘く果て続け、射精を待ち構える。子宮の感覚が痛いくらいに尖ってそれでも気持ちいい。脳髄がふわふわして、快感と愛しさだけが私の自我を形作っているような気分になった。彼も行為も、言葉にならないくらい好きだった。
「はやく♡はやく♡あは♡ひっ――」
今までで一番深く突きこまれ、彼がギリッ…と歯を食いしばった。
「――んぎっ♡♡ゔぅあ"あ"あ"ぁ!!♡♡♡ぐ、ぅ、お♡♡あ♡いッ♡ぅう!♡♡」
子宮の真下が破裂した。そう錯覚するほどの勢いでの射精が、私にぶち撒けられた。
どぽどぽ注がれる精液。本来ぴっちりと閉じている筈の子宮口を容易に押し通るそれらは、重厚さと粘性をもって私の最も大事な部分を蹂躪していく。
中からも外からも快感を贈られ数え切れないほど達する。快感のあまり脳細胞が死滅していく、しゅわしゅわとした心地良い音が聞こえそうだった。
「あ"ぅ♡おぉっ…♡ふ――♡ふ――――♡♡」
ずるるるっと剛直が引き抜かれ私の腹に当てられる。数秒前まで、これがここまで入っていたんだよ、そう本能に刻み込むかのように。
久しぶりに見た彼の剛直は、まだまだ硬さを保っていた。
「……はは、随分と元気じゃあないか。で? まだ続けるんだろう?」
彼は顔を赤らめながら頷き、私をうつ伏せにした。
あれだけ激しく交わったくせに今更何を恥ずかしがることがあろうか。こっちは別に構いやしないというのに。
「っ♡後背位か♡さぁ来い――あ"ぁッッや!!?♡♡♡」
貧相な背中に数度唇を落とし、狙いを定めた彼は一気に剛直を叩き込んだ。子宮とGスポットが同時に刺激され、また、逃れられないようベッドと彼自身とで挟まれる。
撃ち抜かれるような膨大な快感と消えてくれない熱。私の意識は、容易く私の手を離れた。
◇
「ゔぅ♡ふ――♡ふぅ"――♡ぐっ♡や♡はあ♡ぐゅ♡♡ゔん♡♡」
夜もだいぶ更けてきただろうか。全身を媚薬と快楽に侵されている私は、傍から見れば猫のような姿勢で喘いでいる。枕にしがみつき、点滅する意識をカバーを噛むことでなんとか保って、けれどそれ以上はどうにも出来ない。
「むね♡やめろ♡♡ばか♡んぐっ♡♡ぎ、ひ♡」
私のみずぼらしい胸がカリカリと撫でられる。大して触り心地も良くないだろうに、何が楽しいのかその手つきは執拗だ。
美術品でも触るかのように指を這わせ、軽く先端を摘まみ、弾く。抽挿のような激しい快楽ではないが、ピリピリと痒みに似たそれは柔らかに私の思考を削っていく。熱を帯びた何かが腹に溜まって癖になりそうだった。
それに彼は私の一番感じる場所で動くのを止め、私の痙攣に合わせ腰の位置を変えてくる。気持ちよくなれないような状況なのに気持ちよさを否定できない。高く上がった腰がぴくりと跳ねるたび、剛直の形を覚えてしまいそうなほど腟内を締めてしまう。愛液も滴ってぐしゅぐしゅだ。
「きみ♡はじめてじゃ、う♡♡ないのか♡あっ♡♡」
彼の汗の香りと水音が私の脳を直に犯す。さっきまでのような叩きつける快楽ではない、浅くて甘い、耽溺させるように幾度となくイかされている。てっぺんにいる時のふわふわした感じから戻ってこれない。どう考えても初めてとは思えない腰遣いで、本能の隅々まで彼に堕とされそうだ。
ゔ――♡と唸り声のように喘いでしまい、今更ながら幻滅されてしまうと思った。こんなみっともない姿になるなんて彼も予想していなかっただろう。
「んぅ♡ゆびいれ、なぁ♡♡」
けれど、嬉しいことにそうじゃなかったらしい。かわいい、かわいいと囁かれながら唇が落とされ口内まで蹂躪される。彼の指に内頬を撫でつけられ、湧いてくるような快感にうっとりしてしまう。ゴワゴワしていて暖かい。自然、その形を確かめるように噛んでいた。
固くて大きな指だ。鋭敏になった舌が丁寧に切られた爪と絡まり合う。先端を摘まれたかと思えば引っ張り出され、ぐちゅぐちゅと音を立てて弄られる。そうされている間も全身は嫐られていて、最早何もかもが気持ちいい。
数分としていないのに、指を引き抜かれると口寂しくってたまらなくなった。キスを強請って口腔を差し出すと、待ってましたとばかりに彼が口づけをしてくれる。どう考えてもキツイよな、と書籍を読んだときに思ったような体勢になったが、そんなのはどうでもいいと感じるくらい彼を欲してしまう。お互いの体内が繋がっているんだと実感出来て心臓が温かくなった。
諦めたと自分では考えていたけれど、何だかんだこういう事はしてみたかったりした。私の中でのキスは、きっと恋人らしさの代名詞なのだろう。
加えてじわじわと掛けられる体重が、私と彼と剛直とを近づけ離れられなくしてきた。自由に動けず、気持ちいいところを同時に刺激され快感の逃げ場がない。ストロークも開始され、Gスポットとポルチオが殴られる。蓄積していた緩い熱が堰を切ったように溢れ出た気がして、涙混じりの汗と愛液をとぷとぷと流してしまった。
「……?♡う、く♡だすき、かい?♡」
唯一動かせる脚を攣りそうなぐらいピンと真っ直ぐにして、思考に火花を散らせながら連続で達する。彼も出そうだ。
「ゔぁ♡っ、きみも♡かんじるだろ♡しきゅー♡たぷたぷにっ♡な、ぁぐ♡」
自分が何を言っているのか、よく分からなかった。ただうわ言のように言葉を吐き出して、互いの興奮を掻き立てる。むせ返りそうなほどの性臭でおかしくなっていた。
「これじゃ♡つぎ♡だされた♡ら♡ぁ"♡♡」
ぎゅう、と腹に力を込めて彼を圧迫する。奥へ奥へと亀頭を入りこませ、後先なんてまるで考えちゃいない。
「――こども♡できるか、もな?♡♡」
はっ、という顔つきになった彼のストロークが急に激しくなった。あれだけ強かに射精しておいて気付いてなかったのか、そう突っ込みたくなったけれど、それ以上に彼の腰遣いが強くなったのが嬉しかった。つくりたいんだな、私との子供を。
それにしても子供か。自分で言っておいてなんだが、まあ現実味が無いな。今は媚薬の副次的な効果によって受精しやすくなっているし、既に孕んでいるかもしれないが。
「わたし♡さいしょ、ぉお"♡はっ♡♡おんなのこ♡が、いい、なぁ!♡」
リズミカルに襲ってくる刺激に全身が弛緩し、子宮が自ら精子を出迎えるかのように降りていく感触。双子だったらとか名前はどうしようとか、正気になれば恥ずかしさで死にたくなるようなことを考えてしまう。
そして遂に限界が来たのだろうか。彼は私の腰をしかと抱えて固定し、ポルチオを刳りあげた。ぷしゅ、と秘部から潮が吹き出たのも気にせず覆いかぶさってきて、両手を私へと重ね絶対に射精から逃げられなくしてくる。孕ませるという深い欲望が、全身から伝わってきた。
「んぐぃ!?♡♡あ"♡くる♡でる♡できる♡♡こど♡お"ぐっ♡すき♡すき♡すぎ、ぁ♡♡」
下腹部がカッと熱くなって、焼け焦げるほどの濁流が流れ込んでくる。最奥にどぼどぼ吐き出された精子が卵子に入ったと感じたのは、果たして幻想だろうか。
「――――――――♡♡♡♡♡」
意識を手放した私は、剛直を引き抜かれて無意識に二度達した。期待と幸福に溺れそうな、心地のいい夜だった。
◇
小鳥の囀りに目を覚ますと、眼前には鍛え上げられた胸板が広がっていた。チョコレート色の肌と、その奥に蓄えられた筋繊維。夜には気づけなかった細かな傷も含めて視界に対する圧が凄い。
さらに下に目を向けると綺麗に割れた腹筋があった。板チョコとはよく言ったもので、手を添えるとポコポコした堅牢な感触が返ってくる。歪な照りと滑らかさをもつ裂傷が劈くように広がっていて痛々しい。彼の戦いの激しさを感じとって、同時に、こいつに抱かれたのだという奇妙な実感が湧いてきた。
「結婚してくれ……かぁ」
なんだっていいから共に居たいと思っていた。彼は私のポーションを褒めてくれるけれど、それはつまりポーションが必要な状況に至ったということで。大怪我を負い続けているだろう彼が、いつか死んでしまうのではという恐怖が常にあった。
だから無事に帰って来てくれた時は飛び上がるくらい嬉しかったし、けれど、もう彼が私に会いにくる理由も無くなってしまったから、変に悲しくなったのを覚えている。
「…あぁ、おはよう」
わしゃ、と髪が掻き上げられた。後頭部に添えられた掌に力が籠もって、そのまま彼の胸元へと抱きすくめられる。寝癖で顕になった額が触れた。そのまま毛布を手繰り寄せ、一塊になって包まる。でかくて暑い。互いの心音と呼吸がよく聞こえた。
「ん、いや待て君なんて言った。終戦パーティーをすっぽかしたからヤバい? 王族がバリバリに出てくるやつを? ……いやそれ最悪不敬罪だろう」
しれっとはぐらかされていたけれど、やはりこの街に居たら駄目だったらしい。どうしようかなんて苦く笑いながら、彼は私との距離をさらに縮めてきた。下腹部に熱い何かが当たって、背後から回ってきた指が胸の先端を撫で始める。あれ程激しくしたというのにやる気に満ち溢れていた。
「ちょ、きみ、ごまかし♡かたってものを♡ぐっ」
一回してから考えると言って、覆いかぶさってくる。昨日付けられた沢山の
「なん♡こんな♡ぅ♡」
そういえば根本的な話だが、私の体にここまで盛れるのも私と結婚したいのも、色々と理由が分からない。雑に流されて行為に及んだ、その恐ろしさに今更ながら気づいた。
こういうのは順序が大事だと思う。出どころの分からない好意に流されるようなのはロマンの一欠片だってないじゃないか。
気持ちよさ半分にぶーたれれば、彼はああ伝えてなかったなと思い出したかのような表情で微笑んだ。そして歌うように吟味するように、ここが好きだ、だから一緒に居たいんだと、ぽんぽんと矢継ぎ早に伝えてくる。
「………お、あ、ありがとう? いや待て、こんな急に褒められたの初めてで恥ずかしいなぁ…いや恥ずかしいな! 待ってクソ弄りながら言うな処理出来ないだろ! もっと味わわせ……あっ」
彼はニンマリと笑った。嬉しそうだ。
思い通りに振り回されているようで、なんだか腹が立ってくる。けれどよく見ればその顔は赤く、彼でもこういうのはこそばゆいらしい。普段は薄っぺらく笑っているから、頬にさした朱色がやけに新鮮だった。
水音をたてて私の肉壁を穿った剛直を支点に、またぎゅうと抱きしめられる。
こんなスキンシップが多かっただろうか。重いともとれるくらいに深い愛があって、どこか離さないと言ってくれているようにも感じた。
手のひら返しにもほどがあるけれど、彼が私を好いてくれていて良かったと思う。健康でいてくれるのは喜ばしい限りだが、私以外をこんな風に愛している姿は…まあ、妬いてしまうから、見たくはない。
「ふふ、ふ、ふははは!」
可笑しくなって、笑った。此方からも腕をまわして彼を抱き、全身で彼に浸る。
大きくなったなぁ、とつくづく思った。
性癖の開示による筆速度の上昇