残酷な秋雲が山田さくらと川上やよいに現実を突きつける話 作:ヒルベルト
原作:僕はラブソングが歌えない
タグ:R-18 残酷な描写 アンチ・ヘイト クロスオーバー 艦隊これくしょん 秋雲(艦これ) NTR救済 独自設定 原作既読前提 寝取り・寝取られのその後 寝取られヒロインのその後 いたぶられるヒロイン
前二作に続き「僕はラブソングが歌えない」と「艦隊これくしょん」のクロスオーバーです。秋雲の台詞にきつい表現があるため、R-18とさせていただきました。
「佐藤君のハーレム事件」でその学校と地域が大騒ぎになっていた頃。
山田さくらと川上やよいは、繁華街の路地裏で複数の男たちに囲まれていた。
「嫌だって言ってるだろ!放して…どいてよ!」
さくらはやよいを庇いつつ、男たちに抵抗していた。
男の一人が、さくらとやよいに言った。
「サトウクンが居なくなって、寂しいんだろ?俺たちが代わりに慰めてやるよ。」
男の言葉は、さくらとやよいの心を抉った。
(こんなヤツに…こんなヤツにまで言われるなんて…!)
(…佐藤君…。)
さくらは屈辱に涙を滲ませ、やよいは意味のない虚しい祈りを捧げた。
「あれあれぇ?」
緊張感のない女の声がした。
さくら、やよいと男たちが声のした方を向くと…少女の姿があった。
年の頃は中学生~高校生ぐらい。髪は長く、色は栗毛に近い茶色。髪型はポニーテイル。
黄色のTシャツの上にカーキ色のワークシャツを羽織り、膝丈のカーゴパンツを穿いていた。
また、スケッチブックなどが入ったトートバッグを左肩に掛けていた。
「お兄さんたち、お姉さんたち、こんなところで何してるのかなぁ?」
少女はそう言うと、男たち、さくらとやよい、そして路地裏の入口に停められている車に目を遣った。
「…壁を背にしたお姉さんたち、そのお姉さんたちを半包囲してるお兄さんたち、大通りからの視線を遮るようにして停められてるワンボックスカー…。これはもしかして、見過ごしてはいけない状況ってヤツ?」
男たちはさくらとやよいへの包囲を解き、現れた少女に歩み寄った。
そして少女も男たちに歩み寄った。
少女は男たちに取り囲まれた。
「おやぁ?砂にしちゃう?私を砂にして、その上ヤっちゃう?」
男たちは答えない。
「創作のネタとしてはありだけど、リアルでってのはノーサンキューなんだけどなぁ。」
男たちに取り囲まれていても、少女は動じた様子がない。
包囲を解かれたさくらとやよいであったが、二人はその場から動くことができずにいた。
(あの子…!何考えてるの!?こんなところで煽るようなことを…!)
(ああ…誰か…誰か助けて…佐藤君…佐藤君…。)
そして少女の右側に立った男の拳が、少女の顔面を捕えた。
…男はその場に膝をついた。
少女はその場に立ったまま、膝をついた男を見下ろして言った。
「…痛くないわけじゃないんだから、ちょっとは遠慮してよね。」
殴りつけられたのは間違いなく少女の方であったが、呻き声とともにその場に膝をついたのは男の方であった。
さくらとやよいには、何が起こったのか理解できなかった。
(え…な、何があったの…今…?)
(???)
少女は膝をついた男の前に屈みこみ、声をかけた。
「どうしたの?膝なんかついちゃって。あ、もしかして、今ので拳、砕けちゃった?」
少女は男の手を取った…。
「ちょっと見せてくれるか…な!」
…そして少女は男の手を無造作に握った。
男は文字に出来ない叫び声をあげた。
「アッハハハハハ!なかなか良い顔するね、お兄さん!ちょっとスケッチさせてくれないか…なぁ?」
少女は他の男たちにも目を向けた。
少女に目を向けられた男たちは、そこで自分たちが誰を…何を相手にしていたのかを悟り、路地裏の出口に停められたワンボックスカーに駆け込み…そのまま去って行った。
「あらぁ、置いて行かれちゃったね、お兄さん。」
少女はそう言いながら、両手で男の砕けた手を揉みしだいた。
男は絶叫した。
「お兄さんのお友達も酷いよねえ?お兄さんが今こんな目に遭っているっていうのに、自分たちだけさっさと逃げちゃうなんてさぁ?」
男は息を整えた…。
男の息が少し落ち着いたところを見計らったかのように、少女はさらに男の手を握りこんだ。
男は少女に手を固められているため、のたうち回ることもできないまま、虚しく絶叫した。
路地裏に刺激臭が漂った。男は…失禁していた。
少女は言った。
「恐怖と苦痛に絶叫をあげながら失禁する哀れな男の姿。仲間に裏切られ、見捨てられ、ただ一人取り残された惨めな男の姿。…うーん、いいねぇ?なかなか絵になるじゃない?どう?このまましばらく私のモデルになってみない?」
「まぁ、使い捨てになるだろうけどねぇ。」
男の動きが固まった。
男の顔からは…汗、涙、鼻水、涎…ありとあらゆる体液が流れ出していた。
その時、さくらとやよいからは少女の顔を見ることはできなかったが…。
(…怖い…振り返らないで…。)
(お願い…こっちを見ないで…。)
…と、そこで少女は男の手を離した。
「行って良いよ。」
「………?」
少女は続けた。
「だから、もう行っていいよ。お兄さんの姿をスケッチしたいところだけど…今からこのお姉さんたちを、安全な所にお連れしなくちゃならないから、ね?」
男はやっとのこと、という体で立ち上がり、ふらつく足取りで路地裏を出ようとした。
男が路地裏を出る直前に、少女は声をかけた。
「先に逃げちゃったお友達にも、よろしくね。」
「………。」
男は少女の声に答えることもなく、力を感じさせない足取りで路地裏を後にした。
続いて少女はさくらとやよいに向き直った。
さくらとやよいは、思わず後退った。
「そう怖がんないでよ。こっちは助けたつもりでいるんだから、さ。」
少女はワークシャツのポケットからパスケースのようなものを取り出し、収められている顔写真入りのカードをさくらとやよいに示した。
「私は秋雲。黒鉄秋雲。海神警備・岩川台営業所の艦娘だよ。」
海神警備・岩川台営業所。提督執務室がある建物。事務室か応接室と思しき部屋。
さくらとやよいは、秋雲に連れられてこの部屋にやってきた。
部屋の中央には変わった形の…三方向に延びたデスクがあり、入口から見て左側の壁面は巨大なモニターになっていた、
モニターには、各地から寄せられる事件・事故のニュースが流れていた。
この部屋には長い黒髪の、眼鏡をかけた女性がいた。
さくらもやよいも、この女性には見覚えがあった。
海上防衛隊や海上保安庁が運営する鎮守府が記者会見を開く時、必ずと言って良いほど姿を見せる艦娘だ。
ただ、記者会見などで見かけるその艦娘と違って、この部屋で二人が見たこの艦娘は少し冷たい感じがした。
秋雲はこの艦娘に路地裏での出来事を報告した。
この艦娘は報告を受けると、警察への伝達などを行う旨を秋雲に伝えた。
(さくらとやよいがこの部屋まで来た意味は、あまりなかったようだ。)
それからこの艦娘はさくらとやよいの方に向き直り、穏やかな微笑みを浮かべながら二人に声をかけた。
(先ほど受けた冷たい印象は、なくなっていた。)
「もう大丈夫ですよ…大丈夫です。ですがお見受けしたところ、まだお気持ちが静まっていないご様子。よろしければ、少しお気持ちを静めてからお帰りになってください。」
「秋雲が、お二人に甘味などを振舞いたいと申していますので。」
鎮守府は艦娘たちの勤め先であると同時に、家でもある。
だから鎮守府には艦娘たちの生活を支える店舗もある。
そして大体どこの鎮守府にも、居酒屋「鳳翔」や甘味処「間宮」はある。
海神警備・岩川台営業所にも、甘味処「間宮」はある。
甘味処「間宮」。
さくらとやよいは、秋雲に連れられてこの店に入った。
席に着くと秋雲は、さくらとやよいには何のことわりもなく、勝手に羊羹を注文した。
「ああ、お品書きでも見といて?何かほかに良さそうなのがあったら、追加で注文してね?」
秋雲はそう言ったが、さくらもやよいも、甘味を楽しむ気分ではなかった。
間もなく、三人の前に羊羹が運ばれてきた。
「さあどうぞ!って、別に私が作ったわけじゃないけど…。」
秋雲に勧められるまま、さくらとやよいは羊羹を口にする。
上手く言い表せる表現は思い浮かばなかったが、贅沢な味わいの一品だということは分かった。
秋雲が何のことわりもなく勝手にこの羊羹を注文したのは、これが絶対に間違いのない一品だという確信があったから。
さくらもやよいも、そう思える程度には落ち着きを取り戻した。
しかしながら…。
「しかし、お姉さんたちも災難だったねぇ。」
羊羹を完食してから、お茶を口にしながら秋雲は雑談を始めた。
…が、その内容は落ち着いたさくらとやよいの心を再び乱すことになった。
「そういやお姉さんたちの制服…あれでしょ?ほら、今『佐藤君のハーレム事件』とかで騒ぎになってるところ。」
「………!!」
「!!」
「あのお兄さんたち、お姉さんたちがあの学校の女子だから、簡単にヤらせてくれるだろうとでも思ったのかなぁ?だとしたら迷惑な話だよねぇ。あの学校の子たちがみんな佐藤君とやらとハメまくってたなんてこと、あるわけないのにねぇ。」
「…………。」
「………。」
「え…どうしたの?黙り込んじゃって。」
「………。」
「………。」
「もしかしてお姉さんたち、マジで『佐藤君のハーレム』にいたの?」
「………。」
「………。」
二人は沈黙した。
秋雲の問いに頷くこともなかったが、この沈黙は明らかに肯定を示していた。
さくらは目を泳がせていた。
やよいはきつく目を閉じ、膝上で小さな拳を握り締めた。
秋雲は30秒ほど二人を見てから、言った。
「こりゃ驚いた。お姉さんたち、見かけによらず結構ヤリマンだったんだねぇ。」
やよいは肩を狭めて身を強張らせ、さくらはテーブルに両手を叩き付けて秋雲の方に身を乗り出した。
激昂したさくらに迫られた秋雲だったが、対応はいたって平静であった。
「怒った?」
「あ…当たり前だろ!?なんでアンタにそんなこと言われなきゃならないんだよ!」
「でも、さくらちゃんもやよいちゃんも『佐藤君のハーレム』にいたのは事実なのよね?」
「!そ、それは…そうだけど…!」
「そこで佐藤君とやらとヤリまくってたってことも、事実なのよね?」
「………。」
「それじゃやっぱり、さくらちゃんもやよいちゃんも、エッチ大好きなヤリマンなんじゃない。」
「………ッ!」
秋雲に掴みかかったところで、敵うはずもない。
さくらは身の内で煮え滾る屈辱に耐えながら、腰を下ろした。
「…アンタなんかに…何が分かるって言うんだよ…。」
表面的には平静を保っていた秋雲だったが、その内面は平静というわけではなかった。
秋雲は…苛立っていた。
(何だろ。この二人を見てると、何かイラつくんだよね…。何なのかな?このイラつきは?これはちょっと、正体を見極めなくちゃね…。)
(…二人には落ち着いてもらうように、とは言われてたけど…。一つ挑んでみますか、
秋雲は茶を一口啜り、さくらの台詞を受けて応じた。
「まあ確かに私にわかってることって言えば、さくらちゃんとやよいちゃんが『佐藤君のハーレム』にいたってことと、そこで日々佐藤君とやらとのエッチを楽しんでたんだろうってことだけ。」
「で、さくらちゃんは、このことだけで私が二人のことを『エッチ大好きなヤリマン』呼ばわりしたことが気に入らない、と…。」
さくらは答えた。
「そ…そうだよ…!」
秋雲はさらに応じた。
「さくらちゃんはさっき私に『アンタなんかに何が分かるんだよ』って言ったよね?」
「言ったよ…それが、何なのさ…!」
「さくらちゃんもやよいちゃんも確かに『佐藤君のハーレム』にいて、日々エッチしまくってたけど…。」
「…それでも自分たちはヤリマンなんかじゃない、と言うだけの根拠と言うか事情がある。そんなこともわからないくせに、ヤリマン呼ばわりするんじゃない。…と、こう言いたいわけね?」
「そうだよ!…何も知らないくせに…何もわかってないくせに…!」
「じゃ、わからせてくれる?」
「え…?」
「わからせてくれるかな?その根拠と言うか事情をさ。」
「………。」
さくらは言葉を詰まらせた。
その様子を認めて、秋雲は話を促した。
「そうねぇ…じゃ、まずはさくらちゃんとやよいちゃんが『佐藤君のハーレム』に入ったときの経緯を聞かせてくれるかな?」
「なんで…だよ…。」
「私が二人をヤリマンだと思ったのは、二人が『佐藤君のハーレム』にいたという事実があったからなわけよ。」
「………。」
「だから私にヤリマン呼ばわりを撤回させて、謝罪させるような根拠や事情があるとすれば、それは二人が『佐藤君のハーレム』に入ったときの経緯や、二人が『佐藤君のハーレム』で過ごした日々の中にあると言うわけ。」
「………。」
「そろそろ話してくれるかな?そして私に、ヤリマン呼ばわりを撤回させて、謝罪させてくれるかな?」
そしてさくらとやよいは秋雲に促されるままに、自分たちが『佐藤君のハーレム』に入った経緯を話した。
鈴木と言うクラスメイトに想いを寄せていたこと。
その恋に破れたこと。
佐藤が傷心の二人を慰めてくれたこと。
二人を慰めてくれた佐藤を受け容れ、愛するようになったこと…。
秋雲は所々で質問を挿みつつも、二人の話に耳を傾けた。
二人の話を一通り聞き終え、秋雲は二人に応え始めた。
「んー…するというと、お姉さんたち…あなたたちはこう主張しているわけだ…。」
「鈴木君に振られて傷ついていた二人を、佐藤君は慰め、受け容れ、愛してくれた。あなたたちも自分を受け容れてくれた佐藤君を心から愛している。あなたたちと佐藤君の関係には、私から『ヤリマン』だの『ヤリチン』だのと言われるような、浮ついた、薄っぺらいところは何一つない…と。」
秋雲は誰かの物真似をしていたようだが、誰の物真似をしていたのかはさくらにもやよいにもわからなかった。
それは措いて、さくらは秋雲への反発を顕わにした。
「そうだよ!私たちは真剣だったんだ!何も知らないアンタなんかに侮辱させないっ!」
物真似をやめて、秋雲はさらに応えた。
「どーもわからないんだよねぇ。」
「まず二人とも、鈴木君に振られたって言うけどさ。振られるって言うのは、相手方から交際できない旨の明確な意思表示なり事実の提示なりがあって初めて成り立つ過程なわけ…。」
「???」
「???」
…二人は秋雲の話し方について行けていなかった。
「あー…。」
秋雲は表現を改めて、話を続けた。
「まあ要するによ、この場合だと振られるって言うのは鈴木君から、鈴木君自身から『ゴメンなさい』とか、『他に好きな子が居るんだ』とか言われてしまうことだっていうことよ。で、さくらちゃん?さくらちゃんに『フラれちゃったね』って言ったのは、誰だったっけ?」
「それは…。」
「鈴木君じゃなかったよね。」
「………。」
「誰だったかな?」
…佐藤だった。だが、そう答えたくはなかった。
さくらは苦し紛れに話の焦点をずらそうとした。
「でも、あのとき…順が…。」
「順って…石川順のこと?鈴木君が中学生の時に友達だった子?」
「………。」
「でもその子って、鈴木君が高校に上がってから一度も鈴木君と会っていなかったし、その時久しぶりに会うまで話題にも上ったことがなかったんでしょ?」
「………。」
「ぶっちゃけ鈴木君も、その時までその子のこと忘れてたんじゃない?そんな子が現れたからって、それが何なのかな?何だって言うのかな?」
秋雲は結論付けた。
「結局、さくらちゃんは鈴木君には振られてない。急に現れた佐藤君に誘われてそっちに乗り換えただけだよ。鈴木君との恋より、佐藤君のチンポを選んだヤリマン。それが今のさくらちゃんってわけ。」
さくらは反論を試みた、が…。
「ちがう!そんなんじゃない!そんなんじゃない!」
「へえ?じゃあ、さくらちゃん?さくらちゃんは鈴木くんの気持ちを確かめるために何かした?」
「あ…う…!」
「何をしたの?」
「………。」
…何もしていない。
さくらは沈黙し、秋雲は肩を竦めた。
秋雲はやよいに目を移した。
やよいは動揺し、秋雲より先に口を開いた。
「あ…わ、私は…す、鈴木君が私を見てくれなかったから…。」
「まだ何も言ってないよ。」
「……!」
動揺の治まらないやよいを気にかけることもなく、秋雲は話し始めた。
「でもやよいちゃん。その言い方だと、自分の恋が破れたのは全面的に鈴木君の所為だって言ってるように聞こえるね。」
「……!」
「優しそうな顔して、結構酷いこと言うんだねぇ。いやあ、人は見かけによらないなぁ。」
「ち、ちが…私…そんなつもりじゃ…。」
やよいの弁解には全く反応することなく、秋雲は話を続けた。
「『鈴木君はやよいちゃんのことを見ていない』って言ったけど、やよいちゃんにそう言ったのは誰だったかな?」
「さ…佐藤君…です…。」
「ふふふ、ずいぶん素直に答えたね。」
「でっ、でも!鈴木君は私のことを見てくれなかったけど、佐藤君が私のことを見てくれたのは、ほ、本当だからっ!本当なんだから!」
「自分を見てくれない鈴木君との恋から、自分を見てくれる佐藤君のチンポに乗り換えたというわけね。」
「!!そ…そんな言い方って…!」
「でもそれが事実だよ。」
秋雲はまた茶を一口し、続けた。
「人間の女の子って、愛とか恋とかにはもっと執着するものだと思ってたんだけどなぁ。」
「え…?」
「随分あっけない話じゃない?『鈴木君は君を見ていないよ、僕は君を見ているよ』と囁かれて、それだけで何の迷いも躊躇いもなく初めてを佐藤君に捧げちゃう、なんてさ?」
「そ、それ、は…。」
「やよいちゃん、ホントはただ単にヤりたかっただけなんじゃない?そんで、ヤってくれそうにない鈴木君からヤってくれそうな佐藤君に乗り換えることにした…。」
「違う!違いますっ!」
「でも、乗り換えたのは事実でしょ?」
「う…っ。」
「私の同僚に、振り向いてくれない想い人を振り向かせるために思い切った行動に出た
秋雲は一拍置いて、問うた。
「やよいちゃんは鈴木君を振り向かせるために、改めて何かしようって気持ちは起きなかったのかな?」
…やよいは沈黙した。
一分ほどの沈黙の後、秋雲がまた話し始めた。
「それぞれの鎮守府にはそれぞれの特徴ってものがあるんだけど…。」
「………。」
「………?」
「
秋雲が急に『鎮守府の特徴』について語り出したことに、さくらとやよいは戸惑った。
しかし秋雲は二人の戸惑いを気にも留めず、続けた。
「そう…良く言えば、エッチについては寛容って言うか、大らかなのよね、ウチは。悪く言えば…まぁ、お察しってとこなんだけど。」
「かく言う私もね?ムラムラしたときは大淀さんにさせてもらったり、金剛さんにしてもらったりしてるわけよ。」
「………。」
「………。」
「何だかんだ言ってもさ、やっぱエッチって気持ち良いし、楽しいよね。」
「………。」
「………。」
「…でも私たち、別に愛し合ってるってわけじゃあないのよね。」
秋雲の言葉を受け、さくらは問うた。
「……何が…言いたいのさ…。」
「ん?愛って言う程の情は無くても、エッチはできるし、気持ち良くって楽しいよねって話。」
「…もっと言えば、愛し合ってればエッチもするだろうけど、エッチしてるからって愛し合ってるとは言えないって話でもあるね。」
「…!ふざけないで!私たちはアンタたちとは違う!一緒にしないで!」
さくらは激昂したが、秋雲には『何処吹く風』だった。
「お姉さんたち、あんまり艦娘には興味ないようだけど、戦艦武蔵くらいは知ってるよね?」
「…知ってる…けど…。」
「
「それが…どうしたって言うのさ…。」
「ウチの武蔵さんって、結構なヤリマンなのよ。」
「…!?」
「うちの武蔵さん、ご縁があれば男とも女とも、他所の鎮守府の艦娘とも、ホント『誰とでも寝る
「そんな武蔵さんだけど、一度でもエッチした相手を見捨てたり見放したりすることは、絶対にないのよね。」
「相手が苦しんでいたら本当に出来る限りの手は尽くすし、相手の性根が曲がっていたら叩き直したりもする。うちの武蔵さんって、そういう艦娘なのよ。」
「ちょっと前の話になるけど、岩川台営業所に、心に傷を負って死にそうになってた男子高校生が迷い込んできたのよ。」
「何があったのかは知らないけど…ああ、そういやお姉さんたちと同じ学校の男子だったね。もしかすると、佐藤君に好きな子をNTRでもされちゃったのかもね。」
この台詞自体は全くの当て推量だったが、偶然にも事実を言い当ててしまっていた。
秋雲は知らなかったが、この『男子高校生』こそが『鈴木君』であった。
さくらとやよいは、この『男子高校生』が『鈴木君』であると、直感的に確信した。
さくらは、思わず秋雲に詰め寄った。
「死にそうになってたって…!それで!どうなったの!どうしたの!?」
「ちょ…急にどうしたの?この男子に何か心当たりでもあるの?」
「あ…。」
「そんなにがっつかなくても、話すよ。私は話したくて話してるんだから。」
秋雲は話を続けた。
「そんでウチの武蔵さんがこの男子を保護して…筆おろしをしたのよ。」
「筆おろし…って…。」
「わかんない?エッチして童貞をいただいたってことよ。」
「……ッ!」
「そんな…。」
「で、武蔵さんはその男子とセフレになって、シッカリと学問を仕込んだのよ。」
「…セフレになって、学問を仕込む…って…。」
「何か変かな?」
「だって、セフレって言ったら、ただセックスするだけの関係なんじゃないの…?」
「ああ、武蔵さんにとってセフレって言うのは『セックスを
「だから武蔵さんがその男子に学問を仕込んだのは…彼が心の傷を克服してしっかり生きていけるようにするためなわけよ。…友達として、ね。」
「で、私からさくらちゃんとやよいちゃんに質問なんだけど…。」
「ウチの武蔵さんはこうして『ただのセフレ』を『この先もしっかり生きていけるように』支えたわけだけど…。佐藤君はどうだった?チンポでアンアン言わせてくれることの他に、二人がこの先も生きていく上で力になるようなこと、何かしてくれた?」
「さくらちゃんとやよいちゃんはどう?今、佐藤君は苦しい立場に置かれてるみたいだけど、佐藤君におマンコを差し出すことの他に、何かすることはある?出来ることはある?」
さくらもやよいも、秋雲の質問に答えることができなかった。
さくらは目を泳がせながら、両腕で自らを抱きしめた。
やよいは膝上で小さなこぶしを握り締め、さらに身を固くした。
さくらはつぶやいた。
「ちがう…そんなはずない…そんなんじゃない…ちがう…。」
秋雲は暫く、動揺した二人を眺めていた。
(ああ、そうか…だからこの二人見てると、こんなにイラっとするんだ…。)
(…さて…仕上げに掛かるとします、か。)
「そんなはずはない、そんなんじゃない…って、どういうことかな?」
「………。」
「………。」
「自分たちは、愛とか恋とか本当はどうでもよくって、ただチンポ挿入れられてアンアン言うのが好きなだけのヤリマンなんかじゃないってこと?」
「………!」
「………ッ!」
「でも、鈴木君の気持ちを確かめることもせず、鈴木君を振り向かせることもしないで、あっさり佐藤君に乗り換えたという事実がある以上、どれだけ自分たちはヤリマンなんかじゃないなんて言っても、説得力なんて皆無に等しいよ。」
「ク…ッ!」
「う……っ。」
さくらは秋雲を虚しく睨み、やよいは嗚咽しはじめた。
秋雲はさくらの強い眼差しも、やよいの嗚咽も意に介さず、茶を一口して続けた。
「…二人とも、自分がヤリマンだってこと認めたがらないようだけど…。」
「エッチが好きだってことが、そんなにダメなことなのかな?」
「……?」
「……?」
「
「エッチして気持ち良くなるってのは、生まれながらにして備わってる感覚なわけよ。その生まれながらにして備わってる感覚が好きだってことが、そんなにダメなことかな?」
「そりゃまあ、エッチに溺れて人生台無しにしてしまうなんてことが、ないわけじゃないだろうけどさ。」
「生きていれば、学校とか仕事とか、他の楽しみとか、何て言うか、調整器になるようなものだってある。」
「生きて、するべきことはちゃんとして、良い相手が居たら、良い時、良い所でエッチを楽しむ。それで良いんじゃないの?」
秋雲の言葉の後、さくらは力なく応えた。
「でも…。」
「何?」
「これから私たち、ずっと…あんなヤツらに…。」
「あんなヤツらにって…これからも路地裏のお兄さんたちみたいな連中に『お前ヤリマンなんだろ?ヤらせろよ』とか言われ続けちゃうんだってこと?」
「………。」
「………。」
「まあそれはしょうがないかもね。さくらちゃんもやよいちゃんも、もうそういう道に…生き方に足を踏み入れちゃったんだもの。」
「く…ッ。」
「うう…。」
さくらは歯噛みし、やよいは涙を零した。
「でもそんなこと、ありふれた『問題』でしかないでしょ。」
「こう言っちゃ何だけどさ、生きていれば、どんな生き方しようが『問題』ってのは出て来るもんよ?」
「清楚純情な乙女には清楚純情な乙女に向いた試練が、ヤリマンビッチにはヤリマンビッチに相応しい面倒がある。」
「ただそんだけの話だよ。」
ここから秋雲の話は、その流れを変え始めた。
「さくらちゃんもやよいちゃんも、これから路地裏のお兄さんたちみたいな…なんか勘違いしてるヤツらから『お前らヤリマンなんだろ?ヤらせろよ』とか言われ続けるってことにビビってるみたいだけど…。」
「それはヤリマンは『ヤらせろ』っていわれたらヤらせなきゃいけないってことなの?ヤリマンはレイプされても仕方がないってことなの?ヤリマンは無理矢理
「正直言って確かに燃えるし、ムラムラするシチュではあるよ?普通だったらカウンセリングを受けるか、解体処分ってことになるだろうね。」
「でも私には、これがある。」
秋雲はスケッチブックなどが入ったトートバッグに手を置いた。
「それはさておき…どうなの?二人とも。自分たちはレイプされても仕方がないの?無理矢理
さくらは反発して声をあげた。
「そんなわけないだろっ!!」
「でもビビってばかりで何もしないんじゃ、認めちゃったのと同じことだよ。」
「………ッ!」
黙らされたさくらに代わって、やよいが秋雲に問うた。
「それじゃ…どうしろって言うんですか…。」
「そんなことまで私に聞いちゃう?いろいろあるでしょ?私に思いつくだけでも…。」
「『クソして寝な!』とか『鏡見てから言えよバーカ』と言ってやるとか。そこまで強く出られないんなら何を置いても人通りのあるところに出て『誰か助けて!』と叫ぶとか、さ。」
やよいはまた沈黙した。
そして秋雲は茶を飲み干し、言った。
「じゃ、最後にもう一つ聞かせてくれるかな。」
「さくらちゃんもやよいちゃんも、鈴木君に恋してた時は何もしなかった。」
「何もしないでいたら、佐藤君のハーレムに入っていて、佐藤君のチンポでアンアン言わされて、愛より恋よりチンポが好きなヤリマンになっちゃってた。」
「そしてそんなヤリマンになった今、自分はレイプされても仕方ないんじゃないか、輪姦されるのが当然なんじゃないかとビビってばかりで、やっぱり何もしないでいる。」
「………今度は、何になるつもりなのかな?」
この時さくらとやよいがどう答えたのか、そもそも答を返したのかは、その場にいた三人しか知らない。
ともあれ、三人の対話はここで終わった。
間宮を出て、秋雲は二人に言った。
「じゃ、どうしたらいいかわかんなくなったら、いつでも
「家まで送るよ。こっち、来てくれる?」
秋雲は二人を車に乗せ、家に送り届けた。
それぞれの家で「お茶でも…」と引き留められはしたが、秋雲は要領よく断り、営業所に帰還した。
帰還するとすぐ秋雲は作業机に着き、中断していた原稿作業を再開した。
作業の途中、秋雲はふと手を止めて思案した。
(さて…今日の
(ネタにはなりそうなのよね…追跡取材、できないもんかしら、ね…。)
…その後、さくらとやよいが直接秋雲と顔を合わせることはなかった。
二人は何度か『間宮』に現れ、居合わせた駆逐艦や軽巡に何事かを相談したこともあったようではあった。
その相談内容が秋雲に伝わったのか、創作の材料になったのかどうかは、定かでない。