割り当てられた楽屋は狭苦しく、ガラクタとしか思えない物品がうずたかく積まれている。足の踏み場もないという言葉を体現していた。壁は経年劣化で黄ばんでいるし、ところどころに得体の知れない染みがこびりついている。海鮮を思わせる生臭さが、うっすらと充満していた。
物置のほうがまだましだ。アリスのようなVIPクラスの美女を迎えるのに相応しい部屋だとは、口が裂けてもいえない。ないがしろにされていると感じて当然の処遇だ。当人は、むしろ歓迎していた。そういう風に扱ってくれと頼んだのは、こちらなのだから。
今にも崩れそうな椅子に座り出番を待つアリスは、なんとなく落ち着かない様子を見せていた。頬は紅潮し、体温もやや高い。なにせ今から、ずっと望んでいたことをするのだ。胸が弾んでいた。
建付けの悪い扉が、嫌な音をたてながら開かれる。ノックもなしに現れた男は、肥満体を狭い入口に挟まれつつも楽屋に入り込む。
人間だが、妖怪と間違われそうな容姿だ。余りまくった肉が瞼を押し下げて垂れ目になっている。団子鼻にはイボが浮かんでおり、脂ぎってテラテラと輝いている。
「アリスちゃん。そろそろ出番だよ」
鳥肌のたつ、胡散臭い猫撫で声だった。見た目も相まって、第一印象の時点で嫌悪されておかしくない。
彼はこの、貧民窟の見世物小屋の支配人だ。そういうアンダーグラウンドな立場を考えれば、納得のいく風体ではあった。
「それにしても、似合ってるねぇ、その格好。君みたいなどうしようもない色狂いのアバズレには、よぉくお似合いだよ、ククク……」
「うふふ、ありがとう」
贅肉に半ば塞がれた瞳を逆さ三日月の形に歪め、無遠慮な視線を注いでくる。分厚い唇から飛び出したのは、常識を疑う罵倒だった。色狂いだとかアバズレだとかいうのは、およそ女性に向けて使ってよい語彙ではない。にもかかわらず、アリスは怒るどころか、にこやかに返答してみせた。男から浴びせられる好色な目に、ゾクゾクと震えながら。
実際、今のアリスの姿は、あまりにも大胆で扇情的だった。いつものケープとワンピースの組み合わせではない。支配人から渡された、ショーキャスト専用のダンサー衣装を纏っていた。
そもそも、衣装と呼んでいいかも怪しい。首や腕、脚などにじゃらじゃらとアクセサリーをぶら下げている傍ら、肌は九割ほどが露出していたのだから。彼女が纏っているのは、エナメル素材のマイクロビキニだけだった。
普段の服がゆったりしているので分かりにくいが、彼女はかなりグラマーな体型をしている。柔らかで瑞々しいEカップバスト・くびれた腰回り・豊かに張り出した骨盤を見れば明らかだ。いわゆる、着痩せするタイプだった。
そんな肉体が、惜しげもなく晒されている。乳房のほとんどは見えているし、三角の布地は大きめの乳輪を隠しきれていない。下半身も、極小のGストリングで、鼠径部が半ばまで露出していた。陰毛の茂みがちらちらと姿をうかがわせているのは、無精だからではない。紐同然の水着では、そもそも隠蔽するなど無理な話だったのだ。
裸同然の姿を下衆の視線に晒し、彼女は内心で嫌悪感を覚える。一方で、ぞわぞわとこみ上げてくる破滅的快感に酔いしれてもいた。
「さて、あらためて確認しておくけれども。今日はアリスちゃんに、ウチの最底辺娼婦向けの人生終了変態ショーに出演してもらうよ。それでいいんだね?」
「ええ、それでいいわ。ずっと気になってたのよ」
「そうかい。まあ、今さら嫌だって言っても逃がしゃしないけどね。アリスちゃんみたいな上玉が自分から飛び込んでくるんだから、骨の髄までしゃぶり尽くしてやらなきゃ損ってもんだ」
ニタニタ笑いには、あからさまな侮蔑と嘲弄が含まれていた。別に、構いはしない。そうしてもらうことを、自分は望んでいるのだから。だからこそ、こんな貧民窟の片隅で、まともな生活と別れを告げようとしているのだから。
魔法使いは捨食の術を習得している。おかげで食事なしでも生きられるのだが、重篤な副作用があった。いわゆる三大欲求の一角、食欲をかなぐり捨てるのだから、生物としてはあまりに不自然になる。しわ寄せがくるのだ。
アリスの場合は、性欲の増大という形で現れた。自慰ではとうてい我慢できないほどの肉欲に、常に悩まされている。
肥大した欲望は、次第にねじくれていく。破滅願望と、露出癖に繋がった。
行きずりの男と寝てみたり、深夜の里で露出プレイに及んだり。色街で名を隠して春を売ったりもした。それらは、いっときは燃え上がる変態的欲求を癒やしてくれた。だが、根本的な解決には至らなかった。むしろ、かさぶたを剥がしては傷口をひどくさせるように、悪化していった。
異常性欲からくる行為は、どんどんエスカレートしていく。貧民窟に足を運び、醜い浮浪者相手に股を開きすらしていた。
誰もが顔をしかめる異常行為でも物足りなくなって、行き着いたのがこの店だ。最底辺の見世物小屋の、最底辺の演者専用の、最悪のショー。その主演となって、人生を終わらせるのだ。
「それじゃまずは、ちゃんと仕事ができるかどうかチェックしてあげよう」
「そうね、お願いするわ」
じりじりと、男はにじりよってくる。目は血走り、団子鼻からむふぅむふぅと荒い吐息を漏らしている。
極めて不審だ。女性なら誰しも、身の危険を感じるシーンだった。にもかかわらず、アリスは素直に男を待ち受ける。内心では嫌悪と、そこからくる昂ぶりを覚えながら。相手が異常であるほど、燃え上がるのだ。
「おら、口開けろよ雌豚。気がきかねぇな」
「はぁい……んむッ、んぢゅるっ、れろッ、んちゅぅ」
男の唇が開かれる。涎がねっとりと糸を引いている。最低限の猫かぶりもかなぐり捨てた男は、アリスの頬を軽く叩くと、強引に接吻した。
むぢゅるむぢゅると、吸い付いてくる。彼の口内からは、夏場の水槽を思わせる、中年特有の臭いが漂っていた。ひどい臭いだと思いつつも、だからこそ興奮を抑えられない。
「れろっ、んちゅッ、れろれろれろ、んふぅ……」
舌と舌を絡ませあい、恋人同士でもしないような熱烈かつ猥褻なる舌交に及ぶ。ぬっちゅぬっちゅと音を立てながら、口内粘膜の間で唾液が送られあい、混じりあう。
「あはぁあ……」
逃がすまいと、腰を抱いてくる。と同時に、尻肉を我が物顔で揉みしだいてくる。
インドア派と思われがちだが、人形劇は結構な体力仕事だ。弾幕ごっこでたまに蹴りを使うのもあって、足腰は相応に鍛えられている。しなやかなハムストリングスと大臀筋のうえに、適切な量の脂肪が覆い被さって出来たヒップは、まさに理想的だった。
「ぅんッ!」
つんと上向いて弾力をもつ、ぷりぷりした美尻は、ダンサー衣装のGストリングによって強調されていた。このエロケツ女が、といわんばかりに、ぴしゃりと平手で叩いてくる。もっと、とばかりの媚びた声を漏らし、さらなる行為をねだる。
「ぢゅるる……グフフッ」
「ぅウン……んっ! ふ、んぅ」
両脚の狭間に、ウインナーじみた指が忍び込んでくる。極小クロッチ越しに、プライベートゾーンを撫で回してくる。
尺取虫が這うような動きで、敏感な土手を布越しに責め立ててくる。嫌がりもせず、むしろ喉の奥から甘い吐息を漏らしながら、腰をゆっくりと揺らめかす。
「んッ、ふ、ぅん……んん!」
次第に、もっとも敏感な豆が充血し、硬く凝り始める。指の腹で押し潰されれば、びりびりと響く官能に身体は小さく震える。
「グフフッ……」
拒否されないのをいいことに、男はどんどん調子に乗る。衣服の内側に、手を滑り込ませた。
「んっ……ン! ふッ、く、んぅうッ」
ぷにぷにとした裂け目に、直接触れてくる。エナメル布を隔てたのとは全く異なる、甘く痺れる快感に、蕩けた声が喉から溢れる。
すりすりという擦過音が、湿り気を帯びはじめる。ぬちっくちっと蜜がこねられ、卑猥音が室内に響く。
「んっ、ふ……ぢゅるッ、れろっ、れろれろれろ……」
アリスの息づかいが、次第に荒くなっていく。舌遣いも情熱的になり、中年男相手に媚びていく。興奮を示すバロメーターだった。
「ンッ――!」
頃合いを見計らって、男は指を、裂け目へと侵入させる。秘められるべきクレヴァスの内を、醜い中年男の中指が探っている。お前の恥をさらけ出させてやるぞといわんばかりに、ゆっくりじっくりと、執拗にほじくってくる。
そんな風にされたら、もう平気ではいられない。カクッカクッと膝が笑っていた。自ら肉壺を捧げるがごとく、彼に腰を差し出す。身体をぴったりと密着させる様は、熱烈な恋人であるかのようだ。Eカップバストが押し潰されて、むにゅりと形を変える。幸福な感触を、男の腕に伝えている。
「ふぅッ、ふぅ、んぅううッ! ンッ、んぅう、んーんッ」
指の動きは、次第に激しくなっていく。ぬちゅッ、ちゅぽっと、蜜音も露骨になる。エナメル布の吸水性はほぼゼロだ。滴る愛の滴は、そのまま太腿に流れ、卑猥な筋をつくっていた。
性愛の鳴き声は、上ずり、切なさを増していく。人を食い物にする下衆だからこそ、女を堕とす技術には長けている。退廃的な悦びを重ねてきたアリスですら、すでに快楽の頂点が見え隠れし始めていた。
「んぅッ――」
にもかかわらず、男は指を抜いてしまう。お預けをくらったクレヴァスはしきりにヒクついて、切なくてたまらないのと訴えていた。
「ぶッはぁ。まあこれだけできりゃあ上等だろうな」
「ぷは……酷いわ、こんな半端なところで投げ出すなんて」
ふたつの唇の間を、唾液の糸が伝う。ちゅるんと啜りながら、媚びた声で抗議する。
男は取り合わず、己の指をアリスに見せつける。人差し指と中指の間で、ねっとりした糸がひいている。彼女が淫らに染まった、なによりの証拠だ。
「んちゅ……んっ、ちゅぽっ、んちゅぅ」
口元に突き出されたそれを、暗に命令されるがまま口腔へ迎える。甘酸っぱいような、己自身の卑猥汁の味に酔いしれる。頬を窄めて、とびきり下品にしゃぶりつく。
惨めでいやらしい己の姿を見せつけながら、彼を誘惑する。別のモノをしゃぶらせたら、気持ちいいですよと。白い手が、男の股座に伸びる。ズボンの上から、膨らみをそっと撫で回す。人形劇で披露するのとは異なる、それだけでR18指定を食らいそうな手つきだ。ムクムクと、衣服の内で肉竿が硬くなっていくのを感じる。
「はッ、馬鹿女が」
「んぅ」
指が引抜かれる。労りの言葉も礼もなく、プッと、顔面に唾を吐きかけられた。生臭い唾液の臭いが漂う。
嫌悪を覚えずにはいられない。なんて酷いことをするのだろう。もっと股穴が疼いてしまうではないか。
「そんなにしゃぶりたいんならしゃぶらせてやるよ。開場時間が迫ってんだ。とっととやれ」
「あは、はぁい……」
ぎんぎんといきり勃つモノを太腿に押しつけながら、男は言う。奉仕してもらう立場のくせして、有無を言わさぬ口調だった。本来ならば人生百回繰り返しても手の届かぬ美女であるアリスが、自ら媚びてくるのだ。王様気分にもなろうというものだ。
男の前に、恭しく傅く。見た目は豪華な、しかしつくりは粗末な下服を、唇で咥えてゆっくり下ろす。
とたん、むわりと、陰茎臭が溢れる。蛋白質と汗と尿のブレンドした、えげつない臭気。快いわけもないし、顔をしかめてしかるべき悪臭だ。
「はぁ……あはッ、くさぁい……」
にもかかわらず、アリスは恍惚の溜息を漏らした。相手が最低最悪であればあるほど、彼女のフェティシズムは満たされるのだ。むしろ、悦ばしくすらあった。
そうした異常嗜好を脇に置いても、露わになったモノは中々の代物だった。先端は握りこぶしを連想させるし、ギンギンと反り返る姿はまるで曲刀だ。女を食い物にし、見世物として骨の髄までしゃぶり尽くす館の支配人には、お誂え向きだった。
「んちゅッ、んちゅっ、あはっ、んっ」
先端に、顔を近づける。道を歩けば誰もが憧れる艶めくリップで、卑猥に過ぎるキッスを何度も繰り出す。むちゅむちゅと、濃厚なキッスサウンドが響く。とても、他人のシモに口づけているとは思えない音が。
「ホレ、しゃぶるんじゃなかったのか? 甘っチョロいことしてんじゃねぇよ雌豚」
「あんッ」
ぺしぺしと、頬を亀頭で叩かれる。肉棒臭を染みつかされていく。あまりの扱いに内心で感謝すら覚えていた。
「えぁあ……あもぉッ」
どうしようもなく大口を広げる。正面から覗き込めば口蓋垂まで見えそうなほどだ。はしたない仕草だった。だらしなくどうしようもない姿を晒すことに、興奮を覚えてしまうのだからしかたない。
「あむっ、んぢゅるっ、ぐぽッ、ぢゅるぅ」
生臭くえぐみのあるペニスの味を感じながら、頭を前後させる。唾液をたっぷりと絡ませるフェラチオだ。口端から、ぐっぽぐっぽと卑猥音が響く。
「んふぅうん……れろッ、れろれろれろ……」
口内を満たすおぞましい陰茎の味にうっとりとしながら、舌を蠢かす。レロリレロリと舐め回しては、その形を舌に覚え込ませていく。
「おッ、お、いいぞぉ。ホレ、玉も弄れ。フェラ豚が」
「んぢゅるッ、ぐぽッ、ぢゅる、んぢゅぽッ、くぽ、んふぅ」
豚と罵倒され、怒るどころか悦ぶ者は、幻想郷中を探してもアリスくらいだろう。唇の端から涎が滴るほどの下品口淫を繰り出しながら、求められるがまま口粘膜を雄竿奉仕のため捧げる。
人形を操るための器用な指先で、グツグツと煮えたぎる玉袋を恭しく転がす。一級品の宝石に触れるかのごときフェザータッチだった。女を絶頂に導く、悦びの汁を生み出している器官なのだから、丁寧に扱うのは当然だった。
「おっ、おッ、おッ、出るぞ雌豚っ、顔面で受け止めろッ、ぉおお~ッ……」
「んぽッ、あはぁッ、は、あぁッ、あぁ、あつぅい……っ」
やがて唸り声とともに、男が口腔から肉竿を引抜く。ぶぽッ、と便所のつまりをラバーカップでとるときのような下品音が鳴った。最後の最後まで、竿に吸い付いていたからだ。
目と鼻の先で、イチモツが勢いよく弾ける。煮えたぎる中年の欲望が、ぼびゅッぼびゅっと、尿道を通じ解き放たれていく。一滴残らず、アリスの顔面にぶちまけられて、白いスペルマ化粧を施していく。
「あぁあ……」
もわりと、むせかえるほどの精臭が満ちる。貧民窟の住人の、下卑た濃厚子種にまみれ、自分の顔は今どんなことになっているだろう。想像するだけで、達してしまえそうだった。
「お、お、お、ふぅ~……。まあ、ちり紙よりは多少マシだったか?」
魂が抜けるような声をあげて、男はぶるりと震える。ぱんぱんに膨れ上がっていた陰嚢は、かなり萎んでいた。変態人形遣いの顔面を便器にした、なによりの証拠だ。
「おう、気分はどうだよ雌豚魔女が。お前みてぇな淫乱は、チンポ臭にまみれて生きてるのがお似合いだよ」
「あぁんッ……んちゅっ、ちゅるるっ」
いくらか硬さを残す肉竿をヘラの代わりにして、顔にへばりつくスペルマを塗り広げてくる。お礼に、尿道に残っていたわずかな精子を、鈴口に吸い付いて啜り上げた。ゆっくりと噛みつぶして味わう。素敵すぎて、蕩けてしまいそうな気分だ。
「へへ。後始末までするたぁ、根っからの淫乱だな……さぁてアリスちゃん。そろそろショーの始まる時間だ。準備してくれるかな?」
「そうね。化粧室を借りても?」
「ははは、化ッ粧室ぅう? お色直しでもするつもりかい? 何をおかしなこと言ってるんだか……」
顔は白濁まみれで、疼く秘唇からはとろとろと蜜が滴っている。流石にステージに出られる状況ではないと、思っていたのだが、男は一笑に付す。心底馬鹿にした視線を浴びせられ、屈辱を覚えながら薄暗い悦びに浸る。
「脳味噌の容量がミジンコ並みみたいだね? ウチの最底辺娼婦として、人生終了変態ショーに出演したいって頼んできたのは、君のほうだろう? 自分からそんなことを頼んでくるような脳タリン女に、なんでこっちが配慮してやらなきゃならねぇんだ? ふざけるのも大概にしろよパープリンが」
「あぁッ……ごめんなさい、そうね。その通りだから、許してェ……」
自分の言うことに一片の間違いもないのだとばかりに、怒声混じりで詰ってくる。半勃ちのモノで、鞭打つかのごとく頬を叩いてくる。客観的にいって、ふざけているのは明らかに彼のほうだ。それでもアリスは、謝罪の言葉を口にする。ペニスには絶対服従。雌豚として、あたりまえのたしなみだった。
「オラ、馬鹿なこと抜かしてねぇでとっととついてこいや」
「はぁい……あはっ」
のしのしと歩き始める男の後ろをついていく。楽屋を出て、廊下を進む。ガラクタや何やらが左右にうずたかく積まれており、すれ違うほどの幅もない。当然、スタッフと行き違うこともあった。
「おっと、へへへ。悪いなぁ、狭いもんでよ?」
「あっ、あんッ、ああ……」
身体を押しつける振りをしながら、乳房や秘部を嬲りものにしてくる。アリスがどういう女であるかは、見世物小屋の従業員全員に伝わっているのだ。好奇の目にさらされながら、ステージ裏へ向かう。
すでに会場しているらしく、ホールからは喧噪が聞こえてくる。人形劇の観客などとは異なり、下品で粗野だ。
「ご来場の皆様、たいへんお待たせいたしました! これより淫乱変態底辺マゾ娼婦アリス・マーガトロイドの人生終了変態ショーを開催いたします!」
男が宣言すれば、客たちから歓声があがる。もはや野次にも近かった。ゴミや何やらがステージまで飛んでくる始末だ。
客の質があまりにも悪い。この見世物小屋は、治安のちの字も存在しない貧民窟にある。集まるのは、近隣住民だ。すなわち、今日の飯にも困る浮浪者や、性病まみれでまともな店を全て出禁になったような男達だった。
そういう連中の前に、今から一人で姿を見せるのだ。顔をスペルマで汚し、股からとろとろと蜜を垂らす、卑猥極まるストリップダンサーの姿で。
女として当然の恐怖に、脚が竦む。けれども、だからこそ、やりたくて仕方がなかった。何より、ここまできて出来ませんなどと、言わせてもらえるわけもなかった。
「ほれ、行け」
「あっは……ッ」
ぴしゃりと尻を叩かれ、押し出される。スポットライトのなかに、自ら脚を踏み入れる。
むっとした臭気が鼻孔に流れ込む。男共から立ち上る体臭だ。生活水準が低く、入浴はおろかろくに行水できない輩が多い。人間特有の生臭さがホールに満ちていた。
ステージ裏からホールの中央までランウェイが伸び、円形のお立ち台となっている。天井まで、ポールダンス用の柱が伸ばされていた。
「うっひょぉ、見ろよすっげぇ上玉だ!」
「あれ、顔面ザーメンまみれじゃねぇか? 澄ましたツラしてとんだド変態だぜありゃぁ!」
「マンコも濡らしてやがる、ひひっ、さっきまでヤッてたんじゃねぇか? こんなトコでこんなコトしてるくらいなんだからよ!」
「おいこっちに下りて来いよ、イイことしてやっからよぉ! ヒイヒイ言わせてやるぜ!」
ライトに導かれるまま、ランウェイを進む。その下に、観客たちが殺到する。本来なら自分たちが見たいと思うことすら烏滸がましいような美女を、少しでも網膜に焼き付けるためだ。なんなら手を伸ばして、触れようとする輩までいる始末だった。
さながら、地獄の亡者どもだ。恐怖を覚えずにはいられず、顔が引きつる。だからこそ、あえて見せつけるように歩く。ヒールを鳴らし腰をくねらせ、ボディラインを見せつけながら進めば、男たちはいっそう沸き立つ。
「あはぁッ……」
乳輪のはみ出た金のマイクロビキニが、ライトを反射し輝いている。安産型のヒップを、ぷりっ、ぷりっとくねらせる。ぴゅうぴゅうと囃し立てる指笛が響く。うっすらと、汗をかいていた。嫌悪とないまぜになった興奮が、身体を包んでいた。
お立ち台にまで辿り着くと、スポットライトがひときわ強まる。体表に滲んだ汗が、光を浴びて煌めいている。
扇情的な音楽が鳴りはじめる。リズムにあわせ躍る。ぱん、ぱんと、観客から手拍子が響く。
稚拙な動きだった。舞踊の経験などないのだから仕方なかった。それでも、客が白けることはない。なんといっても、彼らは芸術を見に来たわけではない。己の下卑た欲望を、満たしに来たのだ。
「へへ、ほれ、もっとエロく誘惑してみろよぉ」
「そういうのが得意なんだろ!? 変態女が! ギャハハハ!」
野次に従って、腰を躍らせる。ポールに背を預けながら、両腕で乳房を強調し、谷間を見せつける。大きく脚を開いては、Gストリングが露わに食い込む土手を見せつける。
「いいぞいいぞォ、やればできるじゃねぇかアバズレ女!」
「ほれ、脱げ脱げ、マンコ見せろよマンコ!」
脱ぅげ、脱ぅげとコールがかかる。ここで拒んで、場を醒めさせるアリスではなかった。
まずは、上からだ。背中に手を回し、結び目を一息に解く。しゅるんっ、と小さな音が鳴り、戒められていた乳肉が姿を現わす。ぷるんッ! と、暴れ出るくらいの勢いだった。
もともと、総面積の九割近くが剥き出しになっているような有様だったのだ。露出面積の数値的な変化だけでいえば、まったく大したことはなく思える。
大きな間違いだ。戒められていた柔肉は、くびきから解き放たれたことで、十全たる美しさを発揮していた。
つんと上向きながら前方に突き出す、釣り鐘型の乳房だ。若々しさゆえの弾力と瑞々しさを保っており、一目見ただけで魅惑の感触が伝わってくるほどだ。
マイクロビキニの三角型の布からはみ出ていた乳輪は、バスト全体と比較するとやはりやや大きい。美に関する神々が協議しながら作ったかのごとき肉体において、唯一ともいえるアンバランスなポイントだ。だからこそ、強烈なまでのアクセントとなって、見る者の視線を惹き魅了する。
先端は、布の上からでも分かるほど勃起していた。ぴぃんと自己主張して、私の持ち主は今性的に興奮していますよ、助平な女ですよと訴えかけている。
「あはッ! 見て、もっとみてェッ」
ほんの一割ほどの差が、大きな違いとなったのは、なにも見る側だけの話ではない。アリスにとっても同じだった。身体をくねらせて、剥き出しの授乳器官をぷるんぷるんと左右に弾ませる。間抜けな姿を晒しながら、露出の快楽に浸っていく。
「おっほ、すっげぇ」
「いいぞいいぞォ!」
感嘆とともに、野次が飛んでくる。文字通りに無数の、好奇と好色と侮蔑の視線が浴びせかけられる。粘っこく、しつこい視線だった。まるで、全身に精液を浴びせかけられているかのようだ。つまり、とてもクセになる。
「あは――ッ」
そんなふうにされたら困ってしまう。もっと大切なところまで、見せたくなってしまうではないか。
腰に手をやる。おっおっおっ!? と、観客席から声があがる。彼女が何をするつもりなのか、察したのだ。
上体を軽く倒し、Gストリングのサイドに指を引っかける。ゆっくり下ろし、まずは右脚を引抜く。次いで、左脚。上体を起こす。素っ裸の彼女が、そこにいた。
もともと半ばハミ出ていた陰毛は、朝づゆに濡れた葉のごとくてらてらと輝いている。なにに濡れているかといえば、説明するまでもない。露出した陰唇は、今もとろとろと蜜を溢れさせていた。
持ち主の麗しく整った顔つき・体つきからは想像もつかぬ、生々しく妖艶なるヴァギナだった。
爛熟し大きく花開いた花弁は、どれほどの性経験を重ねてきたか・何本の雄を咥えてきたかを端的に物語っている。ヒクつきながら、助平な香りをまき散らす様は、さながら食肉花だ。うっかり近づけばパクリと食われて、金玉の中身をすっかり搾り取られることとなるだろう。
「あぁッ、見て、もっと見てェッ……!」
衝動のまま、脚を高く掲げる。Y字バランスの姿勢だ。本来ならば隠されるべき部位が、思い切り曝け出される。何十人という下衆の視線が、同時に浴びせられる。おぞましいまでの欲望の込められた視線が。
「あんッ、アッ、アッ、あぁあ~ッ……!」
粘っこくしつこい目つきは、質量を感じるほどだ。それが何十も集まれば、無数の掌で触れられ、肉棒で犯されているように錯覚するのも無理はない。かくかくと膝は笑い、嬌声が溢れる。露出行為で、精神的な絶頂を迎えていた。
「へへ、見ろよあの女! 感じてやがるぜ、あんあん喘ぎやがってよぉ」
「てかイッてねぇか? ぎゃはは! 何食って生きてたらそんなド変態に仕上がるんだよ、俺だったら恥ずかしくて生きてけねぇなァ!」
「あはッ、あはぁあっ」
心ない罵倒を浴びせられる。屈辱と怒りが、何よりも性感を高めてくれる。肉の悦びのまま、激しく躍る。乳房・腰・陰部・尻を見せつけ、下品な快楽に酔いしれる。お立ち台の上に、汗と愛液がまき散らされていく。
もちろん、ポールも活用する。といっても、本物のポールダンスなど、当然踊れない。もっと別の用途に使っていた。
両脚を大きく広げ、股間を柱に押しつける。金属製の柱の、ひんやりとした感触が秘部に伝わってくる。
「アッ、あっあっ、あぁんッ、あぁっ」
そのまま、腰を上下させる。陰唇が、ポールに擦り上げられていく。切ない官能に、はしたない声が止められない。背筋をそらしてへこへこと腰を動かす様は、どうしようもないほどに惨めだ。
滴る蜜が塗り広げられていく。蜜にまみれてヌルつく柱は、さながら犬にマーキングでもされたかのようだった。
「見て、見て! もっと、あっは、あぁッ」
上体を倒し、観客席へ尻を向ける。麗しきレッグラインからヒップライン、そしてなにより濡れそぼつどころでは済まないヴァギナが、丸見えになる。
それだけに留まらなかった。興奮に紅潮するぷりぷりの尻肉を自ら割り開く。陰唇に指を引っかけて、体内まで余すところなく曝け出した。
スポットライトの光を浴びて肉襞はぬらぬらと輝いている。うねりながら、ひくっひくっと収縮を繰り返す。昂ぶりのあまり白く濁った本気汁が、とろとろと止めどなく溢れている。
卑猥という言葉ではとうてい言い表せぬ、むせ返るほどの猥褻さだ。ホール内は性欲のるつぼとなっている。場にいる何十もの男全員が勃起している、異様な状況だった。
はっきりいって、おそろしくてたまらない。だからこそ、あえて火に油を注ぐ。脱ぎ捨てたマイクロビキニとGストリングを、観客席にめがけて思い切り投げ込んだ。
「うぉおおッ! どけ! そりゃあ俺んだ!」
「ふざけんなぶち殺すぞ! 引っ込んでろ抜け作が!」
「てめぇ足踏みやがったな!? 喧嘩売ってんのかコラァ!」
当然、男共はそちらへワッと群がる。衣装は奪いあわれ、アッという間にボロボロの布きれに成り下がった。
蜘蛛の糸に群がる血の池地獄の亡者どもをみた気分だ。これがそうだとすれば、カンダタは私利私欲で亡者共を蹴り落とそうとしたわけではあるまい。単に気圧されて、怖じ気づいたに違いなかった。傍から見ているだけでも、恐ろしいと感じずにはいられないのだから。
「さぁ、皆様お待ちかね、おさわりサービスタイムのお時間です!」
そんな彼女を追い詰めるがごとく、支配人は声を張り上げる。暴動のごとき騒がしさにあったホールが、一瞬静まりかえる。次の瞬間には、鼓膜がビリビリと震えるほどの叫喚が広がった。
「ッ――あは」
喉が引きつる。どれほどの暴力に晒されるか、想像もつかない。この中に飛び込むくらいなら、まだ下水道で泳ぎ回るほうがマシに思えた。
だからこそ、期待せずにはいられなかった。どんな酷い目に遭わせていただけるのかと考えるだけで、胸が高鳴った。
「アッ、っは、……どうぞ、お手柔らかにね?」
「はん、お手柔らかにだとよ! 優しくしてもらえるとでも思ってんのか、このアバズレがよ!」
「お望み通り、人生終わらせてやるぜマンコ女! ギャハハハ!」
「あはッ、あッ、あ――ッ」
貧民窟の浮浪者やごろつきの、無数の汚らしい手が伸びてくる。今度は自分が、あの布きれのようになる番なのだ。被虐の期待に、熱いものが腹から溢れて止まらない。
「ほれ口開けろ馬鹿女、ラブラブキッスの時間だぜぇ」
「んふゥッ! んぢゅッ、ぅえッ、ぢゅるッ、んぐぅッ、ふっ、ンッ、んぅう」
薄汚れた醜い顔面が近づき、強引に唇を奪ってくる。当然のごとく、舌をねじ込んでくる。
「むぢゅるるっ! ぐふッ、ぐぷッ、ぢゅるぅッ、んぢゅるッ、れろれろれろ」
本来、キスとは、愛情を確かめ、気持ちを高め合う恋人同士の行為だ。だが、こんなところで見世物を楽しんでいる輩に、愛だの恋だのと真面目に信じているわけもない。ただただ己の欲望と嗜虐心を満たすためだけに行われる、極めて身勝手な接吻だった。
ヘドロじみた唾液が送り込まれる。雑菌の塊といってもよい粘液は、夏場のドブ川のごとき生臭さを放っている。生理的な嫌悪感に、吐き気がこみ上げてくる。だからこそ、鳥肌の立つ思いに、マゾヒスティックな性感を見出していた。
「んちゅッ、れろッ、れろれろれろ……ッ」
「んぉッ、ぉほッ、んぢゅるぅ、ほっふふふッ、おほッ」
暴れ、引き剥がそうとすべきところを、むしろ自ら積極的に舌を絡ませあう。ぬちゅッ、ぬちゅっと、繋がった唇から淫音が響く。
道を歩けば誰もが振り返る美女の、豊富な経験に基づく巧みなる舌技だ。男は奇妙な声を漏らしながら、口腔を満たす官能に酔いしれている。
「オイオイ、ソイツばっか相手してんじゃねぇっつうの。こっちにも集中しろや馬鹿女!」
「んぅうッ!」
後ろから伸びてきた手が、乳房に食い込む。本来ならばいくらカネを積んでも触れられない美乳を鷲づかみにする。
「おっひょお、こりゃすげぇ、こんなん触ったらやめらんねぇわ」
「んふぅッ、ぢゅく、ンッ、! おっ、ふぅうッ」
もっちもっちと我が物顔で揉みしだいてくる。行為としては、前戯にあたるのだろう。だが、相手を感じさせようという意思など、欠片も感じられない。極上の手触りをただただ楽しむためだけに行われる、極めて身勝手な愛撫だった。
「んっくぅッ、ふッ、んんぅ、ふッ、んぅうう……ッ」
指は手垢や得体の知れない汚れで黒ずんでいる。なにかの脂でヌルついていて、触れられるたびにそれが肌へ塗り込められていく。はっきり言って気色悪い。だからこそ、自らの被虐趣味が満たされていく悦びに、喉の奥から甘い声を漏らす。
「おっぱい弄られてうれしいの~、ってか? ならもっとよくしてやるよ変態、ほれよがれよがれ!」
「ンッ、くっふ、んぅうッ!」
ぷっくり膨れて自己主張していた両乳首を、親指と人差し指で思い切り潰される。つねりながらグイッと引っ張られ、美乳が卑猥に形を変える。痛み混じりの、ビリビリと痺れる快感に酔いしれる。マゾ性感に、自然と腰がくねっていた。
「へへへ、マンコ、マンコッ」
「んッ、ふッ、んぅうッ!」
何人もの男の手が、奪い合うように肌を這い回る。淫花を擦り上げては、ヌッチャヌッチャと音を上げさせる。自分はこうやって嬲りものにされて感じるどうしようもないアバズレなのだと、思い知らされる。
「ンッ、く、んぅッ!」
当然、表面を擦るだけで満足するはずもない。指は膣内に侵入して、彼女の熟れた雌穴をほじくり始める。その動きは激しく、遠慮がなかった。相手への思いやりもだ。ただただ己の欲望に突き動かされるだけの、極めて独り善がりな指使いだった。
「くふぅうんッ、ぉんッ、んむッ、んぅうんッ」
グチャッ、グチャッと、沼をかき混ぜる卑猥音が響き渡る。中指と人差し指が根元まで入り込み、体内を蹂躙している。凌辱される悦びに、淫襞は快楽信号を叩きつけてくる。もっとホジってといわんばかりに、腰は前後に踊っていた。
「おっ、ンッ、ぢゅるぅうッ、くっふ、んぅうんッ」
膣口から、ぷしぷしと愛の蜜が飛び散っている。うっすらと黒ずんでいるのは、男の手垢が塗り込まれたせいだ。身体中に、浮浪者やごろつきの汚れを刷り込まれている。最低最悪のストリップダンサーにふさわしい姿へと変えられつつある。
そうやって膣で悦べば、口内にねじ込まれた舌と乳房を揉みしだく手が、浮気をするなとばかりに責め立ててくる。キスに集中すれば、こっちを見ろとばかりに乳房を揉みしだく手と膣穴をほじる指が激しく踊る。乳房に集中すれば、唇と膣穴が。どう対応しようとも官能に放り込まれる、包囲網が出来上がっていた。
男たちは自らの欲望のまま行動し、彼女をさらに追い詰めていく。無防備にも曝け出されていた、ぷっくり膨れた陰梃を、思い切りつねり上げてきた。
「んっぉおおッ――!」
やや太い、無様な声を上げて、身体をのけぞらせる。説明するまでもなく、クリトリスとは極めて敏感な器官だ。それをこんなふうにつねられては、意識が半ばトんでも仕方なかった。プシッと、濃厚な雌汁まで噴き出す始末だった。
「イヒヒっ、こっちの具合はどんなもんだよ」
それだけしておいてなおも、彼らは満足というものを知らない。際限なく求める様は、さながら餓鬼のごとしだった。
激しい官能に汗を滲ませるヒップを、小汚い指が左右に開く。むちぃ、と暴かれた肉の奥に存在するのは、薄茶色の窄まりだ。恥じ入るかのごとく、期待するかのごとく、ヒクッヒクッと蠢いている。
「はん、淫乱アナルが……――ペッ!」
唾を吐きかけられる。生暖かい不快な感覚に、括約筋はきゅんっと窄まった。
「ほれ、力抜けや、ギャハハッ!」
「ンッ、ぉ、ぉんぅッううッ」
浮浪者の指が、ぐりぐりと押しつけられる。雑菌まみれのネトついた唾液が潤滑油代わりとなって、体内にぬるりと忍び込んでくる。
アリスの性経験は、かなり退廃的だ。アナルももちろん、経験があった。むしろありすぎるくらいだ。開拓されきった肛門は、乱暴な異物挿入に性感を見出す。口交に溺れる喉から、くぐもった声が漏れる。
くぽッ、ぬぽっと、粘っこい淫音が響く。背骨からゾクゾクとこみ上げてくる肛門性感に、ゾクゾクと腰を震わせる。
「何感じてやがんだぁ? 変態がッ」
「んぅッ!」
ぴしゃりと尻肉を叩かれる。かなり本気の平手だった。じくじくと響く痛みと熱が、ゆっくりと襲い掛かってくる。マゾヒズムを満足させるには十分すぎるほどだった。
「ほれ、扱け扱け変態女、それがお望みなんだろうがよ」
「ンッ、ふッ、んふぅう」
本来なら視界に入れることすらおこがましい美女の全身を好き放題に弄びながら、彼らは満足していなかった。白い手に、強引に己らのイチモツを握らせる。
ニチャッ、と、へばり付くような不快な感触だった。ろくに入浴どころか行水もできない連中の、シモなのだ。汚れが溜まっているのは当然だった。
おぞましいモノを、自ら積極的に扱き上げる。カリ首にこびりついた恥垢が、指先に付着する。人体から生じる汚れの中でも、およそ最悪の部類だ。そんなものに触らされて、身も竦む嫌悪と興奮を覚えていた。
「おほッ、おッ、おぉおッ」
「んっくぅッ、ふゥ、んぅうっ、ンッ」
擦らせるだけでは満足しなかった。彼女の下半身――太腿や膝裏――に、男根を擦りつける輩までいる。麗しき脚部がネバつく垢にまみれていく。
「おゥッ、おおッ!」
「んんふぅ……」
つぎつぎ好き勝手に射精し、掌や下半身に濁液をぶちまけていく。下衆の精液を浴びせかけられ、性欲処理の道具にされていく。不愉快な熱量に、うっとりした吐息が漏れた。
「前半のサービスタイムは以上となります! 皆様ありがとうございました!」
「あはっ、あぁ、ぁあ……」
下衆共の慰み者にされる至福の時間は、残念ながら終わりを告げる。支配人がサービスタイムの終わりを宣言すれば、無数の手も陰茎も離れていってしまう。もはや立ってもいられないほどに乱れさせられたアリスは、男たちによってステージ上に戻される。
その全身は、当初と比較すれば見るも無惨な有様になっていた。熱烈で一人よがりなキッスによって、顔面は唾液でべとべとだ。触れられ弄ばれた肌は、手垢が刷り込まれて薄黒く汚れている。
さんざん嬲られた乳首が、ぴぃんと尖ってじんじんと甘い疼きを響かせている。秘部は今すぐ絶頂したくてしょうがないとばかりに収縮を繰り返しているし、掌や下半身は汚濁にまみれてヌルついていた。
「はぁあッ――んちゅぅっ、んちゅ」
むちゅむちゅと、スペルマにまみれた指を舐め回す。不健康な性格ゆえの、強烈なえぐみが舌を刺す。たまらなかった。
「では、これよりサプライズショーを開催致します!」
「……えっ?」
サプライズショー。そういう風に呼ばれるものは、ふつうキャストの間では打ち合わせが済んでいるものだ。ところがアリスは、何も聞かされていなかった。一方で客は、知っていましたよといわんばかりの顔を浮かべている。
客を驚かせるための企画ではないのだ。アリスに対する、悪意にまみれたサプライズが、今から行われる。
「あ、ちょっと……?」
黒子がステージに上がる。ピロリーをくみ上げ、アリスを四つん這いで拘束した。首と両手を板で固定され、身動きが取れない。さながら、ギロチン台に晒された罪人のような姿勢になる。
男たちから、ギラついた目が向けられている。今、どんなひどいことをされたとしても、全く抵抗できない。何をされるのか――していただけるのか、期待に胸が高鳴った。
「では……スペシャルゲストの入場です!」
「……えっ?」
視線を向ける。現れたものが、信じられなかった。
桃肌色の体毛と特徴的な鼻を持ち、胴体のずんぐりした、四つ足の生物。豚だ。ふごッ、ふごッと鼻を鳴らしながら、こちらをじっと見つめていた。ただの畜生の目つきではなかった。よりギラついており、家畜のくせに野性を感じさせる。
「ぎゃはは、あの女、間抜けなツラしてやがるぜぇ」
「喜べよ変態女! 今日からソイツがてめぇのダンナになるんだからよぉ!」
飛ばされた野次で、ようやく状況を理解する。自分とこの獣がまぐわう様を見て、楽しむつもりなのだ。あからさまに異常なプレイを止めさせようとする者など、誰一人としていなかった。
己の変態性欲を自覚して以来、いろいろな男とのアバンチュールに酔いしれてきた。人妖問わず、身分を問わずだ。とはいえ、まったく別種の生物とセックス――否、交尾した経験など、当然ながらなかった。
「っひ、あはッ、は」
嫌だし、恐ろしい。歯の根が噛み合わず、カチカチと鳴る。にもかかわらず、口端は笑みを形作っていた。瞳の奥には、明確な期待が浮かんでいた。
黒子に引き連れられた豚が、お立ち台の中央で拘束された彼女の周りを、ぐるりと一周する。アリス・マーガトロイドが今から何とつがいになるか、観客たちに見せつけているのだ。
獣臭が、うっすらと鼻孔に漂う。本能的に忌避する、蛋白質ベースの臭気だ。鼻孔がヒクつく。
けれども、彼女の意識は、そんなところにはなかった。群青の瞳が追いかけていたのは、悠然と歩く豚の、股間だ。
種族が違うのだから、男根の形も違う。頭では理解できる。とはいえ、コルク抜きのようにぐるぐるとねじれたソレには、仰天せざるを得なかった。
あの形状は、女の膣を抉って穿ち、少しでも奥に到達するのを目的としている。豊富な性経験ゆえに、一目見て構造と意義を理解する。穿たれたらどうなるだろうと、想像せずにはいられない。
何より圧倒的なのは、陰嚢のサイズだ。軽く一抱えほどもある。ラグビーボールを連想させた。
あの中身全てが体内に注がれたとしたら、いったいどうなってしまうだろう。思い描くだに素晴らしく、甘美な溜息を漏らしてしまうほどだ。
「あはぁ……来て、そのすっごいおちんちんハメハメして、私のことお嫁さんにしてぇ」
頸部と手首をピロリーで拘束され、自由がきかないながらも、くねっくねっと腰をくねらせて彼を誘惑する。雌臭い汁を、ぬらぬらと股穴から滴らせながらだ。
目の前の存在が、交尾希望の発情雌であると気付いたらしい。豚はフゴッと鳴くと、こちらをじっと見つめる。黒くつぶらな瞳の奥には、文字通りの獣欲がギラついていた。
「へへ、お嫁さんにしてだとよ! メルヘンな言い回しだねぇ」
「相手は豚畜生だけどな。そんなもん相手に嫁入り願うとか、幻想郷でもぶっちぎりに頭がイかれてやがるぜ」
周囲の野次は、半ば耳に届いていなかった。未知の快楽を提供してくれうる、最低最悪の相手に媚び、望みを叶えてもらうことばかりが頭にあった。
「ふごッ」
「あぁっ、そんな……」
十秒ほど見つめ合い、不意に彼がぷいとそっぽを向く。フラれたのだと思い、眉尻を垂れ下げて嘆息する。だがそれは、アリスの早とちりだった。
豚はノソノソと歩き、彼女の股座に顔を埋める。そのまま、トリュフを探るかのごとく、剥き出しの股穴に舌を這わせ始めた。
「アッ、ひ、ッ!? おッ、はッ、んぅううッ」
まさかのクンニリングスだ。獣畜生が、性愛のテクニックを知っているとは思っていなかった。流石に度肝を抜かれ、身体を跳ねさせる。
「あっ、あっ、イイッ、ひぃ、もっと、感じさせてぇッ」
くっちゃくっちゃと、豚は音を立ててアリスの股間にしゃぶりつく。獣臭い唾液を、淫裂にまぶしていく。女としてもっとも大切な部位が獣の体液に塗れるのを感じながら、彼女は情熱的な声とともに更なる舌技を望む。
といっても、豚はなにも、アリスを感じさせようと狙っているわけではなかった。彼らがセックスするのは快楽のためではないし、嗜虐や被虐の味わいを知っているわけもない。すなわち、前戯という概念自体をもたないのだから。
これは、一種のテストだった。生物として子孫を残すためには、相手となる母体の健康具合は非常に重要だ。なにせ子種は貴重だし、何発も続けて交尾できるわけではないのだから。
だから、目の前の卑猥雌が、貴重な子種を恵んでやるに足るかを事前にチェックしておく必要がある。丈夫な子を成せる子宮をもっているか、発情汁の味と匂いから調べているのだ。
「あっ! はッ、あぁんッ、あんッ、あぁッ!」
「へへ、見ろよアイツ、豚にマンコ舐められてよがってやがる」
「お似合いだぜェ豚女! 一生よろしくやってろや!」
とはいえ、快楽に酔いしれるアリスが、そんな裏事情まで推し量れるわけもない。ただ股穴を異種の涎にまみれさせ、ただよがるばかりだ。ホール内に、男たちの嘲笑が響く。向けられている当人からすれば、興奮を盛り上げるBGMだった。
「んひぃッ!」
もっとほじってほしいと、腰をゆらめかす。そのせいで舐めづらくなったのが気に入らなかったらしい。ぶふッと息を漏らし、彼は鼻筋を持ち上げる。鼻先が肉穴をグリッと擦り上げ、ソリッドな性感に高い声を漏らす。
「あはッ、あっ、ッぅぐッ」
多少のハプニングこそあれど、アリスの淫猥穴は、彼のお眼鏡にかなったらしい。後ろから、豚がのしかかってくる。繁殖豚の体重は軽く百数十キロほどにもなる。ものすごい圧迫感に、詰まった声が漏れた。
ぶふぅんと、生臭い吐息が後ろから浴びせかけられる。家畜の、発情した吐息だ。
「あはっ、来て、はやくきて、旦那様ぁん」
自分くらい簡単に突き飛ばせるくらいの獣が、欲情して襲いかかってきている。生命の危機を感じてしかるべきシチュエーションで、アリスは、熱い溜息を漏らしていた。
はっきり言って恐ろしい。当たり前だ。今から行われるのは、獣畜生による、一方的で支配的な交尾だ。まさしく最低最悪、人生を終わらせる、破滅的なセックスが行われようとしている。しかも、何十人もの下衆が、その証人となってくれるのだ。己が望んでいたものを、想像以上の形で叶えてくれた支配人に、心から感謝すらしていた。
「んはッ、あっ、アッ、アッ」
豚が腰を突き出す。とぐろを巻いた蛇のごとき形状の肉棒は、膣口をつるりと滑った。挿入されたわけでもないのに、圧倒的な存在感に押し潰されてしまいそうだ。はっはっと、発情した獣の声が喉の奥から漏れる。はやくも、お似合いの畜生夫婦となりつつあった。
「アッ、ぉッ、あ――ッ、ぉッ、ほぉおおおおおッ!」
三度目の正直で、ペニスが体内に入り込む。ぢゅるぶッ、と、普通とは少し異なる挿入音が鳴る。肉と肉が打ち付けられあい、ばすんッと鈍い音を立てた。
あがった声は、麗しき人形遣いとして知られるアリス・マーガトロイドだとは、とうてい思えないものだった。無様でみっともなく、尊厳をかなぐり捨てたかのごとき下品声だ。だからこそ、今の彼女には、お誂え向きとすらいえた。
「ひッ、っぁ! おッ、ひぃッ、あぉッ、おふッ、あひッ、いいぃッ!」
獣は睦み事を交わしたり、優越感に酔いしれたりしない。ただただ本能の命じるまま、膣襞で肉棒を扱きあげ、一定量の刺激をもって子種を吐き出すだけだ。相手の状態を慮る必然性すら存在しない。
ストロークには、なんの遠慮も、容赦もなかった。人妖のソレとは全く異なる、ねじくれた獣魔羅が、体内をほじくり倒してくる。掻き出された淫蜜が、ぢゅくッぢゅくっとネトつく音をたてて、あたりにまき散らされていく。
「アッ、はッ、あぁッ! いいッ、いいッ、豚チンポいいーっ」
「ぎゃはは、豚とヤッてよがってやがるぜ、あの女」
「マジでどうしようもねぇな。よくあんなキチガイっぷりで今まで生きてこれたよなぁ!」
「本当にな。俺なら恥ずかしくて外なんて出歩けねぇよ」
渦を巻く形状は、膣襞を蹂躙するのにぴったりだった。ごりゅごりゅと、体内から音が聞こえるたび、狂った嬌声をあげて悶える。観客の言葉を理解する余裕すらなかった。なかったが、何か自分を罵ってくれているのだけは分かる。嬉しさに、腰が跳ね回る。
「おッ、ぉあッ、おひッ! おぉおッ、あぉッ!」
どすんどすんと、後ろから激しくピストンされる。そのたび、尻肉が打ち付けられ、むにゅんむにゅんと形を変える。肉襞の裏側にまで、獣臭が刷り込まれていく。あらゆる男が鼻をつまんで忌避する、穢らわしき穴へと造り替えられていく。
骨盤に、ひいては全身にまで響いてくるストロークだった。当たり前の話だ。相手は百数十キロほどの獣だ。人間とは筋力が違う。その膂力を、全てセックスのために使っているのだ。
ピロリーで固定されていてよかった。アリスが逃げないようにする目的だったのだろうが、結果的に、激しいピストンを受け止めるのに役立っていた。超重量級の抽送で子宮をサンドバックにされ、悦びにただただ酔いしれる。
「おッ、ひッ、おッ、ぉんッ、あぉッ、あぉッ、あぁあッ!」
とはいえアリスにも、今まで数え切れない雄と交わってきた一種の矜持がある。くねっくねっと腰を躍らせ、お互いに快楽を貪っていく。
ペニスへの未知の快感に、豚もふごっふごっと荒い吐息を漏らす。同族の雌相手では決してあり得ない事態に驚いてこそいるらしいが、むしろ好ましく受け止めているらしかった。その証拠に、ストロークはいっそう激しく、勢いを増しつつある。
「んひぃッ、ぶひぃッ、ぶひぃッ、ぶうっ、ぶぅ!」
「あーあー見ろよ、ぶうぶう鳴きやがって、みっともねぇの」
「身も心も豚になりましたって感じか? マジでイカれてやがるぜ!」
男たちの嘲笑は、あながち的外れでもない。逞しき獣のペニスをねじ込まれ、彼女は心の底からイチモツに屈服していた。子種を搾り取る腰使いとともに、きゅんッ、きゅんッと肉穴を締め付ける。
身も心も豚に成り下がり、畜生の嫁として、雌穴を捧げる。そこにいるのは、もはやアリス・マーガトロイドではなかった。繁殖交尾にぶひぶひと悦ぶ、ただの発情雌豚だ。
そうやって雌豚となったから、分かることがある。ペニスの熱・硬さ・膨らみ・ピストンのペース……あらゆる要素が伝えてくる。射精が近かった。
ふぎぃいッ! と、豚が高くいななく。腰が力強く突き出される。遺伝子をたどれば猪だったという事実にも納得がいく、もはや突進にも等しい一撃だった。ピロリーで固定されていなければ、客席まで吹っ飛ばされていただろう。
「おひッ、ぶひいぃいッ、ぉッ、おおぉおおおおおん――……ッ!」
ねじくれたペニスの先端が、子宮口を勢いよくノックする。と同時に、強烈な射精が始まった。
豚の射精の規模は、人妖とは比較にもならない。まず、睾丸が大きい。ラグビーボールほどもあり、容積でいえば五〇〇ミリリットルほどにも達する。当然、その中にぎっちり詰まったスペルマは、余すところなくアリスの子宮へと注がれていくこととなる。どぼどぼと、腹の奥にマグマが注がれていく。
子宮の容積など、たかが知れている。なんの遠慮もなしに注ぎ込まれる夥しい量のスペルマを納めきるには、到底足りない。濁液は、卵巣、卵管までをも埋め尽くしていく。膨れ上がった子宮のせいで、腹部がぼっこりと盛り上がる。
「あぉッ、アオッ、ぉひッ、ぶひッ、ぅぐぅううッ」
脳味噌に火がついて燃え上がるかのごとき快感を叩きつけられている。半ば白目を剥きながら、獣姦のエクスタシーに酔いしれる。理性もなにもかもかなぐり捨て、生物としての根源的欲求――生殖――へ溺れる法悦は、圧倒的だった。今まで味わったことのないオーガズムに、豚とセイウチの合いの子のような声をあげるばかりだった。
端的にいって大満足だ。が、まだ射精は終わらない腹の奥に注ぎ込まれていくものの質が、次第に変わり始める。粘性を増し、ずっしりと重たくなっていく。
濃厚な精液を喩えて、「ゲル状の」とか「まるでスライムのような」と表現する。今注がれているものは、比喩でもなんでもなくゲルだった。
ゼリーほどの硬度の半固形物が、ぶりゅぶりゅと吐き出されていく。子宮口あたりに蓋をして、なお飽き足らず膣内までも埋めていく。
「ッは、っかはッ、っひッ、くはぁッ」
精液の逆流を許さず、雌を絶対に妊娠に至らしめるための、豚特有の生態だった。押し広げられた子袋は、指でつんと突けば破裂してしまいそうだ。未知の圧迫感に、はくはくと口を開閉する。脂汗がたらりと垂れてていた。
「んぶひぃいっ……」
――こんな風にされたら、異種とはいえ、妊娠は確実だ。
そう悟った瞬間、彼に心から屈服した。漏れた鳴き声は、己に子を授けてくださった、旦那様への愛の睦み事だった。
そうやって、どれほど時間が経ったろう。ようやく豚は射精を終え、アリスも空前絶後のアクメから降りてくる。いや、降りてきたというのは語弊がある。ぼっこりと、美少女の腹を妊婦のごとく膨らませるスペルマが、彼女を快楽の余韻から醒まさせない。
おびただしい精子が、腹の中で泳ぎ回っているのだ。一匹一匹の鞭毛の動きすら感じられそうなのに、どうして冷静になれるだろうか。
豚のペニスが引抜かれる。腹部が変形するほどの精液を詰め込まれているのだから、少しくらい逆流してもおかしくなさそうなものだ。実際には、精子の一匹たりとも漏れてはこなかった。最後に注ぎ込まれた半固形の濃厚精液は、強固な蓋として子宮口をロックしていた。
いつかはこの蓋も緩んで、溜めた白濁も全て流れ出ていくだろう。しかしその頃には、体内はすっかり豚の精子の匂いが染みついているに違いない。誰からも石を投げられる、最低最悪のヴァギナの完成だ。
まさしく、人生終了と称するに相応しい事態だった。思わず、うっとりとしてしまう。だが、惚ける時間は、一秒とて与えられなかった。
豚が黒子に連れられてステージを後にする。一人の女の膣穴をグズグズにしておきながら、彼はアリスを省みることもなかった。種さえ植え付けられればいいのであって、あとの面倒をみるのは雌の仕事だ、とでも言わんばかりだった。旦那様だの何だのと勝手に盛り上がっていたアリスとは、たいへんな温度差である。
「皆様、お楽しみいただけましたか? 底辺下品娼婦アリス・マーガトロイドのサプライズ獣姦ショーでした! ……では、後半のサービスタイムを開始します!」
「……えっ」
支配人が高らかに宣言する。これもまた、聞かされていなかった。ほとんど動かせない首をどうにか動かし、支配人に視線をやる。ニタニタと、底意地の悪い笑みを向けてきていた。
「へへへ、待ってたぜぇ、まぁ、豚とヤッてヨガッてた女なんか正直触りたくもねぇけど」
「ボッコボコに嬲り回して楽しむくらいはできるよなぁ? 覚悟しろよぉ?」
今度は、男たちのほうからアリスへ近づいてくる番だった。ステージ上に、群衆が上る。ピロリーへ固定され、身動きの取れぬ彼女へ、男たちは次々と群がってくる。
「あぁ、あぁ、せめて休ませて……っ」
今、彼らを相手するなんて、絶対に無理だ。壊れてしまってもおかしくない。許しを請う言葉が、思わず口を突く。それに対し、心中では、絶望からくる悦びが渦巻いていた。
「ぎゃはは、あんなモンとまでセックスするとか、終わってんなぁお前!」
「ほれ、お望み通りマンコで遊んでやるよ、せいぜい喘げや雌豚!」
「ひッ――アッ、あぁああッ!?」
体内に、異物がねじ込まれる。全体に瘤があしらわれた、野太い上級者向けのバイブが、容赦なく挿入された。
「アッ、アッ、ぉんッ、はぁッ、アッ、あぁぁんッ」
獣ペニスにさんざん穿たれ、甘く疼き続ける肉穴が、ゴリゴリと抉られていく。最愛の夫のモノを忘れさせようとするかのごとく、ほじくり倒してくる。
気持ちよければなんだっていいヴァギナは、悦びの声を上げ、ぷしぷしと雌汁をほとばしらせる。何本もの男根を咥え込んできた浮気性の淫猥洞窟なのだ。不貞行為などお手の物だった。
「あっはッ、あひ、ひぃッ、いぃッ」
ぐちゅぐちゅと、体内が掻き回されていく。快感に、甘ったるい声を漏らしている。
拘束されて、獣風情と肉体関係を結ばされて、その上でさらに弄ばれる。素敵な時間だった。が、悪辣なる男たちは、まだ満足していない。
「おいおい、こんなもんでヒンヒン言ってんじゃねぇよ。まだ終わりじゃねぇぜ、おらッ」
「あがぁああッ!」
あろうことか、肉穴に、玩具がもう一本ねじ込まれる。いっぱいいっぱいだった雌穴は、限界ギリギリだ。ギチギチと、膣肉が嫌な音を立てているのが分かる。
「っひッ、ひぃ、ひぃ、ぉッ、あ、ぅう」
圧迫感に、目を見開く。今にも引き裂けてしまいそうだった。
「おら、お望み通り終わらせてやるよ雌豚がよぉ!」
「あぁああああッ!」
二本のバイブが、勢いよく抜き差しされる。メリメリと音を立てながら、ヴァギナが押し広げられていく。まともな性交では決して満足することのできない、ユル穴へと造り替えられていく。
「っひぃッ! ぃぎッ、あぉッ、あがッ」
「うるせぇ口だなあ、塞ぐとすっかあ?」
「ひッ、あ――っは」
眼前に、男根が晒し出される。身を清めることすらままならぬ生活の中で、汚れがたっぷりと纏わり付いたペニスが。
亀頭は赤黒く、カリ首から肉竿にかけて、白い垢がこびりついている。アンモニアと蛋白質の臭気がまき散らされ、鼻腔をざくざくと刺してくる。
「うっ、ぐッ、ぉえッ、っ」
「ぎゃはは、そうだろ、くっせぇだろ、今からたっぷり味わわせてやっから、覚悟しろや」
鼻先に、裏筋が突きつけられる。激臭が目を刺してくる。涙すら浮かんでくる。
横隔膜がせり上がり、えずく。雑菌まみれの汚物を前に、これは危険だぞと肉体が知らせてくれている。えげつない色合いは、病気すらもっているかもしれないと予感させる。
だからこそ、欲しくてたまらなかった。ぐえ、うぇっとえずきながらも、口腔を開いて待ち受ける。男はニタリと、凶悪な表情を浮かべた。
「んぶぅうっ、ぉごうッ! ぐッ、んぐぅッ、ごッ、ぐぇえッ……!」
腰が突き出され、口内にペニスがねじ込まれる。口内どころではない。喉奥にまで侵入してくる。汚れでゴワつく陰毛の茂みに、鼻先まで埋もれる。強烈な臭気に、涙が零れ落ちて止まらない。催涙スプレーでも食らった気分だ。
容赦なく、腰を突き出してくる。ゴリゴリと喉粘膜がほじくられ、肉棒でもって刻印を施されていく。
悪臭だけでなく、味もひどかった。
この世のむかつくもの・悪いもの・えげつないものを大鍋で三日三晩煮込んだかのようだ。
百回口をゆすいで、千回歯を磨いても、消えないだろう。お気に入りの紅茶だって、ろくに楽しめなくなった。嬉しさのあまり、ちゅうちゅうと吸い付いてしまう。口内では舌が猛烈に蠢き、ヌルヌルと竿全体を舐め回す。
「うおッ、アッやべッ、おッ、ちょい待て待て、おッ、おッ、出る、ぅっひょおお~ッ……!」
彼らのほとんどは、貧民窟で食うや食わずの生活を送る浮浪者だ。女を買う余裕などあるわけもない。そんな輩が、極上の美女による熱烈かつ巧みな口淫奉仕を受けたら、どうなるか。早漏射精をキメるに決まっていた。
黒ずんだ陰嚢が萎み上がり、鈴口から劣等精子がどくどくと注ぎ込まれていく。喉を鳴らして、全て嚥下していく。イガイガと喉を刺しまくる、最低最悪の味だ。
その間も、舌の動きは止まらない。一匹でも多く精虫を啜り取るべく、ヌルヌルと舐め回していた。男は裏返った奇妙な声をあげ、ガクガクと腰を震わせる。男根の痙攣が収まるころには、すっかり放心していた。
「おら、次は俺の番だぜぇ」
「あっは、えぁ――ぉむうぅうゥ」
一度、口内射精を受け止めて終わりではなかった。吐精を終えた男を押しのけ、別の輩が口内に魔羅をねじ入れてくる。やはり、おぞましく汚れきったイチモツを。
性処理玩具としての扱いは、彼女をさらに昂ぶらせる。ヌルヌルと踊り狂う舌の動きは、いっそう激しくなっていく。
「おいこら、何チンポしゃぶりに夢中になってんだ、マンコに集中しろや雌豚ァ!」
「んッぐぅうッ!」
ぴしゃぁんと音を立てて、柔らかなヒップに平手が打ち込まれる。紅葉の痕が残るほどの、強烈なスパンキングだ。さらに、二本のバイブが激しく抜き差しされる。お前の膣穴が壊れようと知ったこっちゃないと言わんばかりのストロークだった。
そんな風にされたら、もう堪えられない。括約筋が緩まり、膀胱の中身が尿道口から吐き出されていく。
しゃぁああ……と、黄金水が滴っていく。豚のスペルマがいくぶん混ざった、牝臭と雄臭をぷんぷんまとった黄金水が。
「うわくっせぇ、コイツ漏らしやがったぜ!」
「おいおい、何やってやがんだ雌豚ァ、ステージ汚してんじゃねぇぞ!」
「いまどき三歳児でもお漏らしなんかしねぇっつうの! 反省しろ反省」
「んぐぅッ、んぶッ、んぢゅぅうう」
謝れ、反省しろとばかりに、喉奥へペニスが突き入れられていく。ヴァギナがほじくり返され、尻肉へ平手が打ち込まれていく。
求められるまま、謝罪の言葉を述べる。正確には、述べようとした。もごもごと、くぐもった声に変換されるばかりだ。
「あ? なんだってぇ? ごめんなさいも言えねぇのか豚がよぉ」
「反省の色ってもんが見えやしねぇよなぁ、エッ!?」
口が塞がっているのだから、言えるわけがない。が、連中にそんな道理が通じるはずもなかった。結局のところ、あの手この手で難癖をつけて、アリス・マーガトロイドを辱めたいだけなのだから。
「しょうがねぇなぁ、カラダに反省ってもんを覚え込ませてやるッ」
「んぐぅうッ、ぉうゥッ、んぅううッ」
ズコズコと、バイブが抜き差しされていく。ヴァギナが拡張され、誰も喜ばないユル穴へと造り替えられていく感覚に、腰を振り立てる。
アヌスに、指が押し当てられる。土くれや得体の知れない汚れで黒ずんだ指が、体内に入り込んでくる。ぬぽッぐぽっと直腸を掻き回し、背徳の官能を押しつけてくる。到底抗えず、肉穴から雌汁をまき散らす。
単に肛門をほじくるだけでは終わらなかった。最初は人差し指一本だったのが、中指も追加される。中指だけではない。薬指、小指――どんどん、指が増えていく。
「ッ、ぐ、ぅッ、ぉッ、んぐッ」
尻穴が押し広げられる感覚に、次第に声から余裕がなくなっていく。それでもなお、男たちは止まらず、とうとう拳がねじ込まれた。
「んごぉおおおおッ!」
まさしく豚のごとき声を上げて、腰を跳ねさせる。ミチミチと、肛門が悲鳴をあげている。限界一杯まで拡張した括約筋から、無理なストレッチをしているとき特有の痛みが伝わる。
「ぎゃはは、ホレホレ、反省しろよぉ豚ァ!」
「へへ、いいぞ、もっとやってやれ!」
「こういうお高くとまったオンナってのには、自分の分際ってモンを教えてやらねぇといけねぇからなぁ!」
えげつないアナルフィスト行為をしてなお、男は容赦をしなかった。アリス・マーガトロイドの尻穴を破壊してやるとばかりに、ねじ入れた拳を抜き差ししていく。周囲の男も、止めるどころか、やんややんやと囃し立てる始末だった。
「んぐぅううッ、あぐッ、ぅうううッ」
二度とまともに、排泄できない身体にされている。恐怖と表裏一体の恍惚に、もっともっとと腰をくねらせる。痛みに脂汗を浮かべながらも、喉奥から嬌声を漏らしている。
「アッ、コイツまた漏らしやがった」
「学ばねぇ奴だな、まったくよぉ!」
ぷしッぷしッと、官能汁を吹きながら、尿も垂れ流しだ。まるで、下半身の栓という栓が破壊されたかのようだった。
「へっ、そんなに小便が好きかァ?」
「そんなに好きなら、ほぉれ、ぶっかけてやるよ」
「んはッ。あっ、あッ、あぁあああああ――ッ」
口腔から肉竿が、菊穴から腕が引抜かれる。が、それは虐待の終わりを意味していなかった。
男たちが、ペニスを突き出す。勢いよく、黄金水を放ち始める。男たちや豚に汚されながらもなお、白く美しいアリスの肌に、べしゃべしゃと浴びせかけていく。
「アハッ、あぁっ、あぁッ、んくッ、あぇ、んぐぅう」
おぞましい生暖かさにまみれながら、アリス自身も放尿していた。男性用の小便器にされる悦びで、全身の筋肉という筋肉が弛緩する。だらしなく開かれた口も、小便プールにされていく。
恍惚に瞳を閉じ喉を鳴らして汚物を嚥下する。普段、人里で人形劇をする様とは、まったく結びつかない。無様でどうしようもない、最低最悪のオンナがそこにいた。
「かひっ、あひっ、あはぁ、あへ、っ、えへっ、えへへぇ……」
終わった。何もかも終わった。
全身汚物にまみれ、穴という穴は緩みきり、貧民窟の底辺の輩にも見下される。
これぞ、人生終了変態ショーだった。
支配人に感謝していた。一人の女をこれほどまでに貶められる手腕には、脱帽するしかない。
「へへ、なんだ? イかれたら許してもらえるとでも思ったか?まだ時間は残ってんだ。まだまだ嬲りモンにしてやるから、覚悟するんだなぁ」
ぎゃははと、哄笑が場に満ちる。男たちが群がってくる。狂おしさに曖昧な笑みを零しながら、理性は蕩けていった。
***
「……あは」
気付けば、楽屋に転がされていた。どのタイミングで気絶したのか覚えていないが――覚えていられないほど激しい凌辱だった――、ショーは終わったらしい。
気を失った演者を運んでやるくらいの配慮は、あの支配人にもあったのだろう。後片付けに邪魔だから放り込んだだけかもしれないが。
むくりと、身体を起こす。汚れを清める親切心までは、持ち合わせていなかったらしい。全身、汚れにまみれたままだった。浴びせかけられた尿やスペルマが渇き、がびがびになっている。口の中には不快な苦味が残っているし、胃袋はたぷたぷだ。
自慢だった金髪も、乾いた白濁が絡みついたせいで、ゴワつき傷んで台無しだ。下腹は相変わらず、孕んだかのごとく膨れ上がっている――豚の精液がまだ残っているのだ。拳でほじくりまくられた肛門は、ヒリつきながら甘く疼いていた。
「あ、は」
なんて惨めなんだろう。このままの姿で、家まで帰れとでもいうのだろうか。思わず、股座に手が伸びる。情けなさをオカズに、自涜に及ぼうとする。
「邪魔するわよ」
突如として、楽屋の扉が開かれる。反射的に、居住まいを正す。もっとも、本人の姿があまりにも無様ゆえ、あまり意味はなかったが。
ぞろぞろと、見知らぬ女たちが入ってくる。誰も彼も、おどろくほど醜かった。
痘痕だらけだったり、鼻が無かったり、反対にやたら大きかったり、唇がドス黒かったり、歯が口から飛び出していたり――。
道を歩けば、石を投げられてもおかしくない。アリスを見てからだと、目が潰れてしまいそうなほどだ。
「えっと、あの、貴方たちは一体……?」
女たちは何も言わず、アリスを取り囲む。腕や脚を掴み、手枷足枷で拘束する。先ほどまで、己の自由を売り飛ばすショーに出演していたせいで、抵抗するという発想が浮かばなかった。
「アンタさぁ、何様なわけ?」
「え、えっと?」
女の一人が口を開く。喉が潰れているのか、ひどく嗄れており、聞き取りづらかった。
「そんなお上品な顔とカラダなら、もっとマシな店で働けるでしょうが。なのにこんなとこ来てさあ。観客の目が肥えるでしょ。アタシらが客とれなくなったらどうしてくれんの?」
「そーそー。馬鹿にしてんのかってカンジ」
「ナメてんのかって話よね。思い上がってんじゃないわよ」
憎しみすら籠もった視線で、こちらを見つめてくる。なるほど、彼女らはこの見世物小屋で働くキャストなのだ。他の店ではとうてい働けない見た目をしているのは、ここが貧民窟の見世物小屋だからだろう。
醜さゆえに追いやられ、最底辺の店でしか働けなかったのが彼女らだ。まともに生きていけるのに、そうしないアリスの存在は、到底許しがたかったに違いない。だから、思い知らせてやろうというのだ。
「待って、私は貴方たちを馬鹿にするつもりは――」
「つもりがあろうとなかろうと、行動がそうだっつってんの。まあ安心しなよ。アンタの望み通りに、アンタを終わらせてやるからさァ」
言うと、女たちはアリスを担ぎ上げ、店の外にまで運ぶ。貧民窟にも大通りや裏通りが存在する。その裏のほうの、さらに奥へと進んでいく。
腐臭やカビの臭気が鼻を刺す。さんざん尿やなにやらを浴びせられ、嗅覚が麻痺したアリスですらそうなのだ。実際には、よほど酷いのだろう。
やがて辿り着いたのは、路地裏のどん詰まりだ。うずたかく積まれたゴミ袋の山へ、乱暴に放り投げられる。内容物が潰れて、ぐじゅりと嫌な音が鳴る。何が詰められていたのか、気色の悪い柔らかさを背中に感じた。
「ここさぁ。ウチで使ってるゴミ捨て場なんだけど。食うのに困った連中が、しょっちゅう漁りに来てんのよね」
「貧民窟ですらやってけない、ホントに底辺の連中よ。当然、オンナなんて抱けやしない。そんな奴らがアンタみたいなのを見つけたら、どう思うでしょうね? アハハ!」
ケラケラと、悪意の籠もった哄笑が響く。対するアリスは、喉を引きつらせる。あの見世物小屋での行為は、なんだかんだいってショーという体裁をとっている以上、一定の『越えてはならないライン』があった。最低最悪、人生終了と銘打っていても、セーフティはあったのだ。
「せいぜい可愛がってもらいなよ、穴って穴が擦り切れるまでね」
野良での行為となれば、そんなものはない。文字通り、終わらされるのだろう。彼女らも、分かっていたからこそアリスを連れてきたのだ。
「そんな、ゆる、許して……」
恐怖から、思わず許しを請う。しかし、一部の人間は、下手に出れば出るほど調子に乗るものだ。彼女らがまさにそれだった。あの支配人によく似た、底意地の悪い笑みをニタリと浮かべた。
「なら、そうね。ショーで見てたわよ? 豚とヤるとか、気色悪。その腹、まだ豚の精液詰まってんでしょ? ……ひり出してみなさいよ、私らの見てる前で」
「は……っ」
「できなきゃ、アンタ一人ほっといて店に戻るだけだけど。その後アンタがどうなるかは、知ーらない」
「わかった、やります、やらせていただきますから……ッ」
言われるまま、腹膜に力を込める。とはいえ、簡単なことではない。ぱんぱんに膨れた子宮を堰き止めるゲル状の物体は強固で、なかなか崩れない。緩みきった肉穴と肛門が、しきりにヒクついていた。顔を歪めながら、必死になっていきむ。
「何チンタラしてんの。出すならさっさと出しな」
「あーあー無様だこと。脂汗まで浮かべてさぁ」
顔を歪めていきむ様を、女たちはケラケラと嘲笑う。どんな男も振り返る美女の無様な姿が、面白くて仕方ないのだ。
「アッ……あッ、あっはぁあああッ」
気張ること数分。不意に、ぶちゅっと体内で音が聞こえた。子宮口を塞ぐ栓が崩れた音だ。必然、出口を求めていたスペルマは、唯一の穴へと殺到する。
腰が浮く。剥き出しの膣口から、獣臭い精子がぶびゅるると音を立てて噴き出す。さながら噴水だ。下品すぎて、一発で取り壊しを命じられる噴水だった。
「あはぁッ、あっあっ、あぁああ」
「うわ、マジで出してる。キモ」
「動物とヤるってだけでも頭おかしいけど、あれはないわ。ヒくわぁ。頭の中身どうなってんだか」
「しかもアレ、感じてね? ドン引きなんですけどー」
ゴミにうもれながら、びゅくびゅくとスペルマを噴き出す。これもまた、最低最悪の経験だった。状況を忘れ、見下した視線にすら快感を見出してしまう。
「っひ、はっ、あっ、は、あぁ……ッ」
「はいお疲れ様。面白くもないし気色悪い見世物だったわ。それじゃ」
「え、ちょっと、助けてくれるんじゃ」
「は? 耳クソ詰まってんの? 許すかどうかって話であって、助けてやるとは言ってませんけどぉ?」
「ま、待って……」
無慈悲な視線が浴びせられる。女たちはアリスに背中を向け、路地裏を出ていく。一人素っ裸で残されたアリスは、どうにか逃げだそうともがく。ゴミ袋がガサガサと音を立て、人を惹きつける。
絶望と同時に、感動を覚えていた。誰かに見つかれば、いったいどうなってしまうのか。見つかるわけにいかないと思いながらも、そうなりたいと願う自分がいる。
「お――なんだなんだ? おいお前ら、来てみろよ、裸の女がいるぜェ!」
「お前、見え見えの嘘ついてんじゃねぇよ……おッ、マジじゃねぇか、お姉ちゃん、こんなとこで何してんのォ~」
「うわくっせぇオンナだな。まぁ、見た目はすげぇいいし、マンコ使うだけなら気にもならねぇか」
「あっ、あっあっあっ……」
ほどなくして、浮浪者たちが集まってくる。彼女の意思など無視して、次々に群がってくる。
助けてなどくれないだろうし、家に帰らせてももらえないだろう。一体、これから、自分はどうなってしまうのか。恐怖と期待を覚えながら、彼女は浮浪者たちに身を委ねた。