※この作品はR-18です。

「大和の愛から逃げ続けたらどうなるのか?」   作:なおちー

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『愛』に疑問を感じる。

「ママとパパが最近は仲良しさんなの」

 

提督と大和の間に生まれた娘だ。

 

「ふたりは夫婦なの。ふたりが仲良しさんだと、大和もうれしいの」

 

今日は家族三人で近所の公園に遊びに来ていた。

娘が砂場遊びに疲れたと言うので、提督が近所のコンビニで

娘の好きなスイカバーを買ってきた。

 

ベンチに親子で座る。娘は足を前後にゆすり、

ニコニコしながらアイスを舐めている。

 

曇り空。空気はジトっとしているが、

多少の風があるのでそこまで暑くは感じない。今日の降水確率は

関東地方では低い。西日本では台風が発生しているらしいが、

神奈川県まで達するのは早くても翌日以降だろう。

 

 

今日は大和が提督と一緒にいられる休日だった。

提督は重婚しているため、妻たちの独占欲と嫉妬を抑えるために

彼女らと日替わりで過ごす決まりとなっていた。

ちなみに、この案を考えたのは由良だった。

 

娘はアイスを食べた後はまた元気になり、ブランコに乗って遊んだ。

最初は提督が後ろからブランコを押してあげたが、すぐに娘が

飽きてしまって、こんどはジャングルジムに昇り始めた。

 

どうもこの娘は落ち着きがないというか、飽きっぽい性格のようで

ひとつの人形を買い与えても三日もすれば買ってもらったことを

忘れてしまい、また新しいオモチャをねだるようになる。

 

 

提督は再びベンチに戻ってくる。隣にいる大和が提督の腕を抱く。

 

 

「あなた、愛しているわ」

 

「ああ、俺もだよ」

 

 

大和は以前よりも口数が減った。

こうしてじっと提督の温もりを感じてそれで何もかも

満足している。今日もふたりはお揃いのガーゼマスクだ。

 

提督は夏場に合う帽子やニットが中々見つからず、

頭には包帯を巻くことにした。包帯は人目を引くが、

提督はこの時期になると気にしなくなった。

 

 

実は大和には不満があった。

 

重婚のことではない。今では提督を奪い合うこともないし

平和的な解決になったと思っている。

もちろん提督が他の妻と夜を過ごす時は

嫉妬してしまうが、それは他の妻も同じ条件だから我慢できる。

 

彼女が気になったのは、

夫の「愛している」という言葉についてだ。

 

彼は口元の変形のせいで以前よりも活舌が悪く、

心がこもってないように聞こえることもあるが、

そういった表面的な意味ではないのだ。

 

彼が嘘をついてるわけでないことは分かる。

彼は自分達艦娘を人として、妻として迎え入れてくれた。

夜の営みもしっかりと行ってくれる。

 

 

彼は、どうやらこことは別の世界で生きているようだった。

夫は正直者で嘘が付けない性格をしているのは妻の大和が良く知っている。

だが、今回の件はどうやらおかしい。

 

提督が、少し前から加賀の夢を毎日見ると言っていた。

だがある時から加賀の話を全くしなくなった。大和はほっとして、

ようやく冥界の呪縛から逃れたのだと安心していた。

 

 

『パパはね~。こことは違う世界があるって言ってたんだよ~』

 

 

大和が昼食の皿洗いをしている時、娘が無邪気にそう言ったことがある。

こことは違う世界とは何か。大和達が見ている世界とは違う何かがあるのか。

まさか自分たちはすでに死んでいて、ここが死者のいる世界だとでもいうのか。

 

 

大和は由良に相談した。

 

 

朝から大雨の日である。

 

提督は秘書艦の由良と共に書類仕事をしていた。

 

書類の整理や部屋の清掃などの雑務を由良が担当。

書類にハンコを押したり電話対応は提督が行う。

 

「今日は雨が強いな」

 

「そうですね。一日中降り続けるそうですよ」

 

提督は屋根を叩く雨音が嫌いではなかった。

椅子の後ろにある窓を少しだけ開いて外を確認した。

 

ここから見える海は、荒れていた。

 

波浪。

 

加賀が好んで妖精たちに離発着の訓練をしていたことを思い出す。

戦闘ではどんな悪天候でも艦載機の離発着ができなければ

勝ち続けることはできない。赤城も加賀と同じ考えを持っていた。

 

飛龍の訓練は休む間もなく「人殺し」とまで称された

精神的に限界を迎え、腹を切うとまでした妖精がいた。

 

蒼龍と提督がなんとか説得して事なきを経た。

二航戦の飛龍も、訓練の厳しさにおいては

少し異常ともいえるほどだった。

 

 

あの艦隊は、もういない。

 

赤城の雷撃隊は、機体が敵の対空射撃で

爆破四散しても敵に魚雷を命中させる。

死をまったく恐れない鬼人の集まりだった。

 

加賀の制空隊は巴戦の達人である。

絶望的な練度の違いを連合国軍に思い知らせた。

 

史実のミッドウェイの最終版で敵空母ヨークタウンに対し、

飛龍の小林爆撃隊、友永雷撃隊が怒涛の一撃を加えて撃沈した。

 

日本ではミッドウェイの惨敗の事ばかり報じられる傾向にあるが、

生き残った一隻だけで、敵空母三隻に戦いを挑んだ

飛龍の奮戦を知らない人は多いだろう。

 

 

優秀なパイロットは、みんな死んだ。

 

船と搭乗員の魂が、神の奇跡によって艦娘と妖精に宿り、

二度目の人生を歩んだところで

今度は戦いとは関係ない理由で無残に死んでしまった。

 

 

かつてアドルフ・ヒトラーは、第三帝国の首都ベルリンが

ソ連軍によって蹂躙される直前に部下にこう言い残した。

 

「優秀なドイツ人はみんな死んだ。クズだけが生き残った。

 クズに何が残る。なにもない。ドイツ人はソ連人よりも

 劣等な人種であることを証明した。だから生きていてもしょうがない」

 

政治家としては無責任な発言だが、提督はヒトラーの言うところのクズが

自分だと信じて疑わなかった。だから最初は大本営の出頭命令に

従って、最後は目隠しをされ、胴体を丸太に縛られ、銃殺刑になる覚悟でいた。

 

死は終わりではないと、榛名が言っていた。

 

死んだ後は肉体を捨て魂となって存在する。

またみんなと会えるなら、いっそ、その方が……。

 

 

「提督さん?」

 

 

由良の言葉が耳に入っていないのだ。まだ窓の外を見続けている。

 

 

「妻の問いかけを無視しないでくださいよ」

 

「あっ……? あ、いや。そんなわけじゃ。ごめん。考え事を」

 

「さっきからずっと呼んでいたのに。

 一体何を考えていたんですか? 昔の事ですか?」

 

 

由良のジト目。この目をされた時は嘘は通用しない。

 

 

「ここの戦力では深海棲艦の次の攻撃があったら全滅するのは必至だ。

 俺は艦隊の指揮は取ることはできるが、前線で戦うことはできない。

 この体の事じゃなくて心がな。俺は海を見ることさえ怖くなってきている。

 あの先に、もし敵の艦隊がいたらどうしようってな。

 だから、つい考えちまうんだ。今はいない、戦士たちのことを」

 

「また……加賀さんですか」

 

 

由良は聡明だが独占欲がかなり強い。

 

妻の間ではもう奪い合いなど発生しないが、提督が死んだ艦娘のことを

ダラダラと考え続けているのは愉快なものではない。

 

それに能力についてもだ。由良は高性能電探を積み、

優秀な水上観測機も搭載している。

艦隊の指揮も取れるし、特に上空からの観測射撃には自信がある。

 

さらに潜水戦も行える上に速力もあることから、空母や輸送船の護衛もできる。

汎用性の極めて高い船であることは疑いようもない。

特に太平洋の戦いでは、燃費が良くて高速性に優れる船こそ

実用性に富むことが証明されている。

 

しかし……である。

 

由良が仮に10隻いたとしても、敵艦隊への攻撃においては

加賀一隻には遠く及ばない。日本の大型空母の圧倒的な攻撃力は、

それらのデメリットを大きく補って有り余るのだ。

 

横須賀には同じく大型空母の翔鶴がいる。

巡洋戦艦から改装された赤城、戦艦から改装された加賀と比べて、

初めから空母として設計された翔鶴型の航空母艦は、

空母単体の性能では一航戦を上回るものの、艦載機の練度に致命的な差がある。

 

加賀は五航戦を見下す悪い癖があったが、提督から見ても

一航戦と五航戦のパイロットでは大人と赤子ほどの力の差があった。

 

空母の搭乗員とは、洋上を移動中の空母の狭い甲板の上で

離発着できるだけでも、基地航空隊と比較にならぬほどの練度を誇る。

一航戦はその空母艦載機の搭乗員の中で、

日本中から最優秀の人材をかき集めた本物の精鋭部隊である。

 

 

提督が戦力の不足から加賀を想う気持ちは分かるが、

彼の場合は個人的な感情で加賀のことを想っていた。

 

 

ガタン

 

と大きな音を立てて由良が席を立つ。

 

「紅茶でも入れますね」

 

「あ、ああ。すまない。お願いするよ」

 

「その前に」

 

「え」

 

由良は提督の顔をつかみ、自分の胸を触らせた。

 

「なにをするんだ、いきなり!!」

 

「提督さんは女性のおっぱいが大好きらしいから」

 

「……だ、だからって仕事中に!!」

 

「ここには他に誰もいませんから、好きなだけお触りできますよ。ねっ?」

 

由良が服をはだけて、ブラジャー越しに彼の手を導いている。

ブラ越しでも由良の胸は弾力がたっぷりあって柔らかい。

 

「もう十分だよ。神経質になりすぎた俺に気を使ってくれたんだな。

 由良の気持ちはよく伝わったよ。ありがとうな」

 

「もっと触っていいのに」

 

「……今は仕事中だから、ちょっとな。

 集中してやらないとミスしちゃうだろ?」

 

「男の人って女性の下着が大好きなんですよね。

 良かったら下着も見ますか?」

 

「いいって!! 今日はどうしてそこまで俺を誘惑するんだ?」

 

「提督さんが考えなくていいことまで考えているからですよ」

 

 

由良が嫌う男性の特徴に、過去の女性を引きずることがあった。

女性ならば終わった恋は綺麗に忘れて次のチャンスを探す。

占いを好むことからも分かるように、女性は明日の未来に

希望を見出すポジティブな生き物だ。

 

だが、提督のようにA型気質な男性は生真面目が過ぎるのだ。

由良の言うように考えなくてもいいことまで考えて自分を苦しめる。

 

 

「んっ」

 

「むぐっ!?」

 

キスされた。

由良の魅力的な丸い瞳と、長いまつ毛が提督の目の前にある。

 

「ゆ、ゆら」

 

「はい」

 

提督はついに辛抱たまらなくなり、

由良をソファまで連れて行ってから

ブラジャーを持ち上げて乳首を直接舐めてしまう。

 

「んっ!! 提督ったらそんなに夢中になって吸っちゃって。

 由良のおっぱいは美味しいですか?」

 

「君が誘惑したんじゃないか……。

 まだ仕事が残ってるのにこんなことを」

 

「ほーら。もっと舐めたいですか?」

 

「むぐっ……んんっ……くるし……」

 

由良は片腕の提督を押し倒してしまい、胸を口に押し付けていた。

こうされると提督は自重を支える方法がなく、

由良にされるがままになってしまう。

 

今の提督には少し意地悪な責め方だった。

さすがにまずいと思った提督が由良を諭そうとするが、

彼女に優しく頭を撫でられると、

母の腕の中で抱かれているような気分になってしまう。

 

「提督さんの元気になったココ、

 狭いズボンの中で苦しそうですね。楽にしてあげましょうか?」

 

「由良。はっきり言ってくれ。最近俺の妻たちも

 やたらと俺と激しくしたがるようだが、

 君たちは俺に加賀を忘れて欲しいと思っているんだろう?」

 

「……なんだ。分かってるんじゃないですか」

 

「これでも提督だからな」

 

 

由良は、早く加賀のことを忘れてくださいよと言った。

提督は、それは無理だと即答した。

 

 

由良が沈黙すると空気が重くなる。

 

 

「どうして……忘れられないんですか?」

 

「あの子は、俺の中で特別な存在なんだ」

 

 

また沈黙。提督が耐えきれず話を続ける。

 

 

「ようかんをな……」

 

「ようかん?」

 

「昨日夢に赤城も出てきたんだ。加賀と仲良さそうにおしゃべりしててさ。

 加賀は赤城を仲間はずれにするのはかわいそうだからって、

 俺に会わせてくれたんだ。こことは違う、別の世界でな。

 赤城は何でも食べる娘だったが、甘味では間宮のようかんが好物だった」

 

 

――飛行甲板が中破!? ああ、こんな時はようかんが食べたいなぁ。

――妖精達。良く帰って来てくれたわね。帰ったらようかんを振舞うわよ。

 

 

「赤城は俺と一緒にようかんが食べたいそうだ。

 だから夢の中で俺は約束したんだ。加賀も連れて三人で

 一緒に食べようなって。そしたら赤城がどんな顔をしたと思う?」

 

「興味ありませんけど」

 

「へ?」

 

「だから、そんな空想を聞かされても由良は興味ありません。

 大和さんから聞いた通りですね。提督は変な夢を見過ぎたせいで

 現実と夢の区別がつかなくなってるみたいです」

 

 

由良の放つ殺気で壁掛けの時計が床へ落ちた。

 

冷静な由良は怒鳴るタイプではないが、耳元で

提督につぶやくことで最大の圧力をかけていた。

 

 

「わたしは、あなたの妻です。妻の前で別の女と食事をする約束の話を

 されても困りますよ。ねえ提督さん? 提督さんには何人もの妻がいるのに、

 もう飽きちゃったんですか? そんなことありませんよね。ね?」

 

「もちろん愛しているよ。俺の介護までしてくれて君達には

 感謝しても感謝しきれないほどだ。それは今でも変わらないよ。

 ただ加賀と赤城は……」

 

「うるさいんですよ」

 

「えっ」

 

「死んだ空母の名前を口にするのをやめてください」

 

由良の表情が鬼になる。

 

「おまえこそ、黙れよ」

 

「はい?」

 

「俺は提督だぞ。艦隊で一番に活躍してくれた娘を想って何が悪いんだ。

 あの子たちは俺の娘だ。娘を忘れろと言われても忘れるのは一生無理だよ。

 由良。どうか分かってくれ。俺は夢の中だとしても加賀と会えるのが

 うれしいんだ。それは妻である由良をないがしろにしたわけじゃない。

 どうか俺の気持ちを分かってくれないか」

 

 

由良は鼻を鳴らし、部屋を出て行った。

おいおい、執務はどうするんだと提督がぽつりとこぼす。

 

 

廊下の先で女の口論する声が聞こえる。

由良が誰かと言い争っているのだろうかと提督は思った。

 

数分すると静かになり、コツコツコツと誰かが歩いてくる。

由良が戻って来たのかと思ったら、やってきたのは鹿島だった。

 

フリルのついたノースリーブのシャツに、チェックのロングスカート姿だ。

開放的なファッションを好む彼女が、あえて足元を見せないのは珍しい。

 

 

「あなた様。今日は鹿島が秘書艦を担当いたしますわ。

 由良は具合が悪くなって早退したそうですから」

 

提督はその言葉をよく呑み込んでから

 

「そうか。よろしく頼むよ」と言った。

 

由良にはあとでフォローをしなければならないが、今は仕事が先だ。

 

手慣れた事務仕事を黙々とこなす。

集中している時は会話がなくなる。

 

鹿島がコーヒーを淹れてくれる。

提督が笑顔で礼を言うと鹿島も微笑む。

 

時計を見ると10時半(ひとまるさんまる)を過ぎていた。

 

 

「由良が粗相をしたそうで、申し訳ありません」

 

「なぜ君が謝るんだい?」

 

「私もあなた様の妻の一人ですから。他の妻が粗相をした場合は

 私の責任でもあります。ですから謝罪したのです」

 

「気持ちは嬉しいけど、そこまでかしこまらなくてもいいんだよ?

 そもそも由良は悪くないんだよ。俺がいつまでも昔のことを

 引きずってるから由良を怒らせて…」

 

「そんなことありませんわ!!」

 

提督はびくっと震えた。

 

「由良には先ほど廊下ですれ違ってので叱っておきました。

 あなた様には何も悪いことなどないのに、まったくあの女ときたら」

 

「さっきの怒鳴り声は君らふたりだったのか。

 それにしても叱るって……俺は気にしてないし、

 別にそこまでしなくてもいいんだぞ?」

 

「はい。わかりました」

 

「え?」

 

「あなた様がするなというなら、由良を叱りません。

 あとで仲直りしておきます」

 

結婚後の鹿島も性格が変わった。

なんというか、朝潮のように従順で生真面目な女になってしまった。

 

鹿島の中では、提督は先の横須賀決戦で命を懸けて戦った大英雄となっていた。

基地で指揮をしてくれるだけでも十分なのに、体を張って

敵弾を受け続けた彼はもはや人すら超越し、神と同等の存在とまでしていた。

 

つまり彼女はどうしようもないくらいに提督を愛してしまい、

妻でなく下僕となってしまったのだ。

 

最近になって洋服の露出をしなくなったのも理由がある。

ゲスな男どもの視線が不愉快に感じたからだ。

 

これは大和を初め妻全員の共通認識だったが、

妻の中で鹿島の容姿は一段と美しかった。

 

女性らしさを文字通り体現した鹿島が、

私服で街を歩くだけで大変な注目を浴びた。

 

服を買いに行って服屋の定員に電話番号を聞かれたことがあった。

ミニスカートから除く生足に多くの男が夢中になる。

若い男だけでなく定年した老人にまでナンパされたことさえある。

 

鹿島はコンビニが好きだが、コンビニで雑誌の立ち読みを

しているだけで絵になるほど彼女の立ち姿は美しかった。

鹿島は旦那様である提督以外の男にそういう目で見られるのが不快だった。

また自分の姿を世間に見せるのは良くないことだと思うようになる。

 

本当はヒジャブ(ムスリムの服)でも着たいが、日本では無理だ。

だからミニスカートをはかなくなった。

鹿島は暑がりなので服の袖口だけは開放的になってしまうが。

 

化粧はしないか、したとしてもわざと下手くそにした。

大きな丸眼鏡をつけて顔のバランスを悪く見せるようにもした。

 

ちなみに今日は休日のコンビニ帰りなのため私服だった。

(艦娘は提督の介護があるためシフト制で休みを取る)

 

何気なく艦娘寮の廊下を歩いていたら由良とすれ違い、

そこで口論となった。

 

 

「午前中の間に仕事を進めようか」

 

「はい!! 頑張りましょう」

 

 

提督にとっては15分のつもりだった。

時計の針は12時(ひとふたまるまる)を指していた。

 

食堂に行く。

片腕の提督が万が一転ばないように鹿島が寄り添って歩く。

 

間宮が笑顔で迎えてくれた。どのメニューにしますかと問う。

 

「A定食はとんかつか。Bのサバの味噌煮定食もうまそうだな。

 うーん、迷うな」

 

「はい。迷いますね」

 

鹿島に自分の意志はなく、提督と同じ内容にするつもりだった。

 

「私だったら両方頼んで、おかずを二人で交換しながら食べますけどね」

 

由良が後ろから声をかけてきたのだ。

 

今日は無理やりオフの日にしたからか、ピンク色の髪を下ろしている。

髪が長すぎて床に引きずる直前の長さだった。

 

「あら由良さん。具合は大丈夫なんですか?」

 

「ええ鹿島さん。少し眠ったら頭がすっきりしたわ。

 お腹がすいたので旦那様とランチでもしようかなと思って」

 

「そうですか。言っておきますけど提督さんの隣は私ですからね?」

 

「それは別にかまわないわ。今さら彼を奪い合う関係でもないもの」

 

 

と言いながらも、二人で提督の両側に座っている。

鹿島は彼の椅子にぴったりと付けており、完全な密着状態だ。

提督は料理の匂いよりも鹿島の髪の匂いが気になり、うっとりしてしまう。

 

「はい。どうぞ」

 

「ああ」

 

サバの味噌煮を細かくして箸で挟む。

提督は鹿島が食べさせてくれるから何もしなくてよかった。

間宮も提督分のお盆には初めから箸を用意していない。

 

反対側にいる由良は、提督の右腕を抱いたまま、眠たそうな顔をしていた。

実は昨夜は遅くまで大和の相談に乗っていたため寝不足だったのだ。

 

由良は一口も食事は手を付けず、ずっと提督と密着していた。

それで満足だったのだ。今まで多くの艦娘と暮らしていた時は、

堂々と提督の横に座れる機会など一度もなかった。

 

「由良。起きてるか? 

 今夜ちょっと話があるから、俺がお前の部屋に行くよ」

 

「え……あ、はい。わかりました。お待ちしてます」

 

鹿島の表情が険しくなるが、すぐに元通りになる。

 

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