※文章は随時書き増しながら推敲します。
ホテル内を強い振動が襲う。地震でも起きたのかと提督が
ベッドサイドの電子時計を見ると、なんと昼過ぎだった。
榛名と明け方までアニメを見ていたからぐっすり寝てしまった。
榛名の可愛い寝顔に優しくキスをする。
また振動が部屋を襲う。外で花火が散るような音がた。
「なんだ? 町でイベントでもやってんのか?」
上半身裸の提督がカーテンをシャっとすると、
窓の外にいるのは、星の数ほどの飛行機の群れだった。
「深海棲艦が攻めてきたのか!!」
「えっ!! 深海棲艦ですって!!」
榛名も一瞬で飛び起き、窓の外の状況を見て絶望した。
「提督!! あれは深海棲艦の飛行機じゃありません!!」
「なに!! 俺はてっきり敵空母の艦載機かと思ったぞ!!」
「あそこの爆撃機の翼を見てください!!」
「日の丸だ!!」
「そう!! 日の丸です!! あの隊長機の
赤いマークは赤城の飛行中隊に間違いありません!!
あっちのは戦闘機。加賀の飛行中隊です」
提督はベッドからひっくり返った。
一体何の冗談なのだろうか。
なにゆえホテルの上空を一航戦の艦載機が飛んでいるのか。
艦載機が存在すると言うことは、
赤城と加賀も現生にいると言うことになる。
そんなバカなことはありえないはずだ。
提督は夜の時間に妻にばれないと言う条件で妻と再会できるが、
今は正午過ぎであり、隣には妻の榛名がいるというのに。
もう、全てがめちゃくちゃだ。
「あれは加賀さん達ですよ!!」
「えー」
提督は混乱の極みに達しており、
めんどくさそうに返事をするしかなかった。
なんと、赤城と加賀が宙に浮いていた。
外からホテルにいる提督に向けて手を振っている。
提督はハイタッチするように高く上げた手を振り返した。
彼女らの周りには、零式艦上戦闘機、九七式艦上攻撃機、
九九式艦上爆撃機が展開している。それにしても数が多すぎる。
一航戦だけにしては、軽く300を超える艦載機の群れである。
「やっほー提督ぅ~~」
同じく宙を浮いている蒼龍が、提督に投げキッスをしてきた。
提督もにっこりとほほ笑む。窓を全開にして怒鳴り返す。
「おう。蒼龍もいたのか!! ってことは飛龍も一緒か!!」
「そうりゅ~こと!!」
「提督じゃーん。久しぶりだね!! 少し見ない間に顔変わった!?」
「よっ飛龍!! ちょっとイメチェンに失敗しちまってよ、
すげえブサイクに変わっちまったんだ!!
で、おまえらはそこで何してんだ?」
蒼龍が大きな胸を張り、満面の笑みで答える。
「うん、ちょっと提督と榛名をぶち殺してあげようと思ってね!!」
「そうそう。特に榛名がすっごく許せなくてさ。榛名の頭の上に
800キロ爆弾を連続で直撃させてあげようかなって!!」
飛龍はそう言い、歴戦の爆撃隊の妖精に攻撃命令を出す。
まず蒼龍のゼロ戦の群れが、20ミリ機銃と7.7ミリ機銃を乱射して
部屋にいる提督と榛名に浴びせる。
ふたりはあまりの銃弾の迫力にそのまま窓から飛び出すしかなかった。
榛名は提督をお姫様抱っこしたままホテルの駐車場へ落下。
そこまではいい。だが、榛名の頭上では九九式艦爆が
順番に急降下の態勢に入っている。その数、実に15機に及ぶ。
これだけの数の爆撃機に襲われたら、いかに戦艦榛名とてひとたまりもない。
ここには提督もいるのに、容赦なく爆弾を落とすつもりだ。
「や、やめろぉ!! やめてくれー!!
俺達はお前たちの味方なんだぞ!!
味方の上に爆弾を落とすつもりなのか!!」
提督の叫びもむなしく、艦上爆撃機は上空から突っ込んでくる。
休む間もなく爆弾が落とされ、コンクリが土ごと盛り返され、
消炎が舞い、破片が飛散し、爆炎があたりを焼き尽くす。
「うわああああああああああああ!!
やめてくれええええええ!! ひいいいい!!
息ができない~~!! 大和!! 翔鶴!!
誰でもいいから助けてくれえええ!!」
提督は涙を流しながら床に這いつくばり、泣きわめく。
身体障害者となってから彼には戦う意思はなくなってしまった。
まして相手は二航戦の艦載機だ。
仮に彼が万全だったとしても勝てるわけがない。
「て、い……とく……だいじょ……うぶ……ですか?」
背中に大やけどを負った榛名。彼女は提督を守るために、
爆弾の雨を背中に浴びたのだ。彼女が提督に覆いかぶさって
くれなかったら、提督は即死だった。
蒼龍と飛龍は、地上へ降りてきた。
撃沈寸前の傷を負った榛名の前髪を飛龍がつかみ、
前歯がすべて折れるまで殴り続けた。
榛名の返り血が、飛龍の服を染めていく。
蒼龍は榛名の左腕を取り、肩の関節を外してあげた。
「ぎやぁあああああああ!! い、痛いぃぃ!」
「うんうん♪ 痛いよね。でもね、榛名に騙されて
銀行強盗までさせられた蒼龍達はもっと心が痛んだよ?」
蒼龍はゼロ距離で弓を放った。榛名の左手の薬指が、吹き飛んだ。
「うわあああああああ!! 榛名の指があああ!!」
「あんたの形だけの結婚指輪も一緒に飛んじゃったね。
ああ、愉快愉快♪ あんたみたいに人をだましても
なんとも思わないクズが、提督を独り占めしちゃってさ」
腰を抜かし、おしっこを漏らして震える提督に対し、
蒼龍は「あげるよ」と言い、指輪が装着されたままの指をプレゼントした。
断面には骨が見え、今も血がドバドバ出ている。提督はその場で吐いた。
飛龍はまた榛名の前髪をつかんで持ち上げ、ひざ蹴りを食らわせた。
飛龍の恐ろしいことは、同じ攻撃を無機質に繰り返して相手を
痛めつけることだ。この間、彼女は常に笑顔であり、榛名の鼻が砕け、
右の眼球が完全につぶれるまでひざ蹴りを続けた。
「……飛龍さま。蒼龍さま。申し訳ありませんでした。
榛名をどうか……ひと思いに殺してください」
「な~に言ってるのぉ? こんなんじゃ全然足りないって!!」
「そうそう。飛龍の言うとおりだよ。榛名はもっと苦しんでから
死なないとさ、私達の気が済まないんだよね~。
まだ榛名の指、たくさん残ってるじゃん。足の指もそうだし、
内臓もまだ無事だよね? あと髪の毛も全部抜いてあげないと」
ふたりは榛名を電柱に縛り付けた。これからサンドバックにするから、
頑張って耐えてねと、やはり笑顔で言われる。
「ふ、ふたりとも。た……頼む。
お願いだから……その辺で榛名を許してあげてくれないか」
提督は精いっぱい土下座したが、二航戦は無視して榛名を殴り始めた。
飛龍の拳が榛名のお腹に刺さると、「うげえ」と榛名が盛大にもどす。
汚物に血も交じっていた。榛名が青白い顔をすると、休む間もなく腹パンをする。
榛名はさらに血の気を失い、口からは唾液しか出てこない。
蒼龍はペンチを取り出し、これから榛名の乳首をつぶすと宣言。
榛名はもう諦め始めていた。相手は日本海軍を代表する航空戦隊の二人。
あのふたりを本気で怒らせてしまった以上、もうどうしようもないのだ。
「た、たのむよぉ、はるながしんじまうよぉ」
「提督……。ちょっと邪魔!!」
「うぐぅ」
提督は蒼龍に軽く足蹴にされた。蒼龍としては
わがままな子供を叱る程度の気持ちで蹴ったのだが、
訓練された二航戦の蹴りである。
提督は体ごと吹き飛び、ゴロゴロと転がってしまう。
蹴られたわき腹がずきずきと痛み、なかなか起き上がれない。
そこへ、一航戦の片割れ、加賀が降りてきた。
「こら蒼龍。あなたは今誰を蹴飛ばしたと思ってるの」
「加賀さん!! こ、これは違うんです」
「何が違うの。くだらない言い訳をするつもりなら本気で怒るわよ」
パシンと蒼龍の頭をはたく。
蒼龍はぺこぺこと頭を下げ、加賀の機嫌をうかがう。
加賀は続いて飛龍に視線を向けた。
「榛名の隣に提督がいたというのに、急降下爆撃機を向けたわね。
殺していいのは榛名だけと言ったはずよ。あなたは馬鹿なの?
どうして約束を守れないの」
「すみません。つい調子に乗ってしまいました」
「そう。調子に乗ったのね。万が一彼が怪我でもしたら
どうするつもりだったの。あなたにはきつめのお仕置きにするわ」
飛龍が一本背負いされ、轟音が響く。
飛龍が投げられた場所にクレーターができるほどの一撃だった。
その惨事を見て、蒼龍は顔色を失う。
赤城も降りてきた。
「加賀さん、どうやら周囲に敵影はいないようです」
「そう。ならこれから好きなだけ提督とおしゃべりできるわね」
弓を片手に持つ、伝説の第一航空戦隊の二名。
そのあまりの迫力に、提督は神の使いが降臨したのかと思った。
「加賀……赤城……、なぜお前たちがこの世に復活したのかは
あえて聞かないよ。今は君達に一生のお願いがあるんだ。
榛名が虫の息だ。どうか息のあるうちに助けてくれないか。
この通り一緒のお願いだ。頼むよぉ」
「私の間で土下座なんてしないで頂戴。
そんなに私の足を必死でつかんで……奴隷じゃないんだから。
提督のお願いならちゃんと聞いてあげるから。涙を拭きなさい」
加賀に渡されたハンカチで鼻をかむ提督。
赤城が少し嫌そうな顔をしながらも、榛名の縄をほどいてくれた。
全身血だらけの榛名。芋虫のような状態で地面に倒れている。
赤城も榛名のことが大嫌いだったので蹴りの一撃でも食らわせて
やりたいが、提督のお気に入りなので我慢してやった。
加賀は、いつかそうしたように、
提督の顔を膝の上に置き、頭をなでてあげた。
「さすがに頭が混乱しているでしょうから、
今から全部説明してあげるわ。
私達がどうしてここにいるのか。
そして何をしにここに来たのかを」
一航戦は、提督が妻達の邪魔にあって現生での
夜の密会が出来なくなった。そればかりか
提督が夜満足に寝ることもできなくなったので
夢の世界での交流もさえも満足にできない。
ふたりは提督に会えなくて、さみしかった。
同時に提督を独占する妻達に殺意がわいた。
そこで神と新しい誓いをした。
もういい加減に現生で受肉させてくださいと。
神はそれは契約の外にあると突き放したので、
加賀が爆撃機を使って神と戦った。
神は強く、いつまで戦っても決着がつかなかったが、
加賀の攻撃に赤城の爆撃機と雷撃機も加わると、
次第に神が押され始める。
そこで神は一航戦と停戦を結ぶことにした。
その条件は、ふたりに受肉させる。つまり翔鶴と
同じように魂だった存在に肉体を与えて復活させたのだ。
「な、なるほど。一応納得した。でも二航戦の二人は?」
「だいたい私達と同じ理由よ。あの子たちは調子に乗って
神様を殺しそうになったそうだけど。それにあの子たちの
受肉した目的は榛名に復讐することらしいから、
私達とは目的が根本的に違うはずよ。そうよね?」
と怖い顔で言われ、首を縦に何度も振る蒼龍。
実は蒼龍も提督のことは愛していた。だが一航戦の二人が
提督と結婚するらしいので、自分たちは蚊帳の外だ。
実は先ほどの急降下爆撃も、提督の周りに爆弾を落として
脅かしてやるつもりであり、本気で提督を殺すつもりはなかった。
だが、榛名が妙に英雄ぶった態度を取るので癪に障り、
榛名の背中にはたくさんの爆弾をぶち込んでやった。
「もう一つ報告があるわ。あなたにとっては残念なお知らせに
なってしまうけど、ちゃんと聞いてね」
その報告を聞いた提督は、泡を吹いて倒れた。
加賀が頬を優しく叩き、また目覚めた。どうやら夢ではなかった。
加賀の話を総合すると、二航戦が榛名をいじめている間、
赤城の艦載機80機と、加賀の艦載機の半分が横須賀基地を襲撃した。
横須賀にいた提督の妻達は、突然攻撃してきた味方の艦載機に対して
迎撃戦を展開。聡明で判断力に優れる由良を旗艦とし、
大和、翔鶴以下の全艦娘が出撃して対空迎撃戦を展開。
翔鶴の戦闘機部隊は、赤城の制空隊によって90秒で全滅させられた。
相手にならないのは演習の時と変わらない。
しかし、せめて相手に一撃を食らわせれば、ひるませることができる。
空母同士の戦いは辛抱強さと根性の勝負だ。
翔鶴は最後の望みを込めて爆弾を積んだ艦上攻撃機を発艦させる。
五航戦の維持をかけた突貫により、赤城飛行第一、第二中隊の
制空隊の網目のような布陣を潜り抜けることに成功した。
突破できたのはたったの3機だが、3機でも十分だ。
どうやら赤城と加賀は全攻撃機を横須賀艦隊への
攻撃に使用しているようなので、敵空母への護衛はないものと考えた。
だが甘かった。
加賀はその万が一のために零戦隊を上空に旋回させておいた。
鬼人と称された加賀の制空隊によって翔鶴の3機の英雄は、
コクピットに30発以上の銃弾を食らい、
翼をへし折られ、大炎上して地面へ突っ込んだ。
たったの20秒間の出来事だった。
これで翔鶴の艦載機は全滅。他には大和のわずかな艦載機と
由良の零式観測機がいるにはいるが、実質航空戦力はゼロである。
相手はあの米英海軍の航空隊がまともな戦闘で一度も
勝てたことのない、世界戦史に名を残す航空戦隊である。
「降伏しましょう」
と大和が言う。
すでに由良が武装の全てを爆撃され、浮くだけの船となってしまった。
大和は左舷に6発の魚雷を受け、
炎上し、注水を繰り返して姿勢を保っている。
秋月も魚雷を複数受けて血を吐いている。
鹿島は機銃を除くすべての砲を爆撃されて炎上している。
間宮は戦力外と見なされて唯一攻撃されてない。
翔鶴も攻撃されてないが、おそらく最後にゆっくり殺されるのだろう。
熾烈な空爆に対して懸命に対空迎撃戦をした結果がこれだ。
相手側の命中率は5割以上。ほぼすべての戦力が大破。
それに対して、撃墜した敵機はたったの7機。損傷が10機程度。
もう、相手にならない。
一航戦に比べたら、キングジョージ5世級の戦艦部隊は
なんと弱かったことだろう。先の横須賀決戦は2時間以上の
死闘となったが、こちらはたったの15分でこの有様だ。
大和、秋月が降伏を進言。旗艦の由良も認めた。
「降伏を認める。傷ついた艦娘は入渠して傷を癒してきなさい」
加賀は意外にも傷を癒す機会を与えてくれたので、
大和達は言われたとおりにした。
そのあと、加賀と赤城は提督のもとへ降り立った。
そういう話の流れなのだ。