※この作品はR-18です。

「大和の愛から逃げ続けたらどうなるのか?」   作:なおちー

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横須賀隊が降伏。恐るべき降伏の条件。

あれから2週間が経過し、9月になる。

 

今年の9月は例年になく気温が下がり、雨の日が多い。

温暖化傾向にある日本にしては珍しく

最高気温が24度を超えない日が続く。

 

加賀は「今日も快適ね」と言い、鎮守府内の廊下をずんずん歩く。

 

「おはようございます。加賀様」

 

廊下にいる翔鶴が頭を下げる。

 

立ったまま挨拶をするなんて五航戦のくせに頭が高いと言われ、

翔鶴は土下座を強いられ、頭を踏みつけられた。

彼女は屈辱で涙を流した。

 

 

食堂の前で大和も頭を下げて、扉を開ける。

間宮が大急ぎで朝食の準備をしていた。今日も提督の分と、

加賀と赤城の分の豪華なおかずを作るのだ。

 

加賀は色々な注文を出した。朝からステーキが食べたいとか、

デザートにはモンブランを出せ、職人のようにコシのあるうどんを

作れなど言いたい放題だ。加賀が味に満足しないと間宮は殴られた。

 

「床が汚れているわね。こら榛名。昨夜のうちに綺麗にしておきなさい

 と言ったはずよね。もう一度モップがけをしなさい」

 

「かしこまりました。加賀様」

 

榛名は頭を深々と下げ、掃除用具入れのロッカーへと走る。

急がないと殴られるからだ。昨夜は赤城のために用意した

ようかんの量が足らなかったので髪の毛を引っ張られた。

あまりにも強い力で引っ張られたので何本か抜けてしまった。

 

榛名は二週間たっても傷が治りきらず、顔中に青あざが残り、

片目が張りあがっている。服を脱ぐと体中がもっとひどい状態なので

とても人前では見せられない。肩の関節は赤城に入れて

もらえたが、今でもにぶい痛みが続いている。

 

折れた歯は総入れ歯にした。

 

 

「おはよう。由良」

 

「おはようございます。赤城様」

 

「今日も食べてる間、椅子になってもらうから」

 

「喜んで」

 

由良は犬のポーズを取り、その上に赤城がどさっと座る。

赤城はよく食べるし、細身だが筋肉質な体をしているので、

体重がかなり重い。由良が「ぐえ」と声を上げそうになり耐える。

 

赤城は足を組み、わざと体重を乗せていた。

たまに座り直しをしては由良にさらに負担をかける。

 

「提督もそこに座ってくださいね」

 

「あ、ああ。そうだな!!」

 

そことは、鹿島の事だった。

 

提督が申し訳なさそうに腰を下ろすと、

男性の体重を支えるため「うぐ……」と鹿島がうめく。

提督が手加減して座ると赤城が怒るので、普通に座るしかない。

 

鹿島は容姿が抜群に綺麗であり、赤城や加賀でさえ

その美しさに嫉妬したので、メイクなどおしゃれを

することを一切禁じられた。普段はダサイ学校用の

ジャージを上下着るように言われている。

 

ただし、美の秘訣を教えることは義務とされた。

たまに赤城に夜呼び出されては、美しいスタイルの維持や

可愛い髪形の作り方のコツを教えるように言われた。

 

鹿島は、強くて凛々しい赤城の方が自分より魅力的だと思っていたから

質問の意味がよく分からず、ボーっとしていたら殴られた。

 

たまに提督が鹿島の泣き顔を見て心を奪われそうになる。

鹿島がいじめられて涙目になると、

それもまた人形のように美しかったからだ。

 

そんな時は赤城が嫉妬してまた鹿島を殴った。

折れた歯が床に転がる。

一部始終を近くで見ていた提督は悲しんだ。

 

 

加賀は秋月を椅子代わりにして座った。

秋月は目を細め、歯を食いしばり、何も言わずに堪えていた。

 

「提督。今日もお腹いっぱい食べましょうね」

 

「もちろんだ!!」

 

「今日は提督の好きなサンマを焼いてもらったわ。

 大和。お皿を運びなさい」

 

大和が深く礼をし、皿を運んでくる。この際に粗相をしたら

すぐに拳が飛んでくるから、ビクビクしながらやった。

 

「うんうん。今日は良く焼けているようね。

 のろまで愚図なあなたにしては上等よ間宮」

 

「あ、ありがとうございます。加賀様」

 

間宮が腰を折って礼をした。

まるで皇室の人に対する態度である。

 

加賀が下がってよろしいと言うので間宮はキッチンへと消える。

加賀が次に目を付けたのは大和だった。

 

「おい」

 

「は、はい!?」

 

「あなた、頭が高いわよ。さっき間宮の横にいたのに、

 どうして一緒に頭を下げなかったの」

 

「すみませ……」

 

加賀にお腹を蹴られた。大和は耐久力があるので

吹き飛ぶほどではないが、しゃがみこんで咳き込む。

 

加賀はお冷の入ったコップを、大和の頭の上で逆さまにした。

そしてびしょ濡れになった大和の頭を踏みつけた。

特に綺麗な髪の毛を念入りに踏んだ。

 

「愚図のくせに。いちいちカンに触る女だわ」

 

加賀は大和を一番にいじめた。

大和は提督の最初の妻であり、提督の子供を最初に身ごもった。

 

何より気に入らなかったのは、提督と榛名のホテルでの会話だ。

提督は顔が一番好みなのが大和だと言ってしまった。加賀と赤城は

提督が遠く離れた場所で話していることさえ、

神の力を借りて耳にすることができるのだ。

 

そのせいで加賀の大和への嫉妬は、明確なる殺意へと変わる。

大和がこの世に存在すること自体が許せないほどだった。

 

提督は大和の髪型が好みだとほざいていた。

大和を丸坊主にしようかと赤城と相談すると「それはまずいですよ」と

真顔で言われた。提督は口では飽きてしまったとはいえ、妻に対する情が

ないわけではない。まして奴隷となった大和に同情する可能性が高い。

 

そこで大和には髪を切るように命じた。

大和は身長ほどもあった髪の毛を、肩口にかかるほどの

ショートにした。髪飾りなどの装飾品の一切は没収された。

 

しかし、大和のシャープな輪郭にショートカットは逆に似合うので、

これは見たこともない美人が現れたと提督が鼻の下を伸ばしていた。

加賀は怒りで吠え、大和を威圧してはつまらないことで八つ当たりした。

 

 

タイトルにある横須賀打撃艦隊の降伏の条件は、

概ね以上の通りだった。

 

 

具体的にはこうなる。

 

・横須賀鎮守府は一航戦によって管理される。

・提督は提督の地位が維持されるが、実権はない。

・横須賀打撃艦隊の解体。

・横須賀鎮守府の艦娘は、一航戦の奴隷として使役される。

 

さらに

 

戦闘で敗れた艦娘達を食堂に集め、『離婚式』を行った。

 

これは、提督の妻達から、彼女らの命より大切な結婚指輪を

はずさせる儀式であった。妻達は横一列に土下座させられて、

そこへ赤城と加賀が順番に指輪を指から抜いていく。

そして離婚誓約書と今後提督に色目を使わない誓約書にサインをさせられた。

 

このサインは重要な効力を持つ。

もし今後提督と陰でイチャつこうものなら、最低でも魚雷を

10発ほどぶち込むと脅されていた。つまり撃沈。死だ。

 

もはや元妻達は、一航戦の機嫌によって生かされている状態だ。

 

「あ、あの。加賀様。赤城様」

 

「どうしたの五航戦」

 

「私はすでに加賀様たちの旦那様である

 提督様のお子様を身ごもっております。

 それで出産についてなのですが……」

 

「ああ、そんなこと。そんなの言わなくても分かるでしょう」

 

 

――おろしなさい。

 

 

生むなど認めるわけがなかった。

まして五航戦の翔鶴は一航戦の後輩。

そんな当たり前のことを

質問したこと自体が加賀の逆鱗に触れた。

 

加賀が本気で翔鶴を殺してしまいそうな

目つきをしていたので、ここは赤城が止めに入る。

 

「翔鶴はまた私と加賀さんを侮辱しましたね。

 お仕置きをしますから、こっちへ来てください」

 

「は、はい……」

 

翔鶴は上着を脱がされ、壁に手を突いた状態で背中を向けた。

そこへ赤城が得意の剣道で背中を叩く。竹刀ではなく木刀だった。

 

バシッ

 

と打撃の音が響く。

 

「いっかい」

 

「う……」

 

たった一撃でも翔鶴の背骨を折るほどの勢いだった。

赤城はこれを20回も繰り返し、床に倒れこんで

小刻みに震え続ける。

 

赤城は翔鶴の長い髪の毛をむしり、自分の顔の方に向かせた。

 

「うわあああああ!! いたぃぃ!! 髪の毛が抜けてしまいます!!」

 

「あなたはどこまで愚かな艦娘なんでしょうね。

 先輩に対する口の利き方がなってません。

 私の旦那様からも叱っていただかないといけませんね」

 

赤城は血走った目で提督に言った。今からこいつを殴ってくださいと。

 

翔鶴を殴る。

 

口で言うほど簡単なことではなかった。

提督は確かに翔鶴の束縛に疲れてはいたが、

自分が障碍者となった時に介護された恩は忘れてない。

 

そんな彼女を自分の拳で殴る。

そんなことをするなら死んだほうがましだと思った。

 

「ちゃんとお腹を殴ってくださいね。

 二度とこの女が子供を産むだなんておままごとを言わないように」

 

提督はぎゅっと目を閉じ深呼吸した。

再び目を開け、赤城をにらみつけながらこう言った。

 

「そんなの無理に決まってるだろ。赤城と加賀はどうか知らないが、

 俺は翔鶴を殴ろうだなんて思ったことは一度もない。

 俺は翔鶴に恨みはないんだ。だから殴らない。これじゃ満足できないか?」

 

「ぜんぜん、できませんね」

 

「じゃあ、どうすればお前の気持ちは晴れるんだ」

 

「うーん、そうですねぇ。こういうのはどうでしょか」

 

赤城が翔鶴の脇腹を蹴り上げた。

 

「うっ……」翔鶴は寝たままの状態で、わき腹を抑えた。

 

「翔鶴さん。仰向けに寝ましょうか」

 

「え」

 

「二度言わせるな貴様。仰向けになれと言ったのだ」

 

翔鶴はお腹の強烈な痛みに耐えながら言うとおりにした。

赤城が加賀に耳打ちし、加賀が楽しそうに廊下へ消える。

 

そしてすぐに戻って来た。加賀の手には20キロの重りが握られている。

これを、翔鶴のお腹の上に落とすと宣言。翔鶴は血の気が引く。

提督は辛抱できずに怒鳴り散らした。

 

「いい加減にしろ!! そんなのを落としたら翔鶴が死ぬ!!

 生きていたとしても骨が折れて内臓がぐちゃぐちゃになる!!

 いじめにしても度が過ぎてるぞ!! おまえ達は、

 どうしてそんな残酷なことを思い付くんだよ!!」

 

「こうなったのも、全部あなたが悪いんでしょう!!」

 

赤城は腹から声を出していた。

 

「提督がこんな連中と陰で子作りなんかしているから、

 こんなことになってるんですよ!! なに!?

 あなたにはこうなった責任がなかったとでも言いいたいの?

 夢の世界では私と加賀さんと結婚するって嘘ついたくせに!!

 こんなクズどもと楽しい夜を過ごして私達を騙してたくせに!!」

 

「う、嘘じゃないぞ。俺は本当に赤城と加賀のことも愛しているんだ。

 だが、いろいろと成り行きでな……翔鶴達には感謝してるから

 お礼に結婚してあげることにしたんだ。みんな、ちょっと

 変わったところはあったけど、根はやさしくて良い子達なんだぞ」

 

「じゃあ私と加賀さんは提督にとって悪なんですか!?」

 

「そうとは言ってないさ……。まあ今回の件はちょっと

 やり過ぎだと思うが、人間誰だって感情的になる時はあるさ。

 とりあえず落ち着いて話をしようよ」

 

「あなたの方から怒鳴ってきましたよね?」

 

「そうだが……。分かったよ。翔鶴が妊娠したのは

 何かの間違いだったんだ。だから子供を生まないことは

 俺も賛成するよ。そういうわけだから拷問するのはやめてくれよ」

 

「それは無理ですね」

 

赤城が重り(鉄球)を胸の高さまで持ち上げる。

翔鶴が逃げないように加賀が長い髪の毛をかかとで踏んでいた。

翔鶴は恐ろしさのあまりポロポロと涙を流している。

 

「やめんか!!」

 

提督が、右手で赤城の頬をぶった。

 

「私を殴りましたね」

 

「ああ、殴ったよ。お前はそれだけのことをしようとしたからな。

 俺が憎いんだったら今すぐ殺してくれよ。俺はどうせお前達には

 力ではかなわないんだ。おまけに障害者だ。

 赤城の力なら小指一本で俺を殺せるんじゃないか」

 

赤城は赤くなった頬を触りながら、感情のこもらぬ瞳で提督を見つめた。

元妻達もたいてい病んではいるが、こんな目つきを

する艦娘は見たことがない。思わずゾッとした。

 

「私は翔鶴に嫉妬しちゃいました」

 

「へ?」

 

赤城の後ろ髪が憤怒で逆立つ。

 

「どうしてこいつだけ特別扱いなんですか!?

 死んだ空母艦隊の中で唯一こいつだけ提督の願いで

 生き返ることができて、妻になって妊娠までできて!!

 その上、子供を産めなくしようとしたら、提督が全力でかばう!!

 あははっ!! 笑っちゃいますよね!! のろまで練度も低い

 愚図のくせに、こんなにも提督に愛されているんですから!!」

 

赤城は怒鳴るというよりは演説をしていた。両手をわざとらしいく

大きく広げて、食堂内は彼女の声だけが響いていた。

 

「あぁームカツク。許せない許せない許せない!!

 翔鶴もそうだけど、提督の態度も許せない!!

 こんな奴生かしておいても仕方ないんだから、

 今すぐ殺してやる!!」

 

赤城が艤装を展開しようとしたので、今度は逆に加賀に止められる。

 

「赤城さん。落ち着いて。そんな言い方をしたら、ここにいるクズども

 と同じになってしまうわ。嫉妬を前面に出してしまったら

 提督の心がどんどん離れていく。分かっていたことじゃない」

 

「そんなこと言われなくても分かっていますよ!!

 でも今の提督の顔を見てくださいよ!! 不幸のヒロインを

 救うヒーローの顔をしていますよ!! まだ翔鶴のことが

 大好きなんですよ!! 離婚誓約書に喜んでサインしたくせに!!」

 

「あれは私達が力でねじ伏せて書かせたものだから、仕方ないわよ」

 

「加賀さんは冷静なんですね!! 悔しくないんですか!!

 翔鶴を殺したいと思わないんですか!!」

 

「翔鶴を殺したいだなんて、毎日思っているわよ。

 朝起きてもお風呂に入っても、夜寝る前もこいつの死を願ってたわ。

 でも現実を見て見なさい。提督は翔鶴を本気で愛しているわ。

 翔鶴がこの世から消えたら提督は狂ってしまうわよ」

 

その後も加賀は説得を辛抱強く続けて、翔鶴を拷問するのは

なしにしてくれた。その日の夕食後、提督は加賀と二人きりに

なった時にお礼として抱きしめてあげた。

提督にとっては媚を売っただけだが、加賀は本気で高揚していた。

 

「提督の方から抱きしめてくれるなんて夢みたいだわ」

 

「加賀が冷静なおかげで助かったよ。本当に感謝している」

 

加賀は提督のYシャツ(胸板)に顔をうずめ、匂いを嗅いでいた。

加賀は提督の服の匂いを嗅ぐのが大好きで、自分を慰める時は

よく使っていたと言った。加賀は匂いフェチなのだ。提督が

汗をびっしょり書いて脱いだ肌着が一番の好みだった。

 

「ずっとこうしていたいけど、ほら。赤城さんにも……ね?」

 

「あっ」

 

ここは一航戦の二人の部屋。赤城が部屋に戻って来たのだ。

 

「ちょっと近所のコンビニに行ってきたんですよ。

 アイス買いましたけど、提督も食べますか?」

 

「ありがとう。いただくよ」

 

赤城はいかにも機嫌の悪そうな顔をしていた。

ドアの隙間から二人がキスしているのを見てしまったためだ。

赤城はどんな時でも加賀と一緒にいるのを好むから、抜け駆けされるのが

嫌いだ。まして、今日は提督と気まずいことがあったばかりだ。

 

「赤城も抱きしめてあげるよ。おいで?」

 

「無理してそんなこと言わなくていいですよ。

 私なんて提督にとっては怒りっぽくて

 めんどくさいだけの女なんでしょうから」

 

赤城は提督に背中を見せながら畳の上に座り、

雪見だいふくの袋を開ける。赤城が無言で凍った大福を食べる。

加賀は涼しい顔をしていたが、提督は気が気ではない。

 

赤城の背中に声をかけた。

 

「赤城」

 

「……」

 

「なあ、赤城。無視するなよ」

 

「何か御用ですか」

 

「今日のことは謝るよ。俺もついカッとなっちまってな。

 赤城のことが嫌いだからぶったわけじゃないんだ。

 お願いだから機嫌を直してくれよ。仲直りしようよ」

 

「私は別に機嫌を悪くしてませんけど」

 

「赤城……」

 

加賀が「ふぅ」と息を吐き、赤城の耳元で何かをつぶやいた。

小声だったので提督の耳には入らなかったが、

「エンジン……最高速度……」などの言葉が混じっていた。

 

赤城と加賀が、わざわざ正座して提督の方を向いた。

提督は恐縮してチョコアイスの棒を落としそうになる。

 

 

「提督。少し話が変わるけどいいかしら?」

 

「おう」

 

いったい何事だ……。提督の心臓が破裂しそうになる。

 

「奴隷のイムヤ達には休む間もなく敵の基地を偵察させているのよ。

 それでね、最近、敵に奪われたピーコック島(ウェーク島)の基地に、

 大規模な敵戦力が集結しているのが判明したのよ。現在のところ、

 基地航空隊と、軽空母三隻を合わせた700機以上の飛行機がいるわ」

 

「大戦力だな。敵艦隊の規模は?」

 

「戦艦4隻、巡洋艦5隻を中心とした総勢40隻ね。あそこには

 輸送船や貨物船が多くて、そっちは100隻を超えているそうよ」

 

「戦艦4隻とは、すごい数だな。まさかそいつらを叩くつもりなのか?」

 

「そうよ」

 

「だが、戦力はどうするんだ? 赤城と加賀の飛行機を合わせても

 160機程度。全然足りないぞ。二航戦を含めても敵の半分程度か。

 ところであのふたりは朝から晩までどこへ行ってるんだ?」

 

「夜遊びね。蒼龍と飛龍は、鎮守府内で暮らすのが嫌なのよ。

 大嫌いな榛名と顔を合わせる度に殴りたくなるから、それを

 抑えるためにわざと外出時間を増やしている。夜遅くまで

 帰らないのはそのためよ」

 

ここで加賀が咳払いをする。

 

「話を続けるけど、……今作戦は敵が集結中の今の段階で

 強襲を駆けることがポイントになるの。

 そこで新型兵器を使うことにしたわ」

 

一航戦と二航戦は、神から授かった新型兵器を持っていた。

その兵器は提督が目にしたことのない、おそらく外国製の秘密兵器だった。

作戦の概要を聞いた提督は、最初は半信半疑だったが、加賀の自信に満ちた

瞳と説得力におされ、最後はすべてを任せることにした。

 

「歴史に名を残すほどの作戦になるな。頑張れよ加賀」

 

「はい。あなたの期待に沿えるよう頑張るわ」

 

「赤城もな。絶対に無事に帰って来いよ」

 

その一言を聞いた瞬間、赤城の中である光景が浮かび上がった。

鎮守府が崩壊する以前は、提督が出撃した空母の損傷を特に

心配して、いつも港で笑顔で出迎えてくれた。

 

『君達は戦うために生み出された存在だけど、本当は

 誰にも傷付いてほしくないんだ。だから俺は君達を

 危険な海域にはできるだけ出撃させたくない。

 それでも一航戦の赤城達には

 無理をお願いすることがあるかもしれない』

 

『良く帰って来てくれたな。

 さあ、今夜のメニューはカレーだぞ。

 たくさん食べて元気出してくれよな』

 

『今なら誰も見てないから、こっちにおいで。

 頭をなでてあげるから』

 

赤城は、たかが頬を叩かれたくらいで、翔鶴のことを

エコひいきしたくらいで、この人のことを嫌いにはなれなかった。

 

今でも提督の優しさに甘えたい。あの大きくて暖かい手で

頭をなでてもらいたい。でも生き返ってから提督にもらったのは

冷たい平手打ちになってしまった。だから意地を張った。

 

「赤城」

 

提督は赤城を抱きしめてくれた。

夢の世界でしてくれたのと同じように。

 

加賀の言ったとおりだった。提督は、艦娘が戦う存在である限り

優しくしてくれる。思いやってくれる。今回の作戦は、

一航戦と二航戦の本当に力を内外に見せつけることで

提督に改めて自分達の力を必要とさせるため。

 

妻であるとか恋人である以前の問題なのであった。

 

 

「私は提督のことを愛しています」

 

「ありがとう。俺も赤城のことを愛しているよ」

 

ふたりは布団の上で絡み合った。それに加賀も加わり、

三人で濃厚な夜を過ごした。決戦は明日だ。

 

 

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