初めての方は、当シリーズは「野良あかりとのセイカツ!!」続編……もといゆかりさん編? となっております。前作を読まずとも楽しめるようには書いておりますが、一応注意という事で。
まだ最後まで書けてはいませんが、プロットはもう大きく動かないだろう、定期的な投稿に耐えうる量は纏まっただろう。という目途が立ったので、で投稿始めさせていただきます。
それから最後に一つ注意点ですが、私は『狂信的なハッピーエンド主義者』です。
激動に感情が揺さぶられる一流のバッドエンドよりも、山も落ちもない三流のハッピーエンドの方が好きな人種です。
苦い幸せを噛みしめる複雑なメリーバッドエンドよりも、ご都合主義で単純なハッピーエンドの方が楽しめる人間です。
なので、その点だけ注意してください。
そして、その点だけは信じてください。
面白さは保証しませんが、それだけは保証します。
「では感覚の初期化も終わったので、そろそろ始めましょうか?」
「……分かった」
改めて目の前の女性を抱く……いや、挿入はしないのだから抱くと表現するのが正しいかは別として……いや、すでに彼女は膝の上にいるのだから既に健全的意味で抱いてはいるのか?
目の前の女性とこれから行おうとしている行為について意識してしまうと、そんなよくわからない思考が頭の中をぐるぐると駆け回る。
明らかな現実逃避だった。
とうに覚悟は決めたつもりだったが、だからといって完全に自分を納得させられたわけでもない。その事は自分が一番よく分かっていた。
けど……、でも……、そんな言い訳じみた思考を頭の中で循環させていると、やや下方から呆れたような声が響く。
「何ぼーっとしてるんですか、手を動かさないと何も始まりませんよ?」
意識を眼前へと戻すと、何もしてこない事を嗜めるように見上げる紫の瞳と目が合った。
カーテンの隙間から差し込む月明かりに照らされたその双眸は、まるで深い色をしたアメジストのようで。透き通るように、だがどこか秘密を孕んで妖しく輝く宝石は、見つめていると引き込まれそうになるほど美しい。
いや、目だけではない。
最近普通に家へと入り浸っている事が多いせいで意識していなかったが、彼女もまた道行く人が振り返るほどの美少女――いや、たおやかな弧を描きながらもきりっと引き締められた口元や、切れ長の整った睫毛は、美人という表現の方がしっくりくるだろうか。
体こそ確かに起伏こそ少なく、背も高くはないが、それは決して幼児体形だとか寸胴だとかいうわけではない。
むしろ、モデル顔負けのすらりとしていながら柔らかそうな腰のくびれや、その下に続く健康的な張りのある臀部の稜線。そういった自分の魅力を理解し最大限引き出す為の、体型が浮き出るタイトで薄いキャミソール。
くらりと来そうな大人の色香というものは、体形や外面ではなく、内側から滲み出るものだという事を本能へ直接理解させられる。
今からそんな彼女の躰を――
ごくり。半ば無意識に喉が鳴った。
(……そうだ、やると決めた以上いつまでも躊躇している訳にもいかないだろうが)
自分を叱責して、酒と緊張でからつく喉に力を入れる。
「……じゃあゆかりさん、触るよ」
「はいはい。まずは弟くんが思う通りに触ってみてくださいね」
そう答えるゆかりさんの声は、これから行われる行為にも関わらずいつも通りの落ち着いたトーンだ。自分だけ緊張しているのが馬鹿馬鹿しくなる程の気楽さに、こわばった指先に感覚が戻る。
(にしたって、あまりにも緊張しなさ過ぎだろ……)
もしかして、こういうことには慣れているのだろうか。いや、慣れてなければこんな提案してこない筈だ。
そんな考えが頭をよぎった瞬間、エロい気分がふつふつと湧いて来た。普段着のパーカーで家に上がりこんでゴロゴロしている彼女との落差が、或いはピシッとスーツで決めた真面目そうな姿とのギャップが、妙に興奮を煽る。清楚系AV女優とかいう、矛盾の塊がエロく感じるアレとおおよそ原理は一緒だ。
……だが興奮に任せて衝動的に触ってしまえば、待っているのは昨日の二の舞。身を任せるかのように力を抜いて、胸板にもたれ掛かる彼女の胸に優しく手の平を重ねる。
「んっ……まずは無難に胸から、ですか?」
手が触れた瞬間、ゆかりさんの体が小さくぴくり、と跳ねた。
薄いキャミソール一枚の上から、あまり力を入れないよう注意して指を沈め、ゆっくり全体をやわやわと揉む。改めて触って分かるが、ゆかりさんの胸は、手に収まってなお余裕というか、慎ましやかなサイズというか……実に
だが、埋められる指を押し返してくるのではなく、それを受け入れてくれるように優しく包み込んでくる柔らかさ。この例えようのない感触は間違いなく女性特有のそれで。その事実を指が確かめた瞬間、燻っていた欲望の炎ががめらりと燃え上がる。
折角手のひらにすっぽり収まるサイズなんだから力いっぱい揉みしだいてみたい。早くこの柔らかな胸と弾力のある乳首のコントラストを愉しみたい。スレンダーで小さな彼女の躰をベッドに押し倒して味わい尽くしたい……!
だがそこまで妄想が先走ったところで、ふと冷静な自分が待ったをかけた。
――そんな欲望に突き動かされるまま突っ走った結果、どうなったのかはお前が一番よく分かっているだろう?
――それとも、また昨夜と同じことを繰り返したいのか?
自責する心の声に欲望の熱は引き、代わりに自己嫌悪が氷点下まで心温を引き下げる。背中についた
「あー……乳房の大きさに関しては申し訳ないです。一応色々と考えてみたんですけど、やっぱりこればっかりはどうしようもなかったので。同じ大きさで練習させてあげれませんけど、ここは我慢してくれませんかね?」
指の動きが止まってしまったのを、自身の胸に対する不満故と誤解したのだろうか。見ればゆかりさんの整った眉が、珍しく申し訳なさそうなハの字を描いていた。
「いや、我慢とかそんな……わざわざこんなことまでしてもらっておいて、そんな事あるはずないから。……ただ、ちょっと昨日の事を思い出してしまって」
それを聞いたゆかりさんは「なんだ、そんな事ですか」と、年上の女性を思わせる――というか普段そう見えないだけで本人曰く、少なくとも精神的には年上らしいのだが――優し気な微笑みを浮かべた。
「だからこうやって同じ失敗をしないように練習してるんじゃないですか。弟くんが悔やんでるのはわかりますけど、だからって後悔しているだけじゃ何も変わらないですよ? ほら、キリキリ手を動かす!」
「お、おう」
促されるままに、というより勢いに押し切られるまま、再び手を動かし始める。
獣欲を抑え込み、恐る恐るさっきの力加減を維持して緩く優しく乳房を揉みしだく。
ふにふにふに……それから一分ほどだろうか、暫く痛くないであろう強さを心がけて愛撫を続けてみるも、ゆかりさんは何も言わない。
あまりに反応がないのが段々と心配になって、思わず聞いてしまう。
「……痛くは、ないんだよな?」
「ええ、それは大丈夫です」
「そうか、それなら良かった――」
すぐ返ってきた答えに安心したのも束の間。
「でも気持ちよくもない、というか刺激が弱過ぎてほとんど何も感じないですね」
遠慮も容赦もない指摘だった。
「確かに触り始めはこれぐらい優しくてもいいかもしれないですけれど、ずっとこんな触られているか触られていないか分からないような愛撫の仕方では、イかせるどころか感じさせる事すら難しいでしょう」
「う……」
どうやら昨日の事を意識しすぎて、逆によろしくなかったらしい。
「じゃ、じゃあこんな感じか?」
「……今度は力を入れすぎですね、少し痛いです」
「――っ、悪い!」
少し力を込めただけのつもりだったが、自分勝手に揉みたいという欲求が暴走してしまったらしい。
慌てて両手を引っ込める。
しかし痛いといった当のゆかりさんは、そんな事気にしなくていいという様にひらひらと手を振った。
「そんなに慌てなくとも大丈夫ですよ、これは練習なんですから失敗して当然です」
「いや、そうは言ってもやっぱり痛い思いをさせるのは……」
「ああ、私は痛みと苦痛が一致しないので別に平気ですよ」
「は? それってどういう……」
うーん、とゆかりさんは小首をかしげて言葉を選ぶ。
「改めて説明しようとすると難しいですね……入ってきた刺激の触覚と痛覚の違いは分かるけど、痛覚が刺激されても別に私の主観としては痛くないというか……ま、説明が面倒なんで結論だけ言うと、弟くんは痛い思いさせるかも、なんて事は気にせず色々試してくれればいいってことです」
「いや、そうは言われても……」
酒と興奮のせいだろうか、ゆかりさんが言っている意味が理解できず、やっぱり痛みは痛みじゃないかと思ってしまって手が伸ばせない。
暫く所在なく手を宙でさまよわせていると、その手をすらりと伸びた指に捕まえられた。
「もう……平気だって言ってるのに、弟くんは仕方ないですね。ほら、私がリードしてあげますから手の力を抜いてください」
はぁ、とゆかりさんは溜息をつきながらも、手に手を重ねて自分の胸の上に導き、そのまま胸を揉みしだく。
「んっ、さっきくらい優しくスタートして、少ししたらこれくらいの力加減で少しペースを上げて、マッサージするみたいに……」
まるで女の子が自分の手を使って自慰をしているような、そんな状況にエロさで頭がくらくらしそうだった。
だけどこの力加減を忘れないようにしなければ、と僅かに残った理性を総動員して体に覚え込ませる。
「んぁっ……そうそう、そんな感じです。それから、触る場所も正面だけじゃなくてですね……」
白魚のような手に誘われるまま胸の外側、薄くとも横乳……でいいのだろうか? 乳房の横の付け根辺りへ手を回す。
「弟くんは乳房の中心ばっかり触ってますけど、触られる側としてはこういう境界の方が案外はっきりと指を感じられたりするんですよ? ただ、私の小さいおっぱいだと弟くんの手に収まってしまうのでちょっとわかりづらいかもですけど……」
「いや、そんなことは――」
「いいんです、ちっさい自覚は十分にあるので気を使わなくても」
そう口にしながらも、重ねられたゆかりさんの手に少し力が入る。
普段そんな様子はなかったが、もしかして気にしているんだろうか? 何にせよ、あんまり触れないほうがいいのは確かだろう。
思考を切り替え、指に意識を集中させる。
(確かに、こんなところ触ったのは初めてかもしれないな……)
乳房のふもとは当然ながら脂肪が薄く、中心と違いほのかな柔らかさしかない。だが、すぐ近くの肋骨らしき硬さとの対比で柔らかさが強調されて、これはこれで指に心地よい。
気づけばゆかりさんの手が離れているのにも気づかず、境目の感触を確かめてみたり、手のひら全体で寄せて上るようにしてみたりと、手が勝手に動いていた。
「んぅっ、いい、ですよ……私も少し温まって来ました。それじゃあ、んっ、そろそろ次に行きましょうか」
はぁ……っ、と色づいた吐息をついたゆかりさんは、膝で立ち上がってこちらへ振り向き、躊躇なく薄紫のキャミソールをたくし脱ぐ。
ぱさり、軽く放られたキャミソールがベッドに落ちる。
いまや彼女の身を守っているのはキャミソールと同色の飾り気がないショーツだけで……くっきり影の浮いた鎖骨から、先ほどまで触っていた胸から、臍から……スレンダーで均整の取れたプロポーションが、月明かりというスポットライトの下で惜しげもなく晒されていた。
その光景はまるで美術館に佇む大理石の彫刻みたいで――
「――綺麗だ」
思わず素直な感想が口を突いてしまう。
だが、そう言った瞬間、ぴしっ! と両頬を叩かれた。
「駄目ですよ。私なんかに見とれたら」
屈めて目線を合わせた彼女は、口をへの字に曲げている。
「私はあくまで
本気で怒っている訳ではないだろうが、それでもはっきりと拒絶するような緊張を含んだ忠告。
頭の片隅に追いやっていた事実が意識の中心に無理やり引き戻され、罪悪感や気まずさが再び心中に薄暗い影を落した。
言われるまで忘れかけていた事すら後悔となって心に圧し掛かり、重さに耐えかね視線を逸らす。
「分かってる……分かってるって」
「うん、分かってるならいいんです」
それを聞いたゆかりさんは、自分の苦い表情とは逆に、再び優し気な微笑みへと表情を崩した。更には頬を叩いた手を頭の上へスライドさせ、そのまま子供を相手にするみたく、よしよしと撫でてくる。
「――って、いやいやいや、別に頭は撫でなくていいから」
「えー、そんな不貞腐れた顔してるのにですか?」
「それは不貞腐れてるっていうか……というか、そもそもそんなことされるような年じゃないし」
「弟君の方が私より年下なのは事実なんですから、気にしない気にしない♪」
そう言いながらも悪戯っぽくニヨニヨと笑うゆかりさんは、頭に置いた手を止めない。というか途中逃げようと頭を動かしたせいでむしろ悪化し、頭をがっちり捕まえられた。
引き締まった腕とすべすべのお腹にサンドイッチされ、大型犬でも撫でるようにわしゃわしゃと撫でくり回すゆかりさん。
香水なのだろうか、抱きしめられるうちにふわりと身体から漂う嗅ぎなれない香りに包まれる。
エキゾチックで、ほの甘く、どこか非日常的な臭いに心が少し軽くなる。
ここがまるではるか遠くの地であるかのような幻想に。これ自体が夢であるかのように錯覚に。
「……あー、もう! 次に進むんじゃなかったのかよ」
「おっと、そうでした」
少しだけいつもの調子を取り戻してそう言うと、ゆかりさんはぱっと離れてウィンクついでにわざとらしくぺろりと舌を出す。
もしかして今のは、あまり気に病みすぎないようにしてくれたんだろうか?
そんな考えが一瞬頭をよぎったが、それを聞こうとした時にはもう、ゆかりさんは向き合うように太腿の上へ、ぺたんとお尻を落として座ってしまった。下肢から全身へ、高めな体温がじんわりと広がる。
「それじゃあおっぱい全体を愛撫したら、当然先端も、ですよ♪」
そう言うと指全体で膨らみの先端、自分が知っているより少し赤味の濃い、ピンク色の乳首を強調するように胸を手の平で摘まむ。
そこは外気の冷たさゆえか、あるいは性的な興奮の為かピンっ、と自己主張していて、しゃぶりつきたいという衝動に駆られてしまう。
「乳首はおっぱいより敏感ですから、最初は撫でるみたいに優しく触るか……ふふっ、もし優しくできる自信が無いなら、舌や口を使っての愛撫も効果的だと思うんですけど……どうします?」
こちらの心を読んだような提案の前では、選択肢などないようなものだ。
「……だったら、口でしてみていいかな」
「勿論です♪ はい、どうぞ」
ゆかりさんは気楽な感じで答えると、幼子に授乳させるように口へと乳首を近づける。
目の前に緩やかな双丘がぐいっと近づいて来て――
「――んッ」
受け止めるよう無意識に出していた舌と先っぽが触れ合った瞬間、狭い肩がビクン、と跳ねた。
「っ、すまん、大丈夫か?」
今までと違う大きな反応に慌てて舌を引っ込めて顔を見上げると、ゆかりさんは痛いというより驚いたような表情を浮かべ、手の甲で口を押さえていた。
「……すいません、驚かせてしまいました。大丈夫ですよ、想定より刺激が強くて驚いただけですから」
「本当だよな?」
「ふふっ、弟くんは心配性ですね。さっきも言ったじゃないですか、私は痛みなら平気だって。さあさあ、続けますよ」
痛かったわけではないという事にほっとした一方で、ふと、彼女の発言が引っかかる。
(想定より刺激が強くてって……もしかして舐められたことないのか?)
経験があるからこんな『練習』なんて事を言い出たのかと思っていたのだが。
「もう、焦らすにしてももう少し後の方が効果的だと思いますよ?」
「そういうつもりじゃ……いや、分かった」
(さっき感覚を初期化したばっかりだし、それ込みでって事だろ)
一人で納得し、改めて左の先端に震える舌を這わせ、軽く押し込む。
「――っ!」
今度は心の準備があったからか声こそ出さなかったゆかりさんだが、頭の後ろに回された手に力が入ったのがはっきり分かった。
悪くなさそうな感触に安心しながら、だが先ほどの事もあるし――と慌てず一度舌を離して、乳首の輪郭をなぞるようにくるりと円を描く。
「……ろうはな?」
舌を乳輪に乗せたまま上目にゆかりさんを見上げると、切なそうなハの字を描く眉の下で、潤んだ瞳が細められていた。
「んっ……悪くはないですよ。ちょっと焦らされてる感じもあって……切ない感じが……んあっ」
先ほどよりも反応は良い気がする。やっぱり感覚を初期化したと言っても、乳首の方が胸よりも感じやすいという事なのだろうか。
でも、それなら昨日も……いや、もしかして試験期間だからって、ずっと触るのを避けていたのも問題だったのだろうか。
成年男子の性欲が衝動的なのは、当事者である自分が一番よく分かっていた。一度手を出したが最後、単位をまとめて落とすのは目に見えている、と。
だから勿論会話なんかはしていたものの、セックスはおろか自重が効かなそうだからって、じゃれあうことどころか、触れる事すら極端に避けてしまっていた。
離れるまでは毎日のようにしてたのに、
――三週間もの間、感覚が初期化された
「どうかしましたか?」
やっぱりそれも原因の一つなのだろうか、そう考えかけた所で、案ずるようなゆかりさんの声に顔を上げる。いつの間にか手は止まっていた。
そうだ、ゆかりさんも言っていたけど過去はもうどうしようもない。今できるのは、以前のように感じてもらえるようにする為、『練習』に集中する事だけだ。
「いや、何でもない」
「何でもないことは――んひゃあッ?!」
不意打ち気味に再び舌を張り付けると、驚きと快感の入り混じったような小さく可愛らしい悲鳴が上がる。
「――――っ!」
すぐに両手で声を押さえ込んだゆかりさんは、無言ながら抗議するようなじとっとした視線を頭の上から浴びせてきた。
(でも、好きにしていいって言われたし)
そんな子どもみたいな言い訳を盾に、舌を動かし続ける。
乳輪の境界をくるくると一通り舐めると、今度は先端の根元を磨き上げ、最後に先端部を撫でるようにして……周りから中心へと順々に寄せていくと、だんだん甘みが増していくようだった。それに合わせてゆかりさんの押し殺した吐息も深く、熱いものに変わっていく。
(……これなら、もう少し強くても大丈夫か?)
少し工夫したとはいえ、思い出しつつある今までのやり方でも順調に感じさせられているのではないか。
そう調子づいて乳首を甘噛したところで、ゆかりさんから待ったがかかった。
「……んっ、それはちょっと痛いですね」
「あっ、すまん……」
慌てて口を離して見上げると、ゆかりさんは眉根を寄せて不満を示す。
「謝る必要はないですけど、まだ感覚が育ってない状態で歯は刺激が強すぎです。途中まではすごく良かったのに……」
そう言いながらも彼女は胸を逸らせて、唾液塗れの乳房を突き出す。その中心では南国の花のように、怪しくぬらぬらと艶めく突端が戦慄いていた。
「――じゃあさっきまでの舐め方、復習がてらにもう少しやってもいいかな?」
痛みは平気と言っていたし、不満顔の理由は続けて欲しかったという事だろうか。そうあたりを付けて提案すると「まぁ」と努めて仕方なさそうな顔をしながらも、ゆかりさんはあっさり快諾してくれた。
「……あっ、ただ出来れば、もう片方を舐めてくれませんか? 今舐めてもらった方は少し慣れてきたので、後は手でも大丈夫だと思いますから」
「分かった」
実質両方とも刺激して欲しいという指示に、早速もう片方の乳房を口に含み、今までの方へは手を伸ばす。
刺激が強くなりすぎないよう、舌でやっていた動きを指でもう一度なぞるように、だが指は複数あることを活かして、二か所同時に刺激したり、他の指で先端を固定してから擦ってみたりと、触手になったつもりで指を蠢かせる。
勿論同時に、口の中に捕まえた方を唾液で念入りにコーティングしつつ、味蕾で性感神経を削り出すのも忘れない。
「ふぁっ、んっ……いい、ですよ……上手っ、です。もう少し、その……まま、続けっ、んぁっ……後っ、ちょっとでっ……ふぁんっ!」
声を出さないよう努めているのだろうか。
はっきり聞こえるほど鼻息を荒くしながらも、『練習』だからと律儀に、なんとか感想を伝えようとしてくれているのがいじらしい。
なにより後ちょっとという言葉に、久しぶりに女の子を絶頂させれるかもしれないという興奮が脈打った。
より一層神経を集中させて荒っぽくならないように。だが絶頂へと押し上げるよう、速度を上げて両先端を細かく刺激する。
「ん――っ!!」
ぴんっ、と指が乱れて乳首の先端をはじいてしまった時だった。
声のない絶叫が部屋の空気を震わせる。
それに続いてぶるり、と彼女の体が腰を中心に震え――一瞬硬直してから、へにゃりと弛緩した。
「はぁ……ふふ、何ですか……思ってたより、凄く上手じゃないですか……」
こちらに寄りかかって来た彼女の顔は、未だ凛とした余裕を残してはいるものの、絶頂の余韻が確かに緩んだ目尻や薄く開いた唇を色付かせている。愛撫の腕について、というのは気恥ずかしかったが、それでも褒められれば悪い気はしない。
なにより、昨夜の一件で打ちのめされた自信も少しだけ蘇った気がした。
そんな自信が表情に出ていたのだろう。数度深呼吸して息を整えたゆかりさんが、ビシッと指を突きつける。
「ただし! 私は感覚を初期化したといっても、まだついさっきの事なので、以前の記憶が強く残っているから簡単にイかされたのであって、本番でも最初から同じ反応が得られるとは限りませんからね?」
先ほどふと疑問に思ったことは、どうやら的中していたらしい。
「そうか、やっぱり長いことしてなかったの上手くいかなかった理由だったか……」
嘆息して肩を落とすと、申し訳なさそうなゆかりさんと目が合った。
「……まぁ、それについては一緒に暮らすようになればすぐ行為に及ぶだろう、と想定してた私の責任もあります。一言説明しておけば良かったですね」
「いや、ゆかりさんのせいじゃ……ん? って、いやいや! そんな想定されてるのは、それはそれで性欲に溺れてるみたいでいやなんですけど!?」
「でも、前は毎日のように求めてたんでしょう?」
「いや求めてって……いや、はい、うん。まぁ、否定はできないけどさ……」
「聞きましたよ、私が尋ねた日もヤってたそうじゃないですか? いやー、あの時は真面目そうな男の子だなー、って思ってたのになー?」
「いや、その……あーもう! 今はいいだろ? 兎に角参考になったからさ、ありがとうっ!!」
否定しようとして思い返し、けどあんまり否定できる要素が無くて、やけくそ気味にお礼を言ってゆかりさんを押しのけようと、彼女の肩に手を伸ばす。だが――
「何終わった気でいるんですか。まだ、女の子の一番敏感なところを触る『練習』、してないでしょう?」
するりと捕まえられた手が、下の方へと持っていかれる。行き先は、お腹の下で彼女を守る唯一の布の前。
「やっぱりそこも、か?」
散々胸を触っておいてなんだが、いざそこまで触るとなるとやはり抵抗感がある。『練習』なんてもので触っていいところじゃないだろう、と。
だがゆかりは、そんな躊躇などなさそうに腰に片手を当てて。
「当たり前です。そもそも一番敏感だからこそ下手に触ったら痛い思いをさせるんですから、最も練習しておかないといけないところじゃないですか」
「確かにそりゃそうなんだが――」
「それとも、弟くんは今後ずーっと挿入はせずに、おっぱいだけ触って終わりで我慢を続けるつもりですか?」
「うぐ……」
それは無理だ。そんな生殺し、耐えられるわけがない。
今だって下半身には血が集まって硬くなっていて、目の前にいるのがゆかりさんであるにも関わらず、心の中の獣性がこの雌に入れさせろと吠えていた。ギリギリ理性が優勢だが、天秤は頼りなく本能と理性の間をゆらゆら揺れている。
「ほらほら、もうおっぱいを触った時点で選択肢は無いんですから。毒を喰らわば皿までも、ってやつです。それに……ほら、私だってさっきのでこうなっちゃったんですから――」
そう言いながらくいっ、と腰を突き出して、クロッチの部分をゆかりさんは強調する。
奥に隠された泉からあふれた体液で、楕円状のシミが薄く浮かんでいるそこを。
薄闇の中で見えずとも、指先だけではっきり分かるほどに熱くぬめった秘所を。
「――練習のついでに、少しくらい慰めてくれてもいいじゃないですか」
「お、おう……」
抵抗感が無くなったわけではない。ただ、美人からのエロいおねだりの前ではそんなもの無抵抗に等しかった。
「じゃあ弟くんがやる気になったところで、触りやすいようにもう一回座りなおしますね」
半分心ここにあらずと言った返事を聞くや否や、ゆかりさんはくるりと再度体を回転させると、最初のようにこちらへ背中を預け、触りやすいよう膝小僧を自ら掴んで脚を割り開く。所謂М字開脚の体勢。
「はい、どうぞ」
「い、いくぞ……?」
やたら気楽にコトを進めようとするゆかりさんとは逆に、こちらは緊張で震える声を絞り出すのが精一杯で。震える指をなんとかパンツの前面から秘所へと手を差し入れる。
入れた瞬間にじっとりとした熱っぽい蒸気が指を纏い、そのまますぐに発生源である湧きたての源泉へとたどり着いた。
(熱っつ――)
これだけでも心地よく、指がふやけるまで浸かっていたいという誘惑が沸き起こるが、それでは愛撫にならない。
指を伸ばしてぬちぬちと峡谷を分け入り、その内部へと侵入する。
(経験が少なくても感じ易いっていうし、先ずはやっぱクリからだよな)
源泉の秘穴へどっぷり浸かりたい欲求を押さえ、手前側へと指を曲げて秘裂の中を手探りで動かす。
「こことか……どうかな?」
ぬるぬると絡みつく肉ひだの中をかき分けるようにして二、三度往復させるうちに、柔肉の中で指を押し返すぷっくりとした膨らみを見つける。しかしパンツで見えない上に、ゆかりさんの反応も薄くて今一つ確信が持てない。
「うーん、触っている場所はいいんですけど、感覚初期化のせいか刺激が強すぎる気がするんですよねぇ……そうだ、試しにパンツの上から触ってみてくれませんか?」
「……と、こうってことか?」
言われた通り下着から手を抜いて、クリのあたりを狙って秘裂の上へ浮かんだ染みをくすぐる様になぞる。
「あっ……そうです。最初は、それくらいが一番……んんっ、気持ち、いい、です」
答えている間にもゆかりさんの声に艶が混じり始め、腕の中で小さく身を捩った。
「下着の上からの方が、繊維とかで擦れて刺激が強そうなもんだけど……そうでもないのか」
「弟君だって、さっきズボンの上から擦られて、もどかしそうに、んっ、したじゃないですか。あれと一緒ですよ」
「……確かに」
そういえばそうか。
自分もやられて理解しているはずなのに、言われるまで案外気づかないものなのかもしれない。
変な所で感心していると、空いていた手へとゆかりさんが手を絡めてきた。
「ほら、もう片方の手は空いてるんですから♪ もう一回イかせるつもりで、ここだけじゃなくておっぱいの方も……ね?」
再び手を胸のところへ持っていかれ、そうだったと手を動かし始める。
先ほどまでの力加減を思い出して……と、遠慮がちに揉み始めたところで、ゆかりさんが顔を見上げて潤んだ瞳で口元を緩ませる。
「ん、一回イかせてもらったのでもう少し強くても大丈夫そうです。今なら、弟くんがさっきしたかったみ
たいに、もみくちゃにしてもいいんですよ」
上気した頬と熱っぽい吐息、それに交じるエキゾチックな香りが脳をくすぐり麻痺させる。まるで旅先で一晩の過ちを犯すような興奮が、理性を溶かす。
「いいんだな?」
聞いた時には既に、ぎゅむっと獣欲に任せて手にすっぽり収まるおっぱいを鷲掴みにしていた。
「――んっ?!」
ゆかりの口から先ほどイった時よりも一回り小さな、だが悲鳴が上がる。
「っ――すまん、大丈夫か?」
「大丈夫、ですよ? ただ、いきなりだったのでちょっとびっくりしただけですから……」
痛かったのか? と反射的に思ってしまうが、今までの反応を思い返せば、ゆかりさんは痛いときには無反応だった。それにパンツにも先ほどまでよりシミが広がり、布の上からですら秘裂をなぞる度にじゅくじゅくとした強い粘性を感じる。
「もしかして、またイった?」
「まぁ……軽く、ですけど」
思ったより刺激が強かったのだろうか、そう言ってゆかりさんはふいっ、と顔を背けた。
今まで割とオープンな感じだったために、恥ずかしがっている仕草はギャップがあってなかなかクるものがある。
とはいえそれを口にすれば、多分また「そういう事は本番で言ってあげて下さい」とか怒られそうだ。……全くその通りなのだが。
と、いかんいかん。首を振って沈みかけた気分を立て直し、目の前に集中する。
「そっか、それじゃあちゃんとこっちでももう一回イかせないとな」
指の動きを再開しながらそう言うと、ゆかりさんも少し調子を取り戻したようで
「そうですよ、そうじゃないと前戯の『練習』になりませんからね」
と、顔を逸らしたついでに浮いた背中をこちらに預けなおした。
だが一度クリを触られている間に軽イきしたからだろうか、さして時間のたたないうちにゆかりさんの体はぴくぴくと小さく断続的に震え始める。
絶頂が近い事を察してそれに合わせるように指を動かすペースを上げる。と、ぎゅっと汗ばんだ足に力が入って太ももを締め上げられ――
「あっ! っんぅ――!!」
大きなものではないが今までと違ってはっきりとした声の混じった悲鳴と共に、ゆかりさんのほっそりとしたつま先がピンと天井を向く。
月明かりに照らされた白磁のようなふくらはぎがふるふるっ、と痙攣して――くたりとベッドに落ちる。
腕の中で背中を丸めていたゆかりさんが、くたりとこちらへ倒れ込んで見上げてきた。
「ふぅ……なかなか、はぁっ、上手でしたよ……弟くん♪」
「いや、それはゆかりさんが丁寧に教えてくれたからだし」
「そういう訳でも、ないですよ。……ふぅ、もちろん全部が全部よかった訳ではないですが、最初から上手なのもありましたし……もっと自信を持ってもいいと思います」
……ああ、そうか。
言われて、ようやくゆかりさんが何故こんな『セックスの練習』なんて突飛なことを言いだしたのか、その真意を理解する。
「すまん、気を使わせてしまって。しかも、わざわざこんなことまでさせて――って痛っ?!」
自信を付けさせるためだけに、自分の体まで使ってわざわざこんな事を。そんな申し訳なさから俯こうとした瞬間、額へビシッと弾かれたような衝撃が襲う。
目を白黒させながら顔を上げると、恐らくデコピンをくらったのだろう。頬を膨らませた彼女は、伸ばした人差し指をこちらへビシッと突き付けている。
「そうじゃないでしょう?」
いきなり何するんだ、と頭に疑問符を浮かべながら額を押さえていると、ゆかりさんは如何にも不満げな表情で口を開いた。
いや、そうじゃないって何が――少し考えて、そういえばさっきも似たような展開で同じようにされたんだったと思い出して、言い直す。
「……ありがとう、ゆかりさん」
「はい、どういたしまして♪」
ゆかりさんは歯をニッと見せて再び頭を撫でてくる。
「――っていやいや、頭は撫でなくてもいいから」
「遠慮しなくたっていいんですよー、私の方が年上なんですから、弟くんはこれからも遠慮せず、困ったことがあったら何でも頼ってください」
大型犬でも撫でるみたいにわしゃーっと髪を一通りかき回して満足したのか、ゆかりさんはようやく手を離して、それから少しだけ真面目な表情になって。
「……それじゃあ、私も影ながら上手くいくよう応援してますから、気負いすぎない程度に頑張ってくださいね」
そう言って、友人同士がやるみたいに握ったこぶしを突き出してくる。
「……ああ、本当にありがとう」
再度お礼を言ってから、ゆかりさんのこぶしに自分の拳を軽くぶつけた。
……ここまでしてもらったんだ。
次こそは
誤字脱字指摘及び、このタグつけた方がよくね? というのは随時募集しておりますので、よろしくお願いします。
感想は……「野良あか」の続編を一応語っておきながら、今のところはコレですからね。ボロクソに言われてミートマレットで叩かれてマリアナ海溝から劣化ウラン詰めにされてマントルに沈められても何一つ反論できないので……お手柔らかにお願いします……。