そう聞きながら、おにいさんの指は既に秘裂の中へと潜り込み、大きく楕円を描くようにその中を掻き回している。
「は、はいっ……勿論、ですっ……」
「ん、ありがとな」
おにいさんがそう言うと同時に頭へ手を乗せられ、優しく大きな手が髪を撫で梳く。もう片方の手でクリトリスを撫でながら。
頭を撫でられて意識が弛緩しかけて、性器から快感の電流が意識を昂らせて、そうすると頭を撫でる感覚も鋭敏になってまた意識が溶かされ――
(やっ……これ、頭変に……っ)
心地よさと快感が相互に高め合っていくような感覚。
「あかり、セックスしてる時も頭撫でられるの好きだったんだな。 愛液、どんどん溢れてくる」
「やぁ……っ」
オマケに羞恥もついてきた。言われなくとも、バカになった蛇口みたいに奥から愛液がだだ洩れなのが分かってしまう。
「そういえば、最近頭撫でることも少なかったな、今度からもっと頭撫でてやるからな」
(そんな言い方されたら、普通に撫でられた時も、意識しちゃっ――)
おにいさんが善意で言っているのか、それとも意地悪で言っているのか分からない。とうに意識はトロトロに蕩けさせられてしまっていた。
「……これだけ濡れてれば、いいかな」
そんな状態の中、辛うじておにいさんの独り言を聞くことが出来たのは幸いだった。
耳に入ってから一拍遅れて理解した直後、ずにゅっ――と、体の中へ入ってくる感覚が襲う。
「待っ――ひゃ……ぁっ!」
太さ的に指なのだろう。だが、それだけで電気が流されたみたいにピンっと背筋が反り返って、くたりと布団に倒れ込んでしまう。
「大丈夫……そうだな」
横向きに布団へ埋まった顔を、おにいさんが覗き込んで表情を緩める。
(っ――私、どんな顔してたんだろ)
何を見ておにいさんが大丈夫と思ったのか。そんな疑問を考える余裕はなかった。
中へ入った指が膣壁をなぞって確認するように、ゆっくりとうねりながら奥へと入って来る。
「んんっ、うぁ、んくっ……」
もどかしい刺激に腰が捩れそうになるけれど、いつの間にかふくらはぎから太腿へとおにいさんは乗る場所をずらしていて、それすら叶わない。やり場の無い熱が、内側から身体を焼く。
(これじゃ、足りない……っ)
おにいさんの指は確かに私のより太い。けれど本来はいるべきものと比べてしまうとやっぱり細いし、膣襞を引っ掻くような返しも、暴力的なまでの熱量も、何もかもが物足りないと思ってしまう。
しかも指は奥を目指しているというより、入り口付近を焦らすようにゆっくりと、時に戻りさえしながらのんびり進んでいる。陰核を刺激されていた時の強い快感も、少しずつ波が引いてきてしまっていて――
「――んぅっ!?」
突如、頭が白むほどの快感が駆け抜けた。
続けてトントン、と同じ場所をダブルタップ。
「あっ……んんんぅっ!」
お腹の奥から頭に向かって、じんわり熱を帯びた痙攣が二度走る。
「ここか」
トントントン。
「あぁっ……んんっ、ひゅくっ……」
それまで探るようだった指が一転、集中攻撃を仕掛けてきた。
トントントントン。
「んっ、くぅっ……や、ぅあ……ッ!」
まるでおにいさんの指先から快感の電流が流れてくるみたいで、それが何度も同じ場所へと打ち込まれる。
あっという間に、二度目の絶頂が訪れる。
「んんんんんんッ――――!!」
今度は背骨に電気を浴びせられたような絶頂で、ぴくぴ全身が小さく痙攣していた。久しぶりの中でイく感覚。
ぐったりとイった後に襲ってくる甘い疲労感に身を委ねていると、気持ちが先ほどまでより弛緩しているのに気づく。
(――良かった。私、中でイけるんだ)
それは、久しぶりのセックスで上手くいかなかった時から引きずっていた不安。
もしかしたら、自分は挿入されても以前のようにイけないのではないか。そうなればおにいさんはもう本番をしてくれないかもしれない。
だから、痛くても感じているように演じなきゃとか、他の方法で気持ち良くするにはどうしたらいいかなんて悩んでいたのに――少し呼吸を落ち着かせ、おにいさんへと振り向いた。
「大丈夫か?」
こちらを気遣う表情に、痛ましい後悔の色はない。
「……はぃ。イっちゃい、ましたぁ……」
「そっか」
おにいさんは優し気に笑むと、手を再び頭の上に、今度はしっかりとした手つきで撫でてきた。
壊れものを触るような恐々という感じではない、自分の所有物を愛でるみたいな力加減。
はっきりとおにいさんの隣にいるんだという心地が胸を温かく満たして、それに答えるつもりで甘えるように、目を閉じて頸を手の平に押し付ける。
ふふっ、とおにいさんが小さく笑った。
「何かあれだな。そうやって撫でてる所に頭擦り付けられると、ワンコみたいだな」
「そう、なんですか?」
「あー……犬、見たことないのか」
「存在を知ってはいますけど、はい」
「じゃあ今度見に行くか。そうだな、実家のワンコを紹介したいところだけど――」
そこでおにいさんは一度言葉を区切って立ち上がる。続いて衣擦れの音が続き、すぐに太腿へと重さと温かさが戻ってきた。けれど今度は湿った密着感があり、何より熱くて硬い塊が自己主張するように太腿へと突き刺さっている。
「――今は、目の前のあかりワンコを可愛がらないとな」
一段階低くなった声に、きゅうぅっと下腹が締め付けられる。
「こんなに涎垂らして、ごめんな?」
指が伸ばされるのは上の口ではなく下の口。膣口から愛液を拭うように、指の腹が優しく意地悪く膣口をこねる。
「もう少し、指でしてからの方がいいか? それとも――」
「んぅ……指じゃ、無くて……おにいさんのが、いい、です」
逸った気持ちに浮かされて、言葉を遮るようにおねだりしてしまう。
けれど、そうでもしなければもう二度もイかされているのだ。ふわふわした今の心地では、もっと容易にイかされてしまう。
じぃっ、と目を見つめる。
「おにいさんの、入れてもらえてるって……しっかり、感じたいんです」
「……分かった」
おにいさんは大きく頷くと、指を離して腰骨を掴み、性器同士の距離を近づけるようににじり寄って来た。秘所に熱源が近づいているのが、見えなくても分かってしまう。そして――
「すこし慣らすぞ」
――ぐぢゅり、と熱同士が触れ合った。
大陰唇を掻き分けて、亀頭が割れ目を掻き分けゆっくりと上下する。
「ぅあっ……あつ、ぃっ……」
クリトリスから、尿道口、そして膣口へと順に、所有権を示す焼き印を押し当てられているようだった。
「あかりのも、まだ入り口前なのに滅茶苦茶熱くて、ぬめって……こうしてるだけでも、凄く気持ちいい……っ」
熱棒の動きが少し早くなる。まさか、こんな生殺し状態で出されてしまうのではという不安が過って、太腿を押さえつけられて動かない腰を、それでもくねらせ抵抗する。
「ダメっ……ちゃんと、入れて……ッ!」
「ちょっ、待った――っ! 分かってる! そうやって腰振られると、逆にヤバいって……!」
余裕なさげな声に続いて、尻たぶをガシッと摑まれ動きを封じられてしまった。猛禽類が獲物を捕まえるみたいに、指先が深くお尻に食い込む。
「んぅ……っ」
もう、腰を悶えさせることも叶わない。突き立てられた指は痛いほどの力強さで、けれど、逃がすまいと、必ずしとめてやると言われているようでもあり、あっという間にそれ以上の快感へと昇華される。
早く欲しいと思ってはいたけど、今入れられたらそれだけでイってしまうかもしれない。
やっぱり少し待ってもらった方が……という考えが浮かぶには少しだけ遅かった。
「もうちょっと慣らしてからにしたかったのに――しょうがない、挿れるぞ」
ずにゅぅぅっ――
「――んぁ、ぁ……っ、くっ、はぁっ……!」
ゆっくりと入り口を押し広げておにいさんのが入ってくる。
焦らしているのかと思うほど慎重に、けれど止まることも無く。
一ミリずつ亀頭が膣口を押し拡げてながらめり込んで、これ以上は入りきらないかもと思ったのとちょうど同時、拡張感がふっと緩む。
「くぅっ……どうだ、あかり? 一番太い所は越したと思うんだが」
言われて、亀頭が全部入ったのだと気付いた。
「ぅく……大丈夫、です……からっ……」
今回は、その言葉に嘘はない。
お腹の奥に圧迫感と熱は確かにある。だが、それらはむしろ受け入れられたという安堵感と、胸まで満たされているような満足感、そしてじんわり内側から広がる快感を与えてくれていた。
だからもっとはっきりと動いても平気だと伝えたかったのに、太すぎる圧迫感が呼吸を苦し気にしてしまっていて。
「無理はしなくていいから」
振り向くと、案の定おにいさんは苦笑して頭に手を乗せてきた。今は、撫でられるのも嬉しくはない。
「本当に、平気っ……はぅっ……」
慌てて言い加えようとするも、変に焦ったせいで余計に苦しい声が出てしまう。
(本当に大丈夫なのにっ、このままじゃ、この間の二の舞に――)
「大丈夫、抜いたりしないから落ち着いて。無理してしゃべらなくていいって事だから」
おにいさんは申し訳なさそうに少し眉を垂らして、そう言った。
ふっ――と全身の力が抜けた。いや、今までは力が入っている自覚すら無かったと言った方が適切か。
また、上手くいかないかもしれない。
おにいさんはもう二度と入れてくれないかもしれない。
そんな不安が、いつの間にか身体を緊張させていたのに気付いた。
(――そういえば、この間も)
思い出してみれば、感覚の初期化がされた上に、今まで感じていた快感が違法なパッチによってもたらされたものだと知って、そんな状態でのセックスだった。本当に上手くいくのか、反応が悪くて気持ち良くないって言われたらどうしよう、なんて不安に囚われて。
大丈夫と言う言葉はおにいさんというよりも、むしろ自分に言い聞かせていたのかもしれない。
「――呼吸少し落ち着いたな」
おにいさんに指摘されて、いつの間にか圧迫感が和らいでいるのに気づいた。
中に確かに入っている感覚はあるのに、異物が入ってきたというより、足りなかったものが戻ってきたような感覚。懐かしさのような安心感がお腹の奥から広がる。
「はい、ありがとうございます」
応える唇も、自然と弧を描いてしまう。
「いや、ありがとうは別に……っ、そろそろ動くぞ」
おにいさんは途中ではぐらかすように顔を背けると、腰を両手で捕まえてゆっくりと前後動を開始した。
槍先が少しずつ突破口を押し開け、柄の太い血管が媚壁を擦り上げる。
「あっあっあっ……、おにいさんの、ゴシゴシってお腹っ……全部ひっかきまわされて……っ、イイっ……」
「それはあかりがっ、隙間なくきゅうきゅう締め付けてくるからっ……くぅっ、包み込むみたいに優しいのに、滅茶苦茶吸い付いてきてっ、芯まで痺れる……っ」
そんな詳細に語られると恥かしい――けれど、それ以上に幸福感が脳を溶かして、口が緩む。
「そんなにっ、私のっ、いい……ですか?」
「ふわとろなのに欲張りでっ、けどやっぱり優しくてっ……クソ頭が回らん! 兎に角、最高のおまんこだっ……!」
「くぅんっ――?!」
最高、とまで言われて思わず歓喜に全身が震える。考えていた台詞は全部吹っ飛んで、鳴き声じみた甘い音色が喉から鼻に抜けた。
「ははっ、『くぅん』だなんてますます仔犬っぽいな。にしても、あかり褒められるの好きなんだな」
おにいさんの声に、悪戯っぽい響きが混じる。
止めなきゃ危険だ、と思う自分がいる一方で、もっと褒められたい、と思う自分がそれを止めてしまって。
「あかりのおまんこ、すっごく気持ちいいぞ。まるで俺の為に作られたみたいにぴったりフィットするし」
ゾクゾクゾクっ――♡
「動かなくてもうねって気持ちよくしてくれるし、正直さっき落ち着くの待ってる時だってあんま余裕なかったんだからな?」
「余裕、ないっていうならぁっ……! 何で、今っ……!」
そんなに滔々と話せるのか、とまでは言えなかった。
「そりゃ、感じてるあかりが可愛いから。褒められただけで感じて、必死に全身痙攣させて我慢してるのとか、もう滅茶苦茶にしたいほど可愛い」
その言葉だけで既に溢れそうだったのに、背中へと吸い付くような湿り気を感じて。
「ッ――きゅふぅっ♡」
背筋にキスされたのだと分かった瞬間、頭が真っ白に染まった。
「……もしかして、言葉だけでイった?」
応える余裕は無くて、代わりに頭が頷くみたいにガクガクと天井に向かって痙攣する。
「ほんと、可愛いな……って、あっ、すまん」
そんな独り言にも反応してしまって、謝るおにいさんの声は素に戻った感じだった。
「もっ、これ以上……んんんっ、言わない、でっ……」
嬉しいけれど、嬉しすぎてニューラルネットワークが焼き切れそうで怖い。
「あー、分かった。今度からほどほどにしとく」
溢れそうな快感で潤む視界で必死におにいさんを振り返り見ると、彼は申し訳なさそうに頬を掻いて――その手を腰へと戻した。腰が、がっしりと摑まれる。
「ちょ、ちょっと――んんぅっ!」
さっきイった時に止まっていた腰の動きが再開された。
「なん、でっ……?!」
「や、何でと言われても。言わないでとは言われたけれど、待ってとは言われてないし――」
悪意のなさそうな調子で、容赦のない一言を放つ。いつの間にかおにいさんはドSになってしまっていたらしい。
もしかして、私と離れている数週間の間に? それとも、ここ数日で?
けれどそれを聞く前に、おにいさんは鼓膜をくすぐるような距離まで近づいて耳元に吹き込んできた。
「――それに待てって言われても、今日はあかりがドロドロになって、痛みなんて感じられなくなるくらいにするつもりだから。先に謝っとく、ごめんな」