顔から火が出そうだった。体温維持機能が壊れたのかというくらいに身体が熱くて、全身の毛穴から汗が噴き出す。
どんな事をされてしまうというんだろうという期待が想像を暴走させ、ニューラルネットワークが焦げ付きそうな勢いで稼働する。
そこまで求めてもらえること自体が達しそうなほど嬉しくて――そしてその理由も、痛い思いをしないで欲しいという気遣いであることが、胸が張り裂けそうなほど嬉しかった。
少しでもそんな気持ちに応えようと、おにいさんの逸物を抱きしめるように膣を締め上げる。イったせいで力が入らない分は、太腿から寄せて圧を追加。
「ッあ……っ! やわいのに、締め付けられてっ――くぅ、ぅぁっ……これじゃこっちが先に……っ」
「いいん、ですっ……あぁっ、もう、私はっ……イっちゃって、んぅうぅっ、ます、からぁっ……」
内腿を摺り寄せるようにして肉槍に奉仕すると、おにいさんの口から野太い悲鳴が上がる。それに伴い腰の動きが少し減速するけれど、摩擦感でそれを上回る快感を与えられている――と思う。
顔が見えないから、どれだけ気持ちよくなってくれているか分からない。だからこそ全力で、全身を使って肉幹を絞り上げる。
けれどそれは、密着感が上がった分自分へ返ってくる快感も増大してしまう諸刃の剣で。
(~~っ! ごりゅごりゅって、食い込んでっ――形も、熱さも、脈動も、全部分かっちゃって……っ)
詳細に送られてくる逸物の情報が頭の中で像を結び、記憶に刻み込まれる。身体だけじゃなく記憶も、心も、おにいさんのモノでマーキングされてるみたいだった。
どちらが先にイくか、後はもうお互いの我慢比べになっている。
(だから、おにいさんを絶対に先にイかせて――っ?!)
突如、お腹の奥へ走った鈍い衝撃に、閉じかけていた視界が限界まで見開かれる。
見慣れた天井が目に入って――キラキラ星が煌めく。
「――あっ……んやあぁぁあぁぁぁ――ッ!」
ワンテンポ遅れた快感の津波を叩きつけられたのはそれからだった。
おにいさんの声が背後から聞こえる。隠された財宝を見つけた時のような弾んだ声。
「そこ――かっ!」
ズン――先ほどと同じ刺激が叩き込まれた。
「っは、んぅうぅっ……はッ……♡」
肺から空気を絞り出すような、もはや苦しさすら感じるような嬌声に、けれど追撃は止まらない。
ズン、ズン、ズン――ッ!!
「っ――! っぁ――♡ っ――――はぁ……ぅッ♡」
お腹の内側から殴られるみたいな衝撃。痛みではなく快感を伴う打突。
一撃ごとに叩き込まれる、意識を吹き飛ばすほどの快感。
「んうぁ……っ、はっ……はぁん――ッ♡」
一突きごとに小さな絶頂の頂きに昇り詰め、しかも一発ごとに少しずつその標高が上がっていく。
そんな刺激が耐えることなく一定の律動で叩き込まれるのだから堪らない。
「ぁおっ、んおっ、んひぃッ……! んぅうぅっ♡」
「……く、あっ。凄い声だな、そんなに……いいの、かっ?」
既に真っ赤な肌が、羞恥でより一層赤熱する。
良くない。これでは快感の暴力だ。でぃーぶい、とかいう奴なのかもしれない。
おにいさんに聞かれたくないような声――というよりもはや鳴き声は、止めたくても止められなかった。
ちょっと待ってと言おうとしても、喉が勝手に不明瞭な喘ぎに翻訳してしまう。
(ひどいっ、ひどいよぉっ――♡ 気持ちいいトコだけ、なんて……っ。これじゃ――全然集中出来ないぃ……ッ♡)
今更ながらおにいさんがGスポットを徹底的に突き潰していると気付く。しかも、そのペースは絶頂へと駆り立てるように段々と上がってきていて。
身体で抵抗しようにも、もう膣は締められているのか感覚が無くて分からないし、脚だってもう快感に耐え兼ねて滅茶苦茶に暴れてるのをおにいさんの体重で押さえつけられている状態だ。
先にイかせなきゃなんて決意はとっくに押し流されてしまっていて、酸素不足の頭はぼんやりと無抵抗になっていく。
「あかりも、我慢しなくていいから、なっ……俺もっ、すっごく、気持ちいいから……っ」
だから、おにいさんのそんな言葉に従ってしまっても仕方がない。
「んんん――ぁッ♡」
ぷしっ――と、お腹の中でグツグツ煮立って渦巻いていた快感が、風船が割れるみたいに爆ぜた。
「うおっ――?!」
驚いたおにいさんの声がして、視界のピンボケが少し鮮明になる。腰が止まっている……?
「っ――!?」
視界に続いて戻ってきた触覚で理解した。自分の股や太腿が派手に濡れているのを。しかも愛液とは違う、もっと水っぽい湿り気で。
「あっ、んぅ……も、もらしちゃって……る?」
汚してしまった事を謝ろうと、必死にのろのろと振り返って、目に入ったのはおにいさんが液体を掬い上げた指を口に入れている所だった。
「あっ……あぁっ……!」
「んー、多分だけど潮じゃないか? 大丈夫、漏らしてないよ」
全然大丈夫じゃない。恥かしすぎる。熱暴走する寸前だ。
それに恥かしすぎるというのも勿論あるけれど、下腹から膝までびっしょりとした感覚が肌に張り付いていて、盛大に布団を汚してしまったのは間違いなかった。しかも、確かこれは私の布団じゃない。
「おにいさんの、お布団……汚しちゃって……」
「いや、布団ぐらい洗えばいいから」
おにいさんはむしろ心底楽しそうな笑みを浮かべる。
「あかりがそんなに感じてくれたんだなって事の方が嬉しくて……ってヤバいな、こっちもあんまもう余裕ないかも。……続けていいか?」
何で今更それを聞くのか、やっぱり今日のおにいさんはドSだった。
正直イかされまくった余韻が残って意識がチカチカするし、呼吸は最大負荷をかけ続けた後みたいに苦しい。
けれど、おにいさんがあと少しでイってくれるなら……私が気持ちよくなって、そんなに嬉しそうな顔をしてくれるなら……。
「うん。いい……よ♡」
息が足りなくて途中声が出なかったけど、大事なことは伝わった。
おにいさんの喉が大きく上下して唾液を呑み込み、腰の動きが再開される。
「んぁあああッ♡ あっ、くぅ……んッ♡ んゆうぅぅ――ッ!」
ドスン、ドスン、と威力を増した力強い打撃が弱点に叩き込まれた。
快感を与える為というより得るための荒々しさは、なおも内側から甘い衝撃を響かせる。だが、それでも先ほどよりは狙いが甘く、その分意識がはっきりしてしまい。
ぷしっ、ぷしっ――!
「ああぁっ! やぁっ、ダメっ――! 止まんないぃっ……!!」
クリーンヒットするたびに、勢いよく間欠泉が噴き上がる、その様が生々しく意識されてしまう。
執拗な精密狙撃で抵抗を放棄してしまったのか、あるいは酸欠の頭に擦り込まれてしまったのか。さっきより快感自体は小さいのに溢れる量が半端ない。
「すごいな……ドリンクバーのボタン押したみたいにどんどん出てくる」
「やっ、ひんっ……違う、からっ……飲んでも、んうっ、美味しくない……っ」
しかも意識がはっきりしていることが災いして、おにいさんの言葉が容赦なく鼓膜からイジめてくる。
「本当か? ――んくっ。うん、さっき舐めた時も思ったけど、塩味があるのにすっごい甘い香りがして――」
「言わなくていいっ! 言わなくて、あんっ、いい、からぁっ!!」
なんとか致命傷どまりなところで、大声による妨害が間に合った。そんな恥かしい感想聞きたくない。
筈なのに、美味しいなんて褒められたらどうしよう、なんて思ってしまう自分がいるのも腹立たしい。
「でも――」
「いいからっ! イってぇっ♡ イってよぉ……ッ♡」
おにいさんにこれ以上何かを言われたらおかしくなってしまう。
その前に――と、髪が乱れるのも気にせず頭を振り散らし、動かない下半身に代わって上半身を捩じり捻り、精液と余裕を搾り取りにかかる。
「おっ、ぐぁっ……!」
それは恐らく想定外の反撃だったのだろう。
余裕があって、そして少し意地悪なおにいさんの声がたちどころに切羽詰まった。
「もう、出るっ……! 出すから、なっ……あかりっ!」
抽送がラストスパートに突入し、おにいさんの息が獣じみて荒くなる。ビクビクっ、と剛直が噴火前の地鳴りを響かせる。
「来て、ぇ――っ! んあぁっ♡ 最後は、奥ぅっ……一番、奥でぇっ!」
「ああっ――!」
お腹側を内側から突き破るような槍捌きが、内臓を突き刺すような軌道に変化して――
――ドビュッ! ドククッ! ドグッ、ドグッ、ドグッ……!
「ああぁぁぁっ、来たぁっ♡ んああぁぁああぁぁっ! あっあっあぁ……♡」
ずっと。ずっと待ち焦がれた白い灼熱液が、膣奥を灼き、さらに奥の部屋へとなだれ込んで、内側から私を染め上げていく。
おにいさんの色に、匂いに、味に。
神経から這い上ってくる肉体の快感。おにいさんの精を受け止められた達成感。射精しながら抱きしめて貰える安心感――
「おにいさん、だいしゅきでふ……♡」
「……俺も、大好きだよ、あかり」
おにいさんの顔は見えなかったけれど、静かな幸福感で和室の中はいっぱいだった。
――☆――
「やっぱり、一緒に入るとちょっと狭いな」
「私は、それも悪くないかなって思いますよ?」
――カポーン。
散々びしょぬれになった私たちは、あの後一緒にお風呂へ入ることになった。
一番の被害者である布団は、そのまま濡れたままにするわけにもいかず、かといって家で洗える物かも分からず、一先ず洗濯機の中で保管されて明日クリーニング店に持っていく予定だ。
「そうは言っても、あかり、足伸ばせないんじゃないか?」
おにいさんが後から覗き込むように足元へ目をやる。
現在私はおにいさんのお腹へもたれるように背を預け、お風呂に入っている状態だ。確かに足は伸ばせず半分体育座りのような状況だし、肩もお湯の上に出てしまっていた。
「でもおにいさんといっぱい触れ合えて、お風呂だけじゃなくておにいさんの体温でもぽかぽかになれますし」
少し顔を横に向けるだけで、おにいさんの顔が近くに来るのもポイントの一つだ。
おにいさんは目が合っているのに気づくと、サッと目を逸らす。ついでに太腿の間で柔らかくなっていた逸物がぴくっと跳ねて、誤魔化すように座りなおした。
「……っ、まあ、あかりがいいならいいけど」
残念、今日はもう一回戦とはならないみたいだ。おにいさんは心を落ち着けようとしているのか、話題を捜しているのか、暫し小声であー……と唸ってから、再びこちらに顔を向けた。
「それなら、今度から偶にこうやって一緒に入るか」
「別に偶にじゃなくていつも一緒でもいいんですよ?」
「いやそれは言葉の綾というか……それに、偶にはあかりだって足伸ばして入りたくない?」
「おにいさんと一緒に入れるなら、それくらい全く問題ありません!」
「そ、そうか……でも、ほら? ちょとムラムラしてる時とかあかりにちょっかい出しちゃうかもだし?」
「むしろ大歓迎です! それに……お風呂は好きって言ってもらって初めてした場所ですから……」
「……ああそうだよ、自分でも言ってから今更だって思ってたよ! たいがい節操ないな俺……」
と、おにいさんはそんな事気にすることないのに肩を落として、それからふと何事か思い出したように顔を上げると、私の方に近づけ、
「えっ――んちゅっ」
軽く、唇同士を押し付けられる。お風呂場という高湿度な場所だからか、軽く唇を付けるだけのキスなのに、くちゅっ、と濃密な水音が響いた。
「あー、ほら。その時の事を思い出したら、そういえば今日キスしてなかったなって」
「あー、確かに……」
そういえば今日はマッサージしてくれるという所から始まったのだった。
「マッサージ、気持ち良かったです。お陰で脚もちょっと楽な感じで、ありがとうございます」
「いやいや、あかりも新しい事頑張ってる訳だしな、ちょっとした応援みたいなものだよ」
おにいさんは誤魔化すように頬を掻いてそっぽを向いた。
「それから……えっちも、最後までしてくれてありがとうございます♡」
今度はこっちから、ちゅっと唇に吸い付く。いつもより柔らかくて瑞々しい唇は、なんだかグミみたいで思わずはむはむ、と唇で噛んでしまった。
「んっ――いや、別にそっちはありがとう何て言ってもらうような事じゃ……むしろ、こっちが我慢できなくてさせて貰ったようなもんだし、こっちこそありがとな」
再びおにいさんから唇が重ねられ、今度は口腔へと伸ばされた舌が、まるで挨拶するみたいに舌へと絡められる。ありがとう、と言うみたいに。
お風呂で体温の上がった舌同士が絡み合うと、たちまち頭の中が水音で満たされていく。
自分が舌を動かしてるのか、舌を動かされてるのか分からなくなるほど口腔内は蕩けていき、心地よくて、思わず目を瞑ってしまう。
――けれど視覚が無くなった瞬間、ずっと燻っていた悩みがはっきりとした形をとって這い出てきた。
(……でも、やっぱりお礼を言わなくちゃなのは私の方だよね)
確かに今日はちゃんと私の中でイかせる事が出来た。けれど、それはおにいさんがいっぱい気を使ってくれたからで。
ゆっくり外からほぐしてくれて、ちゃんと苦しそうな時は待ってくれて、蟠っていた悩みを解いてくれて……イかせれた、というよりイかせれるようにして貰ったと言った方が適切だろう。それに引き換え私は、おにいさんが久しぶりで溜まっているのを受け止めきれず、むしろ気を使わせてしまっていたのではないか。
セックスするまであった、おにいさんと上手くできないかもしれないという不安は無くなったが、それ故に自分が気を使わせてばかりなのが意識されてしまう。
これでは、「対等な関係」とはとてもじゃないけど言えない。
この間ゆかりお姉ちゃんに言われた言葉が脳裏に蘇る。
『感覚を馴染ませる一番の方法は沢山経験を積むことです。性感なんてそもそも、末梢神経自体から上がってくる刺激自体が気持ちいいのではなく、それをニューラルネットワークや脳が解釈することで生まれるものですからね』
あの時はそんな事って思ったけど……やっぱり。
(私も……がんばらなくっちゃ」
と、そこで目を開けると、不思議そうな表情を浮かべたおにいさんと視線が合った。
「ちゃ? ……茶?」
「え? あ! もしかして口に出てましたか?」
「全部聞き取れた訳じゃないけど、ちゃ、って言ってたのは」
しまった、これはおにいさんには秘密にしなきゃなのに――混乱する頭であわあわと、言い訳を捜して。
「――ちゃんちゃん焼き! そう、ちゃんちゃん焼きって聞いたことあるけどどんな料理なのかなーって!」
おにいさんは目を数度瞬かせて、それから肩を震わせて噴き出した。
「何だ、さっき晩御飯食べたばっかりなのに料理の事考えてたのか? あかりらしいというか何というか」
――良かった、バレてないらしい。大分苦しい言い訳だと思ったのだけど――
「――って、あかりらしいって何ですか! ……いや、確かにご飯は大好きですけど……」
勢いよく水を跳ね上げて抗議したのはいいものの、自分の行動を振り返ってみればそう言われても仕方がない気がしてしまう。誤魔化せたのに、何だか納得いかないこの気持ちは一体どうしたら……。
「まあまあ、じゃあ明日はちゃんちゃん焼きにしようか?」
「本当ですか!?」
「ああ……って言っても俺も良く知らないんだよなちゃんちゃん焼き、使うの鮭だっけ? 買いに行かないと無いな」
「それならちゃんと調べてから作りましょうよ、折角だから本格的なのが食べてみたいです!」
「だな、じゃあ明日は調べて買い物して――って感じで過ごすか」
「はい!」
ルンルン気分に浮かれそうになって、本題を思い出す。
(そうだ、ちゃんと私も頑張らなくちゃ……!)
楽しい時間を、これからも過ごすために。
普段丁寧語の子が、段々余裕無くなって言葉遣いが崩れてくるの、いいと思うの。