「はぁ……っ、やっぱ風呂はいいな、あかりと一緒なら猶更」
身体が火照っていることを考慮して、いつもより低めに設定したのは正解だった。
激しく動かないとはいえ、力が入ったりしていつの間にか疲れていた身体に、温い湯が染みわたるし――
「私も、こうやって入るの好きかもしれないです」
――そんな温さとの対比で、彼女の熱がより強く感じられる。
振り返ってはにかむあかりを優しく抱きしめ、薄く開かれた唇へ唇を寄せた。
「ちゅっ、ちゅちゅっ、はむっ……ぴちゅっ、ちゅろっ……」
プリンの時と似ているけど、浴室に反響された水音は劣情を掻き立てるというより、愛しく、どこか安心感すら覚えてしまう。セックスと同じようにゆったりとしたディープキス。
(ヤバいな……本当にずーっとこのまま繋がってたい……)
二度の絶頂で完全に自分の形を覚えてしまったあかりの中は、まるでそこに入っている方が自然な状態だと言わんばかりに馴染んでいた。激しくうねったり情熱的に吸い付いてくるわけでは無いけれど、だからこそこちらも見栄を張らなくていいというか、自然体でいれる感じだ。
それだけじゃなく、手のひらに感じる柔らかさもたまらない。
力など入れずただ彼女に手の平を乗せているだけなのに、それでも柔らかさを感じるあかりの身体。
(あー、お風呂上がりもこのままでいたい……というかこのまま繋がったまま寝落ちしたい……)
尤もそれが許されないのわ分かっている。明日の朝になればまたゆかりさんが起こしに来るのだ。繋がったままでいるところなど見られたら、走っている間中揶揄われるのは目に見えていた。
(やっぱり鍵は返してもらうべきだっただか? いやでも……)
と、考えに耽りかけた時。
「っ、くぉあ……ッ?!」
突如肉槍が握りしめられ、思考は中断された。
何が起こったのかと眼下へ視線を向けるものの、そこには先ほどと同じように湯船があって、その中で自分に抱きしめられたあかりがいて――
きゅぅううぅっ!
「――ぁっ、おくぅッ……」
再び感じる強い締め付け感。
けれど今度はそれが握りしめられているのではないと、すぐに分かった。手のように力強い圧搾感だが、手にしてはあまりに柔らかすぎる。もっと、ねっちょりして、熱くて、複雑に絡みついて。
快楽を押し殺すため、眇めて半分になった視界の中で、あかりが振り返った。
「んっ……これ、気持ちいいですか?」
三度、膣が締め付けられる。今度は声すら出せなかった。息を止めて、絶頂を堪えるので精一杯。
「もう、我慢しなくていいのに……えぃっ」
そう言いながらあかりが僅かに開いていた脚を湯の中でクロスさせると、ピンっ、とつま先までを一直線にした。
同時に、既に根元まで入っている筈の肉棒が、更に奥へと呑み込まれた感覚に襲われる。
膣内は家の中にいる様なまったりした感触から一転、寄って来た雄を貪欲に搾り取る、食人秘花へと変貌した。
熱い愛液が陰茎を溶かす消化液にすら感じてしまう。
「ちょっ……待って……ッ、いきなりっ、今日は……!」
「はい。今日は『大きく動かず、挿れっぱなしにする』んですよね?」
跳ねる様な声にいつの間にか閉じていた目を見開くと、振り向いたあかりが首を傾げて笑んでいた。
いつもの明るく元気そうな笑み。だが、そこにほんの僅かながら、主導権を握ったという優越感が混じっている。
「先にイかせてもらいましたから、今度は私がお返ししますね♪」
「いやッ――いいっ?! からぁああぁ……ッ!?」
否定を許さないというようにあかりの膣がきゅきゅっ、とリズミカルに締め上げて、最後は悲鳴になってしまった。
粘膜ではなく粘液に締められているような感覚だった。固体ではなく液体だから、隙間無く吸い付くのは当然で、締め付ける力にムラが無いのも必然。
とろっとろに緩んで蕩けているのに、キツキツに圧迫されるという矛盾した刺激。それが、今日一日分の快楽をたっぷり溜め込んだ海綿体に襲い掛かる。これまで人生で経験したどのオナニーとも、オナホとも、セックスとも違う快感に放心した瞬間、堰き止められていた熱い奔流が解き放たれた。
「あっ……んぅっ、来たっ……おにーさんの、精子……やっと来たぁ……んッ、いっぱい、出てる……」
勢いはないが量がものすごいのは、尿道を押し広げられる感覚で分かる。お預けから漸く解放されたという様な、あかりの甘い声が浴室内に響いた。
煽情的に目を緩ませながら頬を赤く染め、小さく身体を戦慄かせる。けれど唇を舐め湿らす余裕があるのは、やはり射精に勢いがないせいか。
射精による反撃を許されないまま、だがあかりの体内は歓喜にピクピク震え、ぴったりと一体化したこちらの肉竿までもを揺らし、吐精を止めさせない。
「すごい……っ、まだ出て……はぅっ、灼けちゃう……お腹の中、ぜーんぶ、おにいさんのにっ、染められて……あッ、駄目……ッ」
慌てたようなあかりの声に続いて、水中から白い澱が水面に浮いてきた。
濃淡のある白い粘液塊が水面へ浮かぶと、濃密な性の匂いが漂う。
「はッ……はぁっ……。ほんと、我ながら凄い量だな……」
まだ脈打つたびに精液がのろのろと放出されていたが、水面を汚す一面の惨状に、思わずそう言わずにはいられなかった。
ふわふわとクラゲの死体みたいに浮く精子のうちいくつかは、あかりの胸へと張り付いてしまってすらいる。女の子の象徴を穢しているという心地に、喉が鳴った。
「――私のおっぱい、おにいさんので染められちゃいました♪」
射精の間じっとこちらを見つめていたあかりにも、それはすぐわかったのだろう。ちろりと舌を出す顔は幼げなのに、ほんのりと色香が漂っている。
「そう、だな。うん、汚しちゃったから後でしっかり洗わないとな」
改めて彼女の可愛さを再確認してしまった――なんて惚気思考を悟られないよう、顔をそむけつつそう誤魔化すと、あかりは首を横に振る。
「ううん、大丈夫」
いや以外とお湯に触れた精液は、張り付いてなかなか取れないのだ。かつてまだオナホに頼っていた頃、お湯で洗ってしまった時はそれはもう――いや、知った過程まで言う必要はないか。
兎も角その事を説明しようとして、あかりが自らの乳房を湯から持ちあげていることに気付く。
水圧で丸を保っていた膨らみが、重力に引かれて柔らかくひしゃげた。
「んぁ……ぺちゅっ」
柔毬の表面についていた汚濁を舌が掬い上げ、ゆっくり味わうように咀嚼する。
「ちゅるっ……んんっ、濃くて、エグくて、凄い味……くちゅっ、これが、本当の……」
止めるべきか、いやしかし以前にもあかりは精液を口にして美味しいと言っていたし……。どうするべきか悩んでいる途中で、あかりの眉が苦し気なハの字を描いているのに気付いた。
そういえば、あかりが精液を美味しいと言っていたのは違法パッチがまだ有効だった時期だ。
「あかり、美味しくないんだろ? 別にそこまで無理しなくていいって」
「確かに、前みたいに美味しいとは思わないけど……んっ、無理は、して無いから……んくっ」
そう言うと見せつけるように大きく喉を動かして白濁した欲望を嚥下し、空になった口を開いて見せる。目は眉根を寄せながらも、恍惚と目尻が下がっていた。
「苦しょっぱくて、つんってする香りで……でもおにいさんの味だって思うと、口の中も、鼻も、食道も……全部うずうずして……おいしくないけど、おいしいの」
無理をしているわけでは無い。現に、彼女の膣は昂奮を伝えるようにぴくぴく蠢動し、乳首もピンっと勃ちきっていた。
「あかり……」
愛しさが込み上げる。居ても立っても居られない衝動に、自然と口角を上げた唇に吸い寄せられた。
「あっ、キスは口ゆすいでか――んっ」
慌てたようなあかりを無視して唇を割り開き、舌を挿入する。あかりの舌は逃れようと慌てふためいていたが、狭い口腔内で捕まえるまでそう時間はかからなかった。
舌には、まだ唾液が流し切れなかった精液のエグみが残っている。
「んちゅっ、ちゅるろっ――ぷぁっ。確かに美味しくは無いな」
「んはっ――だから、言ったじゃないですか」
「でも、今すぐしたかったから」
「もぅ……」
あかりは困ったように口を歪めながらも、目を嬉しそうに細めていた。
そんな顔をされたら、射精の余韻に浸っていた逸物がまた昂奮と期待で漲っていく。
「あっ……またびくびくっ、てしてる……」
敏感な粘膜同士で一体となったあかりにもそれはすぐに伝わる。彼女の足先が握られると、緩められていた圧力が再び熱を帯びて強まった。
「すごい……いっぱい出したのに、やっぱり硬くて……まだ出来ます、よね?」
半ば確信したようにお腹をさするあかりは、こちらだけでなく半身にも語り掛けているようで。逸物はそれに答えるよようと、痛いほどに張り詰めて自己主張する。こんな状態で「しない」なんて答える選択肢は無かった。
「……まぁ、今日は一日入れっぱなしにするって言っちゃったしな」
「はいっ。だから…………」
一瞬笑んだあかりだったが、そこで頬を一段と赤くすると、指先をつつき合わせてごにょごにょと口ごもる。
「どうした? 何かして欲しい事でもある?」
お願いでもあるのだろうか、言いづらい原因を予想して訊ねると、あかりは慌てたように大きく首を振って。それから大きく息を吸い、意を決したように再び口を開く。
「そうじゃなくて……その……あかりのお、おま……おまんこ、でっ、ゆっくりあったまっていってくださぃ……っ」
ぷしゅうぅぅ……と、あかりは頭からお風呂以上に湯気を立ち上らせるほど真っ赤になる。
恥かしさのあまりか後半は口ごもってるかのような小声になっていたものの、一番肝心なところははっきり聞こえてしまった。
あかりの小さくて薄い、あどけなさのある唇から紡ぎ出された女性器の俗称。禁足域に踏み込んだような背徳感が頭と股間を熱くする。
そう言えば、あかりがその言葉を使うのは初めてだ。恥かし気に、吐息交じりにそんな事を言われては――
「――あ、あの! や、やっぱり聞かなかったこと「無理」」
呆然としていたこちらの様子に不安が募ったのか、訂正しようとしたあかりの言葉を断ち切って、再び唇を奪う。
多少乱暴になりながら舌を絡めつつ、水圧とあかりの体重を押し返して腰を小さく跳ねさせる。
一センチあるかないかという程の短いストローク。だが、今までぴったりとくっつき一体となっていた性器同士には、その小さな動きだけで恐ろしい程の快感が生み出された。
抜けてしまうという切なさ混じりの摩擦感と、再び一体化する安堵交じりの吸着感。僅かな振れ幅だからこそ、それらが激しく入れ変わって頭を混乱させていく。全てが脳内で溶け合って、気持ちいいという感慨だけが広がっていく。
「ちゅ――あっ、動かないって、言ったのに……ッ」
「悪い。でも、あんな事言われて止まるなんて無理だって……!」
「んくっ……そ、その……浅ましいって思いま、んんッ……せん、でしたか?」
「全然――っ! エロいとは思ったし、ふぅっ、昂奮はするけど、全然嫌じゃ無いからっ」
もしかして、そんな理由で今まで言わなかったのか。許せん。
「良かった……ぁっ、もしかしたら、やっぱりセクサロイドなんだなって……引かれちゃうかもって……くぅんッ」
「そんな事で引いたりするかよ……ッ! それに、あかりはあかりなんだし、そんな事……気にしなくて、うぁっ」
「でも、ぅんっ! もぉ……んくっ、じゃあ、私も好きにしちゃいますから、ねッ……」
まだ何か言おうとしたあかりの奥をぐりぐりっ、と押し込んで黙らせると、反撃のつもりか再び先ほどの締め付けが襲ってきた。
「あッ……おっ、これ、は……っ」
いや、先ほどとは少し違う。全体を均等に締め付けるのではなく、入り口から奥へ向かって、きゅ、きゅ、きゅぅっ――と。
「何だ、これ……ッ!」
海綿体が順に絞られて、亀頭がますます熱を帯びている。尿道は痺れて射精しているのかどうかすら分からない。
あまりの快感に僅かも腰を動かす余裕すらなくなり、ただ震えて耐えるだけになった所であかりが聞いてくる。
「んっ、その……俵締めって言うんですけど……どうでしょうか?」
「どうもなにも……すごい、としか……あくッ」
そういえば、高級風俗に行ったと武勇伝を披露していた友人が、そんな事をされて凄かったとか言ってたような――思い出せない。絶え間なく牛の搾乳みたいに海綿体を絞られる快感に、頭はぼんやりと熱に浮かされていた。
早く、早く……と精液を急かされるような刺激に、さっき出したばかりにも拘らず視界がチカチカし、もう限界が見えてくる。
「おにいさんの我慢してる顔……可愛くて、とっても素敵です。もう、イっちゃいそうなんですよね?」
「あ、あぁ……ッ!」
限界が近いと短く答えた時にはもう、前半部を忘れていた。何か否定しなきゃいけないことがあった気がするのだが、快楽に占められた頭から、あっという間に追い出されてしまっていた。
「じゃあ、我慢しないで……力を抜いて……きもちよーくしますから」
官能的な甘さの吐息が近づいて、あかりの方から唇を押し付けられた。
差し入れられた柔らかい舌が、快楽に溺れて暴れまわる舌へ優しく寄り添い、あやしてくれる。
巧みに舌を操りながらも、下の口が疎かになることは無い。
上の口とは逆に貪欲なあかりの中は、肉棒を丸のみ捕食しようとするみたいに、奥へ奥へと引っ張っていく。
それだけでもう限界だったのに、あかりは一瞬口を離して、
「ちゅるっ……りゅろっ――んはっ。あかりのおまんこに、いーっぱいおにいさんのせーえき、出してください……♡」
「――ッ、おッ…………!」
「き、ひゃぁッ――んんぅうっ!!」
出た。
奔流が大河へと変わった。
全身の血が陰嚢へ集まり精子に変えられ、陰嚢で作られた精子がそのまま鈴口から出てるんじゃないかというくらいの感覚。
心臓よりも大きな拍動で跳ねる逸物に合わせて、あかりの蜜洞が精液を粘膜で吸い出し、咀嚼する。
呑み込む先は、彼女の最奥。
お返しばかりにもあかりの舌が口腔へと滑り込み、大きく喘ぐたびに甘ったるい熱を帯びた空気を肺へと流し込む。
熱量も、快感も、震戦も、心拍も、呼吸も――全てがあかりと一つになるような深い快感だった。
――――はぁっ……あッ……はぁぁ……っ」
どれだけ放心していたのだろうか。あかりの唇が離れたことで、充実した疲労感に浸っていた意識を引き戻された。霞んだ浴室の中で、満面の笑みだけが鮮明に見える。
「こんなにいっぱい精液出してくれて、んふぁっ、ありがとうございます」
「いや、そんなお礼いいから……って、マジで凄いな!?」
苦笑して首を横に振り、視界に入った湯面の惨状に意識が急激に回復した。
遠目に見れば湯船に花びらを散らして入浴する、セレブとかインフルエンサーとかがやってそうなアレに見えるかもしれない。それくらいの量。
いやまあこんな汚いのと花びらを比べんなよって言われそうなくらい、浮いている物は月とスッポンなんだけど。というか本当に大丈夫か、自分の体ながら。
だが、そんな欲望の残滓をあかりは大事そうにお湯ごと両手で掬い上げて、鼻梁を震わせた。
「すんすん……凄い、お湯に混じってもこんなに濃い……」
「……うっ、面目ないです」
あかりとしては褒めたつもりなのかもしれないが、何だか自分の節操なさを見せつけられているみたいで胸が痛い。欲望を一区切り吐き終えて、賢者タイムというのもあるのだろうが。
手折った花を嗅ぐ令嬢のようなほほえみを浮かべていたあかりは、小さくかぶりを横に振った。
「謝らないで欲しいな。すごく、嬉しいのに。それだけ私で興奮して、それをぶつけてくれたって証なんですから」
「確かにそうかもしれないけど――」
そんな寂しそうに言われては反論できない。
「――そうだな。今日はそれだけ可愛かったし、その、エッチかったとおもいます。はい」
「そ、そう改めて言われると、ちょっぴり恥かしいですね……」
あかりは握った手で口元を隠すと、暫くの間視線を逸らし。
再び目が合った時には、青い瞳の奥に深い決意が宿っているように感じた。
「……でも、おにいさんが喜んでくれるなら、これからも頑張ってみようと思います」
ぐっ、と両手を握りしめてガッツポーズ。セックスの時とは一転、年下らしい行動のギャップに思わず苦笑する。
(そんな改めてやる気を出さなくても、もう十分すぎるほど頑張ってるんだけどなぁ……)
最近は働きにも行ってるし、走っている間に朝ごはんも用意してくれるし、いつの間にか汗臭くなった服も洗濯してくれるし……あれ、これ俺ダメ人間一直線コースなのでは……?
むしろ自分の方こそ頑張らないといけない気がする。
けれど、それはこちらの問題だ。あかりのやる気に態々水を差す必要もないだろう。
「そっか、あんま無理しない程度にな?」
「はい!」
あかりが大きく頷いて、そのはずみに尿道へ残った残滓が絞られた。
「あっ……まだ、出ますか……?」
元気よく引き締められていた眉毛が一瞬で緩んだ。
「いや、もうさっきので搾り取られたから……今日はもう本当に無理だって……」
「そう、ですか……無理は駄目ですもんね」
緩みかけた眉がこんどはへちゃっ、と萎れる。
罪悪感が凄い。けど、本当にもうこれ以上は……ッ!
「……でも、今日が終わるまでまだ時間あるから。その間は、このままでいいかな?」
悩んだ末の解決策に、あかりの眉は再び溌溂とした曲線を描いた。
「ぁ、はいっ! 勿論です!」
「じゃあ、もう少しこのまま浸かってようか」
「はい♪」
ゆったりと湯船に背を預け、あかりの背を預かりながら、考えるのは明日の事。
(あかりとセックスしすぎて辛いから休ませてって言ったら、ゆかりさん休ませてくれないかな……無理かな、無理だろうなぁ……ゆかりさんだしなぁ……)
結局日が変わるまで湯船につかり、その後固まった白濁を落としたら一時をゆうに回っていて。
翌朝は地獄だった。詳細は思い出せない。思い出したくはない。