※この作品はR-18です。

お隣りゆかりさんとのセイカツ!!   作:真喜屋五木路

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三十三、客観視

数日後、時刻は十三時を少し過ぎたころ。

 

(うん……まあまあだな)

 

昼飯に作ったオムライスをスプーンで一口頬張り、内心頷く。最近作ってなかったので卵に少し火が入り過ぎだが、これで感覚は取り戻せた。次回はバッチリだ。

あかりと一緒に食べているのならば感想を訊いたりできるのだが……いや、あかりの事だから訊かずとも勝手に答えてくれそうだ。相手が自分だという補正が掛かりまくってる事には気を付けねばならないだろうが。

しかし残念なことにあかりは今日もお仕事である。話を聞くにちゃんとお昼は食べているそうだが、そう言えば何を食べてるかまでは聞いてない。お弁当を分けて貰ったりしてるのだろうか。マキさんところの経営が傾かないだろうな……まさかな、はっはっは。

 

『んぁっ……あぁ、んぅっ……! すごい……いい、よぉ……』

 

そんな平和な思考は、スピーカーで少しくぐもった嬌声に中断させられた。

意図的にずらしていた焦点が音源へと合ってしまうと、ナイトテーブルにのせられたタブレットの画面内で、一組の男女が交合の真っ最中である。

もう現実逃避は限界だった。

 

「……あの、これ何させられてるんですかね」

 

首だけでゆっくり隣へ振り向くと、画面を見つめながら無言でオムライスをつついていたゆかりさんが、呆れたような目で見上げてくる。

 

「何って……朝言ったでしょう、『観察力』を鍛えて貰うって」

「いやそれは聞いたよ、聞いたけどさぁ……」

「なら何が不満なんですか。あ、ほら、今のはどう思います?」

 

スプーンで指された画面の方を見ると、女性が再び甘い声を漏らしていた。声だけでは分からなかったかもしれないが――

 

「今のは演技だろ」

 

――表情が何となく嘘くさい。この女性が揶揄う時によく浮かべる表情に似ている。

しかし正解にしてはゆかりさんの反応が無いと、彼女の方へ振り向くと。

 

「……正解です。ぺっ」

「何で唾吐かれる必要あるんだよ! いや実際は吐いてないけど、音だけだけど! 当てさせたいのか当てられたくないのかどっちなんだよ!」

 

もう言うまでも無いかもしれないが、画面の中の女性はゆかりさん。お相手は自分。

つまり現在、我々は自分たちのハメ撮りを見ながら昼食を食べているわけだ。

 

(何? ねえ、何なの? 何なんだよこの状況?! というかそもそもなんでこんな状況になってるんだっけ……)

 

となりで自分の痴態をみているとは思えないほど落ち着いて、もきゅもきゅとオムライスを食べるゆかりさんを見ていると、逆にこちらは混乱しそうだ。ええい落ち着け、朝から一つづつ思い出していこう。

確か、今朝はいつものように起こされて。いや、今日は自分で起きたんだったか? まあいい、そこは重要じゃない。それで――

 

 

 

「――では、今日は『観察力』を鍛えて貰いますからそのつもりで」

 

早朝ランニングに付き合わされて帰宅後、二人で朝食を食べている最中の事。ゆかりさんは味噌汁を啜りながらそう言った。

 

「……一応聞くけど、前みたく縛られたりはしない、よな?」

「ええ、あれは流石に悪かったと私も反省しています。今回はもっと安全な方法ですから」

「本当か?」

「随分と信用が無いですね。……確かに、私の自業自得ですし、弟くんに申し訳ないことをしてしまったのは事実ですから、そう思われても、仕方ない……です、ね」

 

ゆかりさんはお椀と箸を卓袱台に置くと、俯いて肩を震わせた。

 

「い、いやそこまでしなくても。問題が無かった……訳では無いけど、今のところ困るような事にはなってないし」

 

彼女による寸止めプレイの影響は今でもしっかり残っていた。結ばれた根元の痕こそ薄れたものの、勃起の度に痛いほどに張り詰める海綿体と、噴出圧の上がった射精はそのままだ。

幸いにしてそれ以外に悪い影響は無いし、あかりからは意外と好評なので最近はまあいいかな、とすら思い始めている。だからそこまで気に病まなくても、と思っての発言だったのだが――

 

「そうですか、なら安心ですね」

 

――ゆかりさんはそれを聞くなり、何事も無かったように食事を再開した。気だるげに下がった目蓋の下には涙の跡どころか、潤んですらない。

 

「……そうっすね」

 

泣かなくても有効打を与えてくるなんて、美人ってズルい。

釈然としない物を感じつつ、自分も食事を再開する。

今日の朝食は鮭のホイル焼きに、サラダとご飯とお味噌汁、もちろんあかり謹製である。

実家からの習慣でずっと朝食は和風系だったのだが。うん、少し洋風な朝食もなかなか良い物だ。

 

「というか改めて『観察力』って言われてもなぁ……」

 

美味しい朝食に口が緩んで思わず「本当に必要か?」という内心が溢れ出てしまった。

 

「正直今の弟くんに一番足りてない部分だと思いますけどね」

「そこまで言うか」

「ええ、前回の強引な口淫。あかりちゃんを相手にしてる時、あんな風に暴走したくはないでしょう?」

「うっ、そりゃそうだけど……」

 

ゆかりさんへのイラマチオがフラッシュバックする。申し訳ないと思う理性に反し、口腔粘膜の感触を思い出して反応してしまう下半身が疎ましい。

 

「弟くんがあかりちゃん相手にあそこまで容赦なくするとは思いません。ですが、興奮してサルみたいになるのがいい事だとは思いませんけれど」

「いや、本当にこの間の事はすいませんでした……!」

「頭を下げられても困ります。別に責めている訳では無いですから」

 

言葉の当たりがキツかったのでもしかして怒っているのか、と思ったのだが、そういう訳ではないらしい。

淡々と食べ終わったゆかりさんは「ごちそうさまでした」と手を合わせてから続ける。

 

「そうではなくてですね、あんな状態ではもしもあかりちゃんが無理してても気付けないのではないか、と思ったんですよ」

「……成程、確かにそりゃそうだ」

 

ゆかりさんが苦痛を感じないとはいえ、前回は酸欠寸前まで、そうだと気付けなかった。

 

「それに弟くんはあかりちゃん相手にも一度逸って失敗した前科がある訳ですし、逆にあかりちゃんも自分が痛がってしまったからという後ろめたさがあるようですしね」

「それは、あかりから直接聞いたのか?」

 

案の定、ゆかりさんはこくりと首肯する。

あれ以来ゆかりさんのサポートもあったし、上手く行っていたと自分では思っていたのだけれど。

そう聞いてしまうと途端に、今までもあかりが無理をしていただけなのではと思ってしまう。

 

「ああ、誤解させてしまってすいません。あかりちゃんから聞いた限り、今のところそういうことは無いらしいですから安心してください」

「そうか、それなら……って、もしかしてそれもあかりから?」

「ええ、前回なんて一日中おっきいまんまでいっぱいおにいさんの事を感じられて最高な一日だったと……」

「……あかりぃ!?」

 

ニヤニヤとした笑みを浮かべるゆかりさんは、まあまあとこちらを嗜める。

 

「いえいえ、仲がいいのは私としても嬉しいんですよ? 二人のサポートが今のゆかりさんの仕事なので。個人的には、その翌日妙にしんどそうだった理由が分かって納得はしましたけどね」

 

違う、余計に煽って来ただけだった。

 

「くそぅ、あかりめ……というかいつの間にそんな話を……」

「ふふっ、知りたい気持ちはわからないでもないですが、女子トークの詳細は乙女の秘密です♡」

 

うわぁ、すっごい良い笑顔浮かべてやがる。つーかあかりは兎も角ゆかりさんは女子力碌に無いだろ。

そんな内心の突っ込みに気付いてか気付かずか。ゆかりさんは軽く咳払いをして真面目なトーンに戻す。

 

「まあ冗談はこれくらいにして。今でこそあかりちゃんに問題ないか私が直接聞けますけれど、いつまでもお二人のサポートが出来るという訳では無いですから。そうなったときの為にも観察力を鍛えて損は無いと思いますが」

「確かにな……」

 

そうだった。最近一緒にいるときは昼食作ったりしているせいか、ゆかりさんが居る生活に慣れてしまっていたが、それはあくまで一時的な物。

だからこそゆかりさんだって部屋に荷物をあまり置いていないのかもしれない。そう思うと少し寂しい気もする。

 

「そこまで不安にならなくても大丈夫ですよ、ここまで首を突っ込んだ以上、今後も相談くらいなら乗りますから。それにあかりちゃんはいい子ですし、私が居なくても多少の事は乗り越えられますよ」

「ああいや、そうじゃ……まあいいや」

 

言おうか少し考えて、止めることにする。そんな事口にすれば、またニヤニヤとしながら「あれ? 私がいなくなったら寂しいんですか?」なんて――ヤバい、容易に想像でき過ぎてしまって腹が立ってきた。未遂なのに。

 

「兎に角、じゃあまたいつも通り食べ終わったらゆかりさんの部屋に行けばいいんだろ?」

「そうですそうです。では、準備して待ってますね」

 

と、いつも通り食器はそのまま足取り軽く帰っていくゆかりさんを見送って――

 

 

 

――いや確かに最初聞いた時は尤もだと思った。思ったけど!

 

(にしてもやっぱりコレは無いだろ!?)

 

『あぁっ……弟くん……ッ』

 

画面内で繰り広げられている交合は午前中に撮りたてホヤホヤの一本である。

朝食の片づけをして部屋に行くなり「じゃあしましょうか?」とセックスしていたのが先ほどまでの出来事。

ごく普通のセックス――強いて言えばゆかりさんがいつもより饒舌な気がした程度で、これのどこが観察力を鍛える練習なのかと思っていたら、今度は昼だからと約束通り昼食を作らされ、自室から帰ってくるや否やこれが再生され始めたという訳だ。

 

(いつ撮ってたんだよほんと……)

 

「はぁ……」

「何溜息なんてついてるんですか。ちゃんと集中して見てます?」

 

思わず嘆息すると、ゆかりさんに肘で脇腹を小突かれた。

 

「いや、そうは言われても集中できるわけないだろ。自分のハメ撮りとか……しかも食事しながらとか、味分からなくなるわ」

「別に味なんて些細な問題でしょう」

 

そう言いながらも、ゆかりさんはオムライスには一瞥もくれず食べ続ける。

 

「……作らせといて、とは言わないけど。せめて味の感想とか無いのかよ」

「え? あぁ、そうですね。社食で食べたものと比べて酸味が少し強い気がします。使っているケチャップの差なんでしょうかね」

「いやそうじゃ無くて……もういいや」

 

くそう、これだから家事しない族は……ッ!

この部屋に食材どころか調理器具すら碌に無いから、態々自室に帰って作ってきたというのに。

横目で疎ましさをぶつけるようにゆかりさんを見るも、彼女は相変わらず画面を見ながら食事を続けている。しかもこちらは料理していたせいでシャワーすら浴びれていないのに、彼女は裸にパーカーを羽織って首からタオルという格好だ。いかにも風呂上がりたてです感があって、それもまた妬ましさに拍車をかける。

 

「……というか、こうやって動画見るだけならこの部屋でやらなくても良かっただろ。ゆかりさんがうちに来てくれれば、わざわざこっちまで昼飯持ってくる必要も無かったんだが」

 

募っていたわだかまりをつい口にすると、ゆかりさんは漸く手を止めてこちらに振り向いた。

 

「別に持ってくるくらいいいじゃないですか、部屋も隣なんですし大した手間じゃないでしょう?」

「いや、だってこの部屋ケチャップどころかコップも食器もスプーンも無いだろ。そういうの運ぶのに何往復したと思ってるんだ……はぁ」

 

ついで玄関を開けるのに片手を使う必要がある為、その分持てないのも地味に面倒くさかった。だから一皿で済むようにオムライスを選択したわけなのだが。

心底と言った感じの溜息に、ゆかりさんも流石に少し申し訳なく思ってくれたのだろう。

 

「あー……そこまで気が回らなくてすいません。今度からはそうするようにしますから」

「いや、まあいいけど。どうせゆかりさんの事だしこっちで見るには見るなりの理由があるんだろうし」

 

それを聞いたゆかりさんは、止まっていたスプーンの動きを再開して残り僅かだったオムライスをかき込むと、食べ終えた皿をナイトテーブルに置くや否や。

 

「ふふっ、勿論です」

 

ベッドサイドへ腰かけていたこちらの両膝を太腿で挟み込んで、向かい合わせにベッドへ乗った。

急激な接近で一瞬動揺した隙に手から皿とスプーンを奪われ、ナイトテーブルへと没収されてしまう。

 

「ちょっ――まだ食べてるんですけど」

「だって、弟くんが急かすからじゃないですか」

「いや急かしては――ッ?!」

 

突然下半身へひやりとした感覚が襲い、遅れてジャージごと下着をずり下げられたのだと気づく。

 

「何ですか、色々言っていた割りにはしっかり立っているじゃないですか」

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