「……右、後ろ、射撃して離脱、行動させて反撃……で、第一陣は終了」
(う、嘘だろ……!?)
一通りの操作を序盤敵のこないステージで教えた後、先ほどまで自分が散々ダメージを受け、ひぃひぃ回復を求めて逃げまどいながら戦っていた第一ウェーブを、ゆかりさんは一発掠っただけで軽く突破してしまった。
しかも、動きには殆ど無駄が無い。
回避は攻撃が当たりそうなときのみで、自分ならついお願いローリングしてしまいそうな大量にばらまかれる消化液の雨も、左右に少し歩いただけであっさり突破。ミニマップもしっかり見れているのか、横からの奇襲を喰らうこともない。手前の敵に目が行きがちで気付きにくいウーパールーパーの雷狙撃も、しっかり建物を盾に無力化する。
一転して、攻撃すれば無駄弾は使わないとばかりに的確に両生類たちを精密に打ち抜き、残りエネルギーの管理も完璧で今まで一度も枯渇状態になっていない。
つい先ほどまでコントローラーの持ち方すら知らなかったとは思えない腕前だった。
しかも――
「あ、あー……次の敵は――」
「大丈夫です。北西ですよね。飛行タイプが多いので、残しておいたビルを遮蔽にします」
「あ、はい」
敵の配置も進行ルートも完璧に覚えていて、それに対する対策も分かっている。揶揄うどころか、口出しすらさせて貰えない。
「……な、なぁ? 本当にゆかりさんこのゲーム初めてなんだよな? 何で分かるんだよ」
「先ほど弟くんがプレイしているときに、大体の事は。おっと、この丸いカエルの圧し潰しは見た目よりダメージを受ける範囲が広かったですよね?」
「ああ、そうだな……」
答える間にもやられたマルメタピオカガエルが物理演算で空の彼方へ飛んでいく。そんな細かい仕様まで把握してんのか……。
悔しいが、容赦なく地球外生命体の(という事になっている)敵キャラたちをなぎ倒していくゆかりさんの操作キャラは、まさしくゲーム内でのコールサイン『テンペスト1』に相応しい一騎当千っぷりである。
半ば見惚れている内に、画面にはMISSION_CLEARの文字が浮かんでいた。
「これは、終わりという事でいいんですか?」
「うん……おめでとう……」
今まで漠然と持っていた、自分はゲームが上手いという自負がガラガラと崩れ去る音がする。
「まぁ、ざっとこんなものですかね。さあどうですか、弟くん!」
ゆかりさんがドヤ顔で振り向くが、最早その表情にすら納得してしまう。
「そうだな、素直にすごかった」
「……おや、意外と素直に認めてしまうんですね。言い訳したりするのかと思ってましたが」
「いや、あのプレイに対して言う事とか無いっていうか、何言ったとしてもひがみにしか聞こえないって」
あっさり白旗を上げたこちらに対してゆかりさんは一瞬目を見開いたが、すぐにまた得意げに、ふふんと鼻を鳴らした。
「でもいいんですか? 弟くんが認めてしまったら、ゆかりさん色々言っちゃいますよ?」
「ああ、むしろ頼む」
「え?」
認めよう、ゆかりさんと比べれば下手だと。……だが例えゲームが上手くなかったとしても、ゲームが好きであることに変わりはない。
「あれだけ上手いんなら指摘も多分的確だろうし、それに合わせて練習すれば俺もうまくなるんじゃないかなってさ。いや、勿論ゆかりさんが嫌なら無理にとは言わないけど」
「え、えー……さっき嫌がってたのは弟くんの方じゃないですか……」
ゆかりさんは少しばかり困惑気味だが、こちらは至って真面目だ。折角の上手くなれるチャンスなのだから是非とも活かしたい。
決して負けたままなのが悔しいから、平静を装ってゆかりさんより上手くなろうとしている訳ではない。
「そりゃそうなんだけど……嫌だったら、ゆかりさんがプレイしてるのを見せてもらうだけでもいいからさ」
「そこまでですか……弟くんがいいなら、ゆかりさんは別に口を挟むのくらい別に構いませんけど……」
こちらの圧にたじたじしながらも嫌という訳ではないらしく、頬を掻きながら了承してくれる。
「それにしても、弟くんは本当にゲームが好きというか、趣味なんですね?」
「ん? まあ……そうだな。逆に言えばゲームくらいだけどな」
それじゃあ早速お願いしようと思っところでそう言われ、そういえば元々ゆかりさんの休日の過ごし方から始まったんだったなと思い出す。
「ゆかりさんこそ、ゲームしてみてどうだった?」
「そうですね……考えることが多いですし、なかなか気が抜けない割に時間もそこそこ長いですから……」
言明こそしないが、あまりいい感触ではなさそうだ。というか凄いプレイだとは思っていたが、やっぱり平然とやっているようでその分色々考えていたらしい。
「何かゆかりさんの言い方だと、仕事やってるみたいだな」
冗談めかしたつもりの一言だったが、ゆかりさんは虚を突かれたように表情を消し、目を僅かに伏せる。
「あー……悪い、軽率な発言だったか」
「いえ……そうですね、言いえて妙だと思います」
こちらへと視線を戻したゆかりさんの笑みには、うっすらと自嘲が混じっていた。
「以前、他の事にも誘って頂いたりしましたが、どれも今と同じようで気を使わせてばかりになってしまって……」
「ああ、趣味が無いってそういう事だったのか……」
あれだけ会社で慕われているのに、何か誘われたりしないのかと思ってはいたけれど。
「ええ、上手くやる事は出来るのですが、それが楽しいかと言われると……すいません」
「いやそんな申し訳なさそうにすることではないんだけどさ、そっか……」
確かに言われてみれば先ほどゲームをしていた時も、手順を確認するかのように淡々と進めていたし、ステージをクリアしても達成感を感じているという様子ではなかった。
考えてみれば、俺にとってゲームが楽しいと思う瞬間は、与えられる困難に対する創意工夫の過程だ。
けれどその要素要素を取り出してみれば、ある意味では仕事と変わらない。
与えられた課題を分析し、解決策を練り上げ、それを実行し、上手くいかなければまた分析……それだけ聞けば憂鬱な作業の連続である。
それでもゲームが楽しいと思えるのは、クリアした時や、新しい装備を入手した時や、隠されたイベントを発見した時の、達成感を感じるからなんだろう。それが無ければ、ゲームだって……いやゲームじゃなくたって、酷く無味乾燥な只の作業だ。
(……しかも、今の話だと多分仕事で達成感を感じてるって訳でもなさそうだしな)
もしそうなら、仕事みたいと言われてあんな表情をするはずが無い。
何となく、ゆかりさんがいつも何処か無理をしているように見えてしまう原因の一端が掴めた気が――
「――痛っ?!」
考え込んでいた頭にぺしっ、と軽い衝撃が走って意識を眼前へと戻すと、デコピンを打った人差し指を伸ばしたまま、ゆかりさんが困ったような笑みを浮かべていた。
「……もう、弟くんがそんな辛気臭い顔することは無いじゃないですか」
「いやそんな事言われても、今の話を気にするなって方が難しいと思うが」
「ふふっ、あかりちゃんが言うように弟くんは優しいんですね? ですけどやっぱり、弟くんが気に病むことでは無いですよ。何をやってもこんな感じだって、もうとっくに割り切れていますから」
きっとその言葉はこれが初めてではないのだろう。穏やかな口調の裏からは、深い諦観が透けて見えた。
「……さ、湿っぽい話はこれ位にしましょう。そんな事より弟くんから何言ってもいいというお墨付きを頂いたわけですし、遠慮なく茶々を入れていきますよ♪」
何と言えばいいのか分からず俯いてしまった所で、ゆかりさんがぱんっ、と手を鳴らしてコントローラーをこちらへ押し返して来る。
「いや、今の流れでゲームしろって言われても……」
そんな気分ではなくなってしまったのだがと思いつつも、ぐいぐいと押し付けられるコントローラーを受け取ってしまったところで、すっかり操作に慣れたゆかりさんがステージ選択をして、ミッションが始まってしまった。
「あっ、ちょ……!」
不意打ちだったとはいえ、始まってしまった物は仕方がない。それに初プレイのゆかりさんに一発で突破された以上、こっちもこれ以上同じステージでやられるのは何だか癪なのも事実だ。
だが、頭のどこかで引っかかった靄をそう簡単に振り払うことも出来ず、先ほどまでより動きに精彩を欠いているのが自分でも分かってしまう。
そしてゆかりさんが当然それを見逃してくれるはずもない。
「あははっ、何でそれ当たるんですか。さっきまでしっかり躱せてたのに」
「うるせっ、あんな事言われてすぐ気持ち切り替えられるかよ!」
「えー……今のは当てましょうよ、何でそこで横に動いちゃうんですか」
「仕方ないだろ! 酸が飛んできてたじゃんか」
「あれはどう見たって当たらないじゃないですか――ってそっちは当たるやつですよ」
「あーもー、当たんないと思ったんだよ……!!」
宣言通り遠慮なく入れられるゆかりさんの茶々に翻弄されているうち、あっという間にゲームオーバーになってしまった。
「ほらほら、今のは後じゃなくて前に回避入れてれば助かってたのにー」
くそう、半分はゆかりさんのせいで集中できなかったというのに、そんな事は知らんとばかりに彼女はニヤニヤしながらそんなことを言う。
「……あの一瞬でそこまで判断できるかよ、こっちはゆかりさんと違って何倍速で処理とかできないんだからな!?」
「……? どういう意味です?」
「えっ、ゆかりさんも情報処理速度を高速化してとか……出来ないのか?」
「あははっ、何ですかそれ? ボイスロイドは人間ベースの処理ルーチンなんですから、そんな事出来るわけないじゃないですか」
「えっ?」
あれ? 確かあかりを探していた時にマキさんがそうやって監視カメラを確認してくれた筈だが……まさか、担がれていたのだろうか?
いや、あの状況でマキさんがそんな質の悪い冗談をするはずがないし安心させるため? でも、そんな感じとは違ったような気がするのだが……。
暫し混乱して呆然としていると、ゆかりさんはいよいよ可笑しそうに「あはは」と笑う。
「もうっ、何でそんな発想になったのかは知りませんけど、そんな冗談でゆかりさんは誤魔化されませんよ? それじゃあもう一回同じステージ行きましょう!!」
「あっ、ちょ、待っ――ああもう、勝手に始めるなよ!?」
「あはは、ほら、ぼーっとしてたらまたやられちゃいますよー」
せっつかれるようにしてゲームを再開させられる後ろで、ゆかりさんの楽しそうな声が響く。
しかもゲームをしている時と違って、こちらのプレイを見ている方が心底楽しそうな響きなのがまた……。
「……? どうかしましたか、弟くん」
ゆかりさんが気づいているのかは分からないが、ちらりと横目に見た彼女の表情は、先ほどまでの楽しめないと独白していたのは何処にいったのかという程に明るい。
(くぅ、ゲームはプレイしてこそだと思うんだがなぁ……いや待て、これってつまりゆかりさんの趣味は俺を弄る事ということなのでは?)
釈然としないし、是非もっと健全な趣味を早々に見つけて欲しい所ではあるが、ゲームの上達にも繋がりそうだし、暫くはまあいいかと思考放棄した。
(少し複雑だけど、傍から見ててもぼんやりとタブレットを眺めているより、こっちの方が友人とゲームしているみたいで余程休日感があるしな)
それにゆかりさんが楽しそうにしているのに、自分だけ悩んでいるのも変な話だ。迫ってくる敵の波を前に、気持ちを切り替える。
「……よし! それじゃあアドバイス宜しく」
「ふふっ、それなら遠慮なく行きますよー」
――――
「ただいまー」
扉を開ける音と共に聞こえたあかりちゃんの声に、ハッとして今の時刻を確認しようと携帯を取り出し、唖然とする。
「やばっ、もう六時回ってるじゃん!?」
それは弟くんも同じだったようで、驚きと焦りの混じった声と共に彼は勢いよく立ち上がった。
「今日買い出しに行こうと思ってたのに、完全に忘れてた……ごめん、あかりー……」
廊下へ続く襖を開けながら弟くんは情けない声で玄関の方に手を合わせる。
「ど、どうしたんですか? そんないきなり謝って……」
「いや、それがちょっとゲームに夢中になっちゃって晩御飯の用意出来てないんだよ」
「そうだったんですね。謝らなくてもいいですけど、おにいさんがそんなゲームにのめり込むなんて……あ、ゆかりさん」
「おじゃましてます、あかりちゃん」
彼女が少しばかり驚いた表情なのも無理はない。
今までもこの部屋にお邪魔することはあったが、それはあかりちゃんと二人でいる時だけだった。
少なくとも彼女に余計な邪推をされないよう、彼と二人でいる状況を見られないよう気を付けていたのだが、今日はすっかり時間の事を忘れてしまっていた。
(それもこれも、弟くんが同じミスを繰り返したりするからです。一回上手くいったらと思ったら、また他の所でミスするようになったり……その癖何度失敗しても楽しそうにまた挑戦して……)
揶揄い交じりの指摘にムキになったりしながらも、リトライを繰り返す弟くんの姿を見ている内に時間を完全に忘れてしまっていた。
――否、それは只の言い訳だ。時間の確認を怠った自分の責任に他ならない。
(それに、あかりちゃんは弟くんと一緒なのを見てもあまり気にしていないみたいですし……)
不幸中の幸いだな、と最悪の事態に備えて張っていた緊張を緩めた瞬間。
「あー! ずるい!」
あかりちゃんの視線が私から少し横にずれて、それから目が見開かれる。
何かそちらに置いてしまっていただろうかと、不安に駆られて追うように視線の先を追うが、そこにあったのは先ほどまで弟くんがプレイしていたゲーム画面であった。
「一緒に進めるって言ったのに、ゆかりさんと進めてたんですね!?」
思わず脱力しそうになる。
(……なんだ、そんな事ですか)
弟くんとの『練習』を悟られたのかと心底焦ったが、良く考えればこちらでやるなどという高リスクな真似をした事などない。
(弟くんと二人でいる理由なんていくらも思いつくでしょうに、私は何でこんなことくらいで動揺しているんでしょうかね、全く……)
自分が想定外に弱い自覚はある。だからこそ、意識して冷静でいるよう努めているというのに。
だが私にとっての『そんな事』は、あかりちゃんにとってはかなり大事な事だったらしい。
「むー……ステージ5つくらい進んでる……」
「あー……いや、これはだな……最初は練習くらいのつもりで、こんな進めようとは……」
「……おにいさんの嘘つき」
「うぐっ!」
あかりちゃんのへの字を描いた口から放たれた一撃に、弟くんはがくりと崩れ落ちた。
傍から見ている分には大袈裟すぎやしないかと思うのだが、二人とも至って真面目なようだ。弟くんのあまりにあまりな凹みように、思わずフォローを入れてしまう。
「あかりちゃん、ごめんなさい。私が煽ったせいで弟くんがムキになってしまってたのは事実なので、あまり弟くんを責めないであげて下さい」
「……ゆかりさん、その言い方は違わないけど、何というかもう少し手心とか無いんですか。兎に角すまんかった、あかり! けど、ゆかりさんに散々扱かれた分、今まで以上に上手くサポートできると思うから」
「どういうことですか?」
今一つ経緯を理解できていないあかりちゃんに対して、弟くんが先ほどまでの流れを説明し、漸く理解した彼女はますます頬を膨らませた。
「~~っ、ずるいっ!」
「えっ!?」
しかも何故か今度は、私の方へあかりちゃんは恨みがましい視線を向けてくる。
「何でゆかりお姉ちゃんも、ゲーム上手いの隠しておにいさんにだけアドバイスしてるんですか! それなら私と一緒にいた時にも教えてくれれば良かったじゃないですか!!」
「そうは言われても、私もゲームに触れたのは今日が初めてだったし……。ね? また今度時間がある時にアドバイスしてあげるから」
代案を提示してみるも、あかりちゃんの反応は芳しくない。
「そんなこと言ったって、最近は忙しくて中々時間が無いじゃないですか」
「それはそうなんだけど……」
「ですから、今から私に教えてください!」
「い、今から?!」
弟くんとあかりちゃんの時間を邪魔しないよう、どうすれば早くお暇出来るかを考えていたというのに、彼女はそう言うが早いがコントローラーをもう一個引っ張り出し、私の隣に座った。
予定とは真逆の反応に、どうすればいいのか答えを求めて弟くんの方に視線を向ける。
彼にとってもあかりちゃんの言動は予想外だったのか、暫し考え込んみ、それから苦笑がちに答えた。
「あかりもこう言ってるしさ、ゆかりさんが良かったら付き合ってくれないか?」
弟くんからもOKが出て、更にやる気を入れるあかりちゃんに聞こえないよう、隣に座っている彼の耳元で囁く。
「ちょ、ちょっと……! 本当にいいんですか弟くん!?」
「いや、良いも何も、それはゆかりさんの都合次第だろ。もしかして都合悪いのか? 言い辛いなら、俺からあかりにそれとなく伝えるけど」
「そうじゃなくって!!」
若いカップルの部屋にお邪魔するとか、明らか二人の邪魔になっているというのに、弟くんもあかりちゃんもそれに気付いていないようである。
(ああもう、私はまだ馬に蹴られたくは無いんですけど!? こういう時はそれとなく退出を促すように話を持っていくのが常でしょうに、何で二人とも……! かと言って私の方から帰ろうとするのは、あかりちゃんに誘われた以上冷たい気がしますし……)
「それじゃあゆかりおねえちゃん、早速お願いします!」
「えっ……? あ、ちょ、ちょっと!」
どうするべきかと最適解を考えている内、いつの間にかあかりちゃんはぺこりと頭を下げて、ゲームを始めてしまっていた。
反対側からは少し困ったような声で、だが視線は画面に向けて弟くんが頼んでくる。
「あー……あかりが完全にやる気みたいだし、頼む。代わりと言っちゃ何だけど、このステージ終わったらゆかりさんの分も晩御飯用意するからさ」
「ちょっと、流石にそこまで邪魔するつもりはありませんよ!!」
「それくらいいいって。二人分も三人分も変わんないし」
それ以上抗議しても、もう二人は完全に私がアドバイスするものと思っているのか完全にスルーされてしまう。
そもそも、私が二人といるのは、私の仕事が二人が上手くいくようにサポートすることだからだ。だから二人でいれる時間を削るなど以ての外であるはずなのに、弟くんもあかりちゃんもそれを止めるどころか逆にお願いしてくる。
(しかも二人とも気を遣って言ってる訳じゃなさそうなのが困るんですよね……)
もしそうなら、とっくにこの場から退散する言い訳の二つや三つ思いついている事だろう。
悪意が無いというのは、得てして厄介なのである。
「……もう、仕方が無いですね」
偶には仕事が上手くいかない日だってあるものだ。
少し考えて、今日の所は下手に逃げようとする方が失礼だろうと結論づけ、自分も画面の中の光景に集中する事にした。
「あ、ほらあかりちゃん! そこは怖がらずに後ろじゃなくて斜め前に避けて――」
――その日は、結局夜遅くまで弟くんの部屋にお邪魔することになり、あかりちゃんにアドバイスをしたり弟くんに茶々を入れた。
翌朝、頬の筋肉も筋肉痛になるのだという発見をしたり、久しぶりに寝坊した弟くんを起こした時の絶望顔が中々面白かったり、偶にならこんな日があってもいいのかもしれない。
そう思っていたのだが――。
実況とかだとゲームでガバるゆかりさんが多いけど、こういうのもいいと思うのです