「あっ、すっごく熱くなってきたぁ……」
そうなれば勿論もっと強い刺激が欲しくなってくる訳で。
「ゆかりさんは舐めてるだけでいいのか?」
「んー、それもそうですね。じゃあ……」
ゆかりさんは舌を離すと、そのまま転がってベッドの上に仰向けとなる。
「今日は弟くんにおまかせで、甘えちゃいます。……いっぱい、気持ちよくしてくださいね」
油断しきったように解けた笑みを浮かべる彼女へ覆いかぶさった。
「ああ……」
キャミソールを押し上げて胸まで一気にたくし上げると、既に小さな胸の先端でピンッ、と勃起し主張していた乳首に布地が擦れ、鼻にかかった甘声が漏れた。
「んっ……」
「ゆかりさんも、すっかり準備万端みたいだしな」
「それはっ、弟くんが甘えていいって言うから……っ、あッ……はぅんっ」
「まさかそれだけでこんなになっちゃったって事か? ゆかりさんはエッチだな」
勃った乳首を優しく圧し潰しただけで、嬌声と艶っぽい鼻息が奏でられる。
「だって、弟くんがゆかりさんを求めてくれてるの、んッ、これが初めてじゃないですか」
「そんな事は……いや、そうか……」
言われてみれば、今まで基本にゆかりさんが主導権を握っていたし、こちらから誘った場合もあくまで『練習』として誘っていた訳で。
”ゆかりさん”を俺から求めたのはこれが初めてだった。
「ふふっ、そうですよ? ……だから、今だけでいいのでゆかりさんの事だけを……見て、くれませんか?」
心臓が跳ねたようにも、捩られたようにも感じられた。
「……、分かった」
けれど、目の前の切なげで寂しそうなゆかりさんを放って置くことなど、想像しただけでやはり心臓を潰されたような心地がして出来なかった。賽はとっくに回っている。俺が投げたんだ。
触ってほしいと主張するように勃った乳首ごと、控えめな胸に両手を被せやわやわと揉む。
ややもせず、ゆかりさんのアルコールで上気した頬に、艶のある朱みが混じり、手の平に感じる肌もしっとりと湿度を帯びてきた。
「ん……はっ♡ おっぱい、イイっ……弟くんも、いい、ですか?」
「甘えていいって言ったんだから、こっちの事なんか気にせず好きに感じていいんだぞ?」
「ぁっ、でも……っ、折角ならやっぱり弟くんも、気持ちいい方が、んぅっ、良いなって……はぁっ♡」
「勿論気持ちいいに決まってるだろ」
指の腹に張り付くような感触と、フニフニした控えめな柔らかさ、そしてその奥で拍動する興奮の熱さ。気持ち良くない筈がなかった。
「それなら良かったです……ッ、んんっ。それと、今日は身体が準備、出来てるみたいなので、もっと強くても感じられそう……ですから……」
彼女の淫蕩に細まった目は、その言葉通り期待に潤んでいる。
「それじゃあ、こういうのは……どうっ?」
「んひぃ――ッ!」
肉欲の衝動に突き動かされるまま左胸から手を一度離し、乳首をきゅっ、と摘まみ上げると同時、ゆかりさんはこちらの手首を掴み、頭を枕に押し付けて仰け反った。
それだけなら身体を走る快感に感電したようにも、胸を反らせて刺激を減じようとしたようにも見えただろう。だが、口から吐き出される吐息の甘さが、はっきりと前者であることを物語っていた。
「へぇ、本当に準備出来てるみたいじゃん。お酒のお陰かな」
「ぁっ、はっ、はぁっ……そう、かもしれませんけど……それだけじゃ、なくてっ……」
「それだけじゃなくて?」
小さな絶頂の余韻に躰を震わせながらも、呼吸を整えて、焦点の怪しい目を合わせようとする。
「……弟くんと、キスした時から……っ、身体、熱くて……夢なのに……エッチな気分にぃ――ッ、あ♡」
どうやら思い出しただけで軽く達したらしい。ゆかりさんは躰を小さくビクビクと戦慄かせた。
「マジか。思い出しただけでイっちゃうとかよっぽど気に入ったんだな」
「はい、好きです。すっごく安心するんです……」
そう言ってふにゃりと解けた笑みを浮かべると、両手を背中に伸ばして、顔同士の距離を近づけようと抱きついた。
「でも……まだもっとすごいキスもあるんですよね? 教えてください、弟くん♡」
「……練習じゃなかったのかよ? ゆかりさんが教えられる側になっていいのか」
「あれ……? そう言えばそうですね……でも、弟くんは甘えていいって…………あれ?」
ゆかりさんはぼんやりした瞳で首を捻る。
先ほど「夢なのに」とか言っていたが、どうやら少なくとも意識がはっきりしていないのは確かなようだ。
「悪い、ちょっと意地悪な事聞いたな」
自分からキスをする、というのは一線を越えるような気がして躊躇してしまったが、ゆかりさんがこの事を夢だと思っている事に少し気が軽くなる。
(そう、今は只ゆかりさんの夢に付き合ってるだけだから……)
散々今までセックスしておいて、言い訳にもならない言い訳に、ツキツキと痛む後ろめたさを呑み込んだ。
「キス、するぞ」
「んっ……」
顔を近づけるとゆかりさんは少女漫画のように目を閉じて顎を上げた。
唇同士が触れ合って、さっきよりしっかりと密着し、少しずつ位置をずらして何度も触れ合う。
ちゅっ、ちゅ、ちゅ――
「――ちゅはっ、ゆかりさん、唇ちょっと開けて」
「ん、こうへすか? ……っ!?」
恐る恐る開かれた唇の間に唇を割り込ませると、彼女の躰が緊張して強張った。
「大丈夫、食べたりしないし痛くも無いから。自然に口を開ける感じで……そうそう」
胸を掴んだままの手で大きく円を描いて緊張を解しながら、弾力のある唇を食む。
暫くすると勝手が分かって来たのか、ゆかりさんの方からも唇を動かし、お互いの吐息を食べ合うようになった。
アルコールとゆかりさんの匂いがする熱っぽい吐息を吸い込むたび、自分の現実感が薄れ、罪悪感が溶けていく。
「ちゅむっ、そしたら今度は舌を出して――」
「んっ」
突き出された舌を重ねて、絡める。
ちゅぴっ、ちゅるっ、ずじゅっ――キス音は小鳥の囀りのような音から、今やすっかり淫靡な水音となっていた。
「――んぢゅちゅっ、はぁっ。これ、このキス、一番好きです……弟くんの味がして、弟くんの体温を感じて、すっごく深く繋がってるみたいで……」
「ああ、それでディープキスっていうのかも」
「これがディープキスなんですか……思ってたより、すっごくえっちですね」
「口のセックスとかも言われてるみたいだしな」
「そうなんですね……でも、そろそろお口だけじゃなくてこっちでも、弟くんと……」
胸を揉んでいた手を掴まれて、下へと誘導される。パンツの股部分へ指先が触れると、もうそこは布がふやけるほどにじゅくじゅくだった。
「すごいな、全然触ってないのにこんなになって……」
「あッ、だってぇ……っ」
言い訳を遮るように、股布越しにもはっきり分かる溝を指でなぞると、パンツが一層湿り気を増し、手を握ってくる細指に力が込められた。
このまま布越しの愛撫でもイかせられそうだ。割れ目に溜まった愛液を掻きだすようにカリカリカリッ、と小刻みに擦る。
「はぁぅッ、下着越しなのに……あんっ、こんなイイっ……! あ、指、早くなって……ッ、あっあっあぁっ!」
あっという間にゆかりさんはつま先まで伸ばした足を宙へ浮かせて、軽く達した。
「本当に今日は敏感だな? いや、それともいつもは『練習』だから、我慢してるのか?」
「んっ、ふぁッ……いつもは、教えないとだから……それも、ありますけど……っ」
あるのか。
つまりリードする為、余裕を装っていたという事で。そうなると、その余裕すら無くなる程に感じさせてみたいという、自分勝手な雄の欲求が湧いてくる。
「じゃあ本当のゆかりさんは、すっごく敏感で感じやすいんだ――こんな風に」
「ッ?! ――ゃあぁぁぁぁッ!」
秘所へフェイントの一撫で意識を集中させ、間髪入れずに本命の乳首をきゅっ、と摘まんで引っ張った。
普段なら痛いとか文句を言われる力加減だが、予想通り全身期待に火照ったゆかりさんの口からは甘い悲鳴が迸る。
不意打ちの快感に耐えかねたのか、とうとうゆかりさんから泣きが入った。
「ダメ、それ……ダメぇ……ッ! 痛いぃッ、からぁ――ッ!」
くにっ、くにゅっ、と摘まみ上げた乳首を、金庫でも開けるようにゆっくり左右にねじると、嘘の抗議は忽ち歓喜の啼泣へと呑み込まれる。
「嘘つくなんて、駄目なのはゆかりさんでしょ? 痛みが苦痛じゃないっていうなら、痛くて悲鳴が出る訳ないじゃん。そもそも、痛くて出るような悲鳴じゃないでしょ、あんな気持ちよさそうな声」
「そうだけど、でもダメなのッ――気持ち良くて、良すぎて……っ、分かんなく……なっちゃいますぅッ」
「分かんなくなっていいから。今日は甘えるんでしょ? だったら難しい事は俺に任せて、ゆかりさんはいっぱい気持ちよくなっていいからさ――ちゅっ」
「んん――~ッ! んッ、今キスはっ――んむっ……!」
抵抗したのは最初だけで、すぐに舌がこちらの口へと差し込まれた。
(……やっぱり本当は寂しいんじゃないか)
あやす様にその舌を絡めとると、必死に離れまいとするように舌が蠢き甘えてくる。
自分を邪魔と言わせるように誘導しながら、本心では居て欲しいと願っていたように、言葉と心が一致していない。
素直になれない、といってしまうのは簡単だが、ゆかりさんの場合はもっと根が深いものなのだろう。ふと、酔いで時間感覚が緩んだ思考の中に、ゆかりさんの過去が浮かび上がった。
(そういえばゆかりさんは自我を持ちながら長らく只のアンドロイドのように振舞ってきたって――)
だとすれば、その過程で全て押し殺してきたのだろうか。
痛みも、苦しみも、悲しみも、本音も。
そして、完璧な営業スマイルで求められた仕事だけをこなす。
完璧に徹底的に。
勿論アンドロイドに労働基準法も給料もない。
機械のように、休みもなく、ただ淡々と。
だとすれば、あまりに辛すぎる。それこそ、辛さや痛みが分からなくなってしまうほどに。
――それは勝手な想像に過ぎないのかもしれない。
だけど、自分の本心を押し殺したように振舞うゆかりさんを見ていると、あながち間違っている訳ではない気もした。
「ちゅぴっ――今だけは、ゆかりさんがしたいようにしていいから。どんなに甘えたっていいから」
本日は18時頃にももう一本あげるのでよろしくお願いします。