「え?」
「え? じゃないでしょう、流石にそのままでいいと思ってはいないでしょうけど……具体的にどうするつもりなんですか? さっきの感じだと、ずっと我慢というのは現実的じゃないでしょう」
「それは……ちゃんとしたやり方とかを調べて……とか」
しどろもどろに何とか提示された答えを笑い飛ばす。
「ちゃんとした、ですか……その調べた方法がちゃんとしたものな保証はあるんですかね? どうやって調べる気かは知りませんけど」
「……じゃあ、あかりに正直に答えてくれるよう頼めば――」
「あかりちゃんが無理をするから、どうしたらいいか分からない。そう自分で言ってたじゃないですか」
「っ――! でも、ちゃんと理由を説明すれば――」
「難しいでしょうね」
「何でそう言い切れるんだよ!」
彼が声を荒げたのは、自分の意見を切り捨てられたからという訳ではない。あかりを信頼しているから、きっと分かってくれるはずと信じているのだ――人間と同じように。
そういう意味では確かに、今回の実験においては適任だったろう。
だがこのような状況になってしまった以上、はっきりと認識してもらわなければならない。
ボイスロイドと人間の違いを。
「言い切れますよ。何故なら完全な自我を持っても……いえ、完全な自我を持つからこそ、あなたが考えているよりボイスロイドは人間とは違うんですよ『人間であるあなたが考えているより』も遥かに、ね」
「……どういう意味だよそれ、自我があるから人間と違う? しかもその言い方だと、俺が人間だから分からないみたいな――」
「ええそうです、そう言ってるんですよ」
あえて反発を招くような表現を選び、反発させてからそれでは足りないと突き放す。
案の定彼はぐっ、と言葉に詰まった。
「そもそもの違いは、人間が生まれるものだと表現するなら、ボイスロイドは作られるものだという事です。私たちは、先ず何らかの目的があって、その目的を達成するために作られ、調整される存在です。それは言い換えれば、自我を持つ以前からの……そうですね、人間的に表現するならアイデンティティという表現が少し弱いですが一番近いでしょうか。それが上手く出来ないというのは、自我個体にとって自らの存在が揺らぐほどの影響があるのです」
「……随分と抽象的だな、実存は本質に先立つ……とか何かそういう話なのか?」
やはりいまいちピンとはこないか。考え込むように独り言ちる彼の為に、情報保護規約に抵触しない程度にぼかして例を出す。
「では具体的な例を一つ出しましょう。大分前の話ですが、あるご老人が自分の介護のためにオーダーしたボイスロイドに、完全自我を持つ個体が居たそうです。しかしある日その個体は自己破壊を試み、本社に回収されることになったのですが……その理由が何かわかりますか?」
「え……? 自我があったって言うなら、その老人と上手くいってなくてそれがストレスだったから……とか?」
うん。あかりの事情を知って、そして最初から懐かれた彼ならそう答えるだろう。
「いいえ、正解はご老人が亡くなったからです」
「え? ……あ、引き取り手がいなかったとか?」
「いえ、その方が亡くなってからはご家族が引き取って家事の手伝いなどをしていたそうです。もちろん、そのご家族とも大きな問題はなく」
彼はそこまで聞いたところで、もしかして、と察したようだった。
「じゃあ、何だ? まさか、その個体は老人がいなくなって自分の存在意義が無くなったから自分自身を……って事か?」
「ご明察。その個体に与えられた目的が『その老人、ただそのひとの介護』だったからです。その反省から、今はそういう事が起こらないよう、個体の目的設定に特定の個人を含んだものを指定することはなくなりました。またそもそも出荷前の自我検査精度を向上させて、自我個体を商品化しないように……と言ってもあかりちゃんの例もありますし、まだ検査項目は見直しの必要がありますけどね」
「じゃあ、あかりは……」
彼は自分の部屋の方へ不安げな視線を向ける。あかりちゃんが眠っている方へ。
「落ち着いてください。少なくとも今日の様子を見る限りでは、自己破壊を試みる事はないでしょう。自己破壊は人間でいうなら自殺に相当する、究極の最終手段ですから」
「……そうか」
「……ただ、あかりちゃんはベースがセクサロイドです。性交渉が上手くいかなかった事について貴方が思っている以上に悩んでいるでしょうし、ショックも大きいと思われます。今まで受け入れられていた貴方の事を受け入れられず、そればかりか貴方の方から拒否までされてしまったんですから」
「――っ!」
一度は弛緩した彼の手がぐっ、と強く握りこまれ、それでも尚行き場のない後悔が拳を小さく震わせる。
それも無理はない。話を聞くに、彼はあかりの事を気遣って途中でやめたのだろう。だが、よりによってそれがあかりを傷つけていたのだから。
とはいえ、彼もボイスロイドと人間の違いについては分かってくれたようだし、そろそろ救い船を出す頃合いか。
「ただ、それは貴方のせいというわけではありません。勿論、あかりさんのせいでもね」
「……それ以外に原因があるっていうのかよ」
「ええ、貴方と出会った頃にあかりさんが不調になった原因、説明したと思いますけど覚えてますよね?」
「ああ、命令と自我が相反してってやつだろ? だけど、それは解決されたんだし今更そんな事――」
「それ、正確には原因の半分なんですよ。もう一つ、彼女にはセクサロイドの感度を上げるという触れ込みの不正なパッチが使われていたんですよ。尤もその実態は、入力される感覚の値を数倍にして性的興反応と結び付けるという代物なんですが。これがまた恐ろしいまでにお粗末な出来でして、体感覚だけでなく聴覚から視覚から……兎に角何でもむやみやたらに入力値を全て数倍というニューラルネットワークの耐用性を無視したような設定でしてね……正直、あかりさんはよく耐えたと思います」
「……ちょっと待てよ! そんなの聞いてないぞ!?」
彼が肩につかみかかってくる。自責の念から一転、はっきりとした怒りに突き動かされるように顔を近づけて。
「ええ、伝える必要が無ければ伝える予定はありませんでしたからね」
「何でだよ! 何でそんな大事な事を――」
「増幅された感覚情報を、何でもかんでも性的興奮反応と結び付けるからです。極端な話、風景を見ているだけで、雑踏を聞いただけで、料理の匂いを嗅いだだけで、少し縁石に躓いただけですら性的興奮反応を呼び起こすという状況なわけです。勿論、たまたま目の前に自転車で転倒して土手から滑り落ちてきた人の姿を見ただけでも、本人の意志とは関係なく、ね」
「それ、は――」
言外に彼女が好意を向ける相手があなたである必要は無かったという残酷な宣告に、彼の手から力が抜ける。
「ね、聞かないで済むなら聞きたくなかったでしょう?」
「でも、本当にそうなら……。ただの刷り込みで、あかりを無理に縛り付けて……」
やっぱりそう考えるか、良くも悪くも生真面目すぎるというか――びしっと彼の頭に軽く手刀を入れてそんな思考を止めさせる。
「はいストップ、勝手に悲観しない! 確かに先ほど言った事は事実ですし、もしかしたらあかりちゃんが弟くんに興味を持つきっかけにはなったのかもしれません。ですが、あなたへの思いは間違いなく彼女の自我によるものです。それはここ三週間あかりちゃんと話してきた私が保証します。それに昼は大学があるといっても、毎日一緒に生活してきたんだから、弟くんだってあかりちゃんがどれだけ心を尽くしてくれたかは分かるでしょう」
「そう、だな……」
これで自信がないとか抜かしていたら、あかりちゃんの様子を見に行く度、一緒にいれるように手回ししてくれてありがとうございます! と嬉しそうに感謝されたり、夕食は何を作れば元気が出るでしょうか、と本気で相談されたりされたことを延々語ってやるつもりだったが、流石にそこまで鈍感ではないか。
「話しを戻しましょう。今大事なのは、あかりさんが以前の感覚と今の感覚の差を上手く処理できていないという事です。言ってしまえば、今までは貴方にどこだろうが触られるだけで、姿を見るだけで、匂いを嗅ぐだけで、性的興奮とそれに伴う肉体反応が起きていたのが、それが急になくなったわけですからね」
「……冷静に改めて聞くとヤバすぎるな、そのパッチ。媚薬っていうか劇薬レベルだろ」
「だから出来の悪い代物だって言ったでしょう。……まぁ逆に言えば、それだけの補助があったからこそ、今まで元童貞だった弟くんの拙い知識と技術でもあかりちゃんを気持ちよく出来ていたわけですが」
「うっ……」
「つまり、そもそもは弟くんが自分の力でちゃんと女の子を感じさせる事が出来ないのが二次的な原因という事ですね」
「うぅっ…………じゃあ一体どうしたらいいんだよ……」
散々新しい情報と、その度に起こる感情の波。そしてとどめとばかりに男性としての自信をボロ布の如くズタズタにされた彼は、ついにそう口にした。
「言ったじゃないですか、出来ないことは悪くない、ただ練習すればいいって。勿論、客観的に指摘してくれる指導役がいる下で、ですけれど」
「……まさか、それでゆかりさんが練習相手になるって?」
「いえ、別に客観的に評価できるなら私じゃなくてもいいですから、風俗に行ったり行きずりの女性をナンパしたりでもいいですけど」
「いや、それは流石にちょっと……」
「でしたらやはり私が練習相手として手ごろなところだと思いますよ?」
そこで畳みかけるよう、続けざまにアピールポイントを列挙していく。
「まず最初に、私は結構自由にボイスロイドのデータベースへアクセスできます。ですから、あかりちゃんと同じバージョンのセクサロイドのデータをダウンロードし初期化をかければ、感覚をかなり近づけることが出来るでしょう。それから二つ目、この通り事情はばっちり把握していますし、あかりちゃんとの個人的親交もありますから状況が変わっても即座に察知し対応が可能です。つまりは必要な分だけ練習して、スパッと関係を終わらせれます。そして三つ目、私にとってこれは仕事の一部ですから、弟くんが気兼ねすることは何もありません……さぁ、どうですか?」
「…………」
軽妙滔々なセールストークに彼は何も言わなかった。
とはいえ大体考えていることの予想は付く。
セックスが上手くならなきゃならないのは既に彼自身も実感していて、その為の確実で他の方法よりましな手段も提示されている。ただ、やはりあかりの事を考えると肯定は出来ない――といったところか。
けれどそこで先ほどまでのように否定の言葉が出ないというのは、決断の拮抗点に達しているからに他ならない。あと一押しすれば折れてしまう、チェックではなくチェックメイトの状態だと自己主張しているようなものだ。
ならば――
私はキャミソールをめくりあげて乳房を露出させ、後ろ手に彼の股間を撫でた。
「まあ? 口と違ってこっちはやる気十分って感じですけどね?」
――――
――「まあ? 口と違ってこっちはやる気十分って感じですけどね?」
そんな少し前にどこかで聞いたような気のするセリフを言いながら、お腹の上に座ったゆかりさんは挑発するような表情を浮かべて、かりかりとジーンズの上から半勃起している股間をひっかく。
厚い綿生地越しの、まるでくすぐられるようなもどかしい刺激に、昨夜発散できなかった欲望が溜まった股間はあっという間に硬度を増し、ここから出せとズボンのジッパー部分を押し上げる。
「……これは、物理刺激に対する生理的反応だから」
「ふーん? その割にはさっきから胸に熱い視線を感じる気がするんですけど?」
「…………ぐぅ」
事実なので否定できない。
確かに褒められた行為ではないことは理解しているし、見ないようにはしている。いや、してはいるつもりなのだが……窓から差し込む月明かりに照らされ、たくし上げたキャミソールの下からつつましげだがふにゅんと柔らかなシルエットを描くふくらみが、そして胸のサイズに合わせて小さ目だけれどはっきりツン、と自己主張する乳首が惜しげもなく晒されているのだ。
そんな光景が目の前30cm程にあると想像してほしい、目を逸らすことはおろか瞬きをすることすらためらわれることは、世の諸兄にとって想像に難くあるまい。
そんな虚しい自己弁護を頭の中で繰り広げながらも視線を胸から外せないでいると、彼女も自身の胸に視線を落として不思議そうに、ふにふにと自分の胸を揉む。
「私の乳房はかなり小さめに設計されていますし、そんなにまじまじと見る程もないと思うのですけどね。あかりちゃんで見慣れてるでしょうし」
女の子が自分のおっぱいを玩んでいるという光景は、それだけであればひどく性欲を掻き立てるものであったろう。だがゆかりさんの最後の一言があかりの事を意識させ、興奮以上に自分の体から獣欲の熱を引かせていく。
「あれ? ちょっと、どうしてふにゃっとしてきてるんですか!」
当然それは興奮のバロメーターでもある肉竿にも即座に反映され、胸を弄っているあいだも小刻みにそこをひっかいていたゆかりさんにもすぐわかったようだった。
ちょっと怒ったように、ぺしぺしと胸板を叩いてくる。
「いやその、ゆかりさんがここまでして協力してくれようとするのは嬉しいよ。嬉しいんだけど、やっぱりこういうあかりを裏切るようなのは……さ」
それを聞いたゆかりさんはわざとらしい頬の膨らみをしぼませ手を止めた。
「はぁ、一度その気にさせてしまえば後は簡単に流されると思ってたんですが。……まぁ、そういう意味ではあかりちゃんを安心して預けれる訳ですし、いいことではあるんですが」
ため息交じりにそう言うゆかりさんはたくし上げていたキャミソールを下ろすと、ようやくお腹の上から下りてくれた。
何だろう、ずっと乗られていたせいでゆかりさんの体重と体温がなくなったのが逆に違和感を感じてしまう。
兎も角、ここはゆかりさんの部屋でゆかりさんのベッドなのだから、いつまでも寝ころんでいるわけにもいくまい。
ゆかりさんとの応酬と深夜という時間のせいか、かなり疲れてしまった。よいしょと体を起こしてベッドに腰かける体勢に、そこから立ち上がろうと腕に力をいれたところで、お腹から下りた後隣に座っていたゆかりさんが「えいっ」と膝の上に腰を乗せてきた。
彼女の短めな後ろ髪がふわりと揺れて、オリエンタルでどこか非日常を思わせるような、頭を痺れさせる甘い香りが鼻腔をくすぐる。
「――っ! も、もう終わったんじゃないのかよ」
不覚にも動揺してしまい噛みそうになりながら、ゆかりさんをどかすためベッドについていた手を肩へと回す。
しかし後から回した手は、あっさりと両手とも掴まってしまった。
「ほらまた自分に都合のいいように早とちりして、まだ終わったなんて言ってないじゃないですか。情報の行き違いは組織におけるエラーの主因なんですから、そんなんじゃ社会に出たとき困りますよ?」
普段、だらだらあかりと駄弁っているイメージしかないゆかりさんらしからぬ、社会人の説教じみた事を言いながら、彼女は掴んだ手をそのまま体の前へと持っていき、
「えい」
躊躇なく自身の胸に手を乗せた。
薄いキャミソールの下の柔らかなふくらみと、人肌のぬくもり。
それを手が感知し、脳が認識した瞬間、フニフニと二度手が勝手にその感触を確かめていた。
「おや、あんなこと言ってたのに、乳房は揉むんですね?」
「いやっ、違っ、これは――!!」
本当に自分の意志ではない無意識的な行動なのだと抗議したかったが、客観的に見れば揉んだ事実に変わりはない訳で、もやもやとしながらも何も言い返せず押し黙るしかなかった。
……絶っ対に男性には柔らかいものが手のひらに触れたら揉んでしまうという反射行動がある筈だ、世の科学者たちはこの無念を晴らすためにもぜひとも研究してほしい。
だがそんなこちらの心情など知らないゆかりさんは、弱みを握ったいじめっ子のような表情を浮かべて見上げてくる。
「まぁまぁ、練習が必要なのは弟くんも自覚してたじゃないですか。だから性行為をしたくないって言うなら、もうそれに関して無理は言いません。でも、せめて女の子の扱い方は勉強したらどうですか?」
「扱い方って……」
「ま、平たく言っちゃえば前戯の仕方ですね。昨日、あかりちゃんの事全然感じさせてあげれなかったって言ってましたよね?」
……確かにそうだ。
昨夜は以前と同じように触ったはずなのにあかりを痛がらせてしまうばかりで、だが苦痛に眉根を寄せながらもがんばって受け入れようとしてくれて、でもそんな痛々しい姿見てられなくて……。
あかり以外の女性と……、というのはやっぱり裏切っているみたいで抵抗がある。
けれど昨日の様子を見れば、ゆかりさんの言う通りこのままだとあかりは間違いなく無理をして、例え痛くとも笑顔を浮かべてでも抱かれるのだろう「気持ちいいですよ」なんて嘘をついて。
そんなのあかりに違法パッチを使って無理やり抱こうとした奴と何が変わるというのか。
ゆかりさんが本当にあかりと同じ感覚に合わせて練習できるなら。あかりをちゃんと気持ちよくさせてあげれるのなら。
だが、そこでふと気づいてしまう。
頭の中の葛藤から意識を目の前に、自分の膝に乗って見上げてくる彼女と目を合わせた。
「……そもそもさ、ゆかりさんはいいのか?」
「何がですか?」
「何がって……その、そんな練習なんて理由で体を好きにさせてさ……ゆかりさんも『自我個体』なんだろ?」
それを聞いたゆかりさんは朗らかに笑った。
「なーんだ、そんな事で躊躇してたんですか?」
本当に可笑しいというように。
「私は二人のサポートをするのがお仕事なので、別にそんな事気にしなくていいんですよ」
「いや、仕事だからってそれはやりすぎなんじゃ……」
「言ったじゃないですか」
ゆかりは胸板に倒れ込んでこちらの頭の後ろに手を回し、ぐっと距離を近づける。
「例え自我個体でも……いえ、だからこそ私たちにとって作られた目的は絶対なんです」
「いや、それは聞いたけど……」
「そして、受付として比較的マルチなオーダーに対応するよう設計された私の目的は『与えられた仕事を達成すること』――今は『お二人が可能な限り上手くいくようサポートすること』ですから」
それは、今まで聞いた話を纏めるならば――
「ま、つまりは私としても余計なことは気にせず、サクッと私の体を玩んで女の子の扱いが上手になってもらい、あかりさんと仲良くやってくれた方が嬉しいって事ですね」
「玩ぶって……せめて、言い方は何とかしてくれないか?」
「大事にしてね――なんて言うよりそっちの方が弟くんも気楽でしょ?」
にっ、とゆかりさんは片唇を持ちあげる。
――ここでゆかりさんからの提案を断ってもし、あかりと上手くいかなかったら……あかりだけじゃなく、ゆかりさんにもつらい思いをさせるという事だ。
逆にもしここでゆかりさんの提案に乗っても罪悪感を感じるのは今のところ自分だけだ、あかりに気づかれなければ悩むのは自分だけでいい。それなら――
「――ごめん、気を使わせて」
「……『ごめん』じゃなくて、もっと言うべき別の言葉があるでしょう?」
覚悟を決めたつもりでも、やはりどうしても残る気まずさからつい謝ってしまい。そんな自分に、ゆかりさんは唇を尖らせる。
「えっと……協力してくれて、ありがとう?」
「はい、良くできました」
頭の後ろに回されたゆかりさんの手が、優しく髪を梳いていく。
そんな子供扱いめいたことをされたのはいつ振りだろうか、妙にくすぐったく感じた。
「……さて、じゃあそろそろ弟くんの同意も取れたところで始めますか。ただ! これは練習であり訓練なので悪かったらビシバシ言っていきますから、そこは覚悟してくださいよ」
「分かってるよ、そうじゃなきゃ意味がないし」
「分かってるならオーケーです。じゃあ、始めましょうか」
気付かないうちに評価頂いていたみたいでありがとうございます。
正直リアルの方が現在大変なので殊更嬉しいです……と、投稿時間が安定しない言い訳をしてみたり……(´・ω・`)キョウモヒヅケギリギリデスマヌゥ……