いわゆるエロステータス鑑定を何故か現代で持たされた学生の話 作:オキフの謳
さて。
その後。
妖魔王とやらは口上を述べる前に魔法少女プラス鬼レベリングした退魔シスターに無常にも惨殺され、逃げ散る妖魔も追いかけて仕留めること多数。
無事理沙さんは任務完了、危惧していた淫乱エンドとか苗床エンドには進まず、通常のエンディングへ到達したとのこと*1。
これにて一件落着……といけたらよかったのだが。
「……」
俺は今、その理沙さんとクリア後ダンジョンでトレハンを繰り返している。
「やっはっ、ふっ……たぁっ!」
なんでかと言えば、『退魔師理沙』のシステム上の問題とでも言おうか……。
ゲームでは、現代モノであっても、時に通貨単位が異なる場合がある。メ◯テンのマッカ然り、あるいは所属組織用の不換通貨*2然り、妖魔を倒して得られるものは妖魔素材及びソウルであり、日本円ではないのである。
つまり、このクリア後ダンジョンで暴れてソウルや素材を稼ぐことは十分に可能であるのだが、その一方で日本円に換金することが著しく難しい、ということでもある。
考えてもみてくれ、現代日本で、刀剣や拳銃のたぐいは合法的には売りさばけない。いわゆる回復薬等も同様だ、退魔師の魔力が前提となっているとのことで、試しに俺も飲んでみたが、ただのすっとする清涼飲料水でしかなかった。
とはいえそれ以外に手がなく、なおかつ妖魔退治ノルマ自体は継続とかで、お給料のために妖魔退治稼業は続いているのである*3。
さて、ここで何故俺が同行しているのか、という点に話が戻る。
俺:トラップ回避のパッシブアイテム。
同行するチャッピィ:トレハン向けドロ率向上のパッシブアイテム。
まあそうなるよね、となるのだが……思い出してほしい。
そもそも、理沙さんは単独ではクリアができなくて詰みかけていたということを。
「あっ、くっ、くぅっ! こ、この、放しなさ、いっ!」
これである。
……これである……。
「ワイ的にも、さすがにまたか、ってなるねんなぁ……」
チャッピィの言が全てだ。
パワーレベリングにより、この基礎性能だけは高いポンコツシスターは絶望的、というほどではないがそれなりに戦闘センスがなく、回復薬を叩きつつ全体攻撃、あるいは範囲攻撃スキルで殲滅、と行きたいところなのだが時折外して殲滅しそこねる、あるいは詠唱中に殴られて詠唱中断する、挙句の果てに抑え込まれて拘束状態に陥り*4。
後はご想像の通りである。
既に、何度か『退魔師理沙』の方のリセットアイテムに何度かお世話になっている有様で*5。
貸している金額が金額なので流石に諦めきれず、なんというか30年ローンみたいな返済速度なので、このダンジョン攻略に30年も付き合うのは流石にゴメンである。
であるので……ナニかこう、この人に上手いこと稼がせる方法は無いものだろうか。
そんな事を考えつつ、理沙さんを靄から救出する。靄の当たり判定が俺にないので、適当にかき分けて引っ張り出すだけである。イベントが進行中のままになるせいか、靄はその場に留まり、しばらくして消滅するのでそれ以上の対処はとりあえずいらない。
金を貸した事自体は後悔していない*6が、毎度毎度これは流石に気が滅入ると言うかなんというか。
本当、何かいい方法はないだろうか……。
◆ ◇ ◆
などと、手をこまねいていた俺が悪いのだろうか。
いつものようにバイトを終えて*7自宅に帰ってきたところ、リビングで麻衣子がドラマを見ていた。*8
いつものことなのだが、虫の知らせとでも言おうか、妙に嫌な予感がした。
「……」
そう、生徒会長が俺の部屋にいたあの時のように。
そんなわけで、俺の部屋であるにも関わらず、ノックをしてみた。
コンコン
「あっ、はい!」
案の定というかなんというか。
俺の部屋から理沙さんの声がする……。
何故? どうして? 何だってまた俺の部屋に?
色々と投げ捨てたくなりつつ、ドアを開け――
閉じた。
「そうだな、ちょっと散歩でも行くか、数日ぐらい」
そうして俺は颯爽と家を――
「ちょちょちょちょ待ってください、いきなり回れ右なんて酷いじゃないですか!」
出られずに理沙さんに腕を掴まれた。
「うるせぇ誰に聞いた、ていうかなんでいるんですか!」
理沙さん(E:競泳水着)*9。
「えっと、妹さんから」
今日があいつのプリンの命日だ。
「はぁ……で、一体何故ここに? どうしてそんな格好で?」
結局、部屋に引き込まれ。俺はベッドに腰掛け、理沙さんはデスクチェアに座って向かい合っている。
「その……返済が芳しくないじゃないですか」
「ああ、ですねえ。まあでも、無利子無担保無期限でいいですよ?」
「そのお……磯田さんはそうおっしゃってくださってるんですが、額が額ですよね?」
「まあ、確かに。場合によっては推理小説の殺人事件の動機とかになりますね」
「で、でしょう? それで、私は退魔師、磯田さんは……その、色々と疑問ですけどとりあえず一般人」
「まごうことなき一般人のつもりですが?」
「……とりあえず置いておきましょう。退魔師の私が、一般人の方から大金を借りてることになるんです」
「まあ……確かに」
置いておくな、と思うものの、話が進まないのでとりあえず飲み込む。
言われてみれば確かに、とんでもない額を貸し付けている状態である。無利子無担保無期限、そうだ無証文ですらある。
「その、退魔師としての力で脅してるんじゃ、って疑いをかけられてまして……」
「……ずいぶんと暴論ですね」
「それでその、退魔師教会からの融資に付け替えろと」
「無理では?」
「で、ですよねえ、無利子無担保無期限だから何とかなってるのに、有利子になったら、利子だけ返し続けて一生借金漬けに……!」
さもありなん。
ポンコツと言ったが、考えてみればそう言うよりは、戦闘方面での才能が足りていないのが理沙さんである。
「その、それで……こ、これで勘弁していただけないかなって……」
と、理沙さんが一枚の書類を出す。
婚姻届。
「……」
「い、一生尽くしますから! ほら、私って淫乱度とか経験とか何度も消してますけど、記憶は残ってますから! い、色々できますよきっと、色々!」
やる気十分、みたいなポーズをする理沙さんだが、どっちかっつと、その残ってる記憶からの汚染じゃねーかなこれ。あるいはやっぱポンコツ。
推定とは言えTSしてるはずなんだが、そういう方面からの抵抗感はないのか? いや、どれだけループしたのかわからないが、あの絶望的なステータスになるまで繰り返したと考えればその辺りの感覚は摩耗済みとも考えられる? とりあえず出会って数日の男、しかも学生に持ちかける相談では断じて無い。
あと、ここで結婚とかしたら、会長その他に依る俺の浮気orNTRルート、もしくは理沙さんのNTRルートに発展しそうでクソ怖い。
「とりあえず……教会に直談判しましょうか」
「……ふぇっ?」
ということで、理沙さんを部屋に残して部屋を出る。無論、普通の服に着替えてもらうためだ。
「えぇい、散れ散れっ! お前らはお呼びじゃないんだよ、天丼はいらねぇんだよ!」
いつの間に集まったのか、部屋の外には競泳水着姿の生徒会長以下略が集っていたので、追い散らす。*10
少しだけ調べたが、ここで俺が借金棒引き、と宣言したところで、今度はその債務免除益による税金が理沙さんに襲いかかる。それならいっそ、理沙さんのダンジョンアタックに依る経費も返済に計上してしまえ、あるいは戦闘訓練つけろや、不換通貨による買取をやめろ、などなどやれることはまだある。
曲がりなりにも理沙さんで上澄みの部門なのだ、まずは話し合い、こじれるようなら魔法少女どもという傭兵を雇ったっていい。
というわけで、まずは話し合いと行こう。
◆ ◇ ◆
結局。
冷蔵庫のプリンを全滅させた後に話し合いに赴き、退魔教会自体が相当の落ち目&貧乏組織であることが話し合いで判明した。
教会の人からは、俺は妖魔側に組みした人物と思われていたらしく、強引にでも借金を付け替えないとヤバい!と思われてのことだった。加えて理沙さんが言っていたが、俺にはアライメントチェックが通らないので、その点でも不信感が募っていた模様。前後状況とそもそも俺にとっても泡銭であること、等など、様々なことを説明、話し合いして、とりあえずは現状維持、という方向で話が纏った。
ダンジョンでの消費を経費に含めることは理沙さんが頑強に抵抗した。ただでさえ借金で尊厳が守られたというのに、さらに負担になるわけには行かない、とのこと。
言ってることは立派なんだが……ダンジョンで拘束されてジタバタしてる姿を見たことある身としてはなぁ……。
金策についても教会と相談したが、そもそも貧乏組織なので組織の収入がないと理沙さんにも買取その他が支払えない。普通の宗教法人としての収入は、監査があるので多少ならともかく大々的に流用もできない。
あまつさえ、妖魔王倒しちゃったのでこれから事件も減少傾向になると見られ、ぶっちゃけ解散してただの宗教法人となることすら検討しているとのこと。
これ、マジでどうすっかなぁ……。
どうしてこうなったんだろ。
俺はただ、知らない人の痴態を眺めてギャハハえろ~いってやりたかっただけなのに……。
<了>