「うぅ…………」
時刻は午前6時30分。
日の光に照らされ、畔多は目を覚ました。
チュンチュンと鳥が鳴きいつも通りの朝が来たかのように思えたが‥‥それにしてはやけに静かだ。
いつもなら母の料理の音と父親がつけたテレビの音が聞こえるのに――――――。
生活音が一切なかった。
「親父?、お袋?」
返事はない。
非常事態と捉え本能的に高校で支給されたサバイバルナイフを携え、畔多は両親が家にいないか探し始めた。
まず向かうのは玄関だが、道中どの部屋にも両親の姿は見つからなかった。
「おい‥‥嘘だろ」
玄関に着いた彼は現実を見て絶句した。
二人の靴は綺麗にそのまま並んで残っていたのだ。
それどころか靴棚を開けた痕跡すらない。
つまり二人は触ってないのだ。
人攫いの選も考えたがそれにしては綺麗すぎる、何も散らかった様子がない。
あの二人を攫ってなんか価値があるだろうか?。
戦術的にも戦略的にも両親を人攫する意味は全くない。
自分が犯人の立場だってこんな普通屋じゃなくもっと豪華な家に入る。
「つまり。神隠しか……」
頭に浮かぶ非現実的な答え。
博明に言ったら笑われそうだ。
その時スマホのトークアプリが反応した。
グループチャットで何の因果か発信者は博明だ。
『皆聞いてくれ。今朝起きたら家族が消えた。これは僕の家庭だけではなく烈夏や功の家庭にも起きたようだ。畔多や黎の家庭はどうだい?』
もう既に、烈夏や功には連絡済みか。
ピコン、とまたトークアプリが反応した。
チャットを送ったのは黎で、俺の家もだと伝えた。
「おいおい嘘だろ。全員の家でこんなことが起きてるってか」
これには普段都市伝説や陰謀論を信じない畔多でさえもが、国家絡みの拉致かと変な事を考えてしまった。
「『俺んちもだ』と」
スマホを操作しメッセージを送る。
すぐに博明が返信してきた。
『成程。これで全員の家庭から両親が消えたとの確証が取れた。メッセージでやり取りするのも手間だ。何処かに集まろう』
『おう!そうだな!。やっぱり学校か?』
烈夏がメッセージを送る。
『そうだなそれがいいだろう。何か確認出来るかもしれないしな。よし学校でまた会おうお前ら』
博明の考えと烈夏の意見に乗っ取り畔多は学校で会うように伝えた。
『了解だぜ!ボス!』
『了解畔多リーダー』
『了解したよリーダー』
『了解だ、リーダー』
各々の返事を確認し、トークアプリでのやり取りはここまでだ。
「分隊全員の親が消えたってのか、こりゃまた奇妙だな」
学校から5人に分けられたグループには分隊の名前が当てがられる。
畔多が所属する分隊の名前はユニーク分隊だ。
個性的なこのチームにピッタリな名前である。
「道中何があるか分からない‥‥準備だけはしてくか」
サバイバルナイフをそれぞれ片方のズボンに2個入れ、スタングレネードや催眠ガスなどなるべく殺傷力の低い物を鞄に詰め込んだ。
「ふぅ‥‥‥‥。行くか」
警戒しながら畔多は家を出た。