Pixivにも、「志木 有紀」の名義で、同じ作品を投稿しています。
「んっんっ……あ゙ぁ~っ!やっぱりこの一杯ね!おかわりください!」
「もう少し考えて飲んでほしいんだけどね。はいどうぞ」
「いいじゃない!せめてこれぐらいは楽しめないと、生きていけなくなりそうなの……んぐんぐんぐっ!まだ飲み足りないわ、もう一杯っ!」
「……はい、どうぞ」
「嬢ちゃんも、男がいたらいいのかねえ。紹介してあげようか?」
「結構よ!……結構、結婚……結婚とは言わないけど付き合ってくれてもいいじゃない!朴念仁!そういうとこも好きになっちゃったけど!もうさみしくって、切なくって、私がこんな思いをしてるのに、また女の子に囲まれてるに違いないわ!うぅ、会いたい……褒めてほしい……」
王都ランドソル。この夜もユカリは、ジョッキに縋りついていた。酔いが深まり夜も深まり、ユカリは酔っぱらいとなって一人家に帰る、はずだった。
「ユカリさん?」
「この声……ええっ、キミ!?どうして!?」
「お店から、声が聞こえた気がしたから」
「私の声に気づいてくれたの?嬉しい……ねえ、ごはんはもう食べた?まだなの?だったら一緒に食べましょうよ♪お姉さんが奢っちゃうわ!」
呼び声とともに現れた、剣士のような恰好をした少年。彼の姿を目にしたとたん、飲んだくれていたユカリはすっかり上機嫌になってしまったのだ。ひょっとするとさっき言われたい放題だった朴念仁はこの男か、と周囲が耳目を傾けていると、二人は親密な雰囲気で、肩を寄せ合うようにして食事を始めた。
食欲が満たされれば、それぞれの家路をたどる時間が近づいてくる。別れを惜しむかのように、ユカリはジョッキを持ち上げ、口を開いた。
「どうかしら、キミも一杯呑まない?」
「ううん、僕はいいや」
「真面目さんね。でも、キミのそういうとこ、お姉さん好きよ……ほんとなんだから」
そう言うとユカリはジョッキを口元に近づけ、しばしの逡巡の後に下ろした。その顔は赤らんでいるものの、決然とした表情である。
「ねえ、少し寄っていきたいところがあるの。一緒に行ってくれないかしら」
少年に向き直り、ユカリは告げた。
「ここって、ユカリさんの家?」
「そうよ。でも、送ってほしかった、だけじゃないから」
自宅に着くと、ユカリは何やら思い詰めた様子で少年を招き入れた。
「おじゃまします」
「……うん。こっちに来てくれる?」
ユカリの案内に続いて、少年はさらに扉を潜っていった。その先にはベッドがあり、つまりユカリは少年を寝室に連れ込んだことになる。
「ユウキくん。私、あなたのことが好きです」
扉を閉めると、ユカリは向き直って告げた。ユウキと呼ばれた少年は、あまりにも直截な告白の真意を理解していないようだったが、それを知っていたかのようにユカリは言葉を続けた。
「キミのことが、ずっと気になってたの。お姉さんとして導いてあげたいなって、ううんそれだけじゃない、女として愛して欲しいって!私があなたのことが好きっていうのは、女が、男に恋しているっていう意味なの。アキノさんたちのことが好きとか、もちろん麦しゅわが好きっていうのとは違うのよ?抱きしめてほしい、キスしてほしい、一生そばにいてほしい、そう思うと胸が苦しくなるぐらい……ねえ、私の想い、伝わるかしら?」
ユカリは一歩、二歩とユウキに近づくと、そのまま胸元にしなだれた。体温の熱と、柔らかな感触が伝わり、ユウキは不可解な感情を覚えた。ユウキもユカリのことを憎からず思っていたが、このような感情を抱くのは初めてだった。
「キミのことが、好きなの。恋しいの。愛しいの……」
そう言って、ユカリはユウキの瞳を見つめた。ユウキはふわりと香るユカリの匂いを嗅ぎ取ると、身体が熱くなるように感じた。さらに潤む瞳に自分の姿が映っているのを見るといよいよ動揺したが、同時に、不可解だった感情の正体にも近づきつつあった。ユカリはゆっくりと身体を伸ばし、ユウキに顔を寄せた。引き寄せ合うように二人の距離が縮まる。
「ユカリさん」
ユウキの声で、ユカリは動きを止めた。潤んでいた瞳から、堰を切ったように涙が溢れて流れ出した。二人の身体が離れた。
「ごめんなさい。こんなこと、迷惑だったわよね!それとも、よくわからなかった?ううんそれでもいいの、でもせめて、あなたのことを好きでいさせて」
震える声で、涙も拭わぬままにユカリは畳み掛けた。だがそれきり、言葉は喉につかえて、もう声にならなかった。頑是ない少年に想いを押し付けた後悔と自責がユカリを責め立て、さらに恋破れた苦しみにも苛まれた。ユウキはユカリの苦しむ姿を見過ごせないかのように手を伸ばした。
「だめよ…!私みたいな女に、優しくしないで!」
ユカリは叫ぶように発したが、ユウキは意に介さなかった。心痛するユカリは、言葉の通りには動けず、ユウキの手を振り払わなかった。再び二人の身体が重なった。
「僕も好きだよ」
たった一言で、ユカリの涙は止まった。それでも、ユカリは苦しげな表情のままだった。
「ありがとう、ユウキくん。でも、あなたの好きと私の好きはきっと違うわ。もう十分よ、私もうこれ以上、あなたからもらうわけにはいかないわ」
ユカリはそう言って、身体を離そうとした。だが、ユウキは離さなかった。
「違わないよ。ユカリさんと、同じ気持ちだよ」
「そんなわけ、ないじゃない」
「どうしてそう思うの?」
「だって私…あなたは……本当に、そうなの?」
「僕はユカリさんと一緒にいたいし、こうやって抱っこすると幸せだよ」
二人の問答には、二人の事情が滲み出ていた。ユカリはもう成人していたが、ユウキはまだ成人しておらず、更には記憶喪失だった。そのためユカリはユウキの好きだという言葉を、自分と同じ気持ちであるとは受け取れなかったのだ。
「そんな、うそよ、でも、でも、うれしくて、なみだが……」
「嘘じゃないよ。僕もユカリさんが好きだよ」
「あいしてるって、いってくれる…?」
「ユカリさんを、愛してる」
「ユウキくん…ユウキくん!」
ユカリは堪えられないとばかりに、ユウキに抱き付いた。二人の距離はゼロになり、身体と身体が絡み合った。ユカリはしばらく嬉し涙を流しながら抱き合っていたが、涙が止まると、ユウキの耳元に口を近づけて、囁いた。
「今日、泊まっていかない…?」
ユウキはくすぐったそうにしながら頷いた。
ユウキは記憶喪失で、さらにユウキにとっては不慣れな他人の家なので、両想いになれたという高揚感も手伝い、ユカリは二人で一緒に入浴する決断をした。顔を赤くしたユカリと、よく分かっていない様子のユウキが浴室に向かい、やはり顔を赤くしたユカリと、落ち着きをなくした様子のユウキが、ぎくしゃくしながらも寝室に戻ってきた。
「キミも、こっちに来て?」
ベッドに仰向けになり、下着姿でユカリが誘った。ユウキはふらふらと近づいていった。普段とは異なる服装や髪型に加え、上気した肌や立ち居振る舞いがユウキを骨抜きにしていた。
「ねえ、キスしたいな……あら、もしかしてわからない?じゃあ、お姉さんが教えてあげる……」
キスをねだられたユウキは、しかし焦燥するばかりで反応を返せなかったが、ユカリはユウキの身体を抱き寄せた。
「キスっていうのはね、こういうことよ……」
二人の唇が触れた。僅かな時間、触れるだけのバードキス。それでも、二人にとってはこれ以上なく刺激的で、幸せな瞬間だった。
「しあわせ……ねえ、キミはどうかしら?本当に、わたしと同じ気持ち?」
「もっと、キスしたい……」
「キスが気に入ったの?わたしもなの、もっとしましょ?」
二人は何度も口づけあった。次第に唇の触れる時間が長くなり、ユカリはユウキの唇を舌で舐った。さらに足を絡めて、身体を預けさせると、ユウキは唇を離して、呻くように声をあげた。
「ユカリさんっ、なんか、へんっ」
「そうよね……さっきから、辛そうだったものね。ねえ、身体を起こしてくれる?これから、キスよりもっと凄いことをするわよ…!私も初めてだけど、一緒に頑張りましょ!」
ユカリとユウキは、ベッドの上で向かい合った。二人とも全裸になり、さらにユカリは、女性器を指で広げて露わにしていた。
「私の、足の間まで、見えてる、わよね?」
「うん、見えるよ」
「この、ひだに覆われているところに、キミのお股にある、お、おちんちんを挿れるのよ。これはセックスと言って、男の人と女の人が、お互いに好きで好きで仕方ないからすることなの。私は、キミのことが好きだから、セッ、セックスしたいと、思うんだけど、キミはどうかしら……?」
「僕は、ユカリさんに、笑顔でいてほしい」
「ユウキくん……いい、のよね。私も、もうむずむずしちゃって。キミのおちんちんもすっきりするから……やっぱり、しましょう!セックス!」
二人とも経験は皆無だった。それでもユカリは方法を知っていたし、お互いの身体が興奮状態にあることも気づいていたので、行為を本番へと進めていった。
「どうやってするの?」
「腰を、もう少し近づけて……うん、そうね。いま、私とあなたが触れ合っているの、わかるかしら?」
「おちんちんが、ぬるぬるする」
「そうね……そのぬるぬるしたところに、おちんちんが入るのよ……ねえ、触ってもいいかしら?」
「う、うん」
「優しく、触るからね……」
「あっ、ユカリさん……!」
「触られると苦しいの?す、少しだけ我慢できる?」
「苦しくないけど、ぞわぞわするっ」
「それは……多分、大丈夫よ。もう少し……んっ。ここね。入り口に当たってるわ……ここで腰を突き出したら、私の中に、キミのおちんちんが入るからね?本当に、セックスするのよ?」
「ユカリさん、つらいよ、もう、おちんちんが……!」
「そうよね、あと少しだから、そのまま、私の中に来て!」
「ユカリさんっ!」
焦れてしまうようなもどかしい時間をかけて、ついに待ち望んだ瞬間が訪れた。ユウキは腰を突き出して挿入し、ユカリはそれを受け入れた。至上の快楽が男を迎え入れ、喪失の衝撃が女を撃ち抜いた。二人は最奥まで繋がったまま抱き合っていた。ユウキはユカリの髪に顔をうずめて、未知の感覚に震えた。破瓜の痛みと、思いを遂げられた幸福感がない交ぜになり、ユカリは涙を零しながら喘いだ。痛みが少しずつ和らいでいくと、ユウキに頬を寄せ、ユカリは尋ねた。
「ユウキくん、大丈夫?」
「……すごかった」
「凄かった……凄かったのね?」
ユウキは射精していた。ユカリはすぐにその可能性に思い当たったが、体内に熱く硬い感触を感じたので、どちらでもいいと考えるのをやめた。
「ねえ、もう一回凄いのを感じてみない?今度はもっと凄くて、気持ちいいかもしれないわ」
「どうしたらいい……?」
「すこし身体を起こして、私の上に覆いかぶさるようにできる?」
「こう?」
「そうしたら、腰をゆっくり前後に動かしてみて……うんっ、そう、そうよっ!」
ユウキが律動すると、ユカリは再び痛みを感じたものの、同時にその奥から快楽を感じ取り、湧き上がる多幸感に任せて嬌声をあげた。
「ユウキくんっ、もっと、もっとしてっ」
「ユカリさんっ、ユカリさんっ」
二人は肉体を深く深く触れ合わせた。胸の鼓動が伝わるほどの熱い情交は心と心すらも一つに繋げるようだった。唇を重ね、激しい律動の中でさらに深く潜り込んでいくと、ユウキは再び絶頂に近づいていった。
「ユカリさん、またっ、くるっ」
「いいわ、きてっ、わたしのなかに…!」
ユウキはユカリの中で達し、ユカリは脈動を受け止めた。身体の奥に広がる微かな感覚が、揺蕩うような幸福感をもたらし、ユカリは満ち足りた官能のままにユウキに口づけた。ユウキは息を荒くしていたが、口づけを受け止めた。二人は素肌をさらけ出したまま、抱き合って眠りについた。
「……夢じゃないのよね」
空が白むころ、ユカリは目を覚ました。傍らにはユウキが静かに寝息を立てていた。シーツにはお互いの体液がこびりつき、点々と赤い染みが混ざっていた。
「ああ……どうしてこんなことを!将来的にはあったかもしれないけど、もっとじっくり愛を育むとか考えるべきだったわ!」
ユカリは静かに自分を責めた。昨夜はユカリから行為を誘ったが、実のところユカリ自身も衝動に突き動かされていたので、その後どうなるのかといった事を考える余裕はなかったのだ。
「でも、好きなのよね。ふふっ、寝顔もかわいい……」
ユカリはユウキの寝顔を覗き込み、頬にそっと唇を寄せた。昇る朝日がランドソルを照らし、寝室に淡く光が差し込む中、ユカリはユウキの胸元で再び瞳を閉じた。