リリィウッドが誇る黒と赤の組み合わせの力を借りなければならないときが来ていた。
コダイバナ任務を一度離れ、原隊たる騎士団に戻ってその作戦をこなしたものの、赤い花騎士には何か不穏な気配がまとわりついていた……

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足元の驚異は見えない

 多くの花騎士から「黒い死神」と称され、その雰囲気からの畏怖と、その功績からの敬意を向けられている花騎士がいた。

 彼女には常に真紅を身にまとう花騎士が寄り添い、2つの双により黒い死神の名声を押しあげていた。

 その双剣の壮麗かつ鮮烈な技術により、その双丘の扇情的な大質量は事あるごとにきっかけを得てたゆんだ。

 疾風のごとき黒が何物にもつかめぬほどの剣の閃きを刻めば、追うように真紅の閃光がそれを彩る。

 それは、リリィウッドの高官をして、「ブロッサムヒルにウメ・サクラがいるなら我々にはクロユリとゼラニウムがいる」と言わしめるほどには、実績も実力も春庭全土に知れ渡っていた。

 

 もっとも。

 

「おい、ゼラニウム、おやつ欲しがってるんだがこいつら」

「時間以外はだめって言ったでしょう、もう、クロユリはナーエに甘いんだから」

 

 そのクロユリの何者も寄せ付けぬような仏頂面に反し、可愛いものや庇護したいものに対してのだだ甘さは周りから見てもゆるく微笑ましいことこの上なし。とは、ゼラニウムがコダイバナはブレーメン前線基地にて育成するナーエを前に、共に務める花騎士たちに広めた話題なのだが。

 食べざかり育ち盛りが増えに増える精霊ナーエたちの世話や保育をしながら、時折迫る驚異を退ける日々の中に、この無敵の二人はあった。

 

 そんな、何事もないはずの平穏な日々は、時として容易に、かつ彼女らの想定を上回るところで踏みにじられるもの。

 ふたりがコダイバナ勤務の中、原隊として所属している騎士団において、ミズウォルムの残党掃討に苦心しているとの知らせを受けた。もともとリリィウッドに拠点を構えるその騎士団は、常にミズウォルムの残党掃討の任務を抱え、手の空く日がない代わりに穀潰しとリリィウッド政府に非難されずに済む要因となっていた。彼女らも一度根源の世界花に迫るミズウォルムの大規模作戦に対抗してこれを封じ、逆にミズウォルムの勢力を取るに足らない驚異となるほどにまで追い詰めている。

 にもかかわらずその報が届いたのは、それほどにミズウォルムが何かを仕掛けてきているということ。

 

「しかし、あいつのところにはハブランサスがいるだろう? あれでだめなのか?」

「あのこ時々とんでもドジしちゃうからなぁ。すごく実力あって、私達も何度も救われたんだけどね」

 

 ハブランサス。

 クロユリの言う通り、彼女はミズウォルムはもちろん、その前のナイドホグル、その後のフラスベルグと、三大神害蟲討伐戦で彼女ら含め春庭の主要な花騎士たちの中で、その多くを、もちうる加護を総動員して支えぬいた功労者である。もちろん単純な戦闘力であっても、もし相対することがあったと想定したとき、クロユリやゼラニウムほどの閃く瞬きのような速度を出せる花騎士が、まず近づくためにどうするか頭を悩ませる必要があるほど。たとえ近づいたとしても、その短刀さばきはふたりの剣技にも及び、その高速高圧の水流がすぐ近くまで彼女を取り巻いて刻むことを妨害し、返り討ちを覚悟させられる。

 そう。戦闘状態の場合、彼女を倒せる害虫はいるのか? と問いたくなるくらいには絶対的な攻撃と防御を携えた存在だった。

 

「戦闘時にそういうひどいドジを踏むことはほとんどなかったがな。やはり緊張が緩むとうまくいかないんだろう」

「それに、ハブランサスひとりだけではだめだよね」

「だとしても、ツキミソウもいるし、あいつは幼馴染のレインリリーのサポートももらえばドジも相殺できるだろう」

「そのはずなんだけどなぁ。とにかく、ここでうだうだ言っても仕方ないし、一度リリィウッドの詰め所に戻ってみましょう」

 

 ツキミソウはハブランサスと並ぶかの騎士団のトップクラスの存在であり、ハブランサスの同郷者であり、彼女と彼女のそばにいる団長の背を追ううちに比類なき加護を得て、もともと発し得なかったオトモの兎を得ている花騎士である。月夜の輝きは彼女の最大の味方とも言えるもの。その恵まれた肢体は団長が懇意にするに十分すぎた。

 レインリリーはハブランサスの幼馴染であり、同郷所属として普段からドジを踏む彼女のことを気にかけ、愛らしさのあることを褒めて広めている。当の本人は自分の可愛らしいことを広めようとしているようだが、ハブランサスはそれを助長しつつも互いに高めあっている関係だった。彼女は、団長からはハブランサスの親しい人としての信頼を得ていた。お呼ばれ回数はどうだっただろう? と黒と紅の二人は記憶をたどらされるが、そういう部分の関係は薄いのかもしれないようだ。

 いずれも、クロユリとゼラニウムの所属する原隊を支え、春庭の驚異に共に立ち向かった戦友である。

 

 ナーエをお世話するさなかに想定される限りを想定してから、ナーエの世話をツツジやパフィオペディルムにまかせて、急ぎリリィウッドへ戻ることにした。

 ツツジはわかるがなぜパフィオペディルムかという話になりかねない。団長を見初めて花騎士を目指して成し得て、素質を見込まれてブレーメンに所属してからナーエともっとも仲良くなっているツツジはともかく、「戦場の女神」として、強者を求めて赴任したこのコダイバナ地域にて、驚異から多くを退ける原動力となる力を持つとはいえ、戦闘狂のようなパフィオペディルムがなぜと、多くの人から間違いなく不思議がられる。だが今やナーエへの愛に緩む頬を隠せず、夜なべ彼女らに似合うスリッパを縫うパフィオペディルムの姿を思えば、特にゼラニウムが信頼して彼女に任せるのは当然どころか必然だった。

 

「任せておけ。彼女らはしっかり守る」

「……!?」

「ちょっと行き過ぎる部分がありますけど、気持ちは本物ですからね、パフィオペディルムさん」

 

 ツツジもパフィオペディルムがいることで多くを安心するように評していた。

 ナーエの一部がパフィオペディルムから引いているように見えるのは気の所為だと、ゼラニウムは微笑ましく見ていたが、クロユリは呆れてため息をつくしかないようだった。

 

 ゼラニウムとクロユリは急ぎブレーメンから、リリィウッドの中に佇まいを持つ故郷の原隊の詰め所に戻る。

 持久走にその超高速移動は向いていないとはいえ、勢いを慣性に任せれば轟音を突き抜けるように荒れ地を飛び上がりながら、1日2日とかからずたどり着ける。もちろんそんなことをしたらふたりとも疲労困憊になるくらいには無理な強行軍であるものの、二人だけで移動するということであればありえる話、と、彼女らを知る多くのものは知り得た。

 戻ったことについては元老院所属の花騎士の知り合いに手紙を飛ばし、すぐ団長の前に姿を見せた。

 

「ああっ、ゼラニウムさんクロユリさんおかえりなさい、ちょうど良かったです」

 

 髪のない団長のいる場所として把握した会議場に飛び込んだゼラニウムとクロユリに対し、それを迎えたハブランサスに続いて、よく戻ってきてくれた、と団長が応えた。

 変わらずバナナオーシャン人らしい涼し気な格好のハブランサスに一瞥し、クロユリはすぐ団長を睨むように見てまくしたてる。

 

「こちらも暇ではないんだ。急に呼び戻すとはどういうことだ」

「まあまあクロユリ、そんな喧嘩腰はだめだよ」

「すみません、お二人の手をわずらわせるようなことはしたくなかったのですが」

 

 団長とハブランサスのすぐ後ろに立つ、ハブランサスにも負けぬ涼し気な衣装の黒髪の花騎士、ツキミソウがフォローするように続いた。

 ハブランサスとツキミソウ。このふたりが無事で、それなりにまだ戦力がいる中にあって、リリィウッドが誇るふたりを呼び戻さなければならないほどに切迫するミズウォルムの残党の動きについては、察して余りあるくらいにはクロユリもわかってはいたが、それでも納得はできていない。

 

「ハブランサスとツキミソウがついていてどうしようもないのか」

「それくらい大変なことになってるんだよ。そうだよね団長さん」

 

 ああ。とゼラニウムを肯定し、団長はクロユリに事情を説明した。

 最近、通常の残党掃討では手にあまるほど狡猾なミズウォルムが現れ、団に所属する花騎士も、ミズウォルム掃討自体が本任務であるかどうかを問わず、ありとあらゆる場面でミズウォルムの急襲を受けるようになったという。それは花騎士に限らず民間人にも及ぶようになり、しかもその身柄を殺害ではなく拉致することが主体になっているとのこと。

 

「拉致が主体……つまり、肉体そのものに価値を見出してるということか」

「殺害されることもそれは良くないのですが、それ以上に行方知れずになるケースが後をたちません。私達の団にもすでに何人か、ミズウォルムに攫われました」

「いや、そもそも姿がなくなっているということは、殺す以外にも食料にするということもあるだろう。どうしてさらっているとか拉致するとわかるんだ?」

「感知力のある花騎士に行方を辿らせて、命の危険が薄いことを判断できたことと、実際に救い出した実績から判断できたことです」

「状況が状況で、私はあまり詰め所を離れられない状態ですし、ハブランサスさんがそばにいる部隊は間違いなく無事なのですが……」

 

 状況説明をハブランサスとツキミソウから聞いて、それでも部隊が彼女らの依存度が低くてもなんとかなるくらいには、十分な戦力があることをクロユリは理解している。

 

「皆さんのご都合や請けている任務の状況から、なんとかがんばって力不足にならないよう割り当ててはいるのですが……どうしても、戦力不足になる部隊が出てしまうのです」

「だが、ミズウォルムはあのあと散発的で、何か大きな戦力で決定打を与えられるわけではない。虱潰しに挙がってきたミズウォルムの報告を潰すには、我々だけであがくより、他の団にも手を広げる必要があるんじゃないか」

「その決定打が見つかったから、ふたりを呼んだんだよ」

 

 会議場にいるのは、団長とハブランサス・ツキミソウの双璧だけではない。少なくともハブランサスがいるなら、彼女も近くにいるくらいには忘れてはならない、レインリリーの声。

 手が空いているかぎり、レインリリーをハブランサスのフォローに回すことが、彼女を最大限に運用できるのは、この団の誰もが周知のこと。

 

「見つかった?」

「つまり、クロユリの力が必要なくらいには、それが大変な相手ってことだよね」

「そういうこと。あとクロユリだけじゃなくてゼラニウムも必要なんだからね?」

「私はクロユリのそばにいたいだけで、別にそこまでは」

「いつもなら可愛いかもしれないけど、今のゼラニウムの謙遜は全然可愛くないと思うんだ」

「それって」

「ちょっとレインリリー……」

 

 ハブランサスが、少し怪訝なレインリリーの様子に諌めようとするも、それを制してレインリリーはゼラニウムに詰め寄った。

 険悪な空気を作ることを承知で、ハブランサスを支えるが故、彼女は多くの理解をゼラニウムにぶつけるつもりで挑んでいた。

 

「黒い死神の金魚の糞。だっけ。みんなゼラニウムのことそう呼んでるやつ」

「私はそれでいいんだよ。私は、クロユリの近くで彼女のがんばりを支えられれば」

「それが良くないっていうの。私はそんなの耐えられない」

 

 大事な作戦があることが知れて、そのためにクロユリという戦力の意味を知って、多くが彼女への期待を寄せて、リリィウッドのこの詰め所に呼んでいる。

 

「だいたい、ゼラニウムはどれくらい団長から想われてるかわかってる?」

「それは」

「……」

 

 クロユリを前に、そのことにはあまり触れてほしくないゼラニウムだが、レインリリーの真剣な様子に無碍にはできず、その様子に聞き入る。

 

「私どんなに可愛くなっても、その間に入れないくらいだって知ってる。少しくらい食い下がりたかったんだけどね。だからゼラニウムは、自分が弱いとか可愛くないなんて言っちゃだめだよ」

「団長さん……」

 

 ゼラニウムの視線を受けて、団長はやれやれといった風にそれぞれの意見を汲みながら、ゼラニウムのかけがえのなさとその実力を語った。

 今のこの団があるのはゼラニウムをお迎えしたからであり、彼女に支えられてここまでの激戦を戦い抜いてきたのであり、彼女と積み重ねた名声が多くの名のある花騎士たちとの交友関係を生み、ハブランサスやツキミソウのように花騎士の資質を育てて春庭きっての実力者に仕上げられた。ここのところクロユリと合わせてふたりにはコダイバナへの派遣任務を任せてしまう日があったから、呼び戻す必要が出たのはかえって嬉しいという。

 ゼラニウムあっての自分であり、その優しく穏やかな癒やしには何度あやかったことだろう。と団長は続け。

 

「あーあ」

「のろけだな」

「のろけですね」

「羨ましいです」

 

 その想いの大きさを聞いて茹で上がった頬を染めるゼラニウムに、レインリリー、クロユリ、ハブランサス、ツキミソウが口々に呆れ半分の甘みを吐き出していた。

 

「団長さんそんなのっ……でも、ありがとう」

「とにかく、ゼラニウムは自分をまず振り返れ。私も団長も、お前がいてこそだ」

「クロユリぃ……」

 

 口数少なくとも、クロユリからの評価を聞いたゼラニウムはさらに感極まってしまっていた。

 

「うん、うん、ありがとう」

 

 目頭が熱いのを感じながらも、卑下した自分のことを一度飲み込み、大切な人の心根を汲んで、ゼラニウムは胸を張るように改めて姿勢を正した。

 そんなゼラニウムとクロユリを正規にお迎えしての作戦は、リリィウッドそのものの根に取り付いたミズウォルムの集合体の撃破。何人かの感知がその大きさを知って、最近のミズウォルムの残党騒ぎが多くなっている元凶として、それが挙がっているという。おそらくは浅い層に残っていた僅かなミズウォルムの残党が、作戦時の太陽の剣の浄化を逃れて隠れていたのだろうとは、リリィウッド中枢の意見である。

 作戦は今ここにいる5人で行うと告げる。少数精鋭、今この団で出すことのできる最大級の戦力であり、それを必要とするほどの存在。場所はすでに割り出しているし、リリィウッドの地下には以前のミズウォルム討伐で確認した空洞が現存し、そこに到達する道筋も何度か偵察し確認済みであるという。

 当然放っておけばリリィウッドそのものの命運はもちろん、その根源にも触れかねない案件であり、失敗は許されない空気に満ちていた。

 

「クロユリちゃん、ゼラニウムちゃん、必要なものがあったらいつでも呼んでね、チラリちゃんからたっぷり送ってあげるから~」

 

 ミズウォルムとの根源決戦依頼、すっかりゼラクロふたりの保護者気取りな元老院のフリチラリアに見送られて、決行される。

 作戦そのものは、道中の静かすぎるくらいの不穏さをよそに、本体に近づくにつれて量産されたであろうミズウォルムの分体との遭遇により始まったかのようだった。もはや処理するというほどには作業的にそれらを撃破するのだが、撃破時に汚染された空気を撒き散らすそれは、加護の強い面々には蚊ほどにも感じない。むしろリリィウッドの根を呼び戻せれば、すべて取り戻せるのではとの意見もあり、気にせずに進む。

 5人が最深部に到達すると、それは言われる通り根を侵食せんばかりに大量に取り付き、それは単純な集合体として成立する巨大な球状を形成していた。

 

「うわぁ……数多すぎっ、ミズウォルム何度見てもきもくて可愛くない……」

「害虫はみんなそんな感じじゃないかなぁ」

「それはそうだけど」

 

 いつものようにげんなりとミズウォルムへ吐き捨てるようにレインリリーが評するのを、ゼラニウムがなだめていた。

 皆、思い思いに武器を構える。

 

「とにかく、みんなあのときのように加護を信じて、必ず無事に帰ろう」

 

 誰がとも知れず指揮を執る立場をゼラニウムが持ち、全員が油断なく挑むことを意識する。

 自然とあたりに湿り気が増し、ハブランサスの手で辺り一帯に息が張り詰めるような圧力のある水の流れが作られる。レインリリーがその一部を切り出してロッドに集める。

 ツキミソウが「タマちゃんさん」と呼んでいる、輝くウサギの召喚獣を自らの傍らに配置し、それらの輝きを増やす。地下の洞窟にも月光を届かせようとばかりのまばゆさが包み、ツキミソウの促しとともに小さな分身体を分けながら、自らはその大きさを増す。それはミズウォルムの集合体の巨体にも迫る勢いで膨らんだ。

 ハブランサスとツキミソウの作り出した空間は、世界花の加護をより深く大きく膨らませ、今からミズウォルムの本体へ突撃を始めんとするゼラニウムとクロユリの二人に高揚と活力を、ミズウォルムには脱力と束縛をもたらす。多くの花騎士が助けられ、多くの戦いを乗り越えた力強さが、この場にいる花騎士全員にもたらされた。

 すぐに大きなうねりとしてぶつけんがばかりに、黒と赤のふたりが風を撃つ轟音とともに姿を消し、再度残心とともに現れた。

 よほどの達人でなければ何をしたのかが判別できないくらいの速度で、ミズウォルムの集合体の行動を待つ間もなく、嵐のような剣戟が空間に刻み込まれ、それらがすべてミズウォルムの集合体を形成する数千の一匹一匹を引き裂いた。大気内では音どころか熱の壁すら思わせるほどの超速度を世界花の加護でねじ伏せて、しかもその速度であるにもかかわらずミズウォルムの集合体一匹一匹を丁寧に見出して虱潰しに切っ先を走らせるという芸当。

 

「うわぁ、いつ見てもあのふたり半端じゃないなぁ」

「むしろ普段よりもすごい気がします」

「私とツキミソウさんのバックグラウンドがあるとはいえ、あの根源の世界花の決戦の決め手になった超高速の剣技は、ぜひこの次の舞闘大会で見せてもらいたいですね」

「ハブランサス、さすがにそんな暇はないと思うんだよね、あのふたりに。パフィオペディルム出れたのって二人がコダイバナ勤務だったからだろうし」

 

 それがリリィウッドが国をかけて推す最強のタッグたる所以。だが、バナナオーシャン人3人はその気質ゆえかマイペースが過ぎた。

 

「おっと、そうは言っても大部分が倒されて集合が解かれたってだけで……」

「油断はできませんね」

 

 バックグラウンドを支える3人に、ばらけたミズウォルムが降り注いでくる。

 途端に、周囲を覆っているかのような圧迫感の正体たる湿気が、分散したミズウォルムの雨を弾き飛ばすような勢いある水流となって突き上げられた。それによって降り注ぐ勢いを削がれ、突き上げられた分体とまだ降る分体とが激突しその圧迫の中ですり潰されて消える。

 それでもなお生き残ったミズウォルムは、巨大化したタマちゃんさんに弾き飛ばされて後ろの3人にも、残心の2人にも近づくことを許されない。それでもなお地面に落ちてそこから這い寄ろうとする数体は、レインリリーのロッドに振り払われ、タマちゃんさんの分散体に駆逐され、ハブランサスのナイフに作り上げられた巨大な水の刃に切り払われた。

 

「やっぱりあのふたりがいると頼りになるなぁ」

「雑魚とはいえ数だけは多いからな……」

「今日はレインリリーも一緒だから、ハブランサスも肩の力抜いてがんばれてるみたいだし」

 

 ハブランサスとツキミソウ、それにレインリリーを評してから、ゼラニウムとクロユリもすぐに全力ではないものの、大半がその速度を追うのが困難なペースで残党のミズウォルムを作業半分に切り刻んでいた。

 この勢いでミズウォルムを密閉空間で倒す場合、花騎士でも無事では済まないのではと思うほど、むせ返るような毒の空気を残すものだが、それはハブランサスの作り出している「圧迫される霧」のような領域によってその多くを洗い流され、問題ない程度に弱毒化できていた。

 そうして、リリィウッドの根に取り付いて力を蓄えていたであろうミズウォルムの集合体は、ものの20分もかからないうちにその一切を掃討された。

 

 ひととおり片付いたことを確認し、お互いに他のミズウォルムの残骸がないことを確かめて、討伐任務の完了を確認した。その過程で、ゼラニウムがミズウォルムの組織のようなものが自身に張り付いているのを確認したため、それを地面に落として剣で刻んでいた。

 同時に、ミズウォルムに捕らえられていたであろう一般・花騎士を問わず多くの女性たちを見つけ出した。明らかにその場にいたミズウォルムによって、その胎を利用されていたであろうことは容易に予想できた。あるものは宿した腹を携え、あるものはまだ胎盤がへその緒と切れておらず、あるものはつわりにぐったりとうなだれていた。彼女らすべての、そのケアも含めて、フリチラリアに遠方通信で救助を要請した。

 何もかもを終わらせ、地上に戻る頃には夜の闇の中だったらしく、外に出た実感のない暗がりに月明かりのみで照らされた済んだ夜空を見上げた。

 同時に、そびえ立つリリィウッドの世界花のある街並みを遠方に確かめ、討伐隊はその日の出来事や募る気持ちを思い思いに語りながら帰路を歩いた。

 捕らえられた女性たちの救助を自ら指揮するフリチラリアのお迎えに、行きがけの弁当のことを聞かれてそっけなく返すクロユリと、それをなだめながらも素直に美味しい感想を述べたゼラニウムとのやり取りをバナナ人3人が微笑ましく見つめ、皆揃ってリリィウッドの花騎士詰め所へ戻った。

 

 明日にはコダイバナ方面へ帰るとクロユリは団長に告げ、当然ゼラニウムもそれに続く。

 後処理が必要であってもゼラクロふたりの剣の刻みを必要とするほどのミズウォルム体はいないはずであるという目論見からである。日帰りで終えたとはいえ戦闘による疲労は十分すぎるほど全員にのしかかっており、久しぶりに顔を合わせていろいろと結びたい団長とゼラニウムであったが、その日は無理せず休むよう団長に薦められ、ゼラニウムもそれに従った。

 その様子を見ていたクロユリは、私室に戻ろうとするゼラニウムを呼び止めていた。

 

「いいのか? あいつのことだから、ゼラニウムを待って禁欲しているんじゃ」

「いいの、無理はできないし団長さんなら、たぶん大丈夫」

 

 クロユリの指摘にゼラニウムは根拠のない返答をして自分の部屋に戻ってしまう。

 穏やかとはいえ多くに物怖じせず、クロユリがまだ周囲をおびえさせているときであっても、どんなにクロユリが突っぱねても、しつこくしつこくつきまとい、食い下がって彼女のそばにいようとした。その勢いはあくまで同性相手だからで、異性相手だとやたらと奥手でためらいも物怖じもしてとにかくヘタレる。なんでもいいからと足を運ぼうとしては戻りを繰り返したことも二度や三度ではない。

 

「根拠がないことを……」

「とにかく平気だし無理はしてない。うん」

「おまえは……まあいい、深く聞かないでおく」

「ありがとうクロユリ」

 

 それが取り返しのつかないことになっても……という本心を、クロユリは伝えられなかった。ゼラニウムのことだ、なにか深い心配を悟られたら、間違いなくゼラニウムに恥ずかしいほど褒めちぎられる。クロユリはやぶへびをつつきたくないと、それ以上の追求はやめた。

 ゼラニウムは私室に戻り、ベッドに座り、自分の決定について誤りがないことを言い聞かせるようにつぶやいていた。

 

「いいんだよ、もっとゆっくりできるときのほうがきっと……」

 

 団長のそばには他に魅力的な花騎士が多い。過ぎた禁欲を抑えられるようにはできていないし、少なくとも自分が問題ない状況であれば、他のこをその腕に。

 

「そのほうがね……」

 

 寂しい部分が多いが、もし今日コダイバナに戻る前に抱かれたらもっと心が折れる気がする恐れがある。

 単純に、照れと恥を押し殺す気力が今のゼラニウムにはなかった。

 

「ん……」

 

 とりあえず、全力疾走してものすごく疲れた、と言い訳に、他の支度を一切放置したまま、ゼラニウムはベッドに横になって、自然と寝息を立て始めていた。

 少し休んでから、いろいろな片付けと準備をしようと、きっちり睡眠せず、仮眠程度に抑えるつもりでいた。

 そう、仮眠程度。

 

 うつつに、背筋がぞくぞくと悪寒が走っているような感覚。だが、悪寒のはずのそれは不快ではなくむしろ心地よい、いや性を感じさせられているときのような、胸から下が甘く溶けるような快楽に漬かっている感覚。

 すぐ意識を戻すにも意識はある。と思い込み、ゼラニウムは何が起きているのか見下ろして確かめる。起きてはいるはずだが、重力に対して立ち上がっているという実感がない。いつも自分が見ざるを得ない圧倒的な大質量に遮られている光景しかないものの、今自分に起きているであろう異変が、はっきりとする意識の中で判明してくる。

 背筋を震わせていたのは悪寒ではなく快感、それも自らの性を呼び覚ますトリガーに都度、団長から指や唇で刺激されている部位にある。

 

「何、何か乳首、んっ、吸われてるっ……?」

 

 ゼラニウムの乳房は多くの花騎士の中でもひときわ巨大であり、そのはずむ柔らかさには多くの花騎士の羨望が集まり、唯一の男性たる団長に多くのはじめてを刻み込んだ象徴的かつ扇情的な存在だった。幾度となく劣情に膨れた熱を圧搾し、幾度となく劣情にまみれた揉みしだきに揺さぶられ、ゼラニウムに忘れられない激しい情熱の夜をもたらした。

 はたから感度に薄いのではと、先入観にまみれた勘違いを受けたのは二度三度ではない。その実、ゼラニウムの乳房は血管も神経も十二分に張り巡らされ、思うより脂肪の層が薄く、乳腺は他の花騎士より多く大きく、肥大した乳輪に見合わぬのではとささやかに思える乳首とがあった。もちろんそれは平常時であり、性の交歓の中で乳首はあるべき姿として相応に肥大し主張する。陥没せずにいるそれを、幾度も団長に抓られ、引っ張られ、吸われるたびに気をやったことは、両手で数えても足りない。乳首でイクことのある女性は一般花騎士問わず多くないことを思えば、どれほどゼラニウムが敏感であることか。

 

「やぁぁ、吸い方がいやらしい……なにこれ」

 

 それが、何かに負圧をかけられていた。しかもそれは機械的に規則性を持たず、熱を帯びた粘膜のようなものでねぶられながら、形と硬さと大きさを確かめながら、断続的に静かにかかる吸引だった。

 まるで、団長が自分を感じさせるためだけに乳首を口に含んでいるときのような。

 

「あっ、ぁぁっ、待って、何か乳首吸ってっ……」

 

 確かめようと腕を持ち上げようとするが、なぜか腕に力がこもらなくて動かない。視線を送っても特に何かが動きを封じているように見えない。

 

「なんで、おっぱいむき出しに……なってないはずなのにっ、っああ」

 

 さっきまでちょっと面倒がって寝間着を身に着けずに眠っていたはずなのに、今着ているのは柔らかな寝間着で、多くの感触が優しく自分を包んでいる。

 その布地の中に何かが入り込んでいるように感じるのを理解する。それは、内股の方を覆うように身を預けているような。ゼラニウムは気づいて、そのおぞましい何かを振り払わなければと身を捩った。

 それも無駄な抵抗に終わらされるように、自由が利かない。まるで寝床に体をくくられているかのようだった。

 

「やめ、やめてっ、そんな吸い方されたら、んああ、感じるからぁっ」

 

 拘束された体をなんとかしようと、全身の至るところに力を込めようとするゼラニウムだが、全く体が言うことを利かない。利かないまま、ただ何かに乳首をなめられ、吸われている。

 ゼラニウムが抵抗できないことをいいことに、その存在はゼラニウムの両乳首を意を得たようにさらに攻め立てた。

 そう、両方の乳首を吸い上げられている。

 少なくとも相手は乳首を吸う器官を2つ以上持っているということになる。それは人であれば複数人必要なこと。

 

「やぁぁ、誰、誰なの、乳首やめてぇぇ!」

 

 条件反射がゼラニウムの乳首を固く太く膨らませ、体に熱をこもらせて、膨らむばかりの淫欲を下腹部の奥に溜めさせられる。

 

「ふぁぁ、やぁぁ!」

 

 もがくことすら許されず、ただただその存在に好き勝手を許し、敏感で性感の塊できっかけの乳首の支配を許してしまっていた。

 ゼラニウムの拒絶にはそのこもる熱を吐く甘い息がまじる。

 

「違う、こんな、んああ、ふああ、違うから、感じない、感じてなんて、っっっ」

 

 声を上げて敏感をこもらせないようにするつもりでいたゼラニウムの、抗う心を折るようにそれは両の乳首に貯まる悦を、膨らませんばかりにより強く吸い始める。

 

「んぅぅ!!」

 

 言葉が出ないほどの感触にゼラニウムは唇を噛まされたような声をあげさせられた。

 くぐもった息をなんとか吐き出そうと、一度深く息を吸い。

 

「っはあああ!! やぁぁ、もう、止めて、イッ、イッちゃうう!!」

 

 すぐ差し迫った絶頂感を逃そうと声を張り上げてみるものの、かえって追い込まれて乳首全体に溜め込んだ灼熱が我先と先端へせりあがってくる。

 何か根源のようなものが乳房の深部で目覚めるかのように、急激に膨れ上がってくる。

 ぬめり吸い付く粘膜の柔らかく厳しい責めに、ゼラニウムにはこらえ、抗うすべはなかった。

 

「んあああ!! んはぁぁぁ!! ふあああああ!!!」

 

 迫りくる荒波に攫われるように絶頂感に押し流され、ゼラニウムは絶叫に等しくも悦にまみれた声で乳首の主への屈服を告げた。

 

「もうやめぇ、おっぱいイッてるのっ! 乳首イッてるからぁぁ!!」

 

 全身が動かせないままただ乳首を吸われ、ずっとずっと頂から戻れず、ただただその主の責められるままにイキ声を漏らし、表情がイキ顔に溶ける。

 ゼラニウムはひとしきり乳首を責められきって、あるべき意識へ自らを戻していた。

 

 

「んはぁっ!!」

 

 目を覚ました。

 それが最もふさわしい状況にゼラニウムはあった。

 ずっとずっと、自らを責め続けたであろう存在が何かを探ろうと、体を縮め大質量の向こう側を覗き込むように、乳房の根本を両脇へ少し寄せてみる。だが今手に触れたそれ自体にも、視線を送る体の上についても、それにあたるものの正体を見破ることはできなかった。

 ただ明らかだったのは……じんじんと何か乳首に残る違和感と、内股をべっとりとぬめり湿らせているその愛液の不自然さ。

 おそらくはきっと自分が淫らな夢で乳首を吸われ、内股の中央に陣取られた何かに秘部を圧迫されていたことによる。

 

「なんであんな夢……別に、溜まってるわけないのに」

 

 団長との夜が足りない日に淫らな夢を見ることがないとは言い切れない。

 思い出して、裸で抱き合って、なんとなく夢見心地の気持ちよさに胸や最奥への刺激に身を委ね、ぴったり密着した腰の感覚までいって目を覚ましたことはあった。あまりにも直接的で、はしたなくいやらしくも、だがそれが団長との交歓が足りないが故の満たされなさであることを、思い知らされた。心拍の高鳴りと、のぼせあがるような頭の中と、明らかに理性なく衝動だけが自分を突き動かそうとしていることをより思い知らされた。

 淫らな夢を見たということはつまりそういうことだ。

 

「ううん……そんなはずない。コダイバナ任務で何日団長としてなかったっけ、私」

 

 クロユリに笑われてしまう、とはゼラニウムが自らを律するための口癖のようなもの。実際ゼラニウムの不備をクロユリが笑うことはない。だがゼラニウムは、クロユリの心配をよそに団長を尋ねることを拒否した。自分の弱さが災いして、だらしないことをした結果ふしだらな夢を見ていた。

 しまらない自分の判断に、そんな自らについて呆れるほかなかった。

 

「クロユリごめんね、心配してくれていたのに」

 

 後でちゃんとクロユリに謝らなければ、と、寝間着に着替えるために今の服を脱ごうと、戒めの留め具を外した。

 脱いだ服をたたんで、ショーツ一枚の上に寝間着を身に着けようとした途端、乳首の違和感の原因らしきものを確かめるつもりで、指をそちらに這わせた。

 

「ん……んっ!?」

 

 湿っている。

 少し指で掬って、それに視線を落とす。

 透明な感じにしてはすこし濁っている感じ、むしろ白く見える何か。

 寝間着を身に着けず、ショーツ一枚の姿でそれを更に確認する。

 

「これって」

 

 ちょっと乳房を圧してみると、乳首が何かを噴きだしたかのように感じた。

 やや心地よいそれを続けたい意識を抑えて、それが何かを、胸を持ち上げて確かめてみようと持ち上げると、その圧迫でさらに噴いて、顔にそれがかかった。

 

「母乳?? まって、どういうことなの、母乳が出てる、え、出る原因なんて……団長さんの子なんて出来てるはずないのにどうして?」

 

 疑念のままでおきたかったそれは、確信に変わるとともに、心当たりのない体の変化に当惑することしかできなかった。

 母乳が出ていた。

 あの夢を見たのは、淫らな感情が満たされなかったためではなく、おそらくは母乳が出るようになってしまうことの暗示だったのかもしれない。

 とりあえず寝間着にあたる無地のパジャマを身に着けてから、自分の部屋を出る。すっかり夜で、すでに夜勤時間であるようだ。その中の花騎士のうち医師担当のこを頼ることにする。今日はちょうど、懇意に、かつ、よく自分がお世話になっているブバルディアが就いていた。

 

「ああ、副団長」

「こんな時間にごめんなさい」

「いいえそんなこと、どうしました?」

 

 すぐに事情を説明すると、ブバルディアはいったんゼラニウムを診察者のチェアに座らせ、事情を伺った。

 聞くままに、ゼラニウムに胸をはだけさせてその先端を診てもらう。

 すでに白い液が滲んでいて、ブバルディアが触れて、力を込めると、加えた圧のままに勢いよく母乳が吹き出た。

 

「これは……副団長、いつお子さんを?」

「産んでない、そういうのが団長さんとの間にあればそれで喜ばしいけれど、今回のは違うから」

「じゃあ他にきっかけは?」

「さっき変な夢を見てそれから……」

「夢」

 

 まるで授乳期にある女性のごとく、ゼラニウムの乳首はその大きな乳輪からしっかり主張を突き出させて、圧す力ごとに母乳を噴出させていた。

 

「まさかと思うけどこれ気持ちよすぎてイクみたいなことは」

「ない、ないから」

 

 最近おかしな薬で体の調子を狂わされて、母乳を噴いたとたんに絶頂を味わうようなケースがあったことを思い出し、ブバルディアはその可能性を聞いたがゼラニウムは否定した。

 

「だとすると脳の奥に腫瘍があるか、他の何かが副団長に母乳の出る薬を盛ったか」

「えぇっ」

「どちらの可能性もあるけれど、最近変わったことはない?」

「あるとしたらコダイバナからリリィウッドに来てミズウォルムの分体討伐をしたくらいしか」

「ああ、あの作戦……」

 

 ミズウォルムが性的な意味で花騎士に迫る話は、その主体的な活動の有無を問わずに続いていた。それこそ、今であれば自分たちの版図を広げる方法を、ただ分裂に寄らなくなったという話。

 ブバルディアはあらゆる想定と、ゼラニウムが今回経験した作戦含め、彼女の身の回りにありそうな何かを探してみたが、原因となりうるものは見つからなかった。

 

「乳首をひたすら吸われる夢を見たら、出るようになったという話なので……何かが夢うつつの副団長に細工をしたのかも」

「何か」

 

 つまりその何かを、ゼラニウムが眠っている間に探り当てればよい。

 ブバルディアの見立てでそう結論づけられた。

 

「わかった。ありがとうブバルディア。急に押しかけてごめんね」

「いいえ。それより、せっかく団長に会ったのに我慢してない?」

「してない、してない!」

 

 ちょっとむきになるくらい強く否定して、ゼラニウムは一礼してブバルディアの元を去る。

 彼女の言う通り、もしかしたら溜まっているのかもしれないとは思ったが、その前にまず、自分が眠っているときに何かが起きないかを確かめなければならない。

 だがこの後誰にどうやって確かめてもらうのか。

 クロユリ……と想定したが、果たして話に乗ってくれるだろうか。

 むしろ話をしたら団長へ押し付けられてしまうのでは。

 

「ゼラニウム、何かと思えばそういうことか。だったら団長のところに行ってこい」

「えぇ」

「変な声を出すな。母乳の件はともかく、今晩は団長のところで寝ろ」

「うう」

 

 真意を多く語らないのはクロユリらしいとはいえ、結局ゼラニウムの想定通りに団長へ押し付けられてしまった。

 やむを得ないので、意地を張って団長を尋ねないでいることをやめ、ゼラニウムは団長の寝室のドア前まできて、それをノックしようと、拳を準備する。

 イマイチ踏み込めない気持ちが、その腕を振るのをためらわせる。

 照れくさい。

 団長とそういうことをするのはそれはそれで、歓迎したいし求めたいが、ゼラニウムは他の多くの花騎士たちと接するうちに、そのこらの多くが団長を慕うことを知って、彼女らの思うようにさせてやってしまっていた。

 副団長、それも第一を分け合うか独占できるかの境目の立場であるはずのゼラニウムが、自らの権利を放棄してでも、団の和を、と考えるのか。

 

「団長さん……」

 

 ノックする手を振った。2度、乾いた木の音が響く。

 幸い、団長はその音にすぐ反応してくれる。ゼラニウムは自分の訪問を告げると、少し団長の反応が鈍く感じられる。

 

「どうしたのかな、団長さん」

 

 とりあえず許されたので、寝室に入ってみれば、時間的にすでにベッドの中、団長も寝間着というにはやや着崩したようなふうの姿でいた。

 何かを問われ、ゼラニウムは素直に自分の思うままを伝える。

 

「やっぱり、よく眠れなくてね。団長さんのところで一緒に寝ていいかなと」

 

 それで団長に求められたならそれはそれ、ゼラニウムは少しの期待を抱え、やや多めの照れと恥を忍んで、お願いを告げた。

 すると、団長に促されるでもなく、ベッドから別の花騎士がはだけた肩のまま這い出してきた。

 思いつめて、勇気を振り絞って団長をたずねたゼラニウムに対し、団長は他の誰かに応えきった後。彼女はゼラニウムや他の第一副団長や、そのもろもろの事情などお構いなしに好意をぶつけて迫れるこだった。

 

「ゼラニウムさんっ?」

「ああ、うん、いいの、団長さんお邪魔しちゃってたね……」

「もう、ゼラニウムさんもっと早く来てたならしてなかったのにっ」

 

 名前がすぐ出てこないが、その恵まれた体は団長にとっては間違いなく悦ばしいかぎりの相手だ。

 ゼラニウムの登場にも怖気づくことなく、多くをわきまえては話せる、もともと人のいい気質の花騎士。ゼラニウムのことをないがしろにしたり、彼女のところから掠め取ろうとしたりなどといった、腹の黒い部分にいろいろ抱えているタイプではない。ただ、少し考えが少ないだけの、失敗が多い……もっとも、失敗が多いという点について、ゼラニウムがよく知った顔であるハブランサスではないのは確かだった。

 

「そんなことない、大丈夫だから。今日は団長さんをよろしくね」

 

 心にもない。

 団長がそう言いたそうだったが、今別のこの想いに応えていておいてそれはどうだろうと、ゼラニウムはなるべく波風立てないように穏やかに断って、団長の寝室を離れた。

 

 団長も頼れない。

 クロユリも頼れない。

 だとしたらどうしたら……だがひとりで今眠るのはおそらく何かを間違う気がするからと、考えを巡らせて結局、何も思い浮かばないままゼラニウムは自室に戻ってきてしまっていた。

 

 「なるほど、団長は売約済みだったと……じゃあ朝までここのベッドつかって眠っていいよ、副団長」

 

 ただそのまま眠るわけにいかず、事情を話していた相手であるブバルディアの診察室に再び足を運んで、その日は夜が更け、朝を迎えるまでそちらのベッドを使わせてもらうこととした。

 もっともその間、何事も起きるはずもなく時間は過ぎ……

 ゼラニウムはクロユリとの示し合わせ通り、その日の朝にコダイバナの前線基地へ戻った。

 

 

 クロユリに案じられたが、ゼラニウムは吹っ切ったように問題ないことを告げた。もっとも、心そのものを棘つきのなにかに鷲掴みされたかのような、重苦しくも幾重に刺してくるような痛みは、ずっとずっと感じたままでいた。

 来たとおりのままに、帰り道を超速で飛ぶ慣性で進み、何日かかかるルートをその日が暮れる前までの到着を目指していた。だがその間に、ゼラニウムの乳腺に作られる母乳は彼女の乳房に重くうっ滞していく。さすがに来たときのままにとはいかず、途中でクロユリに停泊を求めた。

 体調に関しては道すがらゼラニウムから聞かされていたクロユリだったが、着いてからにしろと告げたとき、彼女の両胸を漏れ出た母乳が、上着の上からもわかるほどに染み出しているのを見れば、無理を言うこともできず、ゼラニウムの求めに応じるほかなかった。

 

 クロユリに見せびらかすものでもなく、彼女に「見えない場所で搾ってこい」と言われては、身を隠さずにいられずゼラニウムはクロユリと距離を置く。もうリリィウッドの植生が失われ、コダイバナの不毛な荒野が続く場所であったが、少しの地形のでこぼこや、岩場の塊のような、視界を遮れる場所がまったくないわけではなく、ゼラニウムはそれらの物陰に体を置き、胸元を開いて両乳房をさらけ出し、それを搾り始めた。

 乱雑に広がるように、かつ大きな勢いのもとにゼラニウムの肥大した乳首から白い母乳が噴出する。上体のみかがめて、体にかからないよう配慮して胸の位置取りを作り、その勢いが失われるまで、滞留したそれを搾り続けた。

 乾いた地面に、相応量の母乳が降り注ぐと、地面には母乳溜まりが作られては、吸い込まれるように消えていく。今は地面が見える体勢で搾っているので、普段ちょっと見下ろしてもわからない足元の光景が見えて、ゼラニウムにとって少し新鮮味のある様子であった。

 なんとなく眺めながら、えんえんと母乳を搾り続けているゼラニウムのそれが、次第にその勢いを失っていく。

 溜め込んでいたが故に張り詰めていた乳房がなんとなくしなびたように見えたものの、不快感もともに失われて安心感のある心地よさに全身がリラックスする。母乳を出し切った乳房をしまって、クロユリを待たせている場所に行こうと、体を起こして地を強く踏んだ。

 その際に、何か地面に落ちたような音がした。あたりを振り返って、地面を見ようとして、大質量に視界を阻まれた。

 どうにかそれを避けるように、体を再び前かがみにして地面を探るが、音の主らしいものは見当たらない。なんとなく石ころが数個あるようだが、それはもともとここにあったものである。音の原因を辿れなかったものの、特に気にかけることもなく、ゼラニウムはクロユリの待っている場所へ向かい、合流した。

 

「そういえば」

 

 ふと、クロユリが道すがらゼラニウムに声をかける。

 

「どうしたの? クロユリから声かけてくれるなんて珍しいなぁ」

「いや、昨日の討伐作戦のときだが……ゼラニウム何か払い落とさなかったか?」

「ああ、ちょっとミズウォルムの組織みたいなのが張り付いたからね。すぐ落とせたし、念の為剣先で刻んだら、すぐ塵のようになって消えたから大丈夫だと思うよ」

「それならいいんだが」

 

 聞けば、すでにゼラニウムが対処済みである事項のこと。

 それ自体はクロユリも確認していたはずのことであり、別段この場面で気にするような内容ではない。と、ゼラニウムは彼女の危惧を杞憂と捨てた。

 ただ普段はゼラニウムから声をかけることを、クロユリから気にかけてもらっているという違いに、タイミングとしてだいぶ遅くなっての問いかけであること。

 その普段との「違い」について、ゼラニウムは気づかないわけもなく、後々の出来事について気をつけなければならないと心に留め、クロユリに伴ってコダイバナの前線基地を目指した。

 

 だがゼラニウムが今聞いた不自然な音は……

 

 

 コダイバナの前線基地に戻り、ツツジからナーエのお世話の状況を確認し、パフィオペディルムに問題ないことを伺った。

 特別問題ないという判断はしたものの、戻ったときにはすでに日は暮れており、すぐ今まで通りというわけにはいかない。交代勤務のシフトから外れて、その晩はゆっくり休ませてもらえることに。

 今回こそはきちんと眠り支度を整えて、寝床についたゼラニウムであった。それほど寝苦しいとか寝付けないということはなく休むことはできたものの、まだ自分に母乳を出させるようになったものの正体はわからない。

 クロユリに自分に何かあったら、と持ちかけるも、クロユリに気持ち悪がられて断られてしまった。もっとも、ゼラニウムに異変が起こっていること自体は把握していたから、彼女に何かあった場合にはすぐ駆けつけることは告げた。もちろんゼラニウムが歓喜して思わず抱きついたのは言うまでもなく。

 それ故か、安眠に至ることができた、とその地点では思っていた。

 

 少なくとも、夢うつつなのかちゃんと目が覚めているのか、はっきりとしていない状況。特有の荒野らしい砂埃の薄く、もやもやとした喉をいがいがさせる場所。だがそこはゼラニウムが辿り着いて安息を得ているコダイバナの前線であろうことは理解できた。

 だがそれは、ずっとこの場所に居続けて慣れたが故にそう思い込んでいるだけなのかもしれない。ゼラニウムはその曖昧な中をたださまようまま歩いていた。

 その中でふと、自分が丸腰であることを悟る。例えその復興の兆しが見え始め、緑が戻り始めているブレーメンの付近とはいえ、特有の強力な個体が存在しうるコダイバナ方面である。ヨワ虫くらいなら素手でもどうにかなるだろうが、ここで剣の一振りも持たないなど、自殺しに来ているようなもの。

 すぐに帰らなければと我にかえってあたりを見回したものの、すでに取り返しのつかない状況であることを知る。

 もどり道がわからない場所だった。

 ブレーメン付近のはずであるなら、それらしい建物の並びを目印にすればすぐに戻れるはずなのに、そういった建物と思い込んでいたものは、荒野に広がる崖や岩の集合体によるもので、まるで奥地に入り込んでしまっているかのような錯覚にあった。

 

「ここ、どこなの……」

 

 夢遊病にでもかかっているのか。自分の意思によってここに来たとは到底思えない。普段から、無茶ばかりするクロユリやパフィオペディルムの世話を焼いて、特に単独行動を戒め、きちんと準備を整えて挑みなさいと言っていた自分がこんな有様では、ふたりに笑われてしまう。

 

「本当、私どうにかしている」

 

 なんとか、戻らなければならない。

 手がかりとなるものはないか、あたりを見回し、見回したが、すぐに思い浮かばない。手がかり足がかりとなるものを見つけ出さなければ、戻ることもままならないというのに。

 ゼラニウムは周囲を見渡せる高い場所に行こうと、何か登り口にあたる場所を探そうと試みようとしたが。

 

 急に足が動かせなくなった。

 何かが足にまとわりついて、拘束している。

 

「何……?」

 

 足元を見ようとその場で見下ろそうとしたが、巨大な質量の輪郭が視界を埋め尽くしてわからない。その判断の遅れが、足を拘束した対象によってうつ伏せ転倒させられるように引きずられることを許してしまった。

 視界を奪った胸がはずんで、ゼラニウムの体が受け身を取れずに痛むことを避けた。もっとも、はずんだ胸は彼女の全体重の何割かを受け止めて、その圧迫で潰れかける乳腺が激痛を招くが。

 

「ひぁっ……」

 

 その両の乳房に支えられた体を、地についた両腕にまかせて身を起こそうとしたが、その地に着いた手もまた、拘束されて自由が効かなくなってしまう。

 

「な、何、何っ……」

 

 腕を縛るそれについて、視線を巡らせたゼラニウムは、おそらくは足も拘束しているであろうその正体を知る。絡みついたそれは触手そのものというにふさわしいもの、あっという間に、膝から上、肘から上にまとわりつくように絡みつき、その彼女の両腕、両足を伸ばしたまま四つん這いになるような姿勢を取らせるように固定してきた。

 

「待って、何、どういうことなのっ」

 

 今自分が着ている服は、先程足元を見ようとした瞬間に邪魔した乳房の質量の様子で確認できた。いつでも胸元を開けるようにしているタイプのもので、普段の武装のような衣服では時折ベストの前を止めるボタンが吹き飛ぶことからと、このように胸元を解放するデザインのものを身につけるときもある。クロユリから止められた気がしたときもあったが、悩ましいのでどちらかにすることを通した覚えがある。

 その選択が正しいときと間違っているときがあり、特に正しいときは団長に求められた場合にまず脱がずにその深い谷間の隙間にその熱く固くそそり立つ男根を挟み潰して気をやらせるのを時短できた。

 そして間違っているときは……団長にも、それにこの触手のようなものにも。

 

「まって、いやあああ!!」

 

 乳房をはだけさせられ、その先端を広く大きく覆う乳輪とその中で自らを主張しかけて叶うかわからない、ややへこんだ乳首をさらされてしまう。

 そんなに見せびらかしたくない。あまりにも他人と違いすぎて、恥しか感じない。よほど、性的に自らの奥に熱がこもっているとき、団長に見せて愛してもらう以外には、晒したくない場所だった。

 クロユリは何も言わなかったが、大きさについては少し思うところがあるらしいのはわかった。最も深くは追求しなかった。

 そんな様々な出来事を想定させられる乳房は、すぐ自らを弄ぶ触手の本懐のようなものを達成させられるために、まるで自らの乳房を吸うためだけに肥大し開かれた花弁のようなそれに、覆い尽くされてしまった。

 やや冷ややかだったそれが宛てがわれ、冷たさに背筋が震えたが、すぐ自らの体温に馴染む。同時に、幾重にも連なった絨毛突起によって、乳房と乳輪と乳首の上を、まるで大量の舌で舐め取られているようにその表面を撫でられた。

 

「ひあっ! なに、待って、待ってっ!!」

 

 乳輪を舌で辿られた。

 乳房の柔らかさを唇で吸い付かれた。

 その乳首の主張を強めるように、舌に転がされ、唇に食まれた。

 ゼラニウムにとって乳房と乳首と、それへの行為は大好きな人との交歓の中で、必須にしてもらいたいほどに敏感で、愛といたわりで包みながら、その中で溜まり膨れ上がる下腹部の猛烈な熱を、圧倒的な硬質で打ちつけられるのは何よりの至福だった。

 それだけで何も考えられなくなる。気持ちいいという言葉だけが脳を埋め尽くす。

 

「やああ、あなたとは、あなたとはだめぇ!!」

 

 言葉で否定するしかできない。自慢の超高速剣術も、丸腰で、両腕両脚を拘束されてできるはずがない。相手はおそらく取るに足らない程度の相手だが、まるでずっと狙いを定めていたかのようにゼラニウムの隙をついてきた。

 胸元をはだけやすくしていた服は完全に左右に割かれ、自然には晒した乳房をもどせなくなっているようだった。吸い付かれた乳首は、折り重なるように絨毛にねぶられて、すぐにゼラニウムの乳房そのものの中に頂きを見せるように快楽を貯め込ませる。

 

「んあああ! その吸い付きはだめぇ! 気持ち良すぎるのっ!!」

 

 その負圧は、リリィウッドに戻った日に見た夢のあとからゼラニウムを悩ませていた事象を呼び起こし、膨れ上がるように乳房に溜まる乳液を乳首に招いてきた。

 その、乳管を遡る母乳がとても熱く甘くゼラニウムの乳房を包みこむ。

 

「待って、そういうのだめぇ! ふぁぁ! イク、イクぅ!!」

 

 乳房を吸われてまだ数分も経たない。

 だが人には不可能な感触に敏感な感覚のすべてを支配されたゼラニウムは、不自然なくらいにあっさりと気をやってしまう。あの晩に団長に抱かれることを許されなかったことによる焦れも、少しは災いしていたのかもしれない……とはゼラニウムの勝手な思い込み。

 触手は、ゼラニウムの乳首の感度をふくらませるように粘液に交じる何かを塗り込んでいた。媚薬のようにも働く何かが彼女の乳首から乳管の感触を膨らませ、それを遡った母乳がその辿るあるがままの悦を、ゼラニウムの乳房の奥で暴発させた。

 

「ひあああ! やぁ、母乳吸わないでぇ! んぁぁぁ!!」

 

 団長によって練り込まれてきた乳房と乳首の敏感。

 団長に何週も抱かれていない不満。

 触手に刷り込まれた粘液。

 複合的にゼラニウムは絶頂を覚えやすくさせられていた結果、すでに彼女は深く高い絶頂の波の中に飲まれてしまっていた。

 

「はぁ、はぁ、やああ、やめ、ひゃめぇぇ、ひゃめてぇぇぇ」

 

 呂律が回せない。

 ゼラニウムは、その乳房を吸う搾乳手の中に、噴出するまま大量の母乳を注ぎ込んでいた。それが噴出している感触に打ち震え、さらに頂の波を招き、喘いだ。

 

「ひああ、んぅ、んくぅぅ!! んああああ!!」

 

 ただ絶頂させられる以上に、その体はさらに大きく熱を貯め込んでいる。

 乳房への責めは、彼女の中ではその先へ自らをいざなうための踏み台。

 

「っっ!!」

 

 戦いに挑む彼女の衣装は、下半身にはスカートと、タイツと、その下のショーツのみ。とても、このような場面での強い防護が期待できるものではない。もちろん、団長に応えるのであれば最短もありえる。自分が満たしたい場合でも時短になる。それらの利点がすべて欠点となり。

 

「んぅく!! まって、そっちはだめ、待って!! んあああ!!」

 

 何かが地面からその身を打ち上げるような、大きな音がする。

 下腹部の前、何が持ち上がったのかをゼラニウムは振り返ろうと身を捩って、肩越しにわずかに見えるそれを知る。

 

「はぁ、はぁ、何、なぜこんな……」

 

 青白く、のっぺりと長い体は、その下半身らしい部分をのぞかせていた。

 同時に、自分の顔の前にそいつは正体を明かさんと地面から持ち上がって覗き込んできた。

 

「みz……ミズウォルム……っ?」

 

 ゼラニウムの母乳の味にいきり立つまま、彼女を犯している正体のそれは、さらに細々とした触手を伸ばして、ゼラニウムの下腹部にスカートの裏からまとわりついた。コダイバナにだってミズウォルムが残存していておかしくはない。ただ、自らを失ってさまようようになっていた今のゼラニウムは、ミズウォルムにとって格好の獲物である。

 

「っっ!! ずっと狙ってたの……?」

 

 あっさりめくりあげられ、タイツとショーツに包まれた尻を、ミズウォルムの下半身らしい部位の前に晒される。

 ミズウォルムの顔らしいそれは変わらぬ顔の形のままだが、執着を表すようにずっとゼラニウムを覗き込んでいるようだった。

 

「犯す、つもり……」

 

 細い触手がゼラニウムの下腹部の布地を確かめきると、とても器用にスカートの奥、ショーツとタイツの境目にその先端を滑り込ませて、するすると降ろした。

 即時に絶頂を覚えさせられていたゼラニウムのそこは、とめどなく溢れ出させていた愛液にまみれ、今もなおその滴りを止めていない。タイツ越しにも湿り気が伝わるほどに、濡れぼそった液はショーツを湿潤させきっていた。

 クロッチと蜜口が離されるとき、そのぬめりが糸を引いた。

 

「っっ! ひぁ、待って、それ以上はっ!」

 

 なんとか体をよじらせて、腰の位置を避けさせて狙いをそらさせようとするゼラニウムだが、すぐそれを許されない感触が乳房を覆った。

 

「んぅぅ!! 胸は、今胸はぁっ!!」

 

 引かれた噴乳の引き金からの絶頂が、吸い付かれる勢いとねぶられる絨毛のままに再度呼び起こされ、それに背を反らし体が捩れさせられてしまう。

 すぐにまた、大量の母乳が乳腺に作られ、乳管をさかのぼり、敏感に主張した乳首に送り出される。

 

「んあああ! 感じるのっ、気持ちよすぎ、良すぎてぇぇ!!」

 

 促されるように乳首を食まれ、吸い付かれ、吸い上げられ、舐め取られる。

 転がされて押し潰されるたびに、びゅる、びゅると勢いあるままにゼラニウムの乳首から母乳が噴出する。

 それらすべて、触手のミズウォルムの搾乳掌に受け止められて、吸い上げられる。

 

「んぅぁあああ!! 入って、なに、おおき、い……っ」

 

 同時に、ゼラニウムの下腹部の深く秘めた場所に浸透する、巨大な質量感を覚えた。

 ミズウォルムの下半身とおぼしき、熱そのものの根がゼラニウムの膣壁の狭隘をかき分けて、彼女の最奥までを占めた。

 

「やぁぁ、ミズウォルムに入れられ、んあああっっ!!」

 

 その膣内を確かめるように、ミズウォルムは一度深くその先を子宮口に押し付けた。尻肉が硬すぎない甲殻のようなものに押しつぶされる。まるで、何か人の腰が押し付けられているかのような感触も含め、思わずゼラニウムの口から衝撃を吐き出す熱が漏れた。

 

「何、んあ、ふああ! 犯され、犯されてっ」

 

 一度確かめたそれを忘れまいとするかのような、激しさと、しつこさにまみれた、杭打つようなピストンが、ゼラニウムの膣壁に擦り付けられ、ゼラニウムの子宮口を深く先端で吸い、ゼラニウムの秘核の裏側を削ぎ、ゼラニウムの襞を逆立てた。

 

「んんぅぅ!! やぁぁ、そんな、そんな動き、しないでぇ!! おっぱいと同時になんて、あああああっ!!」

 

 ただでさえ乳首から射乳させられて絶頂にまみれていたゼラニウムを、その重厚な責めはより強く大きく苛ました。

 本能のままにゼラニウムの柔らかく狭い膣壁に絡みつかれる陰茎の感触をまとわりつかせて、より深く強くミズウォルムは膨大な根を打ち付ける。

 尻肉に弾ませる勢いをつけ、その音を愉しむかのようにあえて大きく叩く。

 そのたびに、ゼラニウムの最奥はこの上なく猛烈に揺さぶられ、ゼラニウムのクリ裏が、子宮口の周りが圧迫され、押し潰される。

 気持ちよすぎる。

 何度も何度もイカされてしまう。

 いつから、そういう性の快楽にありつけなくなっていたのか。

 

「な、んああ、ふぁ、ふあああ」

 

 時折ゼラニウムの膣壁が未練がましくまとわりつくのを愉しむように、ミズウォルムがゆっくりゆったり茎を引き、それら一切を改めて押しのけるように静かに押し込む。

 

「うぅっ、ふぁ、んぁあああ!!」

 

 蜜にまみれた柔肉にまぶされた愛液が、ミズウォルムの茎に白い泡をまとわりつかせている。散々に乳首を愛されきったゼラニウムが、噴き出させんばかりに下の口のよだれを垂らしきっている。

 

「わ、私、わたしぃどうしたのっ、ミズ、に、んんんぅぅ!!」

 

 その乳首を改めて吸い付かれ、また貯めこみだした母乳を思い切り噴き出してしまう。

 

「はぁ、はぁ、まってぇ、イキ、イキすぎ、んあああ、イキすぎてて、辛い、辛いからぁ、そんなに母乳吸わないでぇ、はあ、ふあああ!!」

 

 母乳を噴出するたびに、乳腺が圧し出され、乳管を遡る乳液に乳房が震え、乳首から脈打たされて、ゼラニウムの背筋が、二度、三度と反り上がらされる。

 揉みしだいて、乳首を舐め尽くして、ミズウォルムはじっとゼラニウムの恥態を見つめて至福に浸りながら、蜜にまみれる膣内に、より熱く固くそそり立つ自らを往復させた。

 絶頂に次ぐ絶頂にその圧のきつく狭い様を男根に与え締め付けるゼラニウムの膣内に、ミズウォルムの先はこの上なく張り詰めていた。

 

「本当に、辛いから、そんな激しいのは、待って、待ってぇぇ!!」

 

 その言葉が通じたのか、あるいはその感触の未練故か。

 ミズウォルムのそれは、ただゼラニウムの尻肉を圧し潰すように擦り付けるだけの動きで、最奥を深く深く圧しあげた。

 

「んっ、ぁ、っ、んぅぉ、そ、それ、それはそれで、お腹きつ、っ、んんっ!!」

 

 先程よりその熱と膨れを増すミズウォルムの先端に、ゼラニウムはひとえに感じずにいられない不安を覚える。

 

 射精感の迫り。高ぶり。

 

 今にも達しそうなほどに、犯しつくしたままの感触を放出しかけている。

 

「待って、まさか、やぁ、待ってぇ!!」

 

 ミズウォルムが押し付けた先端のそれをより深くへ放つつもりで、差し込んだ茎を短く突き上げ出す。

 何かの意思表示のような動きにゼラニウムは身を捩るようにして、本能的に退けようとしてしまっていたが、自分を犯す相手がどういった存在かについての重大さの認識が抜け落ち、それどころかこの快楽に心が満たされているような感じすら芽生えているようだった。

 退けようとしたはずの体の動きは、横ではなく縦に。

 

「んああっ、今出されるの、出されたら、もう、もうっ!!」

 

 何を言っても膣内へ射精し種を注ぐつもりでいるミズウォルムに、ゼラニウムは無理に抵抗する言葉を告げることをやめた。

 むしろそれ以上に、絶頂に登らされすぎて足腰にある痙攣が抑えられない。

 それがもっともっと強い形で現れないか。

 

「ひああ、また乳首、吸うのはぁ、おっぱい揉むのもぉ!!」

 

 あと、数回、突かれたら、ゼラニウムのお腹の奥にというとき。

 ゼラニウムはより深くミズウォルムの茎を迎え入れられるように尻を振ってミズウォルムの動きを助長していた。

 

「んあああ、ミズウォルム、っ、く、ああああ!!」

 

 その後の、種をつけて、ミズウォルムに宿された後の対処など、今のゼラニウムには考えられなかった。

 最もお腹の奥に熱くほとばしるときに意識を吹き飛ばされないようにと強く自らを律し、その瞬間を迎えるつもりでいた。

 

「ふぁぁ、中に、んっ、あああっ、中に出て、っっ、ああああ!!!」

 

 乳首と乳房をより強く揉み潰されて、出し尽くさんばかりに母乳を噴出させられながら、ゼラニウムはそのときを下腹部に迎えた。

 最奥に大量の粘液が注がれ、ほとばしるのを感じながら、その茎の先がより深みにそれを送り込もうとする刻むようなこすり付けを受け止める。

 打ち震えて、ミズウォルムがその感触に浸りながら、射精しつづける。

 

 今までずっと、乾ききっていた。

 膣奥に何もないままでいたそこに、求めていないはずの相手のそれを注がれ、下腹部の中に膨らまされる。

 

「はぁ、はぁ、ひぁあああ!! んあああ!! な、んああ、中、きもちい……良すぎるよぉお!!」

 

 乳房が引き起こす絶頂なのか、下腹部に招かれた絶頂なのかわからないそれに、ゼラニウムはすべてを投げ出されていた。

 嫌悪が一切消えていた。むしろ、ミズウォルムに何もかもの満たされなさを満足させられていることに悦ばしさを感じてしまっていた。

 ずっと、ずっと中に、膣の奥に、際限なく注がれているかのような感じに、ホワイトアウトしかける意識をつなぎとめて、その悦をずっと感じつづけていた。

 

 ひとしきり射精し終えた肉茎の先端が彼女の膣口から引き抜かれると、溜めきれないミズウォルムの精液がごぼごぼと溢れてゼラニウムのショーツのクロッチに大量にこぼれ落ちる。

 膣口には、それらを飲みきれなかったあまりに溢れさせてしまったよだれのような、白い粘液がべっとりとこびりついていた。

 

 

「んふぅ、んっ、んっ」

 

 何か、場面が飛ばされているかのようにゼラニウムの意識が次に自らを認識したときには、自らの乳房の谷間に、先程自分の膣内を蹂躙しつづけたであろう、ミズウォルムの男根を挟み込まされ始めていたときだった。

 両腕の拘束はそのままだが、両の乳房を覆い切っていた搾乳手は解かれている。

 だがまるで、その谷間で強く圧迫させられるかのように、バスト周りを一周するように、触手が絡みついていた。

 その両の大質量の間を、何度も何度もミズウォルムの男根が上下し、圧迫の肉内をぬめるままにこすりつけられている。

 ミズウォルムの触手の多くはなんとなく冷ややかであるのに、その男根だけはまるで人の男性のそれのように熱を帯びて乳肉の間に収まっていた。

 明らかに人のそれによく似つつも、どこからか粘液を満たして、乾くことを知らず、なめらかなままに乳肉の谷間を堪能していた。

 

「ふぁ、んっ、そんな、こんなことも、したかったなんてっ」

 

 団長も、その谷間に自らの半身を埋めるのが大好きだった。

 強く挟み込んで、滑らせて、その中で上下させてやるだけで、とてもせつなそうな声で感じ入る。

 たまに、そうやって谷間の中で弄びはじめたとたんに、暴発した白濁をその中、隙間いっぱいにあふれさせてしまうときすらあった。

 

「はぁっ、はぁぁ、んっっ!!」

 

 思い出すゼラニウムにその思考を与えまいとするように、細い触手が乳首と乳輪をつつき、絡みつくように縛り付ける太い触手の隙間に入り込んでくる。

 敏感が体の中にめぐり、脊髄に響き渡る。

 

「ふぁぁ、乳首は敏感なんだよっ……おっぱいでしてるときは、いじるのはっ」

 

 あえてそれを続けさせたいあまりにゼラニウムはつぶやいていた。

 ミズウォルムの触手らしきそれはその言葉のままに彼女の乳首を、求められたのだという正当のままに縛り付け、圧迫を引きずりあげるようにひねった。

 

「んぅぅ、そんなにするなら、っ、すぐイカせるからっ」

 

 稼働できる領域の少ない腕を少しでも持ち上げてその乳房にこめる圧迫を強め、まだ自由の効く胴回りを揺すって、ミズウォルムの腰つきを迎えるように乳房を打ち付けた。

 ゼラニウムの積極な反撃にミズウォルムの茎が乳肉の間で跳ね上がろうとする。縛られた圧迫がそれを受け止めきるものの、達して間もないミズウォルムの先端もまたその敏感を失わないままに、貯め込んだ快楽の熱をもっともいい場所にほとばしらせんばかりに突き上げる。

 

「んっっ、んぁぁ、イカせるまで、イカないからぁ……っ」

 

 圧迫を強めて、ゼラニウムはできるかぎりの範囲で体を揺すってミズウォルムの茎を乳内に沈めさせた。

 その動きにつられるように、ひねり抓るような細い触手に引っ張られた乳首に、先程から張り詰めていた母乳がさかのぼってくる。

 

「んああ、まって、母乳出そうなのぉ、んんっっ!!」

 

 お互いの盛り上がりはあっさり終焉を迎えて、降伏しきったミズウォルムの先端がゼラニウムの乳房の谷間から大きく覗かせると、びゅくびゅくと音がしそうなほどにゼラニウムの乳房の狭さに任せて射精された。

 同時に、巻き付く触手に押しつぶされ抓られ引っ張られる乳首から、のぼりきった母乳が触手の中に噴き、滴らせていく。

 

「ひあああああ!! んぁぁ、んぅぅうう!!」

 

 精液が顎から顔へ、その噴出する勢いのままゼラニウムに降りかかった。

 ミズウォルムのその行為の時間そのものは、ゼラニウムの膣内に入れていたときを遥かに下回る速さ。

 まるで、それそのものが本懐であるかのようなほどの興奮そのものだった。

 

「ふぁ、ぁ、んぅぅ……あなたも、そんなにおっぱいが良かったんだ……」

 

 だが、拘束された当初は驚きと不安に満ちていたはずなのに。

 本当に、不思議なほど嫌悪がなかった。

 まるで、ゼラニウム自身にとって、その時間自体が、今まで自分が手に入れられなかったものを埋めてくれるかのような……

 

 

「ゼラニウム! おいゼラニウム!!」

「んっ……?」

 

 多くを確かめることもなく、ゼラニウムはよく聞き馴染んだ声の主に呼び起こされるように次の意識を戻した。

 

「クロユリ……?」

「何やっているんだこんなところで裸になって」

「え……」

 

 クロユリの言われる通り、ゼラニウムは一糸まとわぬ姿でコダイバナの荒野に仰向けに寝そべっていた。

 全身は、何か気持ち悪い乾いた感触がこびりついていた。

 

「大方、予想できる対象は救出隊で討伐していたが……ゼラニウム、どこでミズウォルムの分体をつけていた?」

「え?」

 

 外套で肌を覆い隠させてもらい、おぼつかない足取りを見られてクロユリに肩を貸させてもらった。

 クロユリが言うには、ゼラニウムが意識をなくした状態で寝そべっている付近に、腹部に触手生物を抱えたミズウォルムの分体をコダイバナ勤務の感知力の高い花騎士が発見したので、それを討伐していたということ。

 行方知れずになっていたゼラニウムの探索の手間が省けたのもまた、都合のよい話という。ゼラニウムは、クロユリが言うには2日、前線基地を空けていたという。

 ミズウォルムの分体それ自体がコダイバナ付近にいることはそれほど不思議なことではないが、問題はその分体が抱えていた触手体。それに似た体を持つ害虫はコダイバナ方面には存在が確認できないタイプの種であるらしい。特にリリィウッドで確認されている種と同じであり、何らかの場面でゼラニウムがリリィウッドで触手生物とミズウォルムの融合体のようなものをくっつけてきたのだという。

 

「それは……」

「あのミズウォルムの集合体を討伐したとき、ゼラニウムが間違いなく処理したはずのミズウォルムの組織、それから、リリィウッドにいたときにお前が抱えた、妊娠してもいないのに母乳が出るようになった原因のこと」

「うーん」

 

 考え込むふりをしてみせるが、クロユリの推理はゼラニウムにも心当たりしかなかった。確かに、ミズウォルムの組織らしいものは処理したが、母乳を出させるようにした存在のことは、夢うつつのことだと思って大きなことと考えなかった。

 

「やっぱりそれなのかな」

「それ以外にないだろう」

「即答かぁ」

 

 クロユリに指摘されるままに、ぼんやりした頭で考えてもそれしか思い当たらない。

 だがどうやって、ミズウォルムもその触手生物も、自身に取り付いたのだろうと、ゼラニウムはなんとなく周囲を見渡すそぶりを見せる。

 

「どうして気づかなかったのかな」

「そんなもの、お前の胸に聞け」

「えぇっ、おっぱいは何も知らないよ」

「そういう意味ではない」

 

 なんとなくゼラニウムはボケてみたつもりだったが、あっさりクロユリにスルーされてしまった。

 ただ少なくとも。

 触手であろうなにかに母乳が出る体にさせられたときも。

 ミズウォルムの触手体に自由を奪われたときも。

 そのミズウォルムの処理を、あくまで見える範囲でしか行わなかったことも。

 そのすべてが、ゼラニウムのあまりにも莫大な乳房によって視界を阻まれていたが故であることを思い知らされる。

 

「うーん、胸の裏までは難しいなぁ……」

「なんとかしろ」

 

 はだけたままの、垂れることをまだ知らない若々しい乳房の裏にゼラニウムは掌を通す。今でこそ、そこに怪しいものはなにもない。

 もしここに、あるいは服の布地のこの裏側に何かあっても、おそらくゼラニウムは気づくことが難しい。

 外から見て気づかれない場所になっているのだとしたら……

 ゼラニウムはこの後よりこの場所への寄生について気をつけるようにしていたという。

 

 ゼラニウムを犯したミズウォルムがどのようなプロセスで彼女を夢遊病に貶めて弄んだかのプロセスは不明であったが、触手を持つ個体と融合しなんらかの形でそれらの手段を覚え、彼女の身を散々に舐め尽くし、彼女の乳房から絶頂感とともに母乳を噴かせるようになったことは事実である。

 なぜ、ミズウォルムがそんな能力を覚えたか、その理由は不明。

 コダイバナ参謀本部への報告書はそういった内容で綴られた。

 

 検査の結果、ゼラニウムの胎内にミズウォルムの子が芽生えていた。

 途中でそれを遮ることはできず、ひとつきの後にゼラニウムはそれを出産し、号泣しつつも血を分けた子の処理を自ら行った。

 その結果として、自然に出るようになっていた母乳は。

 

「んあああ! もっと、もっと吸ってぇ、団長さん! 母乳、母乳出させてぇ!」

 

 さんざん出ない出ないと言い張って団長を困らせてきたため、当初とても好まれるシチュエーションとして団長との愛の睦みの中でもてはやされたが。

 余計なオプションをつけられたように、母乳を出すたびに乳腺と乳管を熱くほとばしらされる感触が強制的にゼラニウムはイカされるようになってしまっており、それは授乳期を終えた後も母乳が出続ける体質とともに残った。

 それは時折際限なくゼラニウムに射乳で絶頂しつづけることを求めさせた。

 

「やぁ、やめないで、母乳吸いながらしてぇ!!」

 

 団長の口が疲労し、団長の茎が枯渇してもなお、ゼラニウムは乳首への刺激を求めていた。

 母乳を吸い上げつづけられながらしないともはや満足のまの字もない。団長に下半身を満たされるだけでは物足りない。常に母乳を搾られ、その都度絶頂を繰り返し、それを夜の続く限り行う日々。

 彼女を際限なく満たしてくれるであろうあのミズウォルムは、クロユリの手で処分されてもういない。それを行ったミズウォルムに替わり彼女を満たし、また彼女のケアを行う役目は団長以外には果たせない。

 

「団長さん、吸うのだめなら、搾りながらでいいからぁ!!」

 

 ゼラニウム自慢の大質量は、彼女の体にある限りの加護を母乳に変えるに十分すぎるほどの膨大な生産量で搾られるたび、吸い出されるたびにその乳腺に乳液を貯めた。

 

「切ないの、おっぱい、張って辛いの、だから、だからぁ!!」

 

 膣と乳肉の谷間に放ちきってしなびた団長の茎を促すように、ゼラニウムは蜜にまみれた膣口にそれを押しつぶし、その手でやわらかく萎えたそれをなでて求めた。

 

「団長さんっ、団長さん、いくらでもおっぱい飲んでいいから、んああああ!!」

 

 噴出するままの母乳にまかせて、ゼラニウムは体を震わせる。

 なんとか団長が力を振り絞って母乳を搾られ、絶頂感が母乳を突いて噴き上がり、背中を反らせながら熱い喘ぎを吐き出し続けた。

 

「んぅぅ、んあああ! おっぱい、んっ、ぅぅ!! おっぱいいいよぉぉ、噴き出すの気持ちいいよぉぉ!!」

 

 両の掌に搾られるように揉み潰され、団長の顔にいっぱいの白い乳液を降りかける。

 もはやゼラニウムの母乳にまみれて、パックされたように団長の顔に母乳があふれかえっていた。舐め取るように団長は口周りのゼラニウムの母乳を求め、気力を振り絞ってゼラニウムの母乳を噴き続ける乳首に吸い付く。

 

「んっっ! その不意打ちらめぇ!! 団長さんっっ!!」

 

 その刺激に負けて、追い打つように次の乳を作りきった乳房から、団長の口内へ乳首を伝って噴出させる。

 

「ふぁぁ、団長さん、吸って、吸って、飲んでぇ、あああああっっ!!」

 

 団長の顔が呼吸を失わされるくらいに、ゼラニウムに頭を抱きしめられ、その乳肉にうずめさせられて、その状態で乳首を吸わされ続けた。

 

「団長さん、団長さんっっ!! んああああ!! もっと、もっと吸ってぇ、もっと、もっと搾ってぇ、団長さん、もっと、もっとぉ!!!」

 

 いつ終わるともしれないゼラニウムの、乳がもたらす快楽の渦の真っ只中に揉み潰されて、団長は意識を途切れさせられていた。

 ゼラニウムの瞳は虚ろに❤を浮かべ、その先をただひたすら貪欲に求め続けていた。

 

 そんな夜が毎日のように続けられる。

 ゼラニウムの大質量が快楽をもたらす母乳を作り続ける日は今日も続く。


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