グッドエンドのその後を書いた話。
マルフーシャちゃんが最高指導者様に見初められて寵愛を受ける話。
この話には原作のネタバレがあります。ご注意ください。

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この作品の挿絵風のイラストを島根の野良犬さまが書いてくださりました。
https://www.pixiv.net/artworks/95541785
この場を借りて宣伝&お礼ですわ。


マルフーシャがひどい目に合うSS

 荒れてガサガサになり、湿疹も浮いた手で銃を解体して、部品を掃除して、可動部に油を差して組み立てる。

 朝早くに起きて、職場に通って、パンを焼いて日銭を稼いで暮らしていた頃が恋しくて仕方ない。あの日々にはもう戻れないと思うと、ため息しか出ない。

 頼りになる仲間と一緒に、押し寄せる敵の機械兵を撃って壊すだけの簡単な仕事が懐かしい……敵に包囲された状況で、補給も応援もないままに戦い続ける仲間を見捨てて、一人だけ拾い上げられたあの日を思い出すと罪悪感で死にたくなる。

 しかも……今の仕事は機械の兵士じゃなくて、国内の不穏分子……人間が相手だ。彼らはテロリストや犯罪者……彼らのほとんどは根っからの悪ではない。働いても働いても、賃金の大半、酷いときにはほぼすべてを税金に奪い取られていき、生活が成り立たなくなり、政府に抗議するために立ち上がって、弾圧されてきた人々。合法的な手段では決して要望が届かないと知り、それでも生きていくために仕方がなく暴力や犯罪に手を出した人々。政府はそれらを国家を害するものと一括りにして排除する対象に指定している。

 彼らはごく普通の労働者で、家庭があった、日常があった。徴兵される前の私のような暮らしを持っていた。それを戦争のために取り上げられた。私と同じ被害者だ。それを何度も殺した。

 今手入れしている銃で自分を撃ちたくなる。でもそうするわけにはいかない。これまで何度も他人にそうしたように、頭に銃口を押し付けて。自分一人ならとっくの昔にそうしていた。

 そうしないのは、できないのは。すぐ後ろで洗濯物を畳んでくれている大事な妹が居るから。私が死ねば、あの子は一人になってしまう。特殊部隊だからと支給されたこの家も追い出されてしまう。今のこの国では、少女が一人でまともに生きていくことは不可能だ。

 弱いところを見せては心配されてしまう、あのこの前ではしっかりした姉でいなければならない。

 

ジリリリリリン!ジリリリリリン!

 

 …電話が鳴っている。普通使いではない方の電話が。つまり仕事の呼び出しだ。武器の手入れを中断して、手についた油を拭いて、ベルの音に怯える妹に大丈夫とひと声かけて、受話器を取る。

 

「国民番号XXXXXXXX、マルフーシャ、最高指導者様からの呼び出しである。本日1500までに、最高指導者様に失礼のないよう体を清潔にし、正装して待機せよ。化粧はしなくていい」

「……はい。了解しました」

 

 いつもの仕事の呼び出しとは違うな、とぼんやり違和感をいだきながら、鉄と油の臭いを落とすために念入りにシャワーを浴びて、支給された制服に着替えて、宿舎の外に出て迎えを待った。

 

 時間になると、いつもの任務のお迎えとは違う高級そうな車がやってきて、仲間を見捨てたあの日に、指導者様の横に立っていた男が降りてきた。

 

「国民番号XXXXXXXX、マルフーシャだな」

「そうです」

「乗れ。指導者様がお待ちだ」

 

 後部座席の扉をあけられたので乗り込む。やわらかで、あたたかなシートだった。

 

 しばらく美しくはない街並みを眺めながら揺られていた。運転手の男とは一言も話さなかった。あちらも、自分も、話すことも話したい意欲もなかったので、到着までは車が走る音しかしなかった。

 

 乱雑な街並みとは一線を画す、整理された街並みの上等国民たちの住まう街を抜けた先に、荘厳な建物が見えてきた。赤レンガの塔、白亜の宮殿、それらを守護する巨大な対空砲、すべてを台無しにする悪趣味な最高指導者様の銅像。

 広場を抜けて、銅像の前で一度車を止めて降ろされる。銅像に向かって敬礼を捧げさせられた。唾を吐きたくなる気持ちを抑えるのが大変だった。

 

「指導者様の像に向かってそんな顔をするな。無礼だぞ」

「偉大な御姿が眩しく目がくらんだだけです。お許しください」

「ならばよし」

 

いいのか。車に乗せられて、宮殿の前で降ろされる。

受付で所属と国民番号、氏名を答えて武器を預けると、奥からわらわらと女中が現れて有無を言わさずに引っ張られていった。

 引っ張られていった先では、大きな鏡と椅子、大量の化粧道具が用意されていた。俳優のメイクのセットみたいだなと思ったり。私は鏡の前に座らされて、彼女たちの手で髪を梳かされ、鏡の中の自分の顔がきれいに塗りつぶされていくのを黙って受け入れた。

 ……化粧なんてずっとしていなかったから、たくさんの道具に、プロの技で自分がきれいになっていくのに少しだけ気分が上がったのは内緒だ。同時に、まな板の上で料理されているようだとも思った。

 最高指導者様に会うのに、五等国民の兵士の汚い顔をそのまま見せるのは失礼だ、というのはわかる。だからこうして手間をかけているのだろう。

 

 そのあとは残った時間で入室から退室するまでの動作、食事の際のマナーを徹底的に仕込まれた。皿と食器だけを並べられ、食器を使う順番、料理を食べる順番、グラスの持ち方、ワインの飲み方、小さなボウルに入った水は飲み水ではないこと……などなど。食事の際にマナーを求められるなんてこれまで一切縁のない世界だったので、マナー講師が頭を抱えていた。覚えてもらわないと首が飛ぶ、と言っていたのがかわいそうだったから私も必死で覚えた。頭が破裂しそうなくらい次から次へと情報を詰め込まれたが、なんとか及第点を出してもらえる程度には覚えられた。

 戦いに関係しないことを教えられたのは久々だったから、戦争のことを忘れられて少し楽しかったのもある。

 

 ……それから、最高指導者様の待つ部屋に連れていかれた。教えられた通りに、ノックを三度、それから自分の国民番号と官姓名を名乗り、許可があってから入室……部屋の広さ、装飾の絢爛さ、少し暑いと思うほどの暖房に一瞬気圧されるが、すぐにするべきことを思い出して敬礼。やたらと長いテーブルの端に椅子があるのでそこまで行って、着席の許可を出されてから座る。

 

 ……ここまでは教えられたとおりにできた。特に失点はないはずだ。

 

「―――」

 

 何か言っているが、緊張で半分も耳に入ってこない。とにかく挨拶らしいことは理解できたので、適当に光栄ですだのなんだの言ってごまかしておく。幸いなことに適当に返事をしているのがばれる前に料理が運ばれてきた。

 ……高級そうな料理だ。こんなものテレビの中でしか見たことがない。前線ではとてもこんなものはお目にかかれないだろうし、私がこの前殺したヒトなんかは、一生食べることのないであろうモノだ。が、こんなものを味わって食べられるような状況ではない。とにかく教わったことを思い出しつつ、失礼のないようにちびちびと食べていくことで精いっぱい……最高指導者様に出される料理がおいしくないはずがないのに、緊張で味がしない。こういうとき、ライカさんやフェリセットさんみたいな上等国民なら場慣れしているから自然に楽しめたかもしれないのに、どうしてここに居るのが私なんだろうか……理由は明白だ、彼女たちはもうこの世にいないから。

 

 対して最高指導者様はといえば、慣れているのか素面でマナーを守った食べ方をしている。

 ある程度食事を進めると、ワインが出てきた。とても華やかな香りとアルコールに心が安らぐ。けど、これの値段を考えると匂いを嗅ぐことも躊躇われる。

 

「気にすることはない。所詮ワインセラーに数ある内の一本だ。えー、いくらだったかね」

「20,000Aほどでしたかと」

 

 その一本でも市民にとっては目の飛び出るような値だ……兵士の年収に匹敵する。市民は苦しい生活を強いられているのに。生活すらできていない市民も多々いるというのに……この前撃ち殺した女性はガリガリに痩せ細っていたのに、最高指導者様は醜く肥え太っている。

 笑顔の仮面を張り付けながら、テーブルの下で怒りに拳を震わせる。

不穏な感情を察したのか、指導者様の後ろに立つ兵の目つきが険しくなる。大丈夫、私はここで暴れるほど馬鹿じゃない。

ちっとも美味しさのわからないワインを少しずつ飲みながら、指導者様の話を聞く。

 

「——我が国を侵略しようとする卑劣な連合国どもの目論見は挫かれている。君らのような優秀な人間たちのおかげでな」

「……身に余る光栄です」

 

 実際はもう取り返しのつかないところに追い込まれているし、それでも、今この瞬間も戦場では仲間たちが死体を積み上げて、祖国のためと文字通り必死で戦っているのに。

 

「君のような優秀な人間ばかりなら、この国も安泰なのだが」

「っ!」

 

その一言に爆発を抑えるのがどれだけ苦労したか……いいや、いっそ爆発してしまったほうがよかったのかもしれない。

あの日戦場に置き去りにした皆、ライカさん、フェリセット、アリビナ、ストレルカ、ベルカ、ビオン、エノス、ほかの名前も知らない兵士たちが命を捨てて戦ったのは、祖国を守るためだ。それを優秀ではないと切って捨てたこの男の発言には絶望を覚える。

 この男は一体何をしているんだ。私も、こんなところでのんきに食事をしている場合じゃないのに。

 

「だが、優秀な人間というのは限られている……増やさねばならないが、どうすれば増えると思う?」

「……わかりません」

 

 今の怒りに染まった頭で口を開こうものなら、きっと罵声しか出てこない。だからそうとしか答えられなかった。

 

「私はな。優秀な男と優秀な女が子を作れば、きっと優秀な人間が生まれるんじゃないかと思うのだよ。君はどう思う」

「……」

 

 こいつは何を言っているんだ。どうして立ち上がってこっちに寄ってきているんだ。どうして私の顔を覗き込む、どうして顔を近づけるの……!!

 

 不快な髭が顔に当たる、がさがさの唇が触れる、葉巻と酒臭い息が口の中に入ってくる……私の初めての相手が、この汚い男? 気持ち悪い!!

 そう思った瞬間には全力で殴っていた、「私は兵士です! 娼婦じゃありません!!」

「貴様! 最高指導者様に何をしている!!」

 

 はっと我に戻った瞬間には、護衛の兵士に銃を向けられていた。慌てて両手を上げるがもうやってしまった後だ。明確な反逆、言い逃れはできない。これは……と最悪死ぬ覚悟を決める。本当ならずっと前にみんなと一緒に無くしていた命だし、死ぬ覚悟はできている。ただ、心配なのは妹だけ。

 

「銃を下ろせ」

「……はっ」

 

 そうと思えば、最高指導者様が銃を下すように命令した。

 

「いきなり口づけをした私も悪かった。だから特別に今のは数に入れないでやろう……ところで、拒めばこれで二回目だ。私は優秀な人間には甘い……だから一度は許したが、二度目はない……ふむ。確か君には家族がいたな? 政治犯の家族がどうなるか、知らないわけではあるまい?」

 

 ……本当に撃つべき相手は連合国の敵よりも、不穏分子よりも、この男だと思う。手元に銃がないのが本当に惜しい。家族を人質にとるとは卑劣にもほどがある。

 

「跪け」

「……」

 

 だから、命令に従うしかない。跪いた私の顔の前で、この汚い男はズボンのベルトをカチャカチャと外し、下半身の服を脱いで。強烈な汚臭を放つ毛まみれの醜い物体を露出した……初めて見る、黒々として、太さは子供の手首くらい、表面に血管が走る醜い肉棒。反り返り、脈打つそれに顔が引きつる。

 

「なめろ」

「……」

「舐めろと言ったのだ。聞こえなかったのか」

「……了解しました」

 

 歯向かうわけにはいかない。歯向かえば私だけでなく、妹の命もない。そろそろと舌を伸ばし、触れる。さっきの料理は味がしなかったが、これは悪臭に味がついている……舌を通じて鼻がやられる。

 うっかり息を吸って、あまりの臭さにえづいた。

 

「……申し訳、ございません。経験がないもので、お見苦しいところをお見せしました」

「ふむ……そういえば女性が来るというのに私もシャワーを浴びるのを忘れていたよ。おい、ワインをもう一本持ってこい」

「はっ……こちらを」

 

 ぽん、とコルクを抜いたかと思うと、瓶をひっくり返して何を思ったのか醜い肉棒に中身をだばだばと振りかけた。一本が兵士の年収に匹敵する高級なワインを。呆れと驚愕に思考が停止する。

 ワインを持ってきた兵士も驚いている。

 

「どうだ。これで臭いも消えただろう。しっかりしゃぶれ」

 

 入力された命令に意識が戻ってきた……そうだ。家族のために。

 しかし、経験もないのでどういう風にすればいいのかわからず、恐る恐る先を舐める。臭いは確かにマシになったが、屈辱感はさっきよりも遥かに強い。尊厳を泥だらけの靴で踏みにじられて、この肉をウインナーのようにかみちぎってやりたくなる。

 それをさせないのが、妹の存在だった。妹を守るためにこうしているのであって、指導者に媚びを売っているのではないのだと。強く自分に言い聞かせる。

 

「ふむ、こそばゆいな」

「……ご不快でしたら申し訳ありません」

「経験がないのだろう、構わんよ。ただこれでは気持ちよくないな」

 

 頭を大きな手で押さえられたと思うと、腰を突き出された。突如喉の奥を叩いた暴力に、顔面に貼りついたワインまみれの毛に、痛いとか苦しいとかを感じるよりも前に、何が起こったのかがわからずただ混乱した。

 引き抜かれて、もう一度腰を顔面に叩きつけられて、ようやくこれまでに経験したことのない未知の苦しみが襲ってきた。そして、それは二度では終わらない。

 

「ぉ゛っ、おぶっ! ッ゛!! ぅ゛!!

 

 赤ん坊が玩具で遊ぶような容赦のなさで手荒く、激しく使われる。何度も、何度も、何度も。息ができずに死ぬほど苦しくて屈辱的なのに、死ねない。その内怒りや苦しみよりも、この拷問が早く終わってほしいという願いと悲しみだけが頭を埋め尽くして、涙がとめどなくあふれてくる。

 

「ぉ、ふぅ゛っ……!!」

 

 しばらく。どれほどの間使われていたかはわからないが、肉棒を根元まで飲み込まされて、喉の奥で生ぬるく臭い液体が放たれるのを感じて、本能的に終わったのだと察した。

 

 ずるずると引き抜かれ、ようやく口が解放されて、息ができるようになった。床にうずくまり、ぜひー、ぜひーとのどを抑え、荒い呼吸を繰り返し、やがて生臭い液体が食道を駆け上がり、吐き気が込み上げてきた。

 

「っ、ぅ、ぅぉぇぇ、おげぇぇっ……!」

 

 びちゃり、びちゃりと白い液体を吐き出して床を汚す。

 

「……貴様ぁ、せっかくくれてやった情けを吐き出すと何事だ! 今すぐ一滴残らず舐め取らねば許さんぞ!!」

「申し訳……ございません」

 

 必死で呼吸を整えながら、なんとか言葉を絞り出す。クソクソクソクソ、と心の中でひたすら呟きながら命令されたとおりに床をなめる。舐めていると、靴底で頭を踏まれて床に顔面を押し付けられる……人としての尊厳がもはや欠片も残っていない。

 

 吐き気をこらえながらなんとか命令通りに床を綺麗にした。

 

「服を脱いで、ベッドに来なさい」

 

 ……化粧をされているときに感じた、料理されているような錯覚は、正しいものだったらしい。支配者に食わせる食材をより美味しく見せるための調理。深い絶望を受け入れながら、服を脱いだ。恥じらうこともせず、ばさばさと乱雑に見えるように。なけなしの抵抗。それすらもあざ笑われる。

 

「傷だらけの汚い体だが……まあいいだろう。経験はないと言っていたな?」

「はい」

 

 誰も好きでこんな傷だらけの体になったわけじゃない。好きでこんな屑に体を開くわけじゃない。

 

「偉大な男に処女をささげられるのだ。光栄に思いなさい」

 

 これ以上ない屈辱だ。銃があったら殺していた。

 

「足を開け」

「……」

 

 ぶにぶにとした不快な手で内またを触られ、股を広げられて。その間に男が座る。ほかの誰にも見せたことのない場所を、じろじろと無遠慮に覗き込まれる。指で触られる。ただただ気持ち悪い。この思い、屈辱と表現する以外ないが、その一言で済ませるにはあまりにも……!

 

「……受け入れる準備もできていないのか。まあ処女だから仕方がないか、力を抜きなさい」

 

 指よりも太く、熱い物体が、シャワーとトイレ以外では自分でも触らない場所に触れる。そして、押し入ってきた。

 

「っぎ、!」

「おお、締める締める……やはり初物は違うな」

 

 めり込んでいる、肉を裂かれている、ぶちぶちと何かが千切れる音が体内から聞こえてくる。痛すぎて悲鳴さえも出ず、歯ぎしりが鳴った。

 上に乗っている男は構わず、体重をかけて押し込んでくる。めりめりと入ってきて、そのまま一番奥、へその下あたり。内臓を直に押し上げられる感覚があった。

 苦しくて、痛くて、悔しくて、悲しくて……吐き気がする、でも吐けない、吐いてはいけない。とにかくこの時間が早く終わってほしい。

 

 ずるりと肉を引っ張りながら、肉棒が抜かれていく。かと思えば、一度広げた粘膜を擦り上げながらまた奥まで入ってくる。

 

「おほ、吸いつくわ……」

 

 耳に入る声も、顔にかかる臭い吐息も、醜い容姿も、最高指導者様のあらゆる要素がざりざりと心を削っていく。こんな男のために、私は、みんなは、戦っていたの……? 私はなんのためにこんなことを耐えているの……!

 

「かふっ、ひっ、……く……」

 

 裂けた粘膜をこすられる激痛、内臓を肉棒で殴られる苦痛、あらゆることが精神を苛んで、ついに涙の堰が切れた。涙があふれて止まらない。

 

「泣くほど嬉しいのか。そうだろう、そうだろう……では高貴な種をくれてやる……!」

 

 男は勝手に勘違いして、ぶくぶくと肥え太った豚は私を抱きしめ、その体重で押しつぶしながら腰をさらに激しく振りはじめる。痛みは増すばかりで、口からは悲鳴しか出てこない。引きはがそうにも掴むところがない。息もまともにできず、苦痛ばかりが重なっていく。

 

「ぬ、ふぅっ!」

 

 豚が体の上で震える、体の中に打ち込まれた杭も震えて、体の中に生ぬるい液体が放たれるのを感じた……子供を作る元が、体の中に……豚の子供が、私に?

 ……もう悲鳴を上げる体力さえない。ただただ、身に降ってきた不幸な現実に沈む。

 

「ふぅー……まだ終わらんぞ」

「……へ?」

 

 うつぶせにひっくり返されて。尻を持ち上げられる。豚の肉棒はまだ硬いまま、たらたらと先から白濁汁を垂らしながら、もう一度入り口に押し付けて、中に入れようとしている。血とその液体で濡れた肉棒は、私自身の意思とは関係なしに、一回目よりも簡単に入ってきた。

 無理やり引き裂くようにこじ開けられるよりは、肉体的にはマシかもしれないけど。心はすでに襤褸布のように引き裂かれている。

 

「ふん!」

「あ゛っ……!」

 

 後ろからまた子宮<内臓>を殴られる。たまらなく苦しい。たった一突きで息を吐ききってしまったのに、腰を引いてまた一突き、もう一突き。休むことなく前後運動で内臓を殴られ続ける。反り返った棒がさっきの体勢と違う場所を擦るせいで、ようやく痛みに慣れてきたと思ったのに、違う場所が痛むせいで慣れがリセットされた。

 かと思えば、一番奥まで突っ込んだまま腰を揺らして、腹を揺さぶってくる。

 

「どうだ、気持ちいいだろう……他の女はみんなこうされると喜ぶんだぞぉ」

「は、ぃ゛……」

 

 肺に残ったわずかな空気を絞り出すように声を出す。もちろん気持ちいいはずがない、内臓をこね回されてただただ気持ち悪い……これを気持ちいいと思うなんてどうかしている、ほかの人も絶対そう言わされていただけなんだろう。

 

「私ばかりが良くなっては女性にも悪いからなぁ……私は優しいだろう? なぁ」

 

 尻をパシン、と叩かれる。痛みはそれほどではないが、屈辱感がさらに増す。歯を食いしばり、苦痛に耐え、シーツを思いきり握りしめて、とにかく早く終わるように祈る。

 

「ッ、あ゛りがとう……ござい、ます……!」

 

 心にもないことを吐き気といっしょに零す、でも内臓を殴られ続けるよりは多少マシなのは確かで、息をする余裕も出てきた。同時に、周りを気に掛ける余裕も……衛兵が見ている。目が合った。目を逸らされた。股間の布地を膨らませている。

 目をそらす罪悪感があるなら助けてくれればいいのに。なんて思っていない。必死でぶひぶひと鳴きながら腰を振っている豚は、この国の最高権力者だ。意見するのは命を捨てるのに等しい。命を捨ててでも助けてほしい、なんて願うのは傲慢なことだ……でもせめて、一抹でも罪悪感があるのなら私が壊されるところを見ないでほしい。

 

「あー……いい締りだ。出る」

 

 また、腹の中に生ぬるい液体が放たれた。もう何とも思わない。

 ずるりと引き抜かれて、手も離されて。支えを失った下半身がベッドの上にどさりと落ちた……拷問に疲れ果てて動けない私の口に、血と臭い汁の混じった肉棒の先を押し付けられた。

 

「ほれ、お前が汚したのだから、きれいにしなさい」

「……」

 

 望まれたように。何も考えず、ただくさい、汚いとだけ感じながら、先だけを舐めてきれいにした。痛みや苦しみに悲鳴を上げるのに体が疲れて、ごちゃごちゃな感情で頭が疲れて。ぼうっとしてきた。

 指の一本を動かす体力さえない。

 

「葉巻を」

「はっ」

 

 隣に座った豚がくさい煙を吐いている。

 

「すぅー……はぁーーー……不味いな。最近葉巻の質が落ちていないかね?」

「はっ、申し訳ございません。生産者を厳しく処罰いたします!」

「そうしなさい。まったく甘く見ていればすぐに手を抜く……これはさらに締め付けが必要だな」

「は! おっしゃる通りでございます!」

 

 何かしゃべっているが、どうでもいいことだ。

 

「ふぅー……」

「申し訳ございません、灰皿を忘れておりました! 直ちにお持ちします!」

「……いや、かまわん。ここにある」

 

 じゅう、と背中に激痛が走った。

 

「づぁあ!!! ああぁああっぁづぃぃぃ!!」

 

 悲鳴を上げて、手足をばたつかせる。そんな体力は残っていないかと思っていたが、暴れねばならないと本能が体を動かした。背中に押し付けられた葉巻の熱はすぐには消えない。消えるまで、さらなる拷問を耐えねばならなかった。

 

「どうせ傷だらけの体だ。一つ増えてもかまうまい。お前もそう思うだろう」

「……はっ! その通りです!」

「ふっ……しかし、たまには芋臭い娘も悪くないな。おいお前、これからも呼び出すことがあるだろう。いつ呼び出されてもいいように常に体をきれいにしておけよ」

「………………」

「返事をせんか」

 

 尻を叩かれて、ようやく了解しました、と小さく枯れた声を絞り出す。これで本当に、体力を使い果たした。頭は一秒でも早くここから逃げ出したいのに、指一本を動かすことさえ億劫だ。

 

「今日はもう用済みだ。足も立たんだろう、連れていけ」

「はっ!」

 

 ぐったりとした体を持ち上げられて、部屋から連れ出される。裸のままだけど、そんなことは今さら気にならない。もうとにかく眠たい、寝てしまおう。眠っている間は、こんなクソみたいな現実を忘れられるから。

 

 

 ………………目がさめたら、見慣れた天井と、泣きはらして目を真っ赤にした妹の顔が見えた。

 

「……!!!!」

 

 目が合ったら、余計に泣き出して、涙と鼻水で顔をぐちゃぐちゃにしながら縋り付いてきた。泣き声ばかりが耳に入る……聞きたいことがあったけど、泣き止むまでは仕方ないからかわいい妹の頭をなで続けてあげた。私の大事なスネジンカ……悲しませてごめんね。と。

 

 泣き止んで、話を聞こうとしたら、私を迎えに来た男、私が犯されるのをずっと見ていた男が部屋に入ってきた。

 

「……!」

 

 つい、ピストルを探す。枕元にはなかった。

 

「貴官がのんきに寝ている間に、連合国が侵攻を再開した。部隊は既に交戦を開始している。速やかに装備を整え、出撃せよ」

「……」

 

 あんな目にあったばかりで出撃命令。罵倒の言葉を百個並べたててもまだ足りない……でも私が出なければ代わりに出撃させられるのは妹だ。

じゃあ自分が行くしかない。戦場に出て、出撃して、自国の兵士の脳を積んだ機械兵を破壊する。戦死できればまだ幸運。うっかり捕虜になれば脳みそだけを取り出されて機械の兵士に積み替えられて、昨日まで守っていた祖国を侵略させられる。

 かといって任務を果たして戻れば豚の慰み者。どう転んでもこの世は地獄か。いっそ死んだほうがマシかもしれない。

 

「お姉ちゃん……」

「……」

 

 妹を見る。この子を守れるのは私しかいない。守らなきゃ。

 

「了解しました」

「これは預かっていた貴官の装備だ。準備を終えたら声をかけるように」

「はい」

 ないと思っていたピストルが男から手渡される。そういえば宮殿に入るときに入り口で預けた記憶がある。

 重い鉄の塊を受け取って、ベッドの上で習慣となった確認動作を行う。マガジンを抜く。弾は全弾入っている。スライドを引いて、引っ掛かりがないのと薬室内が空なのを確認。

 マガジンを戻して、弾丸を装填……

 

「受領いたしました、着替えてきます」

 

 妹に待たせている間にお茶を用意するように頼んで、股が痛む、内臓が痛む。一歩歩くたびに体に刻まれた凌辱の記憶がよみがえる。

 

 痛みと脳裏によみがえる豚の姿を堪えながら、装備を整えた。戦闘服とアースの装備、武器に接続し終えて、男の待つ部屋に戻る。

 

「……!!」

 

 妹のスネジンカが、男に抑え込まれて暴れていた。口を口で抑えられて。怒りが沸騰する。無言でナイフを抜いて駆け寄り、男の脇腹に全力で突き刺し、抜いて、首を切って蹴り飛ばした。訓練で習った通りの、静かな動きができた。まさかこんな形で実践することになるなんて思わなかったけど。

 銃を使わなかったのは妹への誤射を避けるためだったけど、銃声よりはまだ誤魔化しやすいから正解だったと思う。

 

「あぁ……やっちゃった」

 

 ……それから冷静になって、自分のやってしまったことを後悔した。味方殺しだ。いや別にそれはいい、機械兵だって元々は同じ国の兵士だ。ある意味では味方殺しは慣れたもの……だがこれは全く言い逃れのできない反逆行為だ。形の上では妹(女性)を襲う暴漢を殺した勇敢な姉(兵士)、勲章を贈られて称えられるほどの全く正当な行為だけど、相手がまずい。最高指導者の側近を殺したのだ。どれだけ正当な理由を叫んだところで銃殺刑は間違いない。

 ……逃げるしかない。どこに? 国内はだめだ。虱潰しに探されて、いずれ見つかる。自分が不穏分子たちにそうしてきたように。

外国は? 捕まれば待っているのは脳を取り出されて機械兵にされる、死ぬよりひどい結末。でも、捕虜としてではなく、国境を越える亡命なら? 幸か不幸か、特殊部隊に入ってから機密に触れる機会は多くあった。なんなら強力な武器だってある。この国は周辺国よりも民生技術は遅れているが、軍事技術だけは高い。最新兵器を持っていけば、即殺されるようなことはないだろう。たぶん。

 それに賭けるしかない。

 

「スネジンカ、行こう」

「え? ど、どこへ?」

「ここじゃないところへ!」

 

 男の死体から使えそうなものを漁って、男の乗ってきた車にありったけの武装を積み込んで。なんとかなれと祈ってエンジンをかけて走り出す。

 明日がどうなるかなんて知らないけど、もう底は見た。あとはよくなるしかないだろう。

 




この小説の原作は、スチームで販売している「溶鉄のマルフーシャ」というゲームだよ!とってもお買い得で、シンプルな作りなのに奥深い、長く楽しめるゲームだよ!

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