下手な考え休むに似たり。
大体はそんなもの。
でもま、人間万事塞翁が馬。
なるようになるもんです。
カリギュラ効果、というものがあるとか。簡単に言えば、禁止されると何故か興味がわく……みたいなことらしい。してはいけないという明確な理由があると、却って逆らいたくなるのだとか。
そう、確かにあると思う。私が大喜くんに向ける気持ちが、まさにそれだ。
居候先の子で、将来のあるバド部員で、クラスメイトに思いを寄せられていて。手を出してはいけない理由倍率ドン、数え役満だ。
私からグイグイ行ったらここの家族とも気まずいし部活への集中も落ちるだろうし、あと蝶野さんが泣く。これはまあダメだろうな、と分かってはいるんだけど。いるんだけど、我慢できるかどうかは分からない。
カリギュラ効果を差っ引いても、大喜くん可愛いし。バカで可愛くて、もう可愛い。そんな可愛いのが隣の部屋にいて、鍵も無いと来た。そりゃ、まあ。興奮するどころの騒ぎじゃないし、理性がゴリゴリ削られていく。
ああ、どうしようか。
お風呂空いたよ、と不意打ちで部屋を開けるのは楽しい。毎日やってるけど、毎回大喜くんはビクッとなって可愛いったら。まあタイミング自体は分かっているだろうし、決定的瞬間を目撃してしまった事はない。男の子だし頻繁にオナニーもしてる筈だけど、その辺はなかなか尻尾を掴めないのが不思議。それとも渚が話を盛ってただけで、そんな頻繁でも無いんだろうか。ま、良いけどさ。
大喜くんがお風呂入りに一階へと降りるのを物音から察して、そっとそっちの部屋へと忍び込む。まあバレたって、ジャンプ借りに来たとか言えばすむ話だ。だって大喜くん、バカだから。その辺はどうにでもなる。
間取りは同じだし特別なものがあるわけじゃないけど、これがまた止められない。こっそりと隠してあるえっちな本を確認したり、枕の匂いを嗅いでみたり。大喜くんの男の子な一面を、覗いてみる感じ。……まあ実際侵入して覗いてるわけですが。にしても大喜くん、ガッツキがないというか穏やかというか。下手したら私のコレクションの方が過激かもしれない。基本的にそういう欲求が薄いんだろうか、やっぱり。しかし大喜くんがガツガツ来たら、それはそれで可愛く無いか。
あまり長居しても気が引けるし、そろそろ引き上げようかと思ったその時だった。
テーブルに置かれたままのスマホが元気に音を立て、思わず身体が強張ってしまう。なんてタイミング、と画面を見るとLINEの通知。相手は――蝶野さん、か。うんまあ、二人仲が良いのは結構な事だ。そりゃね、うん。
でも、それでも。なんか、モヤッとしてしまう。大喜くんは私のモノでもないんだけど、さ。
整体院で話す蝶野さんは、最近いつも幸せそうだ。大喜くんと上手く行っているらしい、デレデレ顔。良かったね、と思うけれども。けれども、ね。うん。鞘当てのつもりなのか単にアホなのか、この子もまた難しいな。ここまで嬉しそうだと、逆に曇らせたくなってきたりするんだよね。良くないことだけど。
大喜くんも大喜くんで、ナマイキにも色気付いて来ているようだ。このままいくと、そろそろ蝶野さんと一線を越えるかもしれない。でもそれはちょっと早いかもよ、大喜くん。不器用でバカなんだから、突っ走らない方が良いと思うんだけど。
さて、どうしてあげようかな。邪魔するのも気が引けるけど、だからこそちょっかい出したい。ダメだと分かっているから、やってみたい。ワルイコトは、魅力的だからね。とは言え二人を強引に引き裂くのはつまらない、もっと楽しもう。多少ギクシャクさせて自然消滅させるくらいがいいかな、私が悪者になっちゃうと嫌だし。
そうだ、大喜くん相手なら――
「あの、千夏先輩、なに……をっ」
真っ赤になって顔を背ける大喜くん。無理もない、だって私は殆ど裸、鹿野千夏ネイキッドフォーム。この姿で肌を寄せているんだから、そりゃねぇ。もし無反応だったら、それはそれで蹴るけどさ。ま、大喜くんは健康な男の子ですからね。
「んー、ちょっとね。蝶野さんと最近良い感じらしいじゃない?」
「あ、いや……それ、は」
口を濁しながらも、表情は微妙に緩んでいるのが可愛い。大喜くんは、幸せなんだ。だからこそ、付け入る隙がある。
そういう時にはガードが甘くなるし、誘導にも引っ掛かりやすいんだ。そういうのは得意なんです、伊達や酔狂で女子やってるわけじゃない。……まあ女子力とか全然ですけど。下手したら私より大喜くんの方が萌え系ですけど。
「でもさ、言っちゃなんだけど大喜くん不器用でしょ。あと結構なおバカさんだし。突っ走って蝶野さんに迷惑かけたりしてないかなーって」
笑顔でザックリ、さすがに項垂れる大喜くん。でも反論しない辺り、自覚はあるみたいだ。自覚してれば良いって話じゃないけど。
「だから、さ。おねーさんが色々教えてあげやう、て話なのよ。大喜くんそういうの好きでしょ、隠してある本そういうのばっかだし」
そう、大喜くんってば年上に翻弄される系が好きらしい。その手のえっちな本、堪能させていただきました。過激さは今一つだったけど、参考にはなりました。ええ、なりましたとも。それに大喜くんがなかなか蝶野さんと一線を越えられないのは、やっぱり経験不足が気になるんだろう。男の子だから、リードしてあげなきゃって思ってそうだし。
そこを刺激してあげれば、直ぐに落とせる。それに人間、気持ちいいことには逆らえないものだ。
要は罪悪感を背負わせてあげれば良い、勝手にギクシャクしていくだろう。問題としては、私も全く経験がないってことくらいだ。……一応お勉強はしたから、多分どうにかなるだろう。きっと。
「ほら、大喜くん。触ってみて」
さらけ出した胸に、大喜くんの手を導いてあげる。おっかなびっくりな仕草が可愛らしい。バドで酷使しているせいかその手は意外とゴツゴツしていて、でもそれが逆に心地良い。
顔を真っ赤にしながらも、大喜くんは夢中でなで回してくれている。お互い一糸纏わぬ姿だから、興奮しているのが良く分かる。だって男の子の、……オトコノコが。大喜くんの一番大事な場所が、まるで別の生き物のように猛っている。
触ったりはちょっと怖いから、そっちにはいかないように話を誘導していく。
「優しくなら、揉んでも良いからね。強くすると痛いから、気を付けること」
「あ、は……いっ」
ふにふにと遠慮がちながらも、言われた通りにしてくれる。揉むほどあるかって言われると微妙だけど、それは蝶野さんだって同じだし良いだろう。
誰かに触られて気持ちいいなんて、感じたことはなかった。まあ触られる事がなかったけど。渚とかがふざけた時くらいかな。でも、大喜くんの手は中々良い感じだ。
息を荒げてきた大喜くんの顔を、そっと撫でてみる。ああ、キスしたい。でもさすがにそれは、ちょっとなあ。気持ちが蝶野さんのモノなんだから、それは良くない。キスは恋人同士でするものだから、今はダメ。この先蝶野さんと拗れて失敗したあとで、私のモノになってからにしよう。
全くいけないな、魔性の女じゃないか私って。
さてと、ここからどうしようか。これから何日も時間をかけて色々教える気だけど、今日は一先ず最後まで通してみようかな。私としても、勢いでなんとか初めてをクリアしてしまいたい。あれこれ聞いた感じじゃ、躊躇わないで一気にする方が良さそうだし。
大喜くんの手を取って、そっと押し下げていく。胸をすぎ臍を抜け、腰を通り越し。
――そして、その先へ。
「大喜くん、分かるかな? これが、……オンナノコ、だよ」
指先を押し当てさせて、その感触を味わっていく。自分以外の指なんて、触れたことがない場所。そして大喜くんにとっても、多分一度も触れたことがない場所。そこを触れられる/触れる感触を。
洗い息遣い、モゾモゾと動く腰。大喜くんが、興奮している。もちろん私も。
大喜くんの指に私を擦り付けていくと、頭の芯が痺れていく。いやでも、それは良くない。私は大喜くんに楔を打ち込む為、こんなことをしてるんだから。
蝶野さんを裏切らせて、少しだけヒビを入れてあげる。小さなヒビは放っておくだけでどんどん広がり、やがては二人を引き裂くから。私は何も悪いことはしない。大喜くんを、愛してあげるだけ。
夢中になるのは、モノにしてからで良い。
スッと大喜くんから身を離し、ベッドに腰を下ろす。
足を開いて、更に手で私自身を割り拡げ。大喜くんに全てを、さらけ出す。
「ほら、ここね。……ここに、入るんだよ?」
顔から火が出るほど恥ずかしいけど、それは置いておく。それよりもっと、大事なことだ。大喜くんを落とすためには、ここからだ。
「じゃぁ、ちょっとじっとしててねー……」
大喜くんのオトコノコに、コンドームを押し当てる。一応は保体で習ってはいるので、とりあえず使い方は分かる。触るの怖いから、出来れば自分でつけて欲しいけど、雰囲気がねぇ……。
「蝶野さんに悪いから、ね。生でしたら浮気だもん」
いや我ながらメチャクチャな話だけど、大喜くんは惚けた顔のままツッコミを入れてくる気配はない。今の大喜くんじゃ頭が回らないか。でも後になってから気付いて、罪悪感で潰れそうになるんだろうな。それが目当てだけど。そのまま蝶野さんと付き合っていけば、多分数ヵ月持たずに破綻する筈だ。
その間、私はニヤニヤしながら生暖かく見守らせて貰おう。
さて、だ。
「おいで、大喜くん」
手招きしながら、笑顔の裏で覚悟を決めて。
そのまま、そのまま。私は大喜くんを、受け入れた。
「……、ぁっ」
お腹の奥へと異物が突き抜けていくんだから、当然痛くて苦しいと思ってはいた。でも正直、予想とは全く違う。痛いとかじゃなく、熱い。灼けていく、という不可思議な感覚。普段のオナニーとは、明らかにベクトルが違う快感。
これはなかなか、スゴいかもしれない。
一方の大喜くんも、明らかに表情が蕩けている。私の中が、気持ちいいという事なんだろう。……どうしよう、喜ぶべきなんだろうか。良いことなんだろうけど、なんだか戸惑う。
「あ、先輩、ぅあ……っ」
大喜くんが上げた声に、ドキッとした一瞬の後。ガクガクとその腰が震え、私の中にいるもう一人の大喜くんもまた痙攣したのが感じられた。
これ、は。もしかして。
「大喜くん、今射精した?」
「は、……い、ごめ、なさ……ぃ」
荒く息を吐きながらもたれ掛かってきた大喜くんを支えながら、ちょっとだけ小突いてあげる。
ほんの数分、それだけだった。せっかくの初めてなのに、まったくこの子は。
「まあ、仕方ないよね。蝶野さんとうまく出来るように、これから鍛えてあげるからね」
頭を撫でてあげつつ、心の底でほくそ笑む私。
これでこっちの仕込みは良いだろう。後は、あっちだ。
大喜くんの事なんだけどさ、と声をかけたら物の見事に蝶野さんは引っ掛かってくれた。……この子も相当なバカだからなぁ……。ちょっとした口実で私を家にあげてしまう辺り、果てしなくポンコツだ。
「大喜くんねー、知ってるだろうけどドMなんだよね。あと、女の子にリードされたいタイプみたいだよ」
嘘は言わない、ただオブラートで包まないだけで。
大喜くんが退くくらい蝶野さんを淫らに開花させてあげたら、二人の破綻も加速する筈だ。大喜くんは女の子に夢を見ちゃうタイプなんだし、ガツガツ行かせればきっと失敗する。……多分。
「だから、ね。私が大喜くんをリード出来るようにしてあげるね」
蝶野さんはすぐにその意味がわかったらしく、真っ赤になってしまった。
どう考えても、そういう経験がありそうなタイプじゃない。と言うか絶対無い。そうでもなければ、あんな可愛い大喜くん相手に我慢なんか出来るわけ無いし。
だからこそ、そこに付け入る隙があるんだけどね。
「でも、あの……。私は大喜が好きなんで……」
言いたいことは分かる。そりゃ初めては大事ですから。
だからこそ、私はそこを悪用しようと言うのだけれど。
「ああ、平気平気。女の子同士なら浮気にならないから」
「えあ、なるほど! さすが千夏先輩」
何がさすがなんだか、と言うかこれを信じる辺りやっぱり大喜くんレベルのバカなんだなこの子。
額に小さく、キスをする。
左の瞼、鼻、右の頬と唇を下ろしていくと、蝶野さんの身体が一瞬震えた。
「大丈夫、ここは大喜くんに残しておくからね」
唇を避けて顎へとキスしてあげると、ホッとしたような息が漏れるのが感じられた。
そのまま服を脱がせながら、更に下へ。鎖骨を舐め下ろし、脇にも舌を這わせていく。
僅かな汗の匂いと、どこか甘い体臭。女の子、って感じ。まあ私も女子ですけどね、一応。なんだか蝶野さんは私よりずっと女子女子してて、どこか悔しい。大喜くんにあげるのも惜しい気がする。
私より、……少しだけ小振りな胸にキスを当て、その感触を味わう。もっと味わいたい、その欲望のまま先端に吸い付いて、そして指先だけ更に下を目指して進軍開始。
下乳をなぞって脇腹をかすめ、お臍をなで回し、そして。
「っぁ、そ……ダメぇ……っ」
内腿を指で擦りあげ出した辺りで、蝶野さんが切なげに呻きをあげた。でもそれは本気の拒絶じゃない、そんなのはすぐにわかる。だって蝶野さんは、悦んでいる。身体の全てで、悦んでいる。
ショーツを脱がせ隠されていたその悦びの源泉に、ゆっくりと優しく触れてあげる。形をなぞり、指を食い込ませ、そしてかきむしるように。一つ一つの動きにあわせて蝶野さんが喘ぎをあげてくれて、とても愛しい。ああ、この子も可愛いな。大喜くんより、蝶野さんがいいかも。でもなあ、それは良くないか。
とりあえず、そういうのは後にしよう。今は、蝶野さんを目覚めさせる事だ。大喜くんが退くくらい、えっちな子にするんだ。
薬指と人指し指で押し開いて、中指で蝶野さんの内側を浚渫する。湿りきった肉が指に絡み付き、私のよりも粘度が強い愛液がグチュグチュと音を立てるのがとても淫靡だ。
顔をあげて赤く染まった首にキスをすると、その快感に溺れきった顔に見とれてしまう。可愛いんだよなぁ、本当に。どうしよう。
「ん……っ」
一度引き上げた手は既にドロドロで、舐めてみると蝶野さんの味が口一杯に広がる。あまり私が熱くなってもいけないのに、これは美味しすぎる。そろそろこの辺で終わらせないと、本気になってしまいそうだ。
改めて下ろした指を肉の谷間に食い込ませ、小刻みに震わせながら。その上にある今まで放置していた肉の芽を、爪で引っ掻きあげた。
「ー、え"あ、あ"ぁ……」
低く太めの、所謂オホ声を上げて。蝶野さんの身体が痙攣し、一拍置いて全身が弛緩し私にしなだれかかる。蝶野さんが、イッたんだ。私の、指で。これからもっと、色々教えよう。大喜くんが着いてこられなくなるくらいに、加速させてあげよう。それで二人が不協和音を起こしても、それは二人の事だ。私は悪くない。
どうせなら別れた後、この二人と二股かけようかな。外道だけど。それはそれで面白そうだし。
さて、どうしようかな。
それから数ヵ月が過ぎて。大喜くんはどんどんセックスがうまくなり、蝶野さんはどんどん快感に貪欲な子になっていった。私の思い通りに。
ただ目論見が外れたのが、この二人の相性というかバカさを甘く見ていたって事だ。
直進バカの大喜くんは、私にセックスを教わったことを全部蝶野さんに話してしまった。そして蝶野さんも、私に開発されてえっちな子になったと打ち明けてしまった。私は悪役どころかキューピッド扱いで感謝され、いつの間にか二人から尊敬される身になっていて。
今日も二人は、私に見守られながらセックスに励んでいる。時々は私も混ざるけど、なんだか引き立て役みたいな気がして釈然としない。
どこで間違えたんだろうか、こうなる筈じゃ無かったんだけど。
まあ、――良いか。
これはこれで、悪くない。