妖怪の山の中腹、九天の滝近くに、慰安所と呼ばれる施設がある。木立に囲まれるようにあつらえられた、土蔵じみた建物だ。
天狗の公共事業として運営されているので、大天狗たる龍も、存在は知っている。ただ己の管轄ではないので、足を踏み入れたのは今日が初めてだった。
ガワは立派ながら、待合室は雑然としている。隅には資材用の木箱やらが積まれ、椅子やストーブは古ぼけて生活感を漂わせている。薄暗いのは、窓がほとんどなく、天窓と蝋燭で採光しているためだ。ほんのりと生臭い香りも漂っている。設備の用途が用途だけに、むべなるかなといった話ではあった。
「これはこれは。飯綱丸様。本日はどういった御用向きで?」
「ああ。今日は慰安所の稼働日だろう? 慰安役の飛び入り参加はできるか?」
受付用の呼び鈴を鳴らすと、管理人が大儀そうに顔を覗かせる。顔がむくんでいるのは、居眠りでもぶっこいていたか。龍を見るなり、半開きだった目を見開いてすっ飛んできた。脂で弛んだ顔に、緊張を浮かべている。
大天狗ほどの上役が現場に顔を出すのは稀だ。まして直接の所管でもない、別部署のお偉方が来たとなれば、面倒ごとの香りを嗅ぎ取るのも無理はなかった。
「それはむしろこっちからお願いしたいくらいですね。参加者の男連中はともかく、慰安役のほうは人手がとにかく足りないので。ちなみにどなたです? 飯綱丸様のとこの管狐ですか?」
「いや。典は今日は非番だよ。参加するのは私だ」
「は?」
アホ面とは、今の彼の表情を指すのだろう。瞳に、やっぱり面倒ごとだと嘆きの色が浮かぶ。同情できる。慰安役と呼ばれる職務の立ち位置を考えれば、大天狗が参加したがるなど異常事態なのだから。
天狗社会は閉鎖的だ。あえてそうしているとはいえ、色々問題も出てくる。たとえば構成員の統制だ。狭いガチガチの上下社会で、娯楽も少ないとあれば、下っ端連中は不満を溜め込む。こっそりと山を抜け出しては、他種族にちょっかいを出す輩が現れ、問題になった。
見かねた天魔はガス抜きのためにひとつ制度を設ける。つまり、慰安所であり慰安役だ。遠回しな言葉で呼ばれているが、要するに公営の精液便所であり、性処理のため使われる女達のことだ。人手が足りないのも当然だ。なりたがる者がいないのだから。
「ご存じかも知れませんが、慰安役は勤務中、自身の貞操に関する一切の権利が停止されます。飯綱丸様といえど例外ではありませんが」
「もちろん知っている。構わないとも」
堂々と応えた龍に、管理人は正気かコイツとばかりの視線を向ける。慰安役の仕事は、命令違反者などへの罰として課される労役だ。やりたくてやるわけではないのが前提なのだ。
龍とて、少し前まで、興味などまったくなかった。きっかけになったのは、ちょっとしたスランプと、部下のアドバイスだった。
大天狗は相当な位であり、多くの者に命令する立場だ。他人を陥れたり虐げたりもする。夜の生活も「上」が基本だ。龍も、適当な男を見繕っては閨に呼び、泣くまで搾り取って弄んできた。
なのに、どうにも満たされない。近頃はとみに、その傾向が強くなっていた。夜ごと、オナニーの回数が増えていく。火照りのせいで熟睡できず、仕事にも支障が出始めた。
転機となったのは、典の囁きだ。
――それは飯綱丸様がご自身を理解できておられないからですよ。あなたは本当は、虐げられる側に回りたいと思っているのです。
発想の飛躍もはなはだしいが、本人の胸には妙にすとんと落ちた。ではどうすれば良いのだと尋ね返すまでに、さほど時間はかからなかった。典は人好きのする、しかし信用しきるには危うい笑顔をにんまりと浮かべた。私めにお任せくださいと太鼓判を押した。
そうして、今日に至る。誰からも虐げられる存在になろうとしていた。
「はあ……では、そうですね。まずここで服を脱いでいただけますか。上から下まで全部」
「今? お前の目の前でか?」
管理人はいまだに困惑しているらしかった。が、腹をくくったか、瞳の色を変える。
冷たく無感動な、両生類じみた目つきだった。相手を上司と、なんなら人と思っていない目だ。龍の反問に対しても、何を言っているのだ、とばかりだった。
「ええ。慰安役全員に課していることですので、飯綱丸様だけ特別というわけには」
口調も淡々としていた。先ほどまでとは大違いだ。オンオフがはっきりしているタイプなのだろう。どうせ無理ですよね? と挑発された気分だ。そういう言われ方をすると、発憤するのが龍だった。
「いいだろう。よく見ておけ。私の裸など、滅多に見られるものじゃないんだから」
衣装に手をつける。えいやと、肌を晒した。
古くから、天狗といえば人ならざる者の代表格だ。人間には扱えない術や優れた身体能力ゆえだった。
もちろん、顔立ちもだ。龍の場合は特に秀でていた。艶めく藍色の髪と、知略を感じさせる切れ長の二重瞼、深緋の瞳。すっと通った鼻筋に、小鼻はつんと上向いて気位の高さを感じさせる。肌には染みの一つもなく、照り輝くかのようだ。ぷるんと瑞々しい唇などは、あらゆる男に接吻の欲求を催させる。
ボディも負けていない。基本的に、鴉天狗にはスレンダーな者が多い。が、飯綱丸は柔らかで、むっちりとした肉付きをしていた。大天狗はデスクワークが中心だからだ。
とはいえ、太っているわけではない。多忙な中でも速く鋭く飛ぶ鍛錬は欠かしておらず、筋肉は失われていなかった。その上から、適切量の脂が乗って、女として非常に魅力のあるダイナマイトボディとなっていた。
首筋は存外しっかりしており、胸鎖乳突筋が浮かんでいる。左右へ優雅に伸びる鎖骨と僧帽筋が、上体におけるランドマークの一つとなっている。
乳房は豊満だった。軽くGカップはあるだろう。ずっしりと重たげで、中身の詰まったたたずまいだ。重力に引かれて、先端はわずかに下向いている。醜く垂れているのではなく、自然な美を演出している。
乳輪はバストサイズ相応に広く、やや盛り上がっていた。良く手入れされており、モントゴメリー線のブツブツが姿を覗かせたりはしていない。
反対に、乳頭は埋もれ気味だった。すっかり陥没しているわけではないが、形の整ったバストにおいて、ある種の「欠け」となっている。それがむしろ、完璧すぎない魅力を生み出していた。
ウェストはむっちりして、女としての美しさをたっぷりと湛えている。ここが龍を凡百の鴉天狗と分かつポイントだった。皆、飛ぶために脂を落としすぎている。ともすれば、むやみやたらと筋肉質になっているのだ。
もちろん龍も、ただ贅肉を溜め込んでいるわけではない。柔らかな曲線を描きながら、ほんのりとくびれた腰だった。
骨盤はかなり広い。記者時代はもっと少し控えめだったのだが、昇級し座り仕事が増えるにつれ、顕著になった。安産型の、安定した下半身を形作っている。
三角州には、髪色をもうすこし深くした縮れ毛が茂っていた。短く刈られ、三角形にしっかり揃えられている。天狗社会の上位に立つ者として、身嗜みはきちんとせねばならないと考えていた。
陰唇は花開き、爛熟していた。食虫花を思わせる、妖しげなたたずまいだ。もともと天狗は好色な種族なのだ。龍は特にそうだった。夜の営みにおける経験値を感じさせた。
鳥をルーツにもつ妖怪なだけあって、腿には確かな筋肉がついている。上から脂が乗り、むしゃぶりつきたくなるセクシーレッグとなっていた。本人としては、もう少し細くても……と思っている。
「ふむ。問題なさそうですね」
美貌も相まって、むせ返るセックスアピールを漂わせる身体だ。大抵の男は勃起し、無様に性交を乞うてくる。
管理人もそうなるに違いないと思っていたのだが、予想が外れた。淡々とした口調と声色だった。インポなのかといえば、そういうわけでもないらしい。視線には確かに性欲が浮かんでいた。ただ、瞳のさらに奥には、冷え冷えとした侮蔑が込められていた。
困惑する。大天狗となって以来、そうした目つきと縁遠かった。が、そのせいではない。あきらかに見下されているにもかかわらず、腹の奥に熱い疼きを感じていたのだ。
そして同時に、納得もする。典が言っていたのはこういうことかと。
「念のため後ろを向いていただけますか」
「あ、ああ」
本来であれば、彼がこちらの後ろに回るべきだ。が、その発想が出てこなかった。字面だけは下手に出ていたが、有無を言わさぬ声色だった。従わねばと、己の内の何かが主張していた。
くるりと、彼に背を見せる。潤いある濡れ髪から覗く白い背中は、世の男性垂涎の代物だ。が、男の目はもっと下へ向けられていた。
日々の座り仕事で、臀部は豊かに育っていた。肉をたっぷり蓄えた安産型のフォルムで、ムチムチとした双山を形成している。それでいて、しっかりした大臀筋のお陰で、垂れることもない。洋梨型でプリップリッとした、まさに魔性のヒップだった。
「慰安役は問題なくこなせそうですね。では、マスクを着けさせていただきます」
気弱な者なら見ただけで射精に導かれてもおかしくないのだが、男は変わらず平然としていた。資材入れの木箱から取り出したのは、真っ黒な布切れだ。口元にだけ穴の開けられた覆面、いわゆる全頭マスクだ。
天狗社会は罪人に厳しいが、正しく罰さえ受ければ赦す慈悲も持ち合わせる。後の生活に影響が及ばぬよう、慰安役はマスクで顔を隠し正体を伏せることが認められていた。
同時に、受刑者への罰でもあった。五感のうち視覚がもっとも大きな位置を占めるのは、天狗とて変わりない。何も見えないなかで、顔も分からぬ男どもに弄ばれる恐怖は、反省を促すにはお誂え向きだった。
被せられる。目が塞がれ、なにひとつ見えなくなった。
顔は、自己同一性を成り立たせる最大の記号だ。それをすっぽり覆われ隠されるのは、人間性を剥奪されるにも等しい。必要なのは、しゃぶらせる口と、首から下。今からモノとして扱われるのだと理解する。
「はは……」
腹の奥に熱を感じる。乳房の先端が、充血し始める。久方ぶりの充足感だった。
管狐たる典の言葉を全面的に信頼するのは危ういけれど、今日ばかりは信じていてよかったと思う。なるほど、自分は確かに、虐げられるのを望んでいたらしい。
「ふむ。コレは中々……」
男は龍の周りをぐるりと周り、全身を眺める。舐めるようなとは、まさにこうした視線を指すのだろう。
「それで? 次は何をするんだ?」
ゾワゾワと、下半身から昂ぶりが上ってくるのを感じながら問う。途端、男からの侮蔑の念が強まった。
「ペッ」
頬のあたりに、なにか汁をかけられた。布越しに、生暖かさを感じる。唾を吐きかけられたのだ。
「何を勘違いしてるんだか。マスクを着けた時点で、お前の権利は停止されている。お前は今、大天狗の飯綱丸龍様ではなく、性処理用の慰安役、便女五号だ。分かったら返事しろ、五号」
心底、見下しきった声だった。相手を虫か何かだと思っていなければ、とうてい出ない声色だ。
鴉天狗の大将に対して、なんと不遜なのだろう。だが、きちんと故があった。男も口にしたとおり、今の彼女はもう、飯綱丸龍ではない。惨めな便女五号なのだ。
「あは……それは。申し訳ございませんでした」
こうまで酷い扱いを受けるのは、いったいどれほどぶりか。下手すれば三桁年、味わってこなかった。高い高いプライドが、屈辱に煮えたぎる。一方で、もっと辱めてほしいと感じる自分もいた。
被虐心に酔いしれる龍をよそに、男は淡々と――目の前の虫けらに時間をかける価値などないとばかりに――支度を進める。
つんと上向いた形良い小鼻が、ぐいと歪められる。鼻孔に鉤が引っかけられ、引き上げられたからだ。いわゆる鼻フックだった。鼻筋が豚のごとく醜く歪められる。
見ておらずとも、鼻腔に視線が注がれていると分かる。ねっとりと、精液を流し込まれているかのようだった。
普段はまず意識しないが、見られて恥ずかしい部位なのは間違いない。羞恥に、顔が火照っている。何より、自分が今どんな醜い顔を晒しているか考えると、もう欲情が抑えられなかった。
「あぁ、あぁ、ああ……」
「ソレを着けたからには、もう日頃のように、偉そうに振る舞うことは許されんぞ。分かったか牝豚?」
「はい、承知いたしました」
高圧的な物言いだ。慰安所の管理人など端役も端役で、大天狗相手にこんなぞんざいな口をきける立場ではない。だからこそ良かった。ありえないくらいの格下に踏み躙られているのだと思うだけで、腹の奥が熱く潤んだ。
仕上げとばかりに、首輪を嵌められる。リードで引かれ、いずこかへと連れていかれる。視覚がまったく聞かないので、転げてしまいそうだ。
「ぐえっッ」
彼がそのあたりを配慮することはない。さっさとしろとばかりに、ぐいぐい引っ張ってくる。怪鳥のごとき呻きを漏らして、どうにかついていくしかなかった。
がちゃりと、扉を開く音がする。連れていかれたのは、気配からするに広間だ。慰安役が仕事を行う、もっとも基本的な部屋だった。ようするにヤリ部屋である。
「皆様、お待たせいたしました。本日はサプライズ便女として、五匹目をご用意致しました」
管理人が告げる。数える単位が「人」でないことにまで、薄暗い官能を見出してしまう。
全頭マスクのせいで見えないが、部屋にはすでに、多くの参加者が揃っているらしい。実際どれだけいるか知らないが、少なくとも両手では数え切れない男達が詰め込まれていた。
「へへ、おい見ろよあれ」
「すっげぇエロボディ。今日はアレで一発ヌくかな」
男どもは、じっとこちらを見つめていた。物理的に熱を感じるほど、いやらしい目つきでじろじろと眺めている。目の前の性処理玩具どもを、さっさと使いたくてたまらないのだろう。
対する女達はといえば、そんなギトついた目を浴びせられて、嫌悪や恐怖の感情をのぞかせていた――一人を除いて。
慰安役は基本、罰として課される労役だ。彼女らも例外ではないのだろう。自ら参加した女は、龍だけだ。
「よし。では一匹ずつ自己紹介しろ、便女一号からだ」
「はぁ、自己紹介? 誰がそんなこと――ッ!」
打擲音と、一瞬遅れて悲鳴が聞こえた。状況から察するに、平手で打たれたのだろう。口答えは許さない、とばかりだった。
「ひッ、ぐ、やめ、やめて、っ」
しかも一発ではなかった。二発、三発と、連続して破裂音が響く。有無を言わさぬ連打は、女から反抗の意思が削がれるまで続いた。誰も、止めようとはしない。むしろ、やんややんやと囃し立て、煽る始末だった。
「わ、分かった、……分かりました。は、白狼天狗の、便女一号です。いつもは九天の滝付近で、哨戒を担当しています。今日は皆さんの慰安役を務めに来ました……」
「性感帯は?」
「は? そんな……痛ッ! ち、乳首。乳首を舐められるのが一番感じますッ」
ゲラゲラと、男達から笑い声が上がる。日頃の鬱憤を、己より下に堕ちた連中で晴らしているのだ。
基本的に天狗は、他者を馬鹿にするのが大好きだ。だが妖怪の山は外に対し閉じている。社会構造の最底辺層は、一方的に嘲られるばかりだ。
だから、慰安所なのだ。慰安役は踏み躙り放題だ。選ばれた女は基本罪人であり、ほとんど自業自得なのだから。
「二号。……三号。声が小さい! もう一回! ……よし。次、四号、泣いてる暇があったらさっさとやれ、脳味噌ゆるふわ女が。……よし。次、五号、お前だ」
管理人の仕切りにより、とうとう己の出番が回ってきた。途端、無数の視線が向けられた。全頭マスクで視野を塞がれているからこそ、はっきり感じられた。
最初、龍にはそれが視線だと理解できなかった。なにせ過去百年近く、彼女が他者より向けられてきたのは、もっぱら畏敬や服従の念だった。が、今浴びせられているのは、好色・好機・侮蔑・冷笑。
悪意に根ざすそれらは、あまりにも新鮮だった。そして、彼女の興奮を刺激するのに十分すぎた。股座の花弁から濡れた蜜が滴っているのではないか――などと錯覚してしまうほどには、全身昂ぶっていた。
「便女五号です。普段はそこそこの役職について、部下の管理をしています。本日は皆様に嬲り者にしてもらいたく、管理人様にお願いして、特別に参加させていただきました。いちばん感じるのは、ひどく罵られながら、乱暴にハメ潰されることです。どうぞ宜しくお願いします」
性的昂ぶりに任せた自虐の言葉を並べ、深々と頭を下げる。室内は一瞬、静寂に包まれた。次の瞬間には、鼓膜がびりりと鳴るほどの哄笑があふれた。
「おいおい、聞いたか! お願いして参加させていただいた、だとよ! 慰安役を自分からやるやつがいたとか、信じられねぇわ」
「そこそこの役職で部下の管理してますだぁ? お前みたいな、いかにも仕事できなそうなグズの喋り方するやつが、管理職なんかできるかっつうの! 刺身にタンポポ載せる仕事も勤まらねぇんじゃねぇか」
「どうせとんでもねぇ淫乱のくせに、顔がブスすぎて誰も相手にしてくれないとか、そんなとこだろうよ。首から下はまぁ、エロいんだけどなぁ」
男達は口々に、好き放題を喚いている。共通しているのは、龍へのあからさまなまでの蔑視だった。目の前の女を、小バエかなにかくらいにしか思っていないのだ。
彼女を蔑むのは、女達もだった。同じ立場であるはずの、一から四号も、敵意を浴びせられている。
むしろ、同じ立場だからこそだろう。自分は仕方なく、刑罰として参加している。なのにお前のような奴がいたら、こっちまで"そういう女"だと思われるじゃないか――と言わんばかりだった。
「あああ……ッ」
この場に、己の味方はいない。そう気付いた瞬間、ゾワゾワッと快感が全身を駆け抜けた。とろ……と、透明な蜜が肉貝より染みだし、太腿を伝っていく。
「おいおい、見ろよアイツ。濡れてやがるぜ」
「うぅ~わ。ガチのマゾ豚かよ。同じ天狗として嫌過ぎるわ」
無神経な揶揄に、己の状況を客観視する。ますます、たまらなくなった。
「しょうがねぇなぁ。そこまで言うならまずは、五号から使ってやるか。おら、気持ちよ~くしてやるから口開け、メスブタ」
「あっは」
慰安所を利用するような男は、龍からすれば木っ端も木っ端。天狗社会にとって、いてもいなくても変わらない、まったくどうでもいい存在だ。
そんな矮小な、本来なら言葉を交わすどころか顔を合わすことすらない輩から、ぞんざいに命令される。昂ぶるなんてどうかしていると思いながらも、被虐の悦びを止められなかった。
「んぶぢゅッ、ぢゅるッ、ぢゅぶぅッ、れろッ、んぢゅる、んもぉ」
「んっぷ、んくッ! んんぅっ、っふ、んっ、くッ、ぅう、んっ、んんん」
求められたとおりに口を開けば、とたんに唇を奪われた。名も顔も、所属部署も地位も分からない相手に、接吻された。
問答無用で、舌がねじ入れられる。口内の隅から隅、歯周ポケットに至るまで舐め回す勢いだ。
「んふッ、んぅううッ……」
こういうことをしてもらいに来たと理解はしていても、体験するのはまた別だった。悪い意味ではない。むしろ、想像よりはるかに良かった。ブルルッと、恍惚ゆえ全身が小さく震える。
「むっちゅッ、んふッ、んちゅくッ、れろッ、むちゅぅ」
されてばかりではいられない。なにせ自分は、慰安役なのだ。あらゆる権利を持たない、性処理用の奉仕道具なのだから、楽しんでいただけるよう努力をせねば。
舌同士を絡ませる。繋がった唇の隙間から、ヌラつくピンク色の粘膜が時折姿を覗かせる。ぷちゅッ、くちゅっと、涎が混ざり合っては淫猥な音をたてていた。
「ぐちゅッ、レロッ、レロロッ、ムッフフ……」
龍の――「五号」の自己紹介に、偽りがなかったと確認したのだろう。口交のさなか、男は堂々とかつ遠慮なく、彼女の尻に手を伸ばしてきた。
こうされるのが好きなんだろ? とばかりに、もっちもっちと揉みしだいてくる。デスクワークで培われたムチムチのヒップは、確かな弾力と共に指を押し返す。もっと揉んでとばかりに、自ら腰を押しつけた。
「ぢゅるるるぅッ」
繋がった口腔の間で、唾液がやりとりされている。互いの体液を求めては、嚥下していく。顔も知らぬ相手の涎が、身体を構成する材料として吸収されていく。
「んぽぁッ、んっはっ、はぁッ、あはぁ」
キッスはたっぷり、一分強続いた。口が離れるころには、龍はすっかり出来上がっていた。味を感じられるほど敏感な粘膜を、優に六十秒はこね合わせ続けたのだから、無理もなかった。
口端から涎を伝わせ、全身にうっすら汗を浮かべている。ほう、ほうと漏らす吐息は甘く、次は何をしてもらえるのだろうと期待しているのが丸わかりだ。
「あはぁん……」
「へん、あはぁんじゃねぇよ牝豚が」
「アッ」
プッと、またも顔へ唾を吐きかけられる。狙いが逸れたのか、鼻孔を埋める。唾液特有の臭いが、肺に流れ込んでくる。今の龍には、たまらないアロマだ。思わず、ほうと溜息をついた。
「さて、そのやたらムチムチなドスケベボディちゃんの感度はどんなもんだぁ? お?」
「ぃんッ!」
悲鳴とも嬌声ともつかぬ、奇妙な声が響いた。豊満なGカップへ、ピシィッと平手が入れられたのだ。弾力ある肉は衝撃によって波打ち、プルルンと左右に弾んでみせた。
「おほッ。こりゃいい。眼福眼福」
「はぁッ、あんっ、あぁっ、あぁ」
面白がり、ピシピシピシッと細かくぶってくる。地震に出くわしたプリンのごとく、乳房はプルルルンと揺れる。クーパー靱帯が伸びていく感覚とともに、官能の声を漏らす。
「こんなんで感じてんじゃねぇよ、お仕置きだッ」
「ッヒィ!」
と思いきや、先端でぷっくり膨れていたニップルを、指先で思い切り摘ままれる。陥没気味の乳頭は刺激に弱く、苦痛とない交ぜになった性感を与えてきた。
そのままぎゅうぎゅうと引っ張って、つねり上げてくる。遠慮も思いやりも、一切存在しなかった。後遺症の残る暴力以外であれば、慰安役に対する大抵の行為は認められているからだ。
「あっはッ、ひぃッ、アッ、乳首ぃいッ、あぉおおッ」
手つきは、「愛」とも「撫」とも到底呼べぬものだった。が、龍はよがり、情熱的に身をくねらせる。今まで誰も味わわせてくれなかった快楽に、酔いしれている。
「へへ。こっちの具合はどうだ、ン~?」
「ぉッ、おん、っひっ、あっあっ、ぁぁっ」
また別の手が、両膝を開かせる。無防備に曝け出された肉貝へ、無遠慮に触れてくる。
ぬち、くちと、濡れた音が小さく鳴る。彼女の牝穴はすでに解れきっており、蕩けたバターほど濃厚な雌汁を滴らせている。触れられれば糸を引くほどだった。
「けっ。もうこんなトロトロじゃねぇか。こりゃ真性の変態だな」
「ッお!」
やにわに、指がねじ込まれる。ぶぢゅッと耳裏にへばり付く音をたて、中指と薬指が膣内へ忍び込む。
ぞりッぞりッと、節くれ立つ指が柔襞を嬲ってくる。感じさせようとは欠片も考えていない、自分本位の性技だ。ただ相手を苦しめ、貶めるための指使いだった。
だからこそ物珍しく、際立って感じられた。なにせ普段閨に呼ぶ連中ときたら、大天狗・飯綱丸龍を畏れてばかりだったからだ。
「あっはッ、あぁ、はひッ、あぁッ、ああッ、ああ」
膝をカクカクと笑わせ、腰を前後にくねらせる。まだほんの挨拶程度の行為だというのに、舌すら突き出してよがる始末だった。
「汁気の多い女だな、おら、てめぇのくっせぇマン汁で、指が汚れたろうがよ」
「んむぅうん」
ぢゅぽッと指が引き抜かれる。途端に腹の奥がツーン……と疼き、尻をふりふりねだってしまう。
濡れた指が、突き出された舌を弄ぶ。何か命じられるまでもなく、舐め回して清める。大天狗にまで上り詰めるほどだから、それくらい察する能力はあった。己の淫ら汁は、嗅いだだけでスケベ女だと一発で分かる牝フェロモンをまきちらしていた。
「楽しそうに腰くねらせやがってよ。なんだァ? このムッチムチのケツは。天下の鴉天狗サマが、こんっなみっともねぇケツしていいと思ってんのか馬鹿女が!」
「んぉおおおッ!」
破裂音が鳴った。同時に、低い悲鳴があがる。無防備な姿を晒すヒップへ、掌が打ち込まれたのだ。
鬼ほどではないが、天狗も相当な腕力を誇る種族だ。そんな彼らのビンタは、猪くらいなら余裕で殴殺できる威力を誇る。尾てい骨がイカれそうな一撃は、甘く痺れるエクスタシーをもたらす。臀部は痛みを嫌がって逃げる――どころか、むしろもっと嬲ってほしいとばかりに差し出された。
くねっくねっ、くいっくいっと、複雑な動きを繰り返している。よく見れば、「飯綱丸」と尻文字を描いている。雌汁をぴっぴと左右へ散らす肉貝に視線を奪われており、誰も気づきはしなかった。
「あーあー遠慮もへったくれもなく臭ぇマン汁まき散らしやがってド変態が。大体よぉ、他の連中は嫌々やってんだぞ? レイプされんだから。それを何悦んでんだテメェは!」
「あぉッ、あッ、ああッ!」
「ケツ叩かれて悦んでんじゃねぇっつうの豚が! 喘いでねぇで反省しろ反省!」
「はひぃッ、申し、もうしわけありませェん!」
何度も平手を打ち込まれる。豚という蔑称と裏腹に、臀部はすっかり紅潮し、猿のごとき様相を呈している。
ヒリヒリジンジンと傷む感覚が、たまらなく甘美だった。嬲られ虐げられ、理不尽に謝罪させられる経験に、たまらない満足感を覚える。山でも指折りの性豪男を閨に招いたときでさえ、こうまでは愉しめなかった。
「お~お~、かっわいそうに、ケツが真っ赤っかじゃねぇか」
「ただでさえこっ恥ずかしいデカケツがさらにデッカくなっちゃいまちゅね~、ザマアミロってんだ」
男達の揶揄も、あながち間違いではない。肉体は環境に適応するものだ。都会の汚い空気で鼻毛が伸びるように、臀部が衝撃対策として脂肪を蓄え、いっそうムチムチとしても不思議ではなかった。
「さぁて、恥ずかしケツ女、もっと恥ずかしい目に遭わせてやる。一発芸の時間だぜ?」
「はっ、あは」
一発芸。ずっと閉じてきた妖怪の山に、セクシャルハラスメントの概念などない。宴会で披露される芸のなかには、ちょくちょくえげつないものが混じっている。
が、今からやらされるのは、きっとそうした下品ショーをも上回るのだろう。向けられる悪意が、そう告げていた。
「おら、しゃがめしゃがめ。大股おっ広げてな」
肩をぐいと押し下げられ、命じられるままその場に屈む。股をこれでもかと開いた、いわゆる蹲踞の姿勢だ。
どん、と、硬く重たい何かが目の前の床に置かれる。触れて、たぶん据え置き型のディルドだと察する。「たぶん」というのは、目の前のソレが、一般的なディルドの形状とかけ離れていたからだ。
全長にして三〇、いや四〇センチほどもある。直径でも五センチを優に超えた、化物じみたフォルムだった。しかも、全体にゴツゴツとしたイボがあしらわれている。
女を悦ばせるためでなく、膣を破壊するために存在するかのごとき凶器だ。モンスターのペニスの剥製だと言われても、なんら不思議ではなかった。
「ああ、こんな、こんなの、こんなモノ」
こんなモノは無理だと理性が告げている。ほんの先っちょだって入りっこない、絶対にやめろと訴え、恐怖心を煽る。一方で、強烈に惹かれてもいた。今までずっと飢えてきたのだからと、欲望が主張していた。そして有史以来、理性と欲望がぶつかって、前者が勝ったためしなど一度もない。
「こんなモノ、素晴らしすぎるぅ……」
思わず、うっとりと呟いた。演技でないと一発で分かる、ドロドロに蕩けきった声色だ。
「ぎゃはは、こんなんでも悦ぶのかよ、お前コイツの名前知ってそれ言ってんのか?」
「『マンコぶち壊しくん三号』だよ、河童謹製のオモチャに、せいぜい遊んでもらうんだな」
哄笑が響く。好色という言葉でも足りぬ、何十もの視線が浴びせられている。己が女として一つ終わる瞬間を、誰もが待ち望んでいるのだ。便女として、応えるべきだろう。
「嗚呼、どうか、どうか皆様、鴉天狗失格なアバズレ淫乱痴女天狗の、どうしようもない変態オナニー一発芸をご覧下さいませ。ぶっといぶっといディルドを咥えて、無様にヘコヘコ腰振って、自分から人生終了させますので、せいぜい物笑いの種にでもしてやってくださいませ。宜しくお願い致します」
「はん。脳味噌空っぽのくせして、そんなトコだけは舌が回りやがる」
深々と頭を下げる。皆によく見えるよう、あらためて両脚をおっ広げながら、腰を落としていく。
「ッは、あッ、かは」
クラクラする悦びに浸る。実のところ、龍は自慰が好きではない。パートナーを見つけられない奴の、哀しい代替行為だと思っているからだ。けれども、これは違う。惨めさを変態性感として昇華させる、まったく新たな自涜だった。
そうした喜ばしい発見と裏腹に、歩みは遅々として進まなかった。触った時点で知れていたが、太すぎるのだ。たぶん小指の先ほども入っていないのに、膣肉がミチッ、ミチッと音を立てている。無理無理ぜったい裂けると、頭の中の冷静な部分が警鐘を鳴らしていた。
「おい何やってんだ、テメェが見ろつったんだろ、つまんねぇコトしてんじゃねぇっつうの」
むろん、男達からすれば関係ない。むしろ裂けたら裂けたで笑えるくらいにしか思っているまい。やんやと、野次が飛ばされる。
「ったく根性無しがよ。しょうがねぇ、手伝ってやるか」
「エッ、あ、待ッ、――イッ、ッヒィイイイイイイイッ!」
肩を掴まれた。何をされるか察し、咄嗟に逃げようとする。が、遅かった。グッと押し下げられる。自然と腰も落ち、物理法則に従い、凶器が牝穴にねじ込まれた。
ゴリゴリゴリゴリッと、石臼を回すような、およそ体内から聞こえてはならない音が響く。棘じみたイボのあしらわれ、成人男性の腕ほどもある玩具が、根元までずっぽりと入り込んだのだ。みっちり、などという言葉では到底足りない。身を引き裂くほどの圧迫感に、意識が一瞬、トんだ。
「ッア、かっは、ぉ、おぉッ、っひ」
長さでいえば四〇センチ。膣道はそんなに長くない。当然、野太い玩具を納めきるには足りなかった。滑らかだったはずの腹が、ぼこりと歪んでいる。ディルドの先端が、内部から身体を圧迫しているのだ。子を作るための聖域が、サンドバッグにされている。
道具の命名に偽りはなかった。「マンコぶち壊しくん」と称されるに相応しい、悪辣きわまる存在だった。
「ぉッ、は、ほッ、ぉほおッ、っひ、アッ、あがッ、あぁッ、ああああああ~ッ……!」
なおも龍は満足しなかった。大天狗になって以来、ずっと溜め込んできた欲求不満は、まだ解消されない。腰を猛然と振りたくり始める。ぶるんぶるんと、Gカップバストが弾み踊る。
ボコボコと、腹が歪に形を変える。得体の知れない怪物が、腹を食い破らんと暴れているかのようだ。玩具の凶悪さを思えば、あながち間違いとも言い切れない。
膣口はありえないほど大口を開けている。顎だったらとっくに外れているくらいだ。みちッ、みぢッと、先ほどから悲鳴を上げていた。
イボが体内を掻き回し、強制開拓する。ぼぢゅッ、ぐぢゅっと、えげつない蜜音が響き渡る。床に染みついて二度と取れないほどの淫汁が、そこかしこにまき散らされていた。
「あーあー、何やってんだありゃ。正気とは思えんね」
「そもそも、マトモだったら自分から慰安役になってなんかねぇだろうからな。妥当だろ」
「ちゅうか、あんなんが今まで普通の天狗の皮かぶって、俺らの間で生きてきてたってコトだよな? こわ。こっわ」
痴態で済まぬ無様を眺めながら、男達は世間話に興じている。やる側にとっては一世一代のオナニーでも、彼らにとっては、雑談を交わしながら消費する程度のものでしかなかった。
とはいえ、まったく何の興味もそそられないのかといえば、否だ。龍には見えていないが、彼らのズボンはもっこりと膨れ上がっていた。そうなるのも当たり前だ。全男子垂涎のダイナマイトボディが、ゆっさゆっさと震えながらよがり狂っているのだから。
「へへ。楽しそうにしちまってよぉ。ホレっ、もっと楽しくしてやるよ」
誰かが行動を起こすのに、さほど時間はかからなかった。気配が近づいてくる。目の前でモゾモゾとして、眼前で何かを取り出した。
見えずとも、正体は分かる。ペニスだ。空気を伝わり顔に伝わる熱気。嗅覚を容赦なく刺す雄臭を嗅げば、三歳児でも分かることだった。とくに臭いは、鼻孔が鼻フックでこじ開けられている分、なおさらだった。
「おッ、何自分だけ楽しそうなことしてんだ、俺も混ぜろよ」
「俺も俺も。チンポ漬けにしてやろうぜ。そのほうがこのバカ女も悦ぶだろ」
男どもが群がってくる。ぐるりと、男根に取り囲まれる。小鼻がしきりにヒクついていた。ブレンドされた男根臭を、肺いっぱいに楽しんでいる。
「あはぁあ……ッ」
思わず、腰を振ることも忘れてしまう。艶めく唇の狭間から、舌がぬるりと這出す。レロッレロッと、舌先が∞の字を描いて躍る。
「そんなに舐めてぇか? あ?」
「あガッ」
舌を摘ままれ、引っ張られた。プッと唾を吐きかけられる。嚥下しながら頷けば、上等だバカオンナと呟きが返ってきた。
「俺は優しいから、特別にしゃぶらせてやるよ。あーあー、こんなヘンタイに精子搾られるとか、悲しくて泣いちゃう」
「あはぁ、ありがとうございますっ」
感謝の言葉は、慰安役だから、便女だから溢れたものではない。本心からありがたいと感じていた。ご馳走を差し出され、その臭いと存在だけ感じさせられてお預けなんて、まったくありえない。
「はッ、れろ、れるぅうう~……っ」
ヌメる桃舌が、肉棒を根元から舐め上げる。天狗のペニスはとにかく長い。しかも反り返っていて、ヴァギナをほじるのにはぴったりな形だ。
否応なくセックスを連想させる形状は、彼女の欲望を掻きたてる。腰がくねくねと、上下に躍っていた。肉穴を拡張する凶悪ディルドで、己の股穴を嬲り立てていく。
「あっはッ、あむッ! あもッ、んぢゅるッ、れろぉお……」
もちろん、舐め回すだけではない。喉壁まで見えるくらい大口を開ける。次の瞬間には、ぱくりと咥え込んだ。途端、脳味噌をガツンと殴られる。
龍は薄味の一物しか知らない。大天狗として男を閨に呼ぶ場合、みな身ぎれいにしてくるからだ。対するコレは、濃厚な汗と蛋白質の臭気を、無遠慮なくらいムワムワとまき散らしてくる。
家畜化された豚肉と、野性の猪肉の違いに似ていた。野趣に溢れ、クセも強いが、好きな者にはたまらない。龍はといえば、好きな側だった。第一印象だけで、ソレなしにいられなくなるほどには。
「んっぶぢゅるッ、ンム、ぐぷちゅッ、むぢゅぷッ、んもぉっ」
頭を前後に振り、しゃぶりまわしていく。頬を窄めて内圧をかけながら、唇で竿を磨き上げていく。より立派なペニスになっていただくために。口端から抜けた空気や涎が、えげつないフェラチオサウンドを鳴らしている。
口内では、独立した生物のごとく舌が躍っている。鈴口から亀頭、カリ首に幹と、隅々までねっとりとねぶり回す。そうして感じる逞しき味と形に、すっかり恋していた。
今このペニスに求婚されたら、ノータイムで受け入れてしまうかもしれない。そしてすぐさま、ウェディングファックが始まるのだ。
「ぐぶッ、んふぐッ、んぅうう……」
考えるだけで、上の口も下の口も、疼いて止まらなくなる。自然と、深くまで男根を受け入れていく。
ずっぽりと、根元まで咥え込んだ。下腹の縮れ毛が鼻筋をくすぐる。漂う汗の香りに、鼻孔がヒクついている。天狗の長竿は、口腔だけで受け止めるにはあまりにも立派すぎた。必然、亀頭は喉にまで至っている。
「うぉッ、この女、ぉッ、っほ、やっべ、どんだけチンポ好きなんだっつうの」
きゅうきゅうと、喉輪を締め付けて愛撫する。商売女でも滅多に身に着けていない、情熱的きわまるディープスロートだ。さんざん高圧的な態度を示してきた男も、これには己を保っていられない。腰をぶるぶると震わせて、睾丸からこみ上げてくる射精欲を堪えている。
「んっふ、んぅうッ」
ずっぽりと迎え入れているぶん、陰茎特有の生臭さと汗臭さを強く感じる。無遠慮に女を狂わせる、支配者の香りだ。
そんなものを嗅がされ、味わわされたら、もう溜まらない。河童の作る機械より激しく、腰がピストン運動を繰り返す。ぶっぢゅぶっぢゅと、ディルドを咥えた陰唇がえげつない涎の音を鳴らす。糸を引くほど粘っこい淫乱汁が、床に濃厚な染みを作っていく。
オナニーと呼ぶには無様すぎる、恥知らずのどうしようもない猥褻ダンスだ。腹の内側が押し広げられていくたびに、ビリビリと神経に響くエクスタシーが脳味噌の裏を駆け抜ける。が、決して満足には至らない。
もちろん、この玩具は太くえげつなく、女を狂わせるには十分すぎる業物だ。しかし、なおも物足りない。本物のペニスでなくては、淫乱女の燃えさかる欲情を鎮めるなど、到底できはしないのだ。
「へへッ、牝豚がよぉ、そんなにチンポが好きなら、ホレ、扱かせてやるよ」
「おッ、指柔らけぇ~。なんだてめぇ、肉便器の付喪神とかじゃねぇのか? ギャハハ!」
両手に、熱く硬い竿を握らされる。何であるかなど、考えるまでもなく明らかだ。
あらためて命令されるまでもなく、身体が動いていた。上下に腕を振り、男根を扱きたてていく。手首のスナップを効かせた、巧みな手淫だった。玉を弄び幹を搾りあげる指の動きひとつとっても、無類の好き者なのだと伝わってくる。
「コイツマジでやべぇな、こんなド変態天狗が山にいたとかなぁ」
「フツー嫌々やらされるって感じなのに、コイツ一人だけノリッノリだもんな。あぁ~、さっさとチンポ突っ込んでハメ潰してやりてぇ」
「んぢゅるッ、ぐぷッ、んごぷぅッ」
周りの男たちの揶揄に対し、どうぞその通りにしてくれとばかりに腰を躍らせて応える。頬の窄められることときたら、まるでひょっとこだった。
外の世界であればすでに猥褻指定を受け発禁処分を下されている姿に、男たちも当てられている。シュッ、シュッと、肉を扱く音が聞こえていた。あぶれた連中が、自らの竿をコいているのだ。龍を中心に、室内はむせ返るほどの陰茎臭に満ちていた。
「ぉッ、おッ。ザーメン上ってきたッ。おら、出すぞ牝豚。マスクの下のブサイク面に、キレーなお化粧してやるよ! おッ、おぉ、ぉおお~ッ……!」
「んぢゅるぅう……ッぶぽッ! んはッ、あへぁっ、あはぁあ……ッ」
ふいに、男が腰を引く。何が起きるか、台詞がなかったとしても予測はついた。一物のギンギンと苛立ち、今にも破裂せんばかりに膨れ上がる様を、唇で感じていたのだから。
亀頭が唇から引っこ抜かれる。ラバーカップで便器の詰まりをとるときに似た、ぶぽんッという音が響く。一瞬遅れて、モノは限界を迎えた。陰嚢の中に溜め込みまくった遺伝子を、勢いよくぶちまけていく。大きく口を開き、先ほどまで一物を舐め回しまくっていた舌を見せつけながら、受け止めていく。
額・鼻筋・瞼のあたりにかけて、龍の被った全頭マスクに、濁液が容赦なくぶちまけられていく。黒と白のコントラストが退廃的だ。精虫は布地の内側にまで染みこんで、じくじくと地肌を犯してくる。肌に陰茎臭がこびりついて、二度と取れなくなってしまいそうだ。
日常生活に戻っても、精液臭い顔で過ごすしかない。いくら慰安役の正体が伏せられているといっても、そんな有様すぐにバレるだろう。そうして皆から蔑まれ、見下されるのだ。
おべっかと追従を振りまいていた連中すら、己を侮蔑し始める。素知らぬ顔で、正々堂々とセクハラを働く。物陰に連れ込まれてよってたかって輪姦してくるのだ。あまりにも、素敵すぎる。
「あっはッ、いっく、イく、ッ、イくぅううううんッ!」
きゅんっ、キュンッと疼く子宮を中心に、エクスタシーが渦となって襲い掛かる。強烈なセクシャル・プレジャーが、龍を押し潰し、押し流していく。
日頃の威厳など欠片もない、裏返った牝の声をあげ、ムチついたボディを痙攣させる。Gカップバストがプルルンッと弾む。玉のように浮かんだ汗が、ぴっぴっと散る。背筋は弓なりに反り返り、与えられた法悦の大きさを物語っていた。
「おいおい、コイツ顔射されてイきやがったぜ!」
げらげらと響く嘲笑に、己がどれだけの惨めを晒したか思い知る。嬉しくてたまらなかった。
他の女どもを嬲っていた連中も、つられてこちらを見ている。あっちに混ざればよかったか、という言葉も聞こえてくる。
嫌々参加している他の慰安役からすれば、龍に男共が集中するのは望ましい事態だろう。それだけ自分の負担が減り、尊厳を踏み躙られずに済むのだから。
が、こちらに向けられるのは、感謝の念などではない。むしろ真逆の感情だ。気持ち悪い、理解できない、見苦しい、ありえない、キモい――。この部屋の中で、己の味方など一人もいないのだとあらためて思い知る。素敵すぎて、小便を漏らしてしまいそうだった。
「さぁ~って牝豚ぁ、『お楽しみ』の時間だぜェ」
腕を掴まれ、立たされる。と思いきや、床に引きずり倒された。
打ち付けた肘がじんじんと痛む。が、文句を言うつもりはなかった。この文脈における「お楽しみ」が意味するところなど、一つしかない。つまり、ファックだ。交尾していただけるのだ。
「あっは、ッはやく、っ、はやくぅ」
繋がれた犬が、散歩紐を見せられたかのごとき反応だった。陵辱の期待に身体は昂ぶりきっている。屈服を示す姿勢――腹を向けて仰向けになり、へっへっと甘ったるい発情吐息を垂れ流す。ハメていただきやすいよう、牝穴を指でほじくって、ぐっちょぐっちょと耕していた。
「なにやってんだ色気違い。その前にやることがあんだろ」
「ぉぐェっ!」
曝け出された白い腹を、グイッと踏みつけられる。胃袋が口から飛び出しそうな圧迫感に、女が上げてはならない声をもらす。
何を求められているか、やっと理解する。足が退けられるなり、姿勢を整えた。床に膝をつき、手をつく。最後に額を、これでもかと深く――地面を貫通しそうなくらい深く、擦りつける。本邦に伝わる請願の構え、土下座だった。
今の己は慰安役。惨めで情けなく、惨めったらしい性処理便女だ。無条件にファックしていただけるなどと思うなど、甘えにもほどがある。卑しく浅ましく、どうしようもない無様を晒しながら、おねだりせねばならない。
「皆様、本日は私、淫乱便女五号をお使いくださるよし、心から嬉しく、ありがとう存じます。どうしようもない変態肉オナホの、さもしく穢らわしいユルユルガバガバ穴でよろしければ、どうぞ唾でも吐きかけながら使い潰してくださいませ。尊厳も人間性も踏み躙って、キンタマの中に溜め込んでいた濃厚お精子を私めでご処理くださいませ。今もおチンポ欲しさにくぱくぱしまくっている濡れ濡れマゾマンコで逞しいお射精をブッこいて、ちり紙感覚でザーメンごみ箱にしていただければ幸いです。何卒宜しくお願い致します」
「うぅ~わ。ンななっさけねぇ台詞、よくまぁおめおめと言えるもんだな。俺なら三文字目くらいで愧死してるね」
「ちゅうかコイツ、チンポの話になると早口になんの気持ち悪いな」
天狗社会には面倒な行事が山ほどある。大天狗ともなれば、式辞を延々述べる機会も多い。にしたって、これほどの長広舌は珍しかった。なにひとつ偽らぬ本心を言葉にしたら、とんでもない長さになってしまったのだ。
「おら、ケツ上げろ」
天狗の長い一生ですら、三回分にはなるくらいの恥をかかせてなお、男たちは満足していなかった。龍に、頭は下げさせたまま、尻を高く掲げさせる。下半身を無防備に捧げた、どうしようもない格好だった。
「あーあー、マン汁が止まんねぇぞコレ。九天の滝みてぇなマンコしやがってよ。生きてて申し訳ないとか思わんの?」
罵倒は、なにも大げさではなかった。実際、剥き出しの陰唇は、今もネバつく雌汁をでろでろと垂れ流している。気の弱い者なら嗅いだだけで射精するほどの淫臭をまき散らしていた。
が、男が次のターゲットに定めたのは、そちらではない。ぶ厚い尻たぶを割り開いて曝け出されたもう一つの穴、すなわちアヌスだった。
菊門は軽く色素沈着しており、ほんのりと焦げ茶色だ。小さな皺がちりめんのごとく、放射状に伸びている。視線を浴びて恥じ入っているのか、ヒクッ、ヒクッと収縮を繰り返していた。
「おら、こっちの具合はどんなもんだ」
「ひッ、ぉ、おッ?」
磯巾着のごとく蠢くおちょぼ口に、なにかが押し当てられる。指ではない。もっと丸っこく、硬い。
赤子の握り拳くらいはある、ボール状の玩具だ。ローションがまぶされているらしく、ヌルついている。ぐッぐッと押し込んでくる。
いうまでもなく、肛門は出口だ。異物の侵入など想定されていない。にもかかわらず、括約筋はソレを追い出そうとはしなかった。むしろ悦んで受け入れようと、自ら緩んでみせた。
「あはッ、ぉッ、ぉおんッ」
天狗はもともと好色で、しかもライフスパンが長い。暇にあかせて、そちらを開発する者も多い。龍も例外ではなかった。耕された菊座は、すんなりと異物を呑み込んでいく。
「ぉんッ!」
菊座に対して球体の直径まで入れば、あとは一瞬だ。つるんッ、と体内に潜り込む。押し広げられた肛門神経叢が刺激され、脳味噌にプリミティブな快楽を伝えてくる。思考を腐らせ、バカにさせる快感だ。あがった声は、まるで原始人だった。
ほんの二・三分ほど前にアクメしたばかりの身体で、こんな法悦は堪えがたい。プシッと、尿道から熱い潮を噴く。
「ケツ穴弄られておんおん感じてよぉ、てめぇにゃ恥ってモンがねぇのか? あ?」
「あっ、ひっ、ぉッ、ぉんっ、あぉっ、ぉおっ」
お仕置きだとばかりに、膣口をぺんぺんと平手で叩かれる。ヴァギナとアヌス、どちらに集中していいか分からず、ただただ尻を悩ましげにくねらせる。
彼の発言は、実のところ大間違いだ。龍にも、恥の概念はある。恥ずかしいからこそ、牝豚の本能が刺激されて、感じ乱れるのだ。もっとも、それは恥が欠如しているよりずっとみっともなく、情けないのだが。
「さぁて、ホレ。今ぶち込んでやったボール、自分でひり出してみろや。全員の見てる前で」
「っは……ッ」
命令されるだろうな、とは思っていた。だからこそ、嬉しくてたまらない。状況が許せば、いよっ待ってました、と喝采をあげていたところだ。
「では、どうぞ皆様、淫乱変態マゾ牝豚便女五号の、情けないケツ穴産卵シーンをご覧下さいませ」
皆によく見えるよう、あらためてヒップを高く掲げる。己の指で、尻たぶをおっ広げる。本来なら誰に対しても秘めるべき排泄器官を、衆目に晒す。
「はッ、ぉ、おっ、ぉ、お……ッ」
肛門括約筋を緩める。直腸に詰められた球体が、腹膜の力によって排出されてゆく。締まっている間はちりめんのように見えていた、無数のアナル皺が伸ばされていく。
むりゅ……と、菊座から玉が姿をのぞかせる。マスクのせいで龍には見えないが、虹色をしている。排泄孔からサイケデリックな色合いの玉が姿を覗かす様は、一流の弁舌家でも言い訳できないほど無様だった。
「ほッ、ぉ、お、お」
玉と菊門のわずかな隙間から、ぷすっぷすっと空気が漏れている。擬似的とはいえ、人前で排泄する屈辱に、被虐心が煽られる。とろぉん……と、剥き出しの膣口から涎が滴る。痛いほど勃起した淫核を自ら弄くりながら、なおも変態排泄を続ける。
「おッ……おッ……おおぉッ……」
次第に、圧迫感が強くなっていく。球体であるから、直径に達するまではそうだ。そして菊門が最大限に広がった瞬間、ブリュンッ! と体内から飛び出した。
「ぉッ、おぉんッ!」
腰がビクンと跳ねる。間抜けな音と声をあげて、公開排泄に至る。アヌスから射出された球が、床に二・三度弾む。表面には、ローションとも違う粘ついた粘液がへばり付いていた。彼女の腸汁であり、うっすらと饐えた香りを纏っている。
「ぉッ、ほ、あは、おっひ、おはっ、ぉおん……」
恥にもいろいろある。人前で糞を――擬似的とはいえ――ひり出すのは、その中でも最上位に属するのではないか。でなければ、こんな脳が壊れそうなほどの法悦に浸れるはずがない。
で、どうせ排泄するなら、小さいほうもすればいいではないか。狂った思考回路が、「名案」を思いつく。拒む龍ではなかった。というか、拒もうにも、尿道括約筋はすっかり弛緩してしまっていた。
「あッはぁあ……」
「うっわコイツ、何してやがんだマジでぇ!」
しょぉおお……と、尿道から音を立て、黄金色の液体がぶちまけられていく。びたびたびたっと、床の上で飛び散る。
洋式便器ですら、数メートルは跳ねると言われているのだ。平たい床にぶちまけるとなれば、なおさらだった。男たちから軽く悲鳴が上がる。龍はおかまいなしに、排尿快楽に浸っていた。股座の下に、水たまりができていく。ぶるるッと小さく身を震わせた。
「きったねぇ女だなッ、誰が掃除すっと思ってんだ!」
「あぁッ!」
掃除は管理人の担当だ。少なくとも参加者である彼らの領分ではない。が、そんなのは知ったことではなかった。
頭を踏みつけられる。掴まれ、引きずられる。床に、顔を押しつけられた。自ら排出した小水溜まりにだ。
「んっぶ、んぶぅッ、んぶぇッ」
「おらッ、舐めんだよ自分でッ。反省しろってんだ牝豚がッ」
せめて唇を噛みしめて逃れ――は、しない。むしろ舌を突き出し、命じられるままべろべろと舐め回す始末だった。己の身体から出た汁は、どうしようもないほどに牝臭かった。
「かぁッ、気分悪ぃヤツだな。慰安役なんかやってんのも納得だわ。こんなとこでもねぇと、男が相手してくれるわけがねぇ」
口々にののしりながらも、男たちに萎えた様子はない。声色からは、いっそう凶暴性が増したように感じられた。
生物の中には、尿に異性を惹きつけるフェロモンを含ませるものがある。猫などがそうであり、天狗も例外ではなかった。淫乱女の猥褻フェロモンを嗅がされた男たちの股間は、もはや目の前の牝豚の中で射精せねば収まらぬほどいきり立っていた。
「アッ、っは、あはぁ、きてッ、きてぇ」
地べたとキスしながら、腰をぷりぷりと振って誘う。その甲斐あってか、お望みのモノが後ろから陰裂に押し当てられた。
猛烈に熱く硬い、煮えたぎる欲の棒。火傷してしまいそうでありながら、蕩けそうなほど素敵だ。緋緋色金を融解寸前まで熱しても、こうはなるまい。ヴァギナでペニスを感じるからこそ、ありえる現象だった。
「はやくっ、はやくゥ、あっは、ねぇッ、あぁ、あぁッ!」
「うるっせぇマンコだな、ケツ振んのやめろや、入れづれぇだろが」
「あぉッ!」
ピシャッ! と左尻肉を叩かれる。二秒後、バランスをとっておくかとばかりに右も叩かれる。じんじんと響く悦びに、情熱的な声を漏らす。
「おら、"一二の三"の、"三"でハメるぞ牝豚ぁ、イ~チ、ニィッ!」
「ォッ、っひッ、ぉおおおおおおおおッ!」
自ら宣言したカウントを裏切り、男は容赦なく腰を突き出した。使い潰すという言葉がぴったりの、思いやりもクソもない刺突だ。メリメリメリッと、カリ高マラが肉襞を捲り上げていく。バナナのごときカーブが、膣壁をゴリゴリゴリと抉る。
肉槍は、ヌルつく肉洞の最奥部へ至れるほど長かった。亀頭が、行き止まりをごつむんと突き上げる。ポルチオを、思い切りノックした。
脳天をペニスで殴られた気分だった。あがる嬌声は、とても誇り高き大天狗のそれとは思えぬほど聞き苦しく、みっともなかった。そこらで盛る発情期の猪と言われたほうが、まだ信じられるくらいだった。
バチバチと目の裏側で火花が散るのを幻視しながら、典と男たちに感謝していた。彼女と彼らなしには、知ることのできないエクスタシーだった。
「おっほ! あのクソデカディルド咥え込んでたわりにゃ、けっこう良く締まるんじゃねぇか!」
「ォおんっ! あぉッ、んんっひぃッ、あっは、はへッ、あぁあッ!」
間髪を容れず、腰を打ち付けてくる。散々叩かれ紅潮しきった尻に下腹がぶつかり、パンッパンッと軽妙な音をあげる。
繰り広げられるセックスは、決して軽妙などではなかった。むしろえげつなく、思いやりの「お」の字すらも存在していなかった。
自分が射精できればいいという考えに基づく、雑なピストンだ。女一人のヴァギナを、子を成し育み産むための神聖な洞窟を、ペニス扱き用の玩具感覚で使っている。ぶぢゅッ、ぶぢゅっと、結合部から卑猥汁が飛び散っている。体内ではカリ首が襞を蹂躙して躾け、幹が穴全体を拡張していく。亀頭が、子宮をサンドバッグにしていた。
「ほぉおッ、ぉん、ぉお、ッひ、ひぃッ、ひぃ、ッ、ひぃいいッ」
いまどきコミックでも見かけないハードファックを受けてなお、龍はよがっていた。口端から涎を垂らし、涙すら流さんばかりに。己はまさしく、こういう扱いこそを望んでいたのだ。嬉しくてしょうがなかった。
「はーッ、テメェ何自分ばっかアンアンよがってやがんだ、コンニャクのほうがまだ使えるマンコしやがってよぉ! エロいカラダしてっからどんな具合かと思ったら、ガッカリだわこのユルマン女が!」
「んぉおおんッ!」
先ほど自分で「けっこう良く締まる」と言ったのも忘れ、男は声に怒気を滲ませる。今日何度目かの平手を、無防備なヒップへ打ち込んでくる。耳に残る破裂音が響いた。
正直にいって、ショックだった。牝豚としての己を自覚したとはいえ、かつて男共を閨に呼んでは、とっかえひっかえ手玉にとった日々がなくなったわけではない。テクニックとセックスには、自信があったのだ。大天狗の、あるいは公衆便女の名にかけて、挽回せねばならない。
脂の載ったムチムチの腰が、くねっくねっと踊り始める。柔らかな乳房もぶるんぶるんと躍る。場末のストリッパーでもやらない、低俗な腰使いだった。見るからにがっついていて、品がない。牝豚牝豚と呼ばれているが、今の彼女は、トリュフを漁る豚よりよっぽど浅ましかった。
「ぉッおッ、っひッ、あっはッ、ぉんッ、ぉおおッ」
「はんッ。ケツ穴もこんなにヒクつかせまくりやがってよぉ。なんだ? 弄ってほしいってかぁ?」
「あっはッ、いじって! いじってくださいッ! 変態アナルマンコさっきみたいにオモチャにしてぇッ、あぁあッ」
がくがくと首を上下に振る。さながら張り子の虎だった。プッと、尻肉に生暖かいものが浴びせられる。唾を吐きかけられたのだ。
「そんなら、お望み通りにしてやるかァ……おい、ソレ取ってくれや。おうサンキュ……おら牝豚、今度はケツメドぶっ壊しの時間だ、ぜッ!」
「ひッ!? ぉッ、あがッ、ぉおおおおッ!」
肛門に、硬いものが押し当てられた。先端が触れただけでも分かる、えげつなく凶悪なフォルムをしている。ボールなどとは比較にもならない。
先ほど膣穴自涜に用いたディルドだ。赤子の腕ほどもあり、イボのあしらわれたソレを、容赦なくねじ入れてくる。
肛門括約筋が悲鳴をあげる。ギチギチと、直腸が張り詰める。尻穴どころか全身真っ二つにされるかのごとき圧迫感に、全頭マスクの下の目が見開かれた。
「おらッ、おらッ。お前がほしいっつったんだろうが、もっといい声あげてよがれっての!」
「っひッ、ぉおおッ、ぉああッ! っくはッ、っひ、いいぃいいッ!」
挿入するだけでも無理のある逸品を、無慈悲にピストンしてくる。戯画化したかと思うくらい大口を開いた肛門が、ぶぼッ、ブボッと汚い嬌声をあげている。排泄器官としての腸が終わらされていく。野太い玩具の、えげつないイボによって、快楽器官に造り替えられていく。
「ひぃいいッ、あぉッ、ォおぉおおッ……!」
ごりゅんごりゅんと、腹側の腸壁が抉り抜かれていく。肉壁越しに、本来ならあり得ない位置から膣道と子宮を刺激される。ペニスを咥えた陰裂から、ぶしっぶしっと熱い潮を噴き散らしていた。
「あーあーこんな無茶苦茶されて感じやがってよぉ、ルール無用かァテメェはよぉ!」
「ぉッ、がッ、あぁあッ! っひッ、ォッく、んぅううううッ……!」
さらには、腰を振りたくってくる。ヴァギナとアヌス、どちらかだけでも堪えがたいエクスタシーを、同時に叩きつけてくる。
あるタイミングでは両方ねじ入れて、下半身がギチギチに満たされる感覚を味わわせる。
あるタイミングでは、どちらも引いて、激しいセックスの最中に一瞬生じる切なさを感じさせる。と思いきや、交互にぶち込んで、わずかな休憩すら与えない。
「あぉおッ! ぉんッ、ひぃッ、許してっ、ゆるしてっ、ゆるしてェッ、ぉほぉおおん!」
どんな女でも、こんな風にされて正気でいられるわけがない。ただでさえよがり狂わされていた龍なら、なおさらだった。裏返りきった、尊厳の「そ」の字もない声をあげ、懇願する。一方で、腰はもっと嬲ってほしいとばかりにくねっているのだから、まったくどうしようもなかった。
「うるっせぇ女だな、ホレッ、コレでも咥えてろや」
「んぶぐッ!? モゴッ――」
周囲で見ていた連中が、堕ちに堕ちきった姿をヘラヘラと嘲笑っている。コレでも咥えてろと言われ、龍は期待を覚えた。きっとギンギンにいきり立ったモノを口にねじ入れられて、前後からペニスで串刺しにされるのだと。
が、現実は想像と少し違っていた。放り込まれたのは、玉状の何か。先ほど己が、肛門から疑似産卵したボールだった。
「けけけッ、てめぇのケツ汁の味はどうだよ、あぁ?」
「んぷぅ、レロッ、んちゅぅッ、れろッ、んふぅうう……ッ」
言葉で応えずとも、その様子を見れば一発で分かる。うっとりとした吐息を漏らしながら、頬をモゴモゴと蠢かしている。口内では舌が躍り狂い、玩具をレロレロと舐め回しまくっていた。
自分のケツ汁の味はどうか? ほんのり漂う苦味と臭み。美味しすぎて、今にも達してしまえそうだった。
「ぉッ、は。うぉおメチャクチャ締めてきやがる、ケツに入ってたもんしゃぶらされてコレだ。どういう頭してんだコイツ……!」
龍は風情を理解する女だ。ここにきて、嬉しさを言葉で示すのは無粋だった。今もほじくられるヴァギナの締まりで示すべき場面だった。
「ぉゥ、おッ、おッ、出すぞォ、ぉっほ、ッ、おらッ、お望み通りザーメンコキ捨ててやるよ便女がァ……!」
「んむぅんっ、んっふッ、れろぉッ、んちゅぅッ、ぉッ、おゥ、んんぅううんゥ……ッ!」
万人を狂わす魔性穴に囚われ、男は猛然と腰を振りたくる。ゴスゴスゴスと、子宮をサンドバッグにしてくる。意識がトびそうなくらいの快楽に襲われながら、龍もそれに応える。
「ぉッ、おおゥ、出すぞ出すぞ出すぞッ、おッ、ぉおおおおおッ!」
「んぶぅッ、んっく、んぽぁッ、あっはぁぁああああああッ……!」
子宮口と亀頭がみっちりとキスする。腰をがっしりと掴み、一ミリも逃げられなくしたうえで、男は無責任なる射精を始めた。
狸にも匹敵する、巨大なる天狗の精嚢が、ギュゥウッと縮み上がる。溜めに溜めた大量のスペルマを、鈴口よりぶちまけていく。
数え上げるのも馬鹿らしい、おぞましい量の精虫が、龍の子袋へと注ぎ込まれていく。長い鞭毛をビタンビタンと振り回し、子宮内壁の細胞を鞭打ちながら、奥へ奥へと泳いでいく。卵子を蹂躙して、龍を受精させるため。
その運動によって生ずる熱は、マグマと比較してもひけをとらぬほどだ。牝豚一匹を絶頂させるには、あまりにも十分すぎた。
下半身から背骨を通じ、圧倒的な量の快楽信号が叩きつけられる。伝達経路たる神経細胞が輻輳し、パンクし、灼かれていく。脳味噌の中で火花が散る。目の裏が白く弾けているのがそれだ。
あらゆる筋肉がめちゃくちゃに伸縮し、全身が痙攣する。Gカップバストがぷるんぷるんと揺れ、周囲の目を楽しませる。背筋は弓なりに反り返り、ボールを吐き出した口からは引きつって嗄れた嬌声があがる。結合部から噴き出した熱い潮が、激しい悦びを表現していた。
「ぉッ、おッ、お、ぉおお……。っはァ、いやぁ、出した出した」
絶頂は、一分ほども続いたかのように思われた。少なくとも龍にとってはそうだ。
男は低く呻きながら額に浮かぶ汗を軽く拭う。腰を引き、半萎えになった一物を抜いていく。亀頭が抜ける瞬間、いまだ痙攣している膣が、ぶぽんッ! と音を立てる。
粘液まみれの雄魔羅を、真っ赤に染まった尻肉で拭いた。彼女が望んだとおりの、ちり紙感覚の扱いだ。
龍はといえば、すっかり精魂尽き果てていた。もはや四つん這いを保つことすらできず、崩れ落ちて床に突っ伏す。
真夏に道端で潰れ干からびている蛙を思わせるポーズだった。がに股から、ぶぴっぶぴっと白濁を零している。尻穴にねじ込まれたままのディルドが、括約筋の収縮にあわせてヒクッヒクッと蠢いていた。
「何ヘバッてんだ? 便女がよぉ」
「んぐぅうッ」
顔面の圧迫感に、意識を取り戻す。後頭部を踏みつけられたのだ。
男たちは、龍をぐるりと取り囲んでいた。他の女を嬲っていた連中ですら、こちらに参加している始末だ。
「まだまだこんなモンで終わると思うなよ。テメェの穴っちゅう穴が擦り切れるまで使い潰してやるからな、覚悟しろよ」
「……あっはッ」
悪意が一斉に降りかかる。何人もの腕が、ペニスが、こちらへと群がってくる。快楽に蕩けてゆく中で、私の言ったとおりにして良かったでしょうと、典の声が聞こえた気がした。