ヒトの気持ちは分からない。
信じてちゃあまり、得しない。
でもまあ、それはそれで。
歪に不恰好に、でも形になれば。
「私たちが争う理由って、考えたら別に無いよね」
千夏先輩が晴れやかな笑顔でろくでもない事を言い出したものだから、私は危うくコーヒーを吹き出しそうになってしまった。いや、いやいや。争う理由はあるでしょうよ、だって私たちは同じ人を好きになった――ライバルなんだから。
私は大喜が好きで、大喜は千夏先輩が好きで。で、千夏先輩はあれこれとぼかしまくっては来たけれど、結局大喜が好きなんだ。そうなると、戦う他にない。それが現状の筈だ。
それとも身を引いてくれるだろうか、そうなら歓迎するけれど。
「私は蝶野さん嫌いじゃないし、大喜くんとお似合いだとも思うよ。でも私だって好き、ってだけで」
そこが大問題だとは思わないんだろうか、この人なんなんだ一体。
確かに私だって、千夏先輩は嫌いじゃない。と言うか尊敬できる人だとさえ思うし、そもそも敵に回したくはない。
「多分私たちにとっての最悪はさ、争ってる間に
……ふむ。確かに、それは。あれは見た目が可愛いし真っ直ぐで良いやつだから、モテるっちゃモテるんだ。本人がバカだからわかってないだけで。恋愛にはノックスの十戒みたいな、「犯人は物語の当初に登場していなければならない」というルールはない。ある日突然押しの強い誰かが大喜を強引に奪っていく可能性は、無くはないんだ。他所の女を近づけないためにも、ガッチリと周りを固めておくのも手かもしれない。
とは言え、だ。ここで私たちが手を組むっていうのは、アリだろうか。
「お互いの一番は大喜くんだし、大喜くんがどっちを好きかは無視しようよ。二人のモノってことにして、さ」
この人と来たらろくでもない暴論を、最高の笑顔で言い放つから困る。
まあ私としても突然乱入してきた知らない子に負けるくらいなら、とりあえず引き分けにしてしまう方が良いかもしれない。正直この人に勝てる気がしないし、負けて本望だと思える相手なんて他に現れないだろう。向こうもそう思ってくれてるかは知らないけどさ。
「それでね、考えたんだけどー……」
千夏先輩は全くもって、ろくでもない人だと思う。だからこそ強いんだろうけど。
あんなメチャクチャな事をよく考えるもんだ、と半ば呆れながらも私は準備に入っていた。千夏先輩も千夏先輩で、あれこれと用意に励んでいる。それが粗方済んであとは細かいタイミングだけ、となったのは秋風が吹き始めた頃。
長々とかかってしまったけれど、これでどうにかなりそうだ。
放課後部活を終えた時間を狙って大喜をよびだして、とりあえず向かい合う。
「なんだよ雛、改まって」
「あーいや、まあちょっと……ね」
さて、ここからだ。ここからが、本番だ。大喜に警戒されちゃうと、全部御破算だから。なるべく自然に、何気無く。
「今度の休みさ、どうせ暇でしょ? うち遊びにきなよ、中学ん時みたいにさ」
あの頃とは、違うけど。私も大喜も、変わったから。
でも、それでも。どうにか平生を装え、私。
「ん、良いけど。そういや久しぶりだな、お前んち」
……いや、そうやって普通にされるのもちょっぴり複雑だけれども。だけれども、これで良い。後は千夏先輩が何処まで上手くやってくれるか、だ。
発案者とは言え、不安だけど。とりあえず何とかなる、多分。
……どうにかなる、うん多分。八方丸く収まりはしないだろうけどさ。
両親不在の日を狙って誘い込んで、油断しているところでこっそりと逃げ道を塞ぐ。不信感を覚える前に、千夏先輩が持ってきたよくわからないのをお茶に仕込んで動けなくする。そして後は
よくもまあここまでろくでもない事を考えるもんだ、関心さえする。二人同時にそういう関係になってしまえ、と言うんだから。私も千夏先輩も、大喜を「独占」は出来ない。大喜はバカなりに責任感強いから、一度そうなってしまえば他の女に行く事はないだろう。それこそ押し倒されでもしない限りは。理想的な結果にはなれないけど、それでも悪くはない。妥協と言えば妥協だけど。
まあ、それは私たちの理屈であって。ひん剥かれた上口塞がれて転がされている大喜にしてみれば、ふざけんなって感じだろうけどさ。うん、それはそうだろうけど、さ。大喜の気持ちはこの際、無視しよう。私は私が大事で千夏先輩も自分が大事、だから大喜には少しだけ耐えてもらおう。そうしよう。
「はーい大喜くん、良い子にしてようねー。じゃないと、
笑顔で酷いことを言いながら、千夏先輩は大喜のそれ……オトコノコの根元を指先で弄んでいる。経験無いけど色々ネットで勉強したから詳しいよ、と言ってたけど、どんな勉強したんだろうこの人は。出来れば血腥い事は止めてほしいんだけどな、ここ私の部屋なんだから。
まあ、それはともかく、だ。大喜のオトコノコは、そんな扱いを受けながらも天井を向いて聳え立っている。興奮している、という事なんだろう。つまりこれは、合意が成立していると判断して良いケースだ。だから私も千夏先輩も、罪に問われることはない。多分。きっと。
にしても、見れば見るほど凶悪なデザインだ。神様の悪ふざけというか、悪趣味と言うか。これを、受け入れるのか。本当に入るんだろうか。……裂けたりしないと良いけど。そんな風に思いつつ、先輩の指が這い回るのを眺めていると。その先端部、小さく開いた口からはテラテラと何かが溢れてくる。
「男の子も濡れるって聞いたけど、こんななんだねー。蝶野さん、ほらほらー」
指でそれを掬い取って私の鼻先に突きつけてくる千夏先輩、物怖じしなさすぎですハイ。おずおずと嗅いでみると、汗のような感じ。まあこれくらいなら、まだ大丈夫かな。その指先を舐めてみても、変な味はしない。やっぱり汗みたいなもんなんだろう。
じゃあ、もしかしたら。意外と出来るかもしれない。友達が前に言ってた、あれが。
「大喜、ちょっとゴメンね」
むーむー言いながらもがいている大喜の、そのオトコノコへ顔を寄せて。私はそっと、……咥えてみた。フェラチオ、だったかな。たしかそういう「愛し方」があるって聞いたんだ。
「わー蝶野さん大胆ー」
囃し立てる声を聞きながらも、私の意識は口のなかに集中していく。大喜の身体が、私の中にいる。少し私が気紛れを起こせば、噛み千切れる。それくらいの強度で、大喜を支配している。これはなかなか、気分が良いかもしれないな。
妙な満足感に浸っていると、不意に舌が幹の脈動を感じた。なんだろ、と思って舐めあげると、その瞬間。
口のなかが、突然爆発した。
弾ける程の勢いで何かが放たれ、喉の奥を叩いていく。
「んぐ、……っ!?」
その不意討ちに思わず顔を放してしまった私の目は、口から抜け落ちたオトコノコに釘付けになってしまう。だって見てわかる程に激しく震えながら白濁液を放つその姿を、どう形容したら良いのか。多分これが射精って言うものなんだろう、自信はないけど。生臭く熱い精液は正直不快だけど、でもこれは大喜が悦んでいる証だ。大喜が私で、気持ちよくなったんだ。
これは完全に、合意が成立している。どう考えてもこれは、和姦だ。私にも頂戴、と唇に吸い付いてきた先輩と舌を絡めあいながら、そう確信する。
さぁ、ここからが文字通り――
自分ではそこまで深く弄らないけど、千夏先輩の指はなかなかに容赦がない。まるで私の勘所が全て分かっているかのように、的確に私のオンナノコを攻め立ててくれる。大喜が見ている、その事実も手伝って興奮が止まらない。気を抜けば、このまま絶頂に達してしまいかねない。
蕩けかけた意識をフル動員して、どうにか私も先輩へと手を伸ばしてみる。私より少し毛深いそのオンナノコは、でも吸い付くようなさわり心地。お邪魔します、と心のなかで断ってから肉の合わせ目へと指を潜り込ませていく。挟み込む圧力はキツく、ぬるついて絡み付く。私のとは違うような似ているような、良くは分からないけど。これは、凄く「良い」んだと思う。この人全身が美人なんだな、羨ましい。
「んー……っ、じゃあ、蝶野さん……。お先にどうぞー……」
私から引き抜いた指を舐めあげて、千夏先輩がそっと身体を離す。あれ、譲ってくれるんだ。この人の事だから、絶対自分が先にしたがると思ったのに。まあ、良いかな。気が変わられても困るし、良いって言うんだから。
仰向けにした大喜の顔の横に手を置いて、ゆっくり腰を沈めていく。後ろに回っている先輩に細かい位置を調整されながら、大喜のオトコノコ目掛けて降りていく。きっと先輩からは私の全てが丸見えになっているだろうけど、恥ずかしいとは思わない。と言うか、それどころじゃない。
クチュリと立った水音に、私のオンナノコと大喜のオトコノコがキスをしたのがわかった。このまま行けば、私は大喜の「初めて」になれる。大喜が私の「初めて」になる。ずいぶん乱暴なことしてるし、先輩にも多少は申し訳ないけど。止まるなんて選択肢は、私にはない。
硬く熱いモノが私の中を押し広げ、突き上げていく。大喜を呑み込んでいる、口よりも更に深く
落ちきったなら腰を持ち上げ、そして再びトスンと落下、を何度も何度も繰り返す。緩慢な上下動が身体の芯を揺さぶり、奥の奥まで燃え上がるように熱い。
腰の速度はどんどん上がり、ぱちゅんぱちゅんとリズミカルな音を奏で出し、目の裏側はバチバチと稲妻が瞬いている。もうじき、来る。今までに無い大きな波が、やって来る。それを予感した、ほんの少し後。
お腹の中にいるオトコノコが、大きく跳ね上がった気がした。それほど激しい痙攣と共に、何かが吹き上がっていく。さっき見た射精が、私の奥で始まったのだ。
ドクンドクン言いながら射精は止まらない、私の中に精液が染み透っていく。これはきっと先輩には聞こえない、私の中で巻き起こるイメージの音。でもそれが、堪らない。目を閉じてそのイメージを拡大していく。子宮の更に奥まで、大喜に染め上げられていく。気が狂いそうな、幸福そのものの心理風景。そしてそれは、形は違うけど現実になるんだ。
このままずっと繋がっていたい、子宮どころか全身を大喜一色にしたい。血の代わりに血管を満たしてほしいくらいだ。
でもそれじゃ、義理が果たせない。失神しそうな頭をなんとか引き戻し、根性で脚を動かしてどうにか大喜から降りて、千夏先輩に笑いかける。
「じゃ、あ……、次、先輩、どう……ぞ……っ」
さっきの私たちは、こんな感じだったのか。千夏先輩が大喜を呑み込んでいくのを至近距離で見つめていると、なんだか不思議な気もする。まるで捕食するかのように、ズブズブと大喜が千夏先輩の中に埋まっていく。生々しくて結構にエグい場面ではあるけれど、目が離せない。これが、セックスなんだ。私のを見ながら千夏先輩も、興奮したんだろうか。しないわけ無いか、うん。
ふと思い付いて横に回ってみると、これがまたスゴい。先輩が動く度、ゆさゆさとその胸が揺れ動くのだ。……大喜もガン見してるし。まあ楽しんでるんならそれで良いや、これは強制性交とかそういうものじゃないと本人が認めてる事になるし。それに今は、先輩の番だからね。
元の位置に戻って二人の接合部を凝視しつつ、計画がほぼ完遂出来そうな事を小さく喜んでみる。後は上手く
まあお陰で私たちは揃って超危険日、このまま大喜が動けなくなるまで交互にし続ければ多分当たるだろう。
そうなれば大喜くんは他所の女に興味なんか持てなくなるでしょ、責任感ってものがあるんだから。千夏先輩は自信満々にそう言ってたけど、それデキ婚目当てでゴムに針刺す行き遅れOLと変わんないんじゃないかな。普通の高校生がやる事じゃないよね、捨て身すぎる。まあ、それを敢えてやっているのが私たちなんだけどさ。
全部擲ってでも、大喜と一緒にいたい。独占できなくても、それでいいから。それが私たちの本心、の筈だ。
粘りけの強い抽挿音と切れ切れの喘ぎ声はどんどん強くなり、動きも激しさを増していく。これは、そろそろだろうか。そう思いながら、さっき潰されそうになっていた肉の袋を弄くっていると、突然大喜の身体が大きく震えるのが見えた。
接合部から覗いているオトコノコが激しく脈打ち、何かが中を駆け抜けていくのが分かる。射精したんだ、射精ってこうなんだ。私の中で射精したときも、こうだったんだ。
見えないけどイメージは出来る、千夏先輩のお腹の中。大喜の精液で満たされて、これから受精するんだ。私もそうなんだけど、人が妊娠する瞬間に立ち会っているわけで、なんだか感動してしまう。
「大喜くん、良くできましたー。良い子良い子ー」
呆けた顔の大喜、その頭を撫でながらぽややんとした声の千夏先輩。平和な人だな、ろくでもない事しかしない人なのに。
約束した通りイチャイチャしないで交代してほしいけど、まあ良いか。
「はいはい、先輩も良い子ですよ」
私も混ざりたいから頭を撫でてあげると、まるで猫のように可愛い顔でされるがままになる千夏先輩。ええい一々可愛いなこの人は、敵に回さなくてよかったわ。
二人がかりで男子を襲って、無理やり子作りさせて。そんな状況なのに、なんだか和んでしまう。
ろくでもない計画ではあったけど、悪くはないな。いやまあそうでも思わないと、色々とやってられなくなりそうなんだけどさ。
それから少し時は経って。陽性の線が出た妊娠検査薬を手にして笑いあったのも束の間、私たちは当然のように事後処理に明け暮れる事となった。まあ部活に関してはまだ良いとしても、日本は一夫一妻の国だからね。法律上、結婚できるのは片方な訳で。そりゃ私だって公に大喜と一緒になりたいけれど、その座は結局千夏先輩に持っていかれてしまった。
「大喜くんの初めてあげたんだから、こっちは私に譲ってくれない?」と可愛い顔で言われては、強く拒絶できなかったのだ。だからアッサリ譲ったんだな、この人は。まったく、油断ならないったら。
当の大喜自身はちょいちょい遠くを見るようになり、何もかも諦めてしまったような顔をしたりもするけど。それでも私たちには優しいし、なんとか頑張ろうとしてくれている。歪でメチャクチャな関係ではあるけど、これはこれで幸福だと認めてくれたんだろうな。
この先がどうなるかなんて分からないけど、でも。きっとどうにか、なるだろう。
私たちは、そうなるもんだから。
先輩がポンコツ化した、明るいバカエロだったハズなんですよ。