気持ちに戸は立てられない。
やりたい事は、止まらないから。
何処までも突き進む。
例え何を轢き潰そうとも。
何度同じことを思っただろう、どれほど焦がれた事だろう。
この瞬間をどれほど待ちわびてきたか、私がどんなに我慢してきたか。
大喜くんはきっと、知りもしないんだろう。こんな無防備で可愛い天使みたいな子に、こんな生臭い感情を向けて良い筈も無いんだけど。
それでも私は、ずっと思ってきた。背中を押してくれたあの日から、ずっとずっと。
こうして大喜くんを抱き締める、この瞬間を。
きっと大喜くんだって、分かってくれる。そう信じている。
思いはきっと、伝わるから。
人を好きになる暇なんか、あるわけがない。私はそう思って、今まで生きてきたんだ。
才能も無く運にも見放された私が上へ行くには、他の全てを諦めるしかない。バスケで勝ち上がる事だけが、私に残された唯一の道だった。
それなのに私は、それすら失う事になってしまった。親の海外転勤、というどうしようもない大きな力によって。
泣く気力すら出てこないまま、ただ死刑執行までの猶予期間を過ごしていたあの日。もし大喜くんがいなかったなら、私はそこで終わっていたんだ。
バスケを止めたくない、そして大喜くんから離れたくない。だから泣いて縋って歯茎を剥いて、更に物を投げて激しく吠えて力の限り暴れて、家族を力尽くで
そんなこんなで私は一人家族と離れ、紆余曲折の末に猪股家の居候となったのだ。
……正直、出来すぎている気もするけれど。
居候の私にちゃんと私室まで用意してくれる猪股家の皆様には、正直頭が上がりません。それも大喜くんの隣、絶好過ぎる配置で。……もしかしてくっつけようと言う算段なんだろうか、わたくし感謝します本当に。
夜の夜中に耳を済ませば、大喜くんの切なげな吐息が聞こえてきたりする。
「……っ、――」
何をしているのかなんて、考えるまでもない程よく分かっている。
大喜くんが、している。オナニーを。
男の子のオナニーなんて、ここに来るまで想像もしたこと無かったけど。隣から聞こえてくる物音がなんなのか、そっと確かめたから。この前、見てしまったから。
足音を殺して廊下に出て、僅かに開いていたドアの隙間から、確かに見たのだ。大喜くんの、その姿を。
あれを――オトコノコを握り締め、目を固く閉じて。息を荒げて、一心不乱に。ただ、していた。
もしこれが大喜くんでなかったら、他の誰かだったら、私は嘔吐の一つもしていたんだろう。でも大喜くんだから、それさえ愛おしかった。
そして更に愛しく思ったのが、その後。大喜くんの口から出た、小さな言葉。
「千……夏、先輩……っ」
その瞬間大喜くんの身体は大きく仰け反り、握り締められていたオトコノコは噴水のように白い飛沫を噴き上げていた。
保体で聞いた気がする、あれが射精なんだ。大喜くんは私の名前を呼びながら、射精したんだ。それは感動でさえあった。
そして部屋へと逃げ帰って尚興奮は収まらないまま、私はその夜何度もオナニーに耽ってしまったっけ。
あれから数ヵ月になるけど、今でも大喜くんの声が、気配が、私を発情させていく。
大喜くんの手を思い浮かべながら自分の身体を弄っていくと、すぐに身体が敏感に反応する。まるで条件反射のようだ。指先は堅く隆起する乳首を爪で弾くように移動し、脇腹を滑り落ち、そこから。ショーツの上を、這い回る。
モゾモゾと自分の股座を弄る姿は、絶対誰にも見せられない。……大喜くんなら、良いかもしれないけど。
グッと力を込めてクロッチを押し付けるように、
押し込んだまま前後に指を往復させると、粘ついた水音はだんだんと強くなる。頭の芯が少しずつほとびていくような、追い込まれる感覚。それはすぐに加速化し、そして――破裂する。
「ぁー……、あ"、ぉあ……っ」
口を閉じても尚止まらない、低い喘ぎ。快感が駆け抜けた証拠が口から抜けていく満足感と共に、身体をコテンと横たえる私だ。
ああ、また今日もしてしまった。そんな小さな後悔はでも、すぐに頭から消えてしまう。だって大喜くん、可愛いんだもん。あんな可愛い子がそばにいるから悪いんだよ。うん、私は悪くない。まあさしあたって問題なのは、このドロドロになったショーツだ。ぶっちゃけ着用済みの下着ってだけで汚いのに、オナニー後だもんなあ。とりあえず脱ぎ捨てて、足元へと蹴り飛ばしておく。
しっかし毎晩終わった後で同じことを考えている自分に、ちょっとだけ呆れてしまう。どうせ「まぁいいや、めどい。明日やろ」でこのまま寝ちゃって、明日ちょっと嫌な思いをするんだ。よくもまあ毎晩毎晩、飽きもせず。
でも、だ。これもまた、仕方がない。だって大喜くん、可愛いから。
大喜くんの可愛さ、その根っ子は純粋さだ。多分。真っ直ぐで時々おバカさん、つまりは可愛い。可愛いから、可愛い。うん、可愛い。
生産性のない不毛な納得はさておき、最近ちょっと気掛かりな事があったりする。大喜くんの
まあ、人はオトナになるものだから。それはそれで仕方がないんだけど、でもなあ。私としては、預かり知らない所で勝手にオトナになられると不愉快なのだ。
だって大喜くん、私のだもん。私は自分のモノを他人に弄られるのが好きじゃない、というか嫌だ。
大喜くんは私がオトナにしてあげないと、
そうだ、そうしなければいけない。
一度動きだした歯車は止まらない、くるくる
そっと部屋を出て、あの日のように足音を殺して忍び寄る。
大喜くんも今しがたオナニーを終えた筈だ、注意力は散漫になっているだろう。まあその辺はよく分からないけど、少なくとも私は終わって暫くはポンコツになるから、多分大喜くんもそうだと思う。……そのポンコツ頭で考えた事を、今こうやって実行しようとしてるんだけど、さ。
音を立てないようにそっとドアを薄く開くと、脱力しきったような吐息が漏れてくる。どうやら余程気持ちよかったようだ、すっかり顔が蕩けている。可愛いなあ、天使か何かなのかな。
凹凸の少ないフルフラットな肢体を駆使して隙間から入り込んで尚、大喜くんは気付かない。一仕事終えて満足げなオトコノコを掴んだまま、幸せそうに目を閉じている。
――と。桜色の唇が僅かに開いて、そして。
「千夏先輩……」
囈のように溢れたのは、私の名前。ああ、可愛いなあ。大喜くんは、可愛すぎる。あんまり可愛いから、――いじめちゃおうかな。
「はーぁーいーぃ」
耳元で囁くように返事してあげた、その瞬間。まるで爆発したかのように、大喜くんの身体が大きく跳ねた。
「ち、ちなっ、せ、何で、あぁっ」
狼狽という言葉を体現したように、面白いくらいに取り乱す大喜くん。まあ、そうだろうな。私だって、オナニー後の気が抜けた所でこんなことになったら、パニック以外の選択は無いだろうから。
でもさすがに、騒がれると不味いか。
「大喜くん、シー……だよ? 由紀子さんたちが起きちゃう」
左手を大喜くんの口に翳して言葉を制し、そして右手は足の間……オトコノコへと伸ばしていく。指でなぞってあげるとヒクヒクと震え、怯えているように思えてしまう。
あの日見た姿を思い描きながら軽く握り、ゆっくりと上下に擦っていくとその質感が変わり始める。肉が張り詰めて硬度が増し、手の中でムクムクと大きくなっていく。ああ、これか。これが勃起っていうやつか。結構不思議な感じだな、嫌いではないけど。
「大喜くん、どうして私の名前呼んだの? 私に
「あ……っ、そ……ごめん……なさぃ……」
謝る必要なんか無いんだよ、と私は大喜くんに微笑みを返す。そしてその合間も、右手の動きは止めてあげない。
少しずつ擦る音は湿り気を帯び始め、大喜くんの口からも小さな喘ぎが漏れていく。大喜くんを支配している、というちょっと物騒な快感。それが私を突き動かす。
やがてオトコノコはビクビクと震え出す、これは――知っている感覚だ。私がする時と同じ、高みへと登りつこうとする合図。
「ほら、大喜くん。
そっと耳朶を舐め上げ、大喜くんを追い込んでいく。早く見せてほしい、大喜くんの絶頂を。私以外にはきっと誰も見たことがない、その顔を。
「っあ、千夏、先……輩……っ!」
大喜くんがその声を放った刹那、私の手の中で拍動が弾けとんだ。
トクントクンと音がしそうな勢いで、オトコノコの小さなお口から白い濁流が迸る。こうして間近で見ると、驚きしか無い。私も大概汁っ気の多い方だけど、一回で放つ量は大喜くんの方が多そうだ。私の手の内には収まること無く、床に白い染みを広げていく。
手に残った熱い粘液を舐めてみると、青臭く苦い。でも頭の芯を痺れさせる、蠱惑的な味だ。……そっか、話に聞くファーストキスみたいに甘酸っぱくは無いんだな。まあ、大喜くんの味だから結局は美味しいんだけど。
「あ……あぁ……っ」
絶望を孕んだ声で踞ろうとする大喜くんの手を取り、そして。
「大喜くんは、ワルい事したわけじゃないよ? 私だって、大喜くんを想像してするんだから」
自分の脚の間へと導いていく。……そういえばさっき脱いじゃったから、私今ノーパンだ。ま、良いか。
大喜くんの指先が私に触れ、クチュリと音が立つ。オナニーの余韻と大喜くんの恥態で私はドロドロだ、大喜くんと同じくらいに。物心ついて以来誰にも触れさせていない場所に、他人の指が触れている。それ自体が興奮するのに、相手が大喜くんと来ているんだから濡れずにいられるわけがない。
「こんな風に、……大喜くんが触ってくれたら、ってぇ、思いなが……らっ」
グリグリと腰を押し付けて指の感触を楽しむのは、なかなかに刺激的過ぎる。普段なら緩やかに上がっていく段階を、急速に駆け上がっていく。こんな状態で、加減が効くわけがない。
困惑したままの大喜くんを
今の私がどんな顔になっているのか、自分では分からない。快感を貪るその顔は、きっと可愛くはないだろう。まあ、良いんだ。大喜くんになら、見られても構わないから。
むしろ見てほしい、私の全てを知ってほしい。
だから、そう。離さない、誰にも渡さない。
我に返って逃げ出そうとした大喜くんを抱き締め、ベッドへと倒れ込む。
私の思いが、伝わるように。私以外、見えなくなるように。
私は決意を込めて、キスしていた。
大喜くんの腕力は、私よりずっと劣る。私が激突上等のバスケでエースを張っているのは、伊達でも酔狂でもない。大喜くんが抵抗したところで、制圧するのは簡単だ。それに力だけの差じゃない、もっと根本的にも。
どんなに持ち主が拒んでも、もう一人の大喜くん――オトコノコは私に逆らわないから。
閉じようとする足を力尽くで抉じ開けて、オトコノコへと舌を這わせていく。経験はないけど、難しいものじゃない。だってチロチロと舐め上げていくだけで、さっきのように硬く逞しくなっていくんだから。オトコノコって、単純で可愛いな。
「や……ちな、先…輩……っ、ダ……メっ」
弱々しい声は、まるで私を促しているかのようだ。先輩としては、応えてあげなければいけないな。
一旦舌を引っ込め、ヒクヒク震えるオトコノコと向かい合い、そして。
「あー……むっ」
一気に根元まで、口のなかに包み込んであげた。
大喜くんは悲鳴のような喘ぎを漏らしながらガクガクと腰を震わせるけど、その程度で怯んだりはしない。
舌だけでなく口腔全体にオトコノコの味が広がって、頭が焼ききれそうだ。気が付けば大喜くんの足を押さえていた筈の私の手は、自分の足の間をグチュグチュと掻き回している。お尻が上がった分顔は大喜くんの腰へと密着し、オトコノコの先は喉にまで来そうになっていく。
苦しくて気持ちよくて、どうにかなりそう。いやもう、とっくに私はどうにかなっているかも知れない。こんな訳が分からない状況が、楽しくて仕方無いのだから。
呻くような切れ切れの嬌声を味わいながら、口全体で大喜くんを愛していく。私が舌を動かす度、顔を揺さぶる度、沸き上がる声が愛しくて堪らない。
もっと、もっと、もっともっともっと。
そう思いながら責め立てて、息が苦しくなりだした丁度その時。大喜くんが、いっそう高く呻きを上げた。
「ん、…ぁぁー……っ」
そして口のなかに広がった精液の味に、私は思わず喉を鳴らして嚥下してしまう。溢れてくる奔流が、心地よい熱を放ちながら胃へと落ちていく、その快感。ああ、良いなあ。大喜くんは可愛くて、気持ちいい。
オトコノコから放たれた精液を飲み干して、私はゆっくりと口を離した。息をするだけで、精液の匂いが鼻から抜けていく。身体の中が精液漬けになっていくようだ。不思議な感覚だけど、悪くない。どころか、とても良い。でもまだ足りないな、もっと激しく大喜くんを味わいたい。
その衝動に突き動かされるままに、私は大喜くんへとのし掛かっていく。大喜くんを、
いやまあ、確かに捕食ではあるのか。さっきとは、使う場所が違うだけで。
横たわった大喜くんの身体の中で、唯一立ち上がったままのオトコノコ。そこを呑み込もうと、涎を垂らして口を拡げる、私の――オンナノコ。ここは、その為の場所なんだ。
「こんなの……ダメ、です……。やめ……てぇ……」
怯えた声を上げる大喜くんは、でも身動ぎもしない。心が折れきって動けないのか、それとも実は期待しているのか。まあ、良いや。どうでも。
腰の位置を少しずつ調整し、そして。私は大喜くんへと、自分を落下させた。
「っ、あー……っ」
指さえ入ったことがない深さにまで、一気に異物が入り込んでくる奇妙な感覚。お腹の奥に伝わる、粘りけを帯びた熱。大喜くんに着地するまでの短い間に、言葉にならない複雑な感情が一気に弾けとんだ。
ああ、なるほど。これが、セックスなんだな。繋がっている所から全身に熱波が拡がり、焼けるように熱くなっていくのが分かる。そしてそれは、身体が動く度に加速していく。スクワットをするように腰を振りたくるだけで、どんどん快感が蓄積されていく。
ガチガチに硬いオトコノコが私の中をゴリゴリと削るように引っ掻くのが、お腹の最奥がコンコンと突き上げられるのが、気絶しそうな程に気持ちいい。
きっと大喜くんもそうなんだろう、もう怯えた顔ではないから。すっかり蕩けきって、快感に溺れている。さっき私が射精させてあげた時より、ずっと気持ち良さそうだ。
――ああ、そうか。大喜くんはもうじき、私の奥で射精するんだ。
ぼんやりとそんな事を考えてみると、お腹の奥から声がした気がした。一滴残らず飲み干したい、と。全く私と来たら、子宮まで貪欲なんだな。
腰を止めないまま上体を倒して、大喜くんにキスをして。そっと耳元で、囁いてあげる。
「ほら、大喜くん。……出して、ね?」
それが楔になったのか、私を撥ね飛ばすくらいに強く大喜くんの身体が痙攣してそして。
熱い熱い激流が、私の中で噴き上がった。
「――!?」
圧倒的なその量、勢い、そして熱。意識を刈り取って尚余り有るそれを受けながら、それでもなんとか踏み留まる。ここで気を失うなんて、
もっともっと、欲しい。もっともっと、大喜くんを感じたい。
夢中になって腰を振りながら、それ以外の全てが遠くへと消えていく。
ああ、――気持ちが良い、な。
それからの事。
私は我慢するのが心底面倒になってしまい、毎日のように大喜くんを押し倒しては使っている。
抵抗されたりされなかったり、上手くいったりいかなかったり。そんな感じで。
大喜くんの気持ちは、とりあえずどうでも良い。蝶野さんを好きになってくれたって構わない、とさえ思う。
二人がどうなろうと結局、大喜くんは私のモノなんだから。