これは、そんな男の元に美女とか美男が来てエッチしたとかではなく、髭を蓄えた神様に説教されて自慰をするだけの物語である。
「はぁ…はぁ…何故だ、何故なんだ!」
俺は怒りと焦燥感と共に一物をしごき続ける。かれこれ6時間は奮闘しているが未だに絶頂には達しなかった。俺はスマホを落とし自室の天井を眺め涙をこぼす。こんなに悲しいオ〇ニーがあるろうか。こんなのって…こんなのってないよ!!
スマホから放たれる青白い光がうっすらと天井を照らす。それはまるで俺が今越えられない快楽の壁の様だった。俺はあの先に行きたいと言うのに…。どんなオカズを使っても抜けない、そんな日々が続いていた。俺はスマホに映されたエロ画像を閉じて友達に電話した。
「なあ一郎、聞いてくれよ。どれだけ自慰に耽ってもイけないんだ」
『太郎、俺にどんなリアクションを求めてそんな電話をしたんだ』
「大好きなNTRモノをオカズにしてたんだ。でも駄目なんだ。誰がどんなふうに寝取られても少しも悔しく感じなくなった。被虐心がそそられなくて凌辱か甘々エッチにしか見えないんだ!どちらも守備範囲外で興奮できない!」
『他のジャンルを当たれよ。マゾ向けで調べればお前の性癖的にストライクゾーン来る作品があるだろ』
「それも頑張ってみたが攻めが甘すぎるかキツ過ぎて抜けないレベルで俺の守備範囲に収まってくれるものが中々ないんだ。カートに入れてた新作のCG集を全部購入して見てみたが絶頂には至らない…」
『じゃあ諦めてオ〇禁しろ』
そう言って電話を切られた。なんだよ、友達の真剣な相談なんだぞ!確かに今の時刻が23時と言うのもあるのだが…友達の真剣な悩みにもう少し付き合ってくれたっていいじゃないか!なんて薄情なんだ!!
しかしオ〇禁はしないぞ。ただ擦るだけで気持ちいい。こんなに金がかからない上に手っ取り早い娯楽が他にあるか!?俺は諦めない、俺は絶頂を迎えて寝るんだ!それから購入履歴を漁ってあらゆるジャンルを当たってしごいたが…結局抜けなかった。
「くそう、自慰はリアルが充実しない人間への救済措置ではなかったのか。数少ない娯楽を享受する事もできないというのか。気持ち良くない人生に何て意味はあるのか?」
俺は枕を濡らしながらスマホを閉じて眠る事にする。
気が付くと俺は雲の上にいた。不思議な事にこれが夢である事は何となく自覚があった。これは現実じゃない。夢の中で夢だと気付くのは初めてで、自分はここでどうしたらいいか分からなかった。しばらくすると目の前に光の玉が降りて来る。
それはやがて人の形を作ると、立派な髭をたくわえた老人になった。
「苦心しておるようだな」
「なあ、俺には分かる。あんた神様なんだろ!助けてくれよ!1人エッチが捗らないんだ!」
「まあ聞け。私が教えを諭し導いてやろうというのだ」
「神様はいつだってそうだ、適当な事を言って人を弄んで!俺が欲しいのは御託じゃない、もっとストレートな救済なんだよ!」
「神様だって君が思うほど万能じゃないんだよ」
何が神様は万能じゃないだ。人間を作ったのは神様なんだろう?作るだけ作っておいて手に負えなくなったからポイ捨てか?最後まで面倒見れないなら人間なんて作るんじゃないよ!
と言う怒りはあったのだが、神様がくるみ割り器を両手に俺の股間を注視してくるのでこれ以上言わないでおく事にした。
「それで、どうしたらいいんだ」
「お前は極上のオカズを食い荒らした。そしてどんなオカズにも満足できなくなった。そうだな?」
「そうなんだ。性欲はあるのにそれを発散する事ができない。それがこんなに苦痛だと思わなかった」
体の中に滞るリビドーが蠢いている。これを発散させずに過ごす悶々とした時間と来たら拷問にも等しい。神様は俺のスマホを取り出すと画面を弄って何かを見せる。一時期抜き過ぎて飽きて抜けなくなったエロ同人だ。これが何だと言うのだろうか。
「これで抜け」
俺は首を傾げる。この神様は話を聞いていなかったのか、あるいは3秒以上前の記憶を保持できないのか分からないが抜けないから悩んでいると言うのに抜けとは何事だろうか。
「太郎、貴様は間違っている。貴様はエロを前に余りに受け身でお客様気分なのだ。まるで性行為を相手が自分を気持ち良くするためだけに行う奉仕活動とでも勘違いしているマグロの様にな」
「神様、ひょっとして恋人と上手く行ってないの?」
神様からビンタされた。なんで?
「太郎、貴様の自慰はそんな物ではないはず。もっと真剣になるのだ。貴様ならできる。見て、聞いて、感じて、想像して真剣に抜け」
真剣に…。
俺はスマホに向き合うと、最初にこのエロ同人を初めて見たあの頃の初々しい気持ちを思い出す。あの頃はとても興奮した。作画は粗削りながら非常に扇情的で、擬音語がイラストに音と間を与えてくれる。フキダシの位置や文字数は少ないのに的確に情報量を増やしてて読み進める速度を落とさない。
お客様気分…。そうだったかもしれない。素晴らしい作品の数々に会って、いつの間にかどんな作品にも満足しなくなって行った。目が肥えて行った。色んなものを購入しては、評論家気取りで批評していい気になってた。
俺が自慰でイケなくなったのは他でもない俺が自分にかけた呪いだったのだのだ。必要なのは極上なおかずじゃない。そのおかずで抜いてやろうと言う気位。初心を忘れ、ただシコリティの高い物を求めてばかりいたから俺はこんな事にも気付けなくなって行ってた。だからこんなにもイケなくて…。俺が馬鹿だった。
「今こそいきり勃つ時!」
下腹部に力を込めて一物を起立させる。スマホを片手に天を穿つために勃ち上がったその怒りん棒をしごく。
「ふふ、どうやら覚醒したらしいな。そうだ、その調子で昇りつめろ」
「うおおおおおおおおぉぉぉぉっ!!」
見ろ、絵のタッチから来るキャラの微細な感情を。聞け、擬音語が伝えようとしている音を。感じろ、キャラの息遣いを…場の雰囲気を…匂いを。全てを脳の中で再現して世界を膨らませる。限られた世界を拡張する。視界にバチバチと星が飛び出す。こんな物じゃない、まだ興奮が足りない。
激しい快感が大きな波となって俺にぶつかる。巌と化した俺の心を砕かんとぶつかって来る。だがまだだ、まだこんな物じゃ俺は快感の波に流されない!もっとだ、もっと激しく強い快楽を!!
「何でもいいけど一物をこっちに向けないでて欲しい」
「唸れ!俺のリビドー!迸れ!俺のスペ〇マ!陰茎大爆発!!」
俺は精巣にため込んだ白濁液を全て放出して神様にぶつける。濃度、量、勢い共に凄まじい物で神様を宙へ飛ばしてしまった。
「ありがとう神様…」
この出来事は一生忘れない。神様に感謝。何だか疲れて、夢の中だと言うのに眠くなって来た。やがて意識を失い……。
やがて目が覚めた。あの夢は本当の出来事なんだろうか。それはただの人間である俺には知りえない事だった。ただ気持ち良かった。それは間違いない。俺はスマホを取り出すと電話の履歴から一郎に電話をかける。
「一郎、俺イケたよ。気持ち良かった」
『〇ね』
電話が切れた。いくらなんでも〇ねは酷くない?確かに今の時刻が深夜2時と言う事もあるけども。薄情な奴だ。俺はスマホを充電器に繋ぐとそのまま仰向けになって空を眺める。あんなにも気分が鬱屈としていたのに、今は星空が輝いてて綺麗だ。
起床時間までまだ時間がある。もう一発ぐらい抜いて寝よう。俺は星空をおかずに一物をしごきだした。今日と言う日に、美しい星空に感謝だ。今日もいいオ〇ニーができますように…。