両親や唯一無二の親友を殺された主人公が、復讐する話。いけ好かない優等生から、幼馴染の美少女を寝取って、犯して、それを優等生に見せつける話でもあります。

設定はハードですが、悲壮感のない、爽やかな語り口のお話です(多分)。

※内輪ネタ(?)頻出注意

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Dのいない世界で ~幼馴染の美少女を寝取り犯して復讐する話~

 テーブルの上に、食べかけのショートケーキ。

 ソファーに座る俺は、おあずけを食らっている状態だ。

 手を伸ばそうにも、股ぐらでフェラチオをしている女が邪魔で、身動きが取れない。

 

「んぶっ…じゅぶぶ、じゅぼ、ほひははん、ひもひい?」

「いや何言ってっか分かんねーよ」

「ぷぁっ、もう……気持ちいい? って聞いたの」

「いや全然。早くケーキ食いたい」

「……もう、相変わらず甘いもの好きよね」

 

 黒髪ショートカットの美少女が、ケーキを皿ごと持って、俺の膝に乗っかってきた。

 

「なんじゃい」

「はい、ア~ン」

「いや、自分で食わせろよ」

 

 少女の手からフォークを引ったくり、ケーキを口に運ぶ。

 うん、美味い。

 ケーキはこの少女の手作りだ。

 高校にも行かず、甘党な俺のためにケーキ屋でバイトしている。

 本人は和菓子職人になりたかったらしいが、俺が大の和菓子嫌いと知るや、あっさり夢を諦めやがった。

 

「ねぇ、ケーキ食べたら……しよ?」

 

 少女が、たわわな胸を寄せてきた。

 すでに臨戦体勢で、上半身を脱いでいる。桃色の乳首は、確かに美味しそうだ。

 ガキの頃はぽっちゃりだったくせに、中学からダイエットして、気づけば小柄美少女だ。

 痩せたのに、逆に乳は肥えやがった。

 

「いや、俺ブスに興味ないから」

「もぅっ、昔と違うよ! バイト先でもいっぱい告られるくらいには可愛くなったもん!」

「それ、すぐヤレると思われてるだけだろ」

「違うもん。初めての相手は、決めてるし……」

 

 少女が俺の口に付いたクリームを舐め取る。

 

「ね、しよ。中に……出してもいいよ?」

「だから、俺、お前とはそういうことしないって言ってんじゃん」

「散々しゃぶらせといてよく言うよ! もしかして、ブス専?」

「もしそうならお前に惚れてるよ」

「ひどい~!」

 

 ふと、視界に影がかかった。

 振り返ると、大柄な男がソファーの後ろに仁王立ちしていた。

 

「仲が良さそうじゃねぇか……ぶべっ」

 

 男の顔に、ケーキが衝突した。

 

「もう、お兄ちゃん! 勝手に入ってこないでよっ!」

 

 男は顔にくっついたクリームとスポンジをゆっくり拭うと、ため息をついた。

 

「いやここ俺ん家で、ここ俺の部屋……」

「もう、お兄ちゃん最低! えっち!」

 

 少女は怒りながら、部屋を出ていってしまった。

 男はまたも大きなため息を付きながら、俺の対面のソファーに座った。

 こいつは俺の幼馴染で通称「デブ」。ブスの兄貴だ。

 高校を卒業してひとり暮らしをしていて、根無し草の俺はちょくちょく寝床にさせてもらっている。

 

「で、デブ、なんか用か?」

「あのなぁ……住まわしてタダメシ食わせてやってんのに、その呼び方は――」

「あ?」

「……いや、すまん」

 

 昔は喧嘩負け知らずだったデブも、今となっては俺に頭が上がらない。

 

「で? こっち絡みなんだろ?」

 

 そう言って、俺は手で注射器のジェスチャーをする。

 

「ああ、俺らのシマでDを捌いてたヤツラ、そのアタマの居場所が分かった」

「今日、襲撃するか?」

「お前さえよければ」

「俺はいつでも準備万端だよ」

 

 デブはこう見えて、この辺りのガラの悪い連中を束ねている、まあボスみたいな存在だ。

 おかげで半グレやヤクザも、このへんでアコギな商売はできない。

 ただ、たまーに、こうしてドラッグ――通称「D」を撒いたりする輩が現れたりする。

 そういうとき、俺の出番だ。

 

「場所は丘マンションだ」

「そうか。じゃ、早速いくか」

「あ、あー……俺の、妹とはその……もういいのか?」

「ああ、ブスとはヤんねえから」

「お前、人の妹をブスとか……あんなぁ、妹はお前に振り向いてもらおうと、一生懸命努力して綺麗になったんだぞ」

「分かってるよ」

「じゃあ少しくらい気持ちに応えてやったって……」

「悪いな。それは無理なんだ」

 

 まったく。

 こんな俺のどこがいいんだか。

 どんなに冷たくしても、一途に気持ちをぶつけてくる。

 普通だったら、有り難いシチュエーションなんだろうな。

 

 俺は首につけたペンダントに触れる。

 出動するときの、いつもの願掛けだ。

 

「さ、ぶっ潰しに行くか」

 

 

---

 

 

 丘マンションは、近所の山を丸々コンクリート漬けにした、階段状のマンションだ。

 この辺りのセレブが集まる、いけ好かない場所。

 とはいえ最近は入居者の高齢化だの空室増加だの、いろいろ問題含みらしいが。

 

 入口に近づく。当然のようにオートロックだ。

 

「んじゃ、登りますか」

「え、登るって、壁をか?」

 

 デブが素っ頓狂な声を上げる。

 

「お前はデブな上に馬鹿か。ほら、あそこの斜面を登るんだよ」

 

 コンクリートに埋もれていない、ほんの少し自然が残っている場所を指差す。

 

「いやでもよお、服が汚れちまうよ」

「だからてめーはデブなんだよ。ガキの頃はよく泥だらけで山登っただろ」

 

 俺は斜面をよじ登り、木々の中を進む。

 木の匂いが懐かしい。

 階段状のマンションを横目に斜面を登る。

 しばらく歩くと、お目当ての部屋が見えてきた。

 

「ここだな。よっと!」

 

 俺は助走を付けて、部屋のベランダに突っ込んだ。

 勢いで、窓ガラスにぶつかる。

 

「いってぇ」

 

 すると部屋の中から、男たちの声がした。

 なんだなんだと騒いでいる。

 窓の鍵は……お、ラッキー、開いてる。

 

 ガラガラと中に入ると、すでにエモノを持って構えている輩たちがいた。

 

「こんちわ~」

 

 気軽に声をかける。

 

「てめぇ一人か!?」

「ああ、一人でできない喧嘩はするなってね」

 

 そう言って笑いかけると、男達が襲いかかってきた。

 

 

 

 

 しばらくして、デブがベランダをよじ登ってくる。

 まったく。ほんと情けないヤツ。

 部屋に入ってきたデブは、目を見開いた。

 

「おま……これ、一人で?」

「ああ」

 

 部屋の中で、まともに口をきけるのは俺だけ。

 他はほとんどが床に転がっている。

 まあ、俺も体中傷だらけで、こうやって座っているのがやっとだ。

 

「相変わらず、お前は狂ってるよな……」

 

 別に、俺は喧嘩が強いわけじゃない。

 ただ、どんなに殴られても、蹴られても、勝つまで諦めないだけだ。

 

 

 少しして、足に力が入るようになってきた。

 部屋の隅では、デブが、主犯格を詰めている。

 

「――だから、俺も、人から言われて捌いてただけなんだって!」

「じゃあそいつの名前を言えやゴラァッ!」

 

 まったく、威勢だけはいいデブだ。

 でも多分、この感じは口を割らないな。

 バラしたら殺される……そんな顔をしている。

 

「くそ、くそが……!」

 

 主犯格の男が、懐に手を入れた。

 俺は咄嗟(とっさ)に男に飛びかかり、手首をひねり上げる。

 

「拳銃(チャカ)か。物騒なもん持ち込んでやがんな」

 

 男の手から銃を奪い、上着の内ポケットに仕舞った。

 デブは、腰を抜かしていた。

 

 

---

 

 

 俺たちは、マンションのエントランスから外に出た。

 

「おいデブ、そんなにガッカリすんなよ。もう奴ら、この町じゃ生きていけねえよ」

「でもよぉ、一番の悪党のしっぽすら掴めなかったんだぜ」

 

 悪党か……。

 俺たちも、人によっては悪党に見えるんじゃないか?

 なんて言ったら、自分を「正義の味方」だと思っているデブは余計落ち込むだろうな。

 

 デブの背中をポンポンと叩きながら歩いていると、後ろのほうで自動ドアが開く音がした。

 ドアから出てきた人影を見て、俺は咄嗟にデブを引っ張り、マンション外の茂みに隠れた。

 

「お、おい、どうしたんだよ?」

「し、静かにしてろ」

 

 エントランスから出てきたのは、一組の男女だ。

 男のほうが、女の頬に手を添えている。

 

「おい、あれって……」

「ああ」

 

 女は、俺らと昔なじみの美少女だ。

 いや、「天使」と言ってもいいくらいのスーパー美少女だ。

 男のほうも見知った顔。付き合いは薄かったが、昔遊んだこともある「優等生」。

 

 優等生は、どうやらキスをしようとしているらしい。

 天使は、それをやんわり拒んでいるように見える。

 痺れをきらしたらしい優等生が、天使の肩を掴み――強引にキスをした。

 

「お、おい、その手、大丈夫か?」

 

 デブが声をかけてくる。

 俺は拳を握りしめ、そこから血が滴(したた)り落ちていた。

 

 

---

 

 

 デブをお家に帰した俺は、天使の後をつけていた。

 頃合いを見て、声をかける。

 

「おーい」

 

 パッと天使が振り向く。

 俺の声に瞬時に反応したという感じだ。

 

「ああ、びっくりした……久しぶり」

「久しぶり。偶然だね」

「高校……ぶりかしら?」

 

 天使はニコリと微笑んだ。

 俺たちは別々の中学に進み、高校も離れ離れで、大学は――俺は行ってないし彼女がどこ大なのかも知らない。

 高校の頃、小学校の同窓会で会って以来だ。

 その時もびっくりするくらい可愛かったが……。

 

「なんか、すっげぇ綺麗になったな」

「もう、そんな冗談やめてよ」

 

 そうやって恥ずかしがる仕草は、ガキの頃と変わってない。

 俺はなんだか胸のあたりがぽかぽかして、泣きたくなった。

 

「ちょっとその手、どうしたの!?」

 

 言うやいなや、天使が俺の手を包んで広げた。

 

「それにその顔、っていうか、体中傷だらけじゃない! ちょっとそこ座って。簡単な救急セットしかないけど」

 

 公園のベンチに座らされ、天使の治療を受ける。

 薬局に売ってるような消毒液を塗られ、絆創膏をペタペタと貼られた。

 

「あーうん、ゴメン。ちょっと転んじゃって」

「相変わらず、おっちょこちょいなんだから」

「ゴメン……」

 

 顔中が絆創膏だらけになった頃に、天使が聞いてきた。

 

「まだこの町に、住んでるの?」

「ああ」

「どこ? 教えて」

「ゴメン、俺、根無し草なんだ」

「え、住む所ないの!?」

「あ~……なんか引っ越す度に泥棒に入られちゃってさ」

「もう、またそんな冗談言って!」

 

 何となく気まずくなり、俺は話題を変えた。

 

「ところで、いつもそんな治療道具持ち歩いてんの?」

「ああ……これね。子どもの頃、誰かさんがいっつも転んだりケガするから、持ち歩くの癖になっちゃったの」

 

 天使が、イタズラっ子のような表情を向けてくる。

 俺は恥ずかしくなり、真っ赤になって俯いてしまった。

 

 そこからは、ポツポツと近況報告をしたり、聞いたりして、彼女の家まで歩く。

 子どもの頃と同じ家が、昔と変わらずそこにあった。

 よくこの門の前まで、遊びに誘いに来たっけな。

 

「ねぇ、また会えるかしら?」

「うん、近々会えると思うよ」

「そう……良かった。もう、いなくなったりしないでね」

 

 そんな顔されると、俺もいたたまれない。

 うん、話題を変えよう。

 

「ところでさ、さっき、見ちゃったんだけど。あの優等生くんと付き合ってんの?」

「え、見てたの!? ……ど、どこから?」

「あー……」

 

 しまったと思った。

 すいぶん気まずい話題を振ってしまった。

 

「ぶっちゅ~ってしてるとこ」

「もうっ、あれはあの人が勝手に!」

「いつから付き合ってんの?」

「付き合ってない! 何回か誘われたけど、断ったわ」

「なんで?」

 

 俺の頭にクエスチョンマークが浮かんでいたのだろう。

 天使はムッとして、「もう知らない!」と言って、家に入っていった。

 

 ――と思ったら、出てきた。

 ドアからヒョコッと顔だけ出して、こちらの様子を伺っている。

 

「……連絡先、教えてくれる?」

「ああ、もちろん」

 

 俺は久しぶりに、本当に久しぶりに、心から笑った。

 

 胸元のペンダントを握り、覚悟を決める。

 

 この天使を、犯す。

 

 

---

 

 

 高層マンションの最上階。

 小学校の教室の何倍もありそうなリビングで、俺は優雅にソファーに腰掛けていた。

 デブの家とは世界が違う。

 テーブルの上に、何十枚という紙資料が置かれた。

 

「これで全部か?」

 

 俺がそう言うと、対面に座る男――通称「ボンボン」がビクッと肩を震わせた。

 

「う、うん……探偵と興信所に依頼しまくったから、これが全部だよ」

「そうか」

 

 資料には、天使と優等生の隠し撮り写真、プロフィールや互いの通話記録、LINEのやり取りなんかもあった。

 

 天使は、高校を卒業した後、偏差値が低くも高くもない大学に入り、女子アナを目指してスクールに通っているらしい。芸能事務所に所属して、少ないながらもテレビの仕事もしていると。

 子どもの頃は、看護師とか保育士になりたがっていたのにな。

 

「ね、ねぇ……」

 

 優等生のほうは、ふむふむ……親父が警察官僚だったのか。高校卒業後はトップクラスの大学に通い、若くしてベンチャー企業も立ち上げていると。絵に書いたような優等生だな。

 そんで、可愛い女子アナと結婚してってか?

 ずいぶん出来すぎな話だ。

 

「ねぇってば!」

「んだよボンボン?」

「僕の声、聞こえてるでしょ!」

「……依頼料なら出せねえぞ」

「そんなのいらないよ。君、文無しでしょ?」

「チッ、すねかじり野郎が」

「そんな呼び方しないでよ、協力してあげてるでしょっ」

 

 相変わらずキーキーうるさいヤツだ。

 でもこいつもガキの頃からの付き合いだ。信頼できるヤツではある。デブと同じくらいには。

 親が金持ちだから、俺の財布として使ってやっている。

 まあ、事あるごとにタカっているとも言えるが。

 

「……もう一つ、協力して欲しいことがある」

「え、嫌だよ」

「殺すぞボンボン」

「ひっ」

 

 やばい。つい威嚇してしまった。

 人に物を頼む態度じゃないよな。

 父と母が生きてたら……あの親(・)友(・)が聞いてたら、きっと怒られちまう。

 

「あーすまん。ボンボンさ、カラオケ店の経営任されてたよな?」

「ああ、あの空き地に建てたやつね。最近全然うまくいってないんだよね~。やっぱあの立地じゃダメなのかなぁ」

 

 相変わらず聞いてないことまでベラベラうるさいヤツだ。

 

「そこ、一日貸し切りにできないか?」

「え、いいけど。何に使うの?」

「天使を犯す」

「ひっ」

 

 元々色白のボンボンの顔が、サッと青ざめた。

 

 

---

 

 

 休日の昼下がり。

 俺は、天使の家のインターホンを押した。

 

「はーい」

 

 家の中から、鈴を転がすような声がした。

 ドアが開いて出てきた天使は、よそ行きの格好に身を包んでいた。

 化粧をして、アクセサリーを付けた彼女は、控えめに言って、そこらのアイドルを凌駕する可憐さだった。

 

「どう……かな?」

 

 恥じらいながら聞いてくる様子が、可愛すぎた。

 

「あー……今日は時間通りに出てきたね。てっきりお風呂にでも入ってるかと思ったよ」

「もう、いつの話よ!」

 

 子どもの頃は、よくお母さんが出てきて「まだお風呂なのよ」と謝られたっけ。

 

 俺たちは、近所の見慣れた道を歩いた。

 

「それにしても、カラオケに誘われるとは思ってなかったわ」

「俺たち、中学高校も、カラオケだけは行かなかったもんな」

「そうね、彼には悪いことしちゃったかな」

「いや、それはあのデブの自業自得だろ。ありゃ騒音なんてもんじゃねえよ。音害(おんがい)」

 

 昔話に花が咲く。

 

 俺たちがガキの頃によく遊んだ空き地に、カラオケ店はあった。

 店に入り、無人の受付を素通りする。

 

「あれ、店員さんは?」

「今日、貸し切りなんだ」

「え、どうして?」

「ちょっとしたサプライズがあってさ」

 

 一番奥の、一番広い部屋に入る。

 真正面に100インチの大型ディスプレイが設置されていて、その手前にハンディカメラがつながっている。

 

「ねぇ、これ何?」

 

 さすがに彼女も、何か不穏なものを感じたのだろう。

 

「まあ、座って。飲み物何にする?」

「じゃあ、ホットミルクで……」

 

 俺は内線で飲み物を頼む。

 しばらくソファーに2人で座る。お互い無言だ。

 少しして帽子を目深に被ったボンボンが、飲み物を持ってきた。

 

「さ、飲もう、乾杯!」

「あ、うん」

 

 天使は、緊張しているのか、ごくごくとミルクを喉に流し込んだ。

 

「あのさ、ちょっと大事な話があって」

「な、何かしら」

「まあダメもとなんだけどさ、俺に抱かれてくれないかな」

「は……? 何の、冗談?」

「いや、ゴメン。冗談じゃ、ないんだ」

 

 俺は、戸惑う天使に顔を近づける。

 

「や……ちょ、待って、待って! そんな突然……」

「ゴメン、もう時間がないんだよ」

「どういう、こと? ん、ちょ……」

 

 彼女が手を突き出して、俺の接近を阻もうとする。

 それを、優しく掴み、どかしていく。

 

「早くしないと、君はあの優等生野郎に、ヤられちゃう……かもしれない」

「何それ、私、断ったって……あ、いや、んむっ」

 

 どんどん力が弱くなっていく天使を抱きしめ、形のいい唇に唇を重ねる。

 

「んむっ、んっ……あ、いや、んちゅっ、んんっ……」

 

 彼女の吐息から、ほんのりウイスキーの香りがした。

 資料にあった通り、彼女はお酒にとびきり弱い。

 今も、無理やりベロチューされているというのに、ほとんど抵抗できないでいる。

 

 優等生のネットの購入履歴には、見覚えのあるお酒の銘柄があった。Dと組み合わせると、危険なデートドラッグになる酒だ。

 多分、優等生こそが、デブの言う一番の悪党に違いない。

 

「んむ……ぷぁ、ちょ、どう……して? あっ、いやんっ!」

 

 天使の胸に手を伸ばし、優しくおっぱいを揉む。

 ガキの頃、何度かお風呂を覗いてしまったことがある。

 その記憶にあるよりも、はるかに豊かなふくらみが、手に伝わってくる。

 

「やだっ、えっち! あんっやめ、やめてってばぁ!」

 

 問答無用で上着を剥がし、その下のシャツを脱がし、ピンク色のブラジャーも外す。

 彼女が「いやぁ」とか「きゃあ」とか悲鳴を上げたので、キスで黙らせる。

 その隙に、スカートに手をかけ、これも脱がす。最後にブラジャーと同じ色のパンティーを下ろすと、淫靡な逆三角形が現れた。

 

「うっ……ひどい、なんでこんなことするの……」

 

 すっかり裸ポンポンにされ、涙を流す天使を見つめる。

 ずっと、好きだった。

 ガキの頃から、ずっと。

 この子を手に入れるためなら、運命にだって抗うと、俺は親(・)友(・)と約束したんだ。

 

「好きだ。昔からずっと、好きだった」

「なによ……だからって、こんな酷いことするの?」

「それは、ゴメンよ」

「あなたのこと、見損なった」

「いいよ。でも他の男にくれてやるつもりは、ねーから」

「え……きゃっ、あ、あんっ」

 

 俺は彼女に覆いかぶさると、乳房に吸い付いた。

 力無く邪魔をしてくる細い腕を、優しく払いのける。

 天使のおっぱいは柔らかく、なんだか落ち着く匂いがした。彼女の匂いだ。

 口を限界まで広げて、そのふくらみをしゃぶる。

 その中心でコリコリに固くなった乳首を舐めた。

 

「やあ、んっ……やめてぇ……!」

 

 乳首を舌で転がしながら、大きさや硬さを確かめる。

 今日の石鹸かボディソープか、少しフルーティーな味がした。

 

「あんっ…ちょ、すわないでぇ……ああんっ、もおぉっ」

「なぁ、ここ、すっげぇ濡れてる。もしかして、期待してた?」

「ああんっばか、えっち! ちがう……ちがうもん!」

 

 チュプリと、濡れた秘所に指を浸すと、天使は罵倒と嬌声を上げ始めた。

 

「ばかぁ、あん、やぁっ……ばか、ばかぁ……」

「幻滅した?」

「も……きらい、だいっきらいっ……こんなこと、しなくたって、わたし……」

「ゴメン、挿れるよ」

 

 いそいそとジーパンを脱ぎ、トランクスも脱ぎ捨てていた下半身を、ゆっくり埋めていく。

 

「ひゃ、ああんっ……やぁっ、やめ……」

 

 ニュププッ……ニュプ……ズプッ……ズプン。

 

 彼女の顔色を見ながら、時間を掛けて挿入する。

 ゆうに一曲歌い終える位の時間を使って、奥まで突き入れた。

 

「うっ……ふ、う……く、ふぅ……ふ、んっ……」

 

 処女を貫かれた痛みか、肉棒に侵入された異物感か、その両方か、彼女は苦しそうにうめいていた。

 

「ヤバい、膣(なか)がクニクニ動いて、俺のに絡みついてくる。すっげぇ、気持ちいい」

「あ……んっ、や、うごか、ないでぇ……」

「感じてる顔、むっちゃ可愛い。真っ赤になって耐えてる表情、むっちゃそそる。このままグチャグチャにしちゃいたい」

「うう……そんな、ジロジロ見ないで……恥ずかしい……あっ、ああんっ!」

 

 彼女の膣中(なか)でだいぶ俺のが馴染んできたみたいなので、ちょっとピストンしてみる。ほんの少し、数センチ前後に動かすだけ。

 

「きつい?」

「ん……だいじょうぶ……」

「じゃあ、もうちょい動くね」

 

 ズッ……チュ、ズッチュ……ズッチュ……ズッチュ……。

 

 ゆっくり腰をくねらせ、天使の膣をかき混ぜる。

 肉棒で探るように、彼女の気持ちのいい場所を探す。

 初めてでいきなり気持ちよく……なんて期待していない。ただ、なるべく、痛くないように。できるだけ、辛くないように。

 

「あっ……んっ、あんっ、あ、んんっ……」

 

 次第に、彼女の声に嬌声が混じってきた気がする。

 ゆっくり動いて、少し休ませる。

 またゆっくり動いて、今度は少し早く、長く。

 また止まって、休ませる。

 休んでる間は、唇や頬、胸やその先端にキスをする。

 そんな繰り返しが、どのくらい続いただろうか。

 

「あんっ、あ……やん、あっ、んんっ……あんっ、あんあんあんっ」

 

 いつしか彼女は、快感を口に出していた。

 

「大好きだ。とても……」

「あん、あっ、わたしも、よ」

「へ?」

 

 今、私もって言ったか?

 俺の耳、ネズミに噛じられでもしたか?

 

「もうっ、なんで鳩が豆鉄砲を食ったような顔してるのよ」

「いやだってよ……言っちゃなんだけど、俺今、君にヒドいことしてるワケで」

「まあ、ね。サイテーよ」

「あ、うん」

「でも、わたし知ってるから。あなたが本当は、いつも誰かの幸せを願ってるような人だって」

 

 そいつは買いかぶりすぎだ。

 もしかしたら、ガキの頃はそうだったかもしれない。

 でも、ア(・)イ(・)ツ(・)に家をぶっ壊され、親を殺され、親友を消されてから、俺は一度死んだんだ。

 

「馬鹿じゃねえの。俺は、そんなヤツじゃねーよ」

「うそ。私たち、何年の付き合いだと思ってるの? あなたのことは、よく知ってる」

「やめろよ。俺は、自分のことしか考えてない」

「うそ。今だって、私のこと、すごく優しく抱いてるじゃない」

 

 あーあ。

 煽ったのそっちだからな。

 

「君のせいだから」

「え?」

 

 ズッチュ……パアンッ、ズチュ、ズチュ、ズチュ、ズチュ……。

 

「あっ、そんな、はげしく……ああんっ、やぁ、んんっ、だめっ、あんんっ!」

 

 ズチュッ、ズチュッ、ズチュッ、ズチュッ。

 

 自分が気持ちよくなるためだけに、腰を振る。

 この娘(コ)が欲しい。

 この娘の全部を犯したい。

 

「中に、出すから」

「え、や、ため、そとにっ」

「無理、出すよ」

「だめっ、だめっ、赤ちゃん、できちゃう、あ、あんっ」

「ああ、孕むまで、出すから」

「え、んんっ、そんなっ」

「結婚しよう」

 

 その言葉を発した瞬間、俺の射精感がスパークした。

 肛門の奥で渦巻いていた大量の精子が、濁流のように尿道を通り過ぎ、先端から爆発するように発射された。

 

 ドビュルルルルッ、ドビュルルンッ、ドビュルルル、ドビュルル……!

 

「あっああんっ、なか、でて……る、あんっ、あ、あああっ――――!」

 

 俺が押し寄せる快感に痙攣していると、彼女も全身をピンと張り詰め、ビクビクと震えた。

 多分、一緒に絶頂した。

 

 

「ね、いっかい、抜いて……?」

「どうして?」

「体中、ベトベトで。シャワー浴びたいの」

「いや、ここシャワーないから」

 

 相変わらず、風呂好きだな。

 

「そうなのね……」

「それに、言ったでしょ。孕むまで出すって」

「え?」

「今抜いたら、精子が漏れちゃうじゃん」

 

 俺は、呆気に取られる彼女を抱きしめる。

 そのまま、ぐいっと持ち上げて、対面座位の体勢で向かい合った。

 

 彼女の可愛い顔越しに、大型ディスプレイを見る。

 さて、始めるか。

 

 テーブルの上のリモコンに手を伸ばし、スイッチを押す。

 するとプルルルルルと着信音が、部屋に響く。

 

「え、これ、何?」

「言っただろ、サプライズがあるって」

 

 やがて、「はい」という無愛想な声とともに、ディスプレイに優等生の顔が映し出された。

 

「よお優等生、久しぶり!」

 

 俺がディスプレイに呼びかけると、優等生と、俺に引っ付いている天使から同時に「は?」という声が上がった。

 画面の中の優等生の顔が、歪む。

 

「お前、生きてたのか。なんだそこは……いや待て、その背中のホクロ、お、お前、彼女に何をしている!?」

 

 こいつ、背中のホクロで誰か分かるって、執着度はんぱねーな。

 

「ね、ねぇ、どういうこと? どうしてあの人が……」

 

 天使が混乱してんじゃねーか。怖がらすなや、悪党が。

 

「ゴメンね。あのテーブルのカメラで、こっちの様子が分かるようにしてあるんだ。だから絶対振り向いちゃダメだよ」

「ちょ、何よそれ!」

「それはそうとさ、最近優等生からなんかプレゼント貰った?」

「え、うん……猫ちゃんのぬいぐるみ。部屋に飾ってあるけど」

 

 やっぱりか。

 中にカメラでも仕込んでんだろうな。ストーカーめ。

 

「おい、無視するな! そこはどこなんだ! 彼女から離れろっ!」

 

 豹変した優等生、こえーな。というか、こっちが素か。

 

「おい優等生、悪いがこの娘は、俺がここで孕ませるから。そこでシコって見てろ」

「なんだとっ! おい、やめろっ――」

 

 俺は、優等生の絶叫をBGMに、対面座位のまま腰を動かし始めた。

 

「やんっ、あっ、ちょっと! あの人が、みてる……んあぁっ、んんっ、やぁんっ!」

 

 ズッチョズッチョと、彼女を跳ねさせる。

 たまに白い安産型のお尻の割れ目を開き、結合部がカメラによく見えるようにする。

 

「お前、てめぇ、このカスゴミがぁ! いつもいつも、俺の未来の、邪魔をしやがってぇえええ!」

 

 優等生が、唾を飛ばしてブチ切れている。

 こっちはいいが、そっちは多分、自室だよな?

 部屋で発狂してる息子。家族が心配するんじゃないか?

 

「また膣に出すからね。しっかり受け止めて」

「ああんっ、そんな、あっ、ああんっやぁんっ、んくぅっ!」

 

 ズチョッ、ズチョッ、ズチョッ、ズチョッ。

 

 彼女が浮いて、落ちて、その瞬間に肌と肉と液が混ざり合って、そんな音がして。

 それを集音マイクが拾って。

 優等生が髪を掻きむしっている。

 

「やめろ……やめてくれ……これじゃ、何のために、苦労して未来を変えたのかっ……全部、彼女を手に入れる未来を作るためだっていうのに……」

「やっぱてめぇか。どうして俺の家まで消した?」

「僕は、そこまで頼んでない……ア(・)イ(・)ツ(・)が、孫が勝手にやったんだ……だから頼む、僕は悪くないんだ。頼むからもう、やめてくれ……」

「え、無理」

 

 ズチョ、ズチョ、ズチョ、ズチョ、ズチョ。

 

「ああんっあん、あんあんあんっ、あんあんあんっ!」

 

 こんな最高の膣に肉棒をしごかれて、最高の嬌声を耳元で聞かされて、やめるとか、無理だろ。

 

「頼む……僕と、彼女の未来を、奪わないでくれ……」

「最初に奪ったの、てめーだろ」

 

 ズチョ、ズブンッ、ズブンッ、ズブンッ、ズブンッ!

 

 彼女が落ちてくるタイミングで、思いきり腰を突き上げた。

 反動でぶるんと、彼女の乳房が上下に揺れる。

 

「ひぁっ、ひゃあんっ、ああんっ! やだあぁ、きちゃうっ、ああ、ああんっ、ああああっ――――――!」

「ああ、出るっ! 孕め! うああああ!!」

 

 ドビュルルルルルッ、ドビュルルルルッ、ドビュルルルルッ、ドビュルルッ、ドビュルルッ――!

 

 頭が真っ白になる。

 何も聞こえない、何も見えない。

 ただ体中が快感に満たされて、震えが止まらない。

 恍惚から、抜け出せない。

 

 

「ハァ……ハァ……けっこん、結婚しよう、結婚」

 

 いつのまにか、口から呪文のように発せられていた。

 俺の肩におでこを埋め、プルプルと震えている天使は、小さく、コクリと頷いた。

 

「僕は、何を見せられているんだ?」

 

 画面から、全てを諦めたような声が響いてきた。

 

「あ、すまん、忘れてたわ」

「殺す」

「どうやって?」

「僕に、未来と連絡を取る手段が無いとでも?」

 

 ガタガタガタと、テーブルが揺れ出した。

 いや、部屋全体が揺れている。

 あの時と一緒だ。

 多分、何分後かの優等生がア(・)イ(・)ツ(・)に通報したのだろう。

 

『我々は時空刑事警察機構です。建物は完全に包囲されました。速やかに外に出てください』

 

 どうやら、今度は大人数で来たらしい。

 さて、じゃあ出頭しますか。

 

「あのさ、俺ちょっと行ってくるから。ここで待っててくれる?」

「え、何この声、何が起きてるの?」

「すぐ戻ってくるから、心配しないで」

 

 俺は彼女を持ち上げ、肉棒を引き抜いた。

 ヌプッと、膣口から子種たちが漏れ出てしまう。

 が、仕方ない。

 

「くふふ……」

 

 画面から気持ち悪い笑い声が聞こえてくる。

 

「僕の邪魔をするからだ。君もあのお友達と同じように、消えるがいいさ…ふふふふ、くっふふふ『ちょっとヒデトシさん!? さっきから誰と話してるの!?』……あ、かあさ――」

 

 あ、切りやがった。

 一人でククク笑いとか、黒歴史確定じゃね。

 

 ガチャ、と音がして、ボンボンが部屋に入ってきた。

 手にはおしぼりを20本くらい抱えている。

 意外に気が効くヤツなんだよな。

 

「ゴメン、これで体でも拭いて待っててね」

「わかった待ってるわ」

 

 うん、さすがの風呂好き。汚れを落とすことが何より優先される娘なのだ。

 俺はボンボンと一緒に部屋を出た。

 

 

---

 

 

 廊下を歩きながら、ボンボンが話しかけてきた。

 

「なあ、ア(・)イ(・)ツ(・)らって、あ、あれだよな? 君の家族を消し去った――」

「シッ、それ以上言うな。お前の記憶が残ってることは、ア(・)イ(・)ツ(・)らも感知していないはずだ」

 

 ア(・)イ(・)ツ(・)は俺の家を消し、親を消し、親友を消した後、その存在を知る者の記憶を消して回った。「存在抹消」と、ア(・)イ(・)ツ(・)は言っていた。

 でも、なぜかこのボンボンは、その対象から漏れたらしい。

 昔からボンボンは、ラッキーだったりアンラッキーだったりする。

 

「わ、わかった、言わないよっ」

「ああ、お前まで消されちまうかもしれないからな」

「ひっ」

 

 

---

 

 

 カラオケ店の外に出ると、一斉にライトが当てられた。眩しくて何も見えない。

 

 あの時もそうだった。

 庭で草むしりをしていた時、突然まばゆい光に襲われて、ア(・)イ(・)ツ(・)が現れたんだ。

 一瞬にして、家が消えた。

 窓から飛び降りてきた親友は、俺にこのペンダントを託して、ア(・)イ(・)ツ(・)に向かって行って――。

 

 拳から血が滴り落ちる。

 俺の視線は、真正面にいるシルエットに固定されていた。

 忘れもしない、ア(・)イ(・)ツ(・)だ。

 ア(・)イ(・)ツ(・)は、多分笑いながら俺に話しかけてきた。

 

「やぁやぁ、こんな所にいたとはね。ずっと探していたんだよ」

「あ、こんにちわークソ野郎さん」

 

 俺もにっこりと笑いかけた。

 

「失礼だねぇ。僕は時空刑事警察機構の特別捜査隊隊長という、立派な肩書きがあるんだよ。ぜめて隊長さんと呼んでくれ」

「隊長さん、今日は一人じゃないんだな」

 

 光の中に、大勢の人影が見える。

 時空警察とかいうのの隊員たちなのだろう。忙しなく動き回っている。

 

「これは大捕物(おおとりもの)になるからねぇ、くっふふ……」

 

 ここにもククク笑いをする奴がいたよ。

 

「何のことですかね?」

「しらばっくれるな、この歴史改ざん者が! いいか、お前には歴史の改ざん容疑と、指定違法薬物所持の容疑が掛けられている。まず『存在抹消』刑は逃れられないだろう!」

 

 まるで他の隊員たちに聞かせるように、大声で張り上げている。

 

「あん? 歴史改ざんって何のことですかね?」

「くっふふ、しらを切ってもダメだよ。君たちは重大な歴史改ざんを犯した。君たちは未来の機器を不法使用して、本来結婚するはずじゃない娘と結ばれようとしたんだ。これが、未来にどのような影響を与えたか、分かるかい? どれだけの人の存在を、未来を奪ったか!」

 

 長ゼリフ、乙。

 そんじゃそろそろこっちのターンだ。頼んだぞ、ボンボン。

 

「あー分かりました分かりました。それで被害を受けた一人が、隊長さんってワケですね? あなたのお爺さんが、本来、あの娘と結ばれるはずだったと。それで、うちの家族や親友もろとも殺したと」

「あ、ああそうだ。私情がないと言えば嘘になるが、罪の重さは存在抹消刑に相当する。法は犯していない!」

「ふーん、そうですか」

「ど、どっちにしろ、お前はまたもあの娘と結ばれようとした、いや、今回はもう犯してしまったそうだね! これは重大な歴史改ざんだ!」

 

 俺は、ペンダントを握りしめた。

 力を貸してくれよ。

 

「うーん……俺が歴史改ざん者って言うんなら、隊長さんもじゃないですかね?」

「何を言っている? 僕が、だと?」

「ああ。だってお前、本当は地元の交番勤務のおまわりさんのはずじゃん」

「は? 何を言って――」

「だいたい本来、優等生は好きでもない女とお見合い結婚して、何人かガキ作って、奥さんに浮気されて、寂しい晩年を送るんだぜ?」

「デタラメを言うな!」

「お前自身は前の歴史の記憶は無いのかも知れないけど、ちゃんと知ってんだろ? おおかた優等生に聞きでもしてさ」

「そんな、証拠もなく適当なことを言うな!」

 

 よし、なんか推理ドラマの証拠突きつけパートみたいな流れに持ってこれた。

 あとはボンボンが手はず通りにやってくれれば、カッコいい感じになる。

 

 俺は、さっと手を上げた。

 

「……」

 

 逆光でよく見えないが、隊長さんやら、他の隊員たちの視線が集中しているのを感じる。

 まったく、ボンボンはいつも、ここぞという時に締(し)まらないヤツだ。

 

「おーいボンボン! あれ、あの優等生の声録音したやつ、流して~!」

 

 ピー……ガガ……。

 

『あースピーカーテスト中、テスト中、どうぞー』

 

 ボンボンのキーキー声がこだまする。

 

『オホン、じゃー流しまーす』

 

 再び、ガガ……とスピーカーの雑音が響く。

 

『ザー……やめろ……やめてくれ……これじゃ、何のために、苦労して未来を変えたのかっ……全部、彼女を手に入れる未来を作るためだっていうのに……』

 

 さっき録れたてほやほやの、優等生の独白が流れた。

 

「ほら、隊員さん達、聞きましたよね? 優等生――こいつの爺ちゃん、未来を変えた、未来を作るためってゲロってますぜ!」

「くっふふ……何を流すかと思えば……こんなもん、何の証拠にもならないさ! 曖昧な言葉で、第一、本人の意思かも分からない、脅されて言った可能性だってあるからなっ!」

 

 まあ、そうだろうな。

 でも、確実に、隊員さん達の中に、隊長さんへの不信感が生まれたはず……だといいな。

 

 すると、逆光の中から、一人の男の影が出てきた。

 

「少なくとも、私は一考の価値はあると思いますがね」

「副隊長は黙っていてください」

 

 隊長に、副隊長と言われたそのオッサンは、どうやら話の分かる人っぽいぞ。

 俺はその人に向けて話しかけた。

 

「あのー優等生を事情聴取なりすれば、多分ゲロるんじゃないですかね? ほら、未来の機器とか使えばポロッと」

「ふむ……わりと職権ギリギリの捜査だが、まあイケるだろうな」

 

 お、これはイケる、イケるっぽいぞ!

 

「くそ、くそが……!」

 

 あ、隊長さんが懐に手を入れたぞ。

 

 あれは、忘れもしない。俺の全てを奪った「存在抹消」銃だ。

 

「ここで消えろ!」

 

 隊長さんが構えた刹那――俺は目にも留まらぬ速さで上着の内ポケットに手を差し入れ、あの主犯格から奪った拳銃を取り出し、くるっと回しながら安全装置を解除して、隊長さんの手元目がけて撃った。

 圧倒的射撃テク。

 

 パンッ――。

 

 乾いた音が響く。

 隊長さんが「うぐっ」と呻(うめ)きながら、手を押さえてしゃがみ込む。

 俺の撃った弾は見事に、存在抹消銃だけをはじき飛ばした。 

 

「正当防衛ですよね?」

 

 俺は即座に銃を投げ捨て、副隊長さんに訴えた。

 

「あ、ああ……いやすまない、ふむ」

 

 副隊長さんはあまりの展開に、動揺しているようだ。

 

「あー隊長殿、ちょっと話を聞かせてもらえるかね。良ければ君の祖父君(おじぎみ)にも同行願いたいな」

「くそ……くそ……」

 

 あーダメだこりゃ。

 さすが血の繋がった祖父と孫。往生際が悪そうなところもそっくりだ。こりゃ、捜査難航しそうだな。

 仕方ない。

 

「あ、隊長さん、副隊長さん、ちょっといいですか? こんなんあるんですけど」

 

 俺は胸元からペンダントを取り出した。

 親友が俺に、最期に託してくれた、未来のツールだ。

 すると、隊長さんが目の色を変えて、叫びだした。

 

「そうだ、おい副隊長! あれだ、あれが指定違法薬物だ! 早く確保を!」

「ふむ。確か、影響圏にある人間の深層意識に作用して、認知を歪ませるという薬物……だったかな?」

「そうだ! 発した言葉が全て『嘘』になるっていう危険な代物なんだ。あれを飲まれたら――」

 

 俺は、彼らの視線がこちらに戻る前に、ペンダントの蓋をキュッと開けた。

 

「そう、俺がこれを飲むじゃん?」

 

 ゴクリと、ひと思いに飲み込む。

 まったく、俺が引っ越す度に家探ししやがって。隊長さんめ。

 その隊長さんは、俺が喉を鳴らしたのを見て、顔を真っ青にした。

 

 この薬は万能ではない。

 まず、影響範囲は人間の認識に限られる。

 例えば「雨が降らない」と言ったとして、本当に雨が降るわけじゃない。

 その言葉を聞いた人が、雨が降ってきたと思(・)い(・)込(・)む(・)に過ぎない。

 

「お、おい、隊長殿、彼は飲んでしまったぞ」

「くそがっ、おい、早く確保だ! 量からして、効果があるのは1回程度だ」

 

 正解。

 親友から託されたこの薬の効果があるのは、一言だけ。

 でも、それで十分。

 

「隊長さんは、本当のことを言わないと、末永く幸せになる!」

「なっ――!」

 

 隊長さん、目を見開いて固まってしまった。

 これで、隊長さんは嘘を言ったり、黙秘したりすると、末永く不幸になる――と思ったはずだ。

 

 

---

 

 

 隊員たちに連れて行かれる隊長さんを見送る。

 副隊長さんが近づいてきた。

 なんとなく、小学校の頃の担任の先生に似ている。

 この人は、信用できそうだ。

 

「どうも、ありがとうございました。それで、俺は捕まりますか?」

 

 どっちにしろ、俺が昔、親友と一緒に歴史改ざんに奔走したのは事実だ。

 

「まあ、本来は何らかの罪に問われるんだがね。今回は……不問に付すことになるかな」

「は? 無罪放免ってことですか?」

「ああ、隊長殿がいろいろやらかしてしまったからなぁ。警察機構として、身内の恥があまり表沙汰になるのは宜しくないんだ」

 

 話が見えてきた。

 つまり、隊長さんの歴史改ざんを隠蔽する代わりに、俺の歴史改ざんにも目をつぶってくれるって寸法か。

 まあ、世の中綺麗事ばっかじゃ行かないよな。

 もうここは、正義や真実がまかり通った子どもの世界じゃないんだ。

 

「そうですか。じゃあ、まあ、お言葉に甘えて」

「あと、隊長殿の歴史改ざんが起こらなかった世界線、つまり君の家族や親友がいた過去に戻すことはできないんだ。すまないね」

「……それは、もう諦めていますから。大丈夫ですよ」

「そうか……」

 

 まあ、ちょっとは期待したんだけどな。

 あーしんどいなー。

 

 でも、副隊長さんが本当に申し訳なさそうな顔をしているから、よしとするか。

 

「そういえば、副隊長さんはよく俺を信じてくれましたね?」

「ん? ああ。だって君、ずっと怒りを殺して笑っていただろう? 必死に激情を抑えて……そんな若者、信じてやらにゃあ、大人の名がすたるってもんさ」

 

 そう言って副隊長さんは、俺の握り込んだ拳を開いてくれた。

 やっぱ、先生に似てるわこの人。

 

「よく、我慢したね」

 

 肩をポンポンと叩かれる。

 

「いや、そんなんで泣きませんよ、俺」

 

 子どもの頃に一生分泣いたわ。

 

「はは、そうかそうか! いいぞ青年!」

「……ていうか、それだけじゃないでしょ? 俺の話に乗ったの」

「なんと、バレていたか!」

「まあ、不自然ですからね。いくら俺の話に信憑性があったとしても」

「ああ、私も隊長殿にはちょっと思うところがあってね。本来は私が隊長に着任するはずだったんだが、いきなり彼が、コネでね」

 

 なるほどな。

 それで、隊長さんが「本当は地元の交番勤務のおまわりさんだった」という、俺の話に食いついたってワケか。

 

「組織って、たいへんですねぇ」

「それなんだがね。こればっかりは、私も誤魔化しきれないんだよなぁ」

 

 副隊長さんは、俺の空になったペンダントを指さした。

 

「あ、これ、中身ぶどうジュースですよ。本物はとうに失くしてしまったんで」

「え、そうなのかい? じゃあ隊長殿に言ったのは」

「ブラフです」

「ははっ、こりゃオジサン一本取られたなぁ!」

 

 手を頭にポンと乗せる副隊長さん。リアクション古いな。この人、本当に未来人か?

 

「親友と、約束したんすよ。もう、頼らないって」

「そうか」

 

 俺は、ペンダントを副隊長さんに渡した。

 一応、成分分析をするのだという。

 

 さて、ここいらでお開きモードかな。

 隊員さんたちも撤収準備始めてるし。

 準備が終わると、ここいら一帯の止(・)ま(・)っ(・)た(・)時(・)が、動き出す。

 

 ふと見ると、副隊長さんが申し訳なさそうな顔をしている。

 

「すまないが、ここであった記憶……だけじゃなく、今までの全ての記憶を消させてもらうことになるんだが……」

「ですよねぇ~」

「あと、今この時点までが歴史改ざんの対象範囲だからね。つまり、君があの娘と性交渉をしたという事実も消えることになる」

「え、あの子作りセックスは!?」

「無効になる」

 

 天使が処女に戻ってしまうのか。

 まあ、また奪えばいいか。

 今度は、ちゃんと、ゆっくり、まともに。

 

「そうですか~。残念ですけど、仕方ないっすね」

「じゃあ、消すよ」

「あ、ちょっち待ってください。おーいボンボーン、喉乾いた~!」

 

 すると、タッタとボンボンが走り寄ってきた。

 

「もう、人使い荒いよっ!」

「ごめんごめん。副隊長さんも飲みます? コーヒーブラック」

「いや、私は遠慮しておくよ」

「そうっすか」

 

 俺は、コップのコーヒーをぐびっと飲み干した。

 うん、苦い。

 大人の味だ。

 

「じゃあ、記憶を消すよ。この棒の先がピカッと光ったら、君は全てを忘れる。いいね?」

「ええ、僕(・)は(・)全(・)て(・)を(・)忘(・)れ(・)ま(・)す(・)よ(・)」 

 

 閃光が走り、副隊長さんたちは帰っていった。

 止まった時が、動き出した。

 

 

---

 

 

 あれから、3年が経つ。

 俺は、住宅街の一角にある、不自然に四角い公園に立っていた。

 あの日まで、俺たちの家があった場所。

 面影があるのは、ちょこちょこ生えてる雑草くらいだ。

 

「……ありがとな、親友」

 

 俺は、何もかも覚えている。

 親友の忘れ形見を失くすわけないよな。

 ボンボンに言って、コーヒーに混ぜてもらっていたのだ。

 

「じゃあ、帰るよ。家に」

 

 俺は、天使と同棲中の家へと急ぐ。

 結局、まだ結婚には踏み切っていない。

 でも、それでいい。

 確定した未来だろうが、俺たちの意思で、俺たちのペースで、歩いていけばいい。

 

 家の前に、見慣れた黒髪ショートカット美少女が立っていた。

 サンタのコスプレをしている。

 

「あ、メリークリスマース!」

「おい、ブス、何しに来たんだよ」

「相変わらずひど―いっ!」

 

 すると、路地の陰から大柄な男が現れた。

 

「おい、人の妹をいつまでブス呼ばわりするんだよ」

「うっせーよデブ。ボンボンは一緒じゃないのかよ」

「ああ、もうすぐ来るってよ」

 

 まったく。騒がしい奴らだ。

 天使も、朝からルンルンでパーティーの準備に精を出している。

 今ごろ、家の中は大層な飾り付けに彩られているだろう。

 

 ずいっと、ブスが腕に絡みついてきた。

 

「ねぇねぇ、あたしね、今日のために腕によりをかけて新作のケーキ作ってきたんだよ!」

 

 するとデブが食いついてきた。

 

「お、兄ちゃん楽しみだなぁ!」

「お兄ちゃんの分はないよ。少しは痩せたら? そんなんだからデブ呼ばわりなんだよ?」

「うぐっ……そんな……」

 

 愛する妹の辛辣な言葉は、さぞや効いただろう。

 

「あ、そうだブス」

 

 俺は、ブスを腕から引き離す。

 

「俺、実は和菓子のほうが好きなんだ。特にふくらんだカステラっぽいやつな」

「ええっ!?」

「そんなワケだから、俺、もうお前のケーキいらないわ」

「ええ……じゃあ、あたし和菓子職人になる!」

 

 おいおい……。

 どこまで俺とブスをくっつけようとして来るんだ、未来よ。

 

「なぁ……ブスはさぁ、なんでそんなに俺のこと、好きでいてくれるんだ?」

「え~? だって、そばについててあげないと、危なくて見てられないんだもん」

 

 ブスは、事もなげに言った。

 そこには、彼女の確かな意思が宿っていた。

 

「……イ子」

「ん? 今あたしの名前呼んだ!?」

「いや、言ってないけど、ブス」

「ちぇ~、まあいいや。ねぇ早く入ろ? 天使ちゃん待ってるよ」

「ああ、そうだな」

 

 家に入っていくブスの後ろ姿を見送る。

 未来にとらわれていたのは、どうやら俺のほうだったらしい。

 

 ――きみはじつにばかだな。

 

 不意に、親友の言葉を思い出す。

 

 まったくもって。

 俺は、ばかだよ。

 

 そうだろ? 親友。

 

 

 


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