「ニェンさん! ダメですよ、そんな大怪我で動き回っちゃ!! 」
戦場に医療オペレーターの声が響く。ロドスの一員となってからわずか数週間、新人オペレーターの彼女はどんな人であっても絶対に怪我を治す、と意気込んでいた。
「あー……? こんなのただのかすり傷だ。ほっときゃ治るだろ」
「そんな訳ないじゃないですか! ほら、そんなに血を流して……早く治療を受けてください! 」
まるで子犬のように吠え立てる新人を前にし、流石のニェンもいつもの調子を発揮できずにいる。彼女のことをよく知る妹がこの場に居たら、有り得ないものを見た、とでも言いたげな顔で固まることは容易に想像がつく。
「わーかった、わーかったァ。大人しく治療を受ければ良いんだろ? 」
「そうですよ、全くもう……一人で先輩たちのところに行けますか? ついてなくて大丈夫ですか? 」
「はぁ……大丈夫だからさっさと行け」
ポリポリと頭を掻きながら渋々といった顔でケルシーらのいる場所へ向かい歩き出す。が、その途中。ニェンの視界にある人物が映り込む。ニェンの顔が喜色に染った。
「よォ、坊主! 相変わらず辛気臭ぇ顔してるなぁ? 」
「……何か用か? 」
結構な勢いでサルカズの背中に飛びつくニェン。その顔は先程までの気だるげな顔とは違い、ゾクゾクするほどの艶が溢れている。
「なんだよ、つれねぇなぁ……ま、いいさ。戦場で私が小僧に声をかけたんだ。後は分かるだろ? 」
クツクツと笑いながら下品なハンドサインを見せる少女に、サルカズの男は諦めたように大きく息を着く。
「……どちらの部屋でするんだ? 」
「くくっ、待ってるぞ」
そう言い残し、再びケルシーやドクター達の所へと向かうニェン。そのしっぽは大きくゆらゆらと揺れている。
サルカズの男……エンカクはそれを見やり、テラの大地に大きなため息をひとつ落とした。
「……はぁ、ニェンさんったら。あの後ほんとに治療を受けたのかな……」
ロドスの廊下を歩きながら少女は一人ため息を着く。頭の中にあるのは炎を纏った一人の少女の安否だ。
あの後、ニェンのことを先輩のオペレーター達に聞いてみれば、彼女はああいう感じだから言っても無駄だよ、と返ってきた。ロドスのオペレーター達の健康と安全を守る医療オペレーターがそれでいいのか、という気分になったが何か言い返すことはしなかった。
「……あ、あれ? ここどこだろ……」
ぼんやりとしながら歩いていたせいか、自室へと向かう道を大きく外れ、来たことも無い地区に来てしまった。ロドスは複雑怪奇な構造をしている。噂好きな先輩に吹き込まれた、行方不明者の話を思い出し、背筋に冷たいものが走る。
何か手がかりになるような音は聞こえないか、と大きな耳を動かし集中する。数秒の後、彼女の耳に微かな声が聞こえてきた。
(良かった、人に会えたら宿舎までの道を教えて貰える)
彼女が辿り着いたのは一つの部屋だった。宿舎の部屋のようにも見えるが、扉の材質が違うようにも見える。声はその扉の隙間から漏れ聞こえていた。ネームプレートに書かれていた名前は……年。
(年……ニェン? ニェンさんのお部屋なのかな)
だが、部屋から聞こえてくる声はどう聞いても一人だけの声ではない。来客中だろうか。そう思い、少し悪いなと思いつつも、彼女は扉の隙間から中を覗き込んだ。
「……っはぁっ……あぁ、良いぞ小僧っ……!
」
そこで行われていたのは淫蕩の宴だった。
視界に大きく映りこんだベッド。そこに座り込んだニェンが、誰かの上で腰を降っている。暗くて男の顔はよく見えないが、炎に照らされたニェンの顔は、同性である彼女から見ても色に溢れる蠱惑的なものだった。
まだ歳若い少女である新人オペレーターの彼女。当然、男の"お"の字も知らない生娘である。だが、目の前で激しく行われている行為、そして白い肌を蒸気させ、嗜虐的な笑みを浮かべるニェンの顔は彼女から目を逸らすという行為を忘れさせる。
気づけば、彼女の手は秘部に伸びていた。室内から聞こえる、激しく肉のぶつかり合う音、男と女の嬌声。それらに隠れるように控えめな水音が廊下に響く。
自慰行為もろくにしたことがないような彼女にさえ強い昂りを与えるような激しい交わり。部屋の中で行われているそれは徐々に速度を上げていく。それに比例するように彼女の指の動きも加速し、もう片方の手は慎ましげな胸へと伸びる。
「イ、……あ…………っ♡ ぅ゛~~~~…………っ♡♡ ……、ッ♡」
「~~~~ッッ!! ……あ、っ……ふぅ」
達したのは彼女か早いか、ニェンが早いか。今までに味わったことの無い未知の快感に身体を震わせる彼女であったが、直ぐに恥ずかしさが全身を襲い、その場を駆け足で離れた。そして、そんな彼女の後ろでは再び喘ぎ声が響いていた…………