女の子が少ない世界にTS転生した 作:アリス
学校から帰宅し自分の部屋に戻ってきた亜里沙は机に向かうと鞄から教科書やノートを取り出して勉強を始めた。優等生を称するだけあって、自室であってもその優等生の仮面は剥がれないようだ。
「……ふう」
勉強を始めてから小一時間ほど経った頃だろうか、亜里沙は小さく息を吐くとペンを置いて椅子の背もたれに身体を委ねた。すると彼女の豊満な胸が大きく揺れる。
(前世の苦手意識のせいか数学の勉強は疲れますね…。少し休みますか)
集中力が切れてしまったことで気が抜けてしまい、亜里沙は大きく伸びをした。ふとあるものを思い出した亜里沙はスクールバッグの中を探ると中からタブレット端末を1つ取り出した。それは今日風紀委員の活動中に男子生徒が慌てて逃げていった際に落としていったものだ。
(これは……どうしましょうか?)
亜里沙はタブレット端末を見つめながら考える。タブレット端末には男子生徒たちがコッソリと会話をしていると思われるアプリがあったのだ。
その内容は性的な内容であり、風紀委員として見逃すわけにはいかない代物だった。しかしそんなことより亜里沙はそのアプリを見て少し興味を持ってしまった。チャット欄には男子生徒たちがエッチな妄想や猥談を書き込んでいたからだ。
そしてそこには最近お気に入りらしいとある女の子について書かれていた。名前はわからないが顔立ちはとても可愛らしくスタイルも良い美少女で、胸のサイズも大きいらしい。
『今日の朝見たんだけどめっちゃ可愛い子がいてさー』
『まじ?どこ?』
『あの子だよ!ほら、風紀委員の!』
『あぁ、挨拶してたあの子!確かに可愛かったよな!』
『だろ!?あんな子とヤりたいぜ〜』
そんな会話をしていたのだが、亜里沙はその内容を聞いて思わず笑ってしまった。
(本当に馬鹿みたい……。こんな話をしているなんて信じられないです)
そう思いながらもよく考えると風紀委員に所属している女子生徒が自分しかいなかったことに気がついた。他の風紀委員たちは全員男子生徒である。つまりその噂されている美少女とは恐らく自分のことだろうと思った。
チャットルームの名前は【我が校の天使】となっており、どうやらそこに書き込まれている少女のことを言っているようだった。その名前に亜里沙は何とも言えない気分になった。自分が天使などと呼ばれていることが恥ずかしいような嬉しいような不思議な気持ちだった。
(でも私が一番雄の劣情を掻き立てる体つきをしてるんだし、天使と言われてもおかしくはないのかな……?)
そんなことを考えているうちになんだか面白くなってきた亜里沙はもう少しだけチャットルームの会話を読んでみることにした。
『昨日ついに手に入れたんだよな〜あの子のパンツ写真』
『えっ?お前それ大丈夫なのかよw』
『何言ってんだよ!大丈夫だからこうして自慢してんじゃん!』
『バレたら犯罪だなwww』
「ふぅん……」
話の内容的に盗撮したということだが、まさかここまで堂々と告白しているとは思わなかった。
(というより普通ならバレたら退学になるってわかっているはず……。もし私が先生たちにこのことを言ったらどうなるのかな?)
別に自分が性的ハラスメントをされるには平気な亜里沙はこういったことを黙っていた方が良いと判断して口を閉じることにした。
『お前らにもお裾分けしてやるよ!これ見てくれよ』
『うおっ!まじで良いのか?サンキュー!』
『さんきゅー!!』
画像ファイルを開いた瞬間、亜里沙の目に飛び込んできたのはスカートが少し捲れ上がって白い下着が見えてしまっている少女の姿だった。
「……」
一瞬思考が停止するも、亜里沙はすぐに状況を理解した。私の下着が写った写真を誰かがチャットルームに投稿したのだ。
そしてその投稿に対して男子生徒たちは喜んでコメントを残していた。
『えっろ!』
『いいぞもっとやれ!』
『ありがとうございます!!!』
『マジで感謝です!!最高です!!!』
次々と送られてくる賞賛の言葉を見て亜里沙の顔は真っ赤に染まっていった。
「な、なんですかこれ!?私まだ清楚で通しているんですけど!」
男子生徒からエッチな目線で見られるのは大歓迎であったが、こうやって晒されるのは予想外だった。
『あの子はエロいからな〜』
『絶対誘ってるよな!』
『ああいうタイプほどドスケベだって聞いたことがあるぜ!』
失礼な私はまだ誘ってないし、学校ではどスケベしてないですよ!と言い返そうとしたがなんとか我慢する。ここで言い返したところで何もならないことは目に見えていたからだ。
『俺この子の名前聞いたぜ~亜里沙ちゃんって言うんだな〜』
『名前まで可愛いとかもう反則だろ!』
「うぐっ……」
いつの間にか自分の名前まで特定されており、亜里沙は思わず息を飲む。
『こんな会話女子に見られたら終わるなw』
『いやいや!俺は全然OKだけどね!』
『わかるわ〜。むしろ見て貰いたいまであるよな』
『でもあの子風紀委員だし怒られるんじゃねえの?』
『それは勘弁して欲しいわ。ま、このタブレットローカル通信だし科学部に伝手がない1年は持ってないからバレないでしょ!』
どうやら1年生はこのタブレットを持っていないようだった。恐らく慌てて逃げていった男子生徒も上級生か、もしくは借り物だろう。
『あー亜里沙ちゃんにちんこ突っ込みたい!』
『おいw下品すぎワロタwww』
『亜里沙たんハァハァ……』
『変態すぎるw』
『今度会えたら絶対にヤリマンにしてやる!』
「……」
あまりの書き込みの多さと下品さに絶句してしまう。しかし彼らの会話は止まらない。
『風紀委員の挨拶のときセクハラしたくね?あの子ムチムチしてそうだし触りたい』
『挨拶のときたまに握手してたよな。手柔らかかったし絶対性感帯だよなあそこ』
『えー!じゃあ挨拶のときに握手しまくるわ』
そんな風にどんどんエスカレートしていっているのを見て亜里沙は思わずため息をつく。
「はぁ……。全くこんな話ばっかり……。本当に呆れる」
そう呟きながら亜里沙はもう一度画面を見る。そこには先程と同じように自分の写真が載っており、その周りには男子生徒たちのコメントで溢れかえっていた。
『この子の胸めっちゃ大きくない?』
『確かにデカい。多分Gはあると思う』
私はJカップですよと心の中でツッコミを入れる。
『てかこの子アナル弱そうじゃない?最近流行ってるみたいだし試しに開発してみたい』
『それな。あとこの子のケツ穴舐めたいわ』
「はあっ!?何言ってるんですかこの人たちは!?」
さすがにこれは看過できない内容だったので思わず声を出してしまう。
『この子が処女かどうか気になる』
『処女だろ。男慣れしてなさそうな顔してるし』
『いや、意外とビッチかもしれないぞ』
『声が処女膜から出てるから間違いない。きっとオナニーで破瓜の血を流しているんだろうなあ』
いや、普通に気持ち悪いですね……。そんなことを思いながらも亜里沙はチャットルームを閉じて、タブレットを机の中にしまった。正直、このタブレット端末の扱いに困っていたのだった。落とした男子生徒は誰か不明で、教師に渡したら大問題になり、男子生徒に適当に渡したら気まずくなる。
かといってこのまま放置しておくのもどうかと思った亜里沙だが、面倒になったので取り敢えず自室のデスクにしまうのだった。
(まあ、科学部がバラまいているみたいなのでもらっちゃって大丈夫でしょう)
亜里沙はそう自分に言い聞かせると再び勉強を始めた。
「ふぅ……」
亜里沙はペンを置くと、軽く伸びをした。時計を見るともう夜中の11時を過ぎており、いつもならベッドに入っている時間になっていた。
「そろそろ寝ようかな」
明日は休日なので遅くまで起きていてもいいのだが、明日は両親が朝から忙しいので早めに起きる必要があった。亜里沙は部屋の電気を消すと、そのままベッドに入るのだった。
翌朝、亜里沙は5時に目を覚ました。両親が起きる前に朝食の準備をしておこうと思い、キッチンへと向かう。そして冷蔵庫から卵を取り出し、目玉焼きを作り、珈琲のためのお湯を沸かす。そしてトーストを焼いていると、リビングの扉が開く音が聞こえてきた。
「お、亜里沙おはよう。早いんだね」
「お母さんおはよう」
亜里沙の母である美由紀は、眠たげな表情をしながらゆっくりと歩いてきた。
「朝食ありがとね。今日はお父さん出張だから助かるわ〜」
「いえ、気にしないでください。簡単なものですし。それに私も好きでやってますから。はい、どうぞ」
「ありがとね」
「それに最近はお兄ちゃんもごはん作ってくれるんですよ!」
「へぇ〜。あの子料理できたの?というか1階に来たんだ」
「はい!美味しくってびっくりしました!まあ、ちょっと焦げたりしてますけど……」
それに私の料理だけ精子をかけてたりしますけど……、亜里沙はそんな言葉をグッと飲み込む。
「ま、これからもよろしくお願いするわ。じゃあ、仕事行ってくるわね。戸締まりはしっかりするんだよ。特に亜里沙の部屋の鍵、ちゃんとかけておきなさいよ。最近物騒なんだから」
「わかってるから。はいこれ。お弁当。あと昨日買ったプリン入れておいたから食べてもいいからね」
「ありがとう。んじゃ行ってきます」
「いってきまーす」
「うん。いってらっしゃい」
両親は慌ただしく家を出ていき、残されたのは亜里沙1人となった。
「お父さん…影薄いや……」
そんなことを呟きながら亜里沙はテーブルの上に並んだ朝食を見つめる。
「さて、片付けちゃいますか」
亜里沙はテキパキと食器を洗い終えると、洗濯物を干し始める。
「んー。こんなものですね」
亜里沙は兄と弟のための朝食をラップに包む。これで朝の家事は終わりだ。
「よしっ!次は勉強だ!頑張ろう!えい!えい!おー!!」
亜里沙は誰もいない部屋でそう叫ぶと、自室へと戻った。