――ある日、突然に人間の性別が変わるなど驚天動地の出来事にほかならない。
しかし……その現象は、確実に起こっていることでもあった。
科学的には説明できなくても、「ある朝、目が覚めたら女になっていた」と主張する者が無視できないほど現れ、社会的にも「そのような不可思議な現象があるらしい」ということが認知されはじめた現代日本。
そんな状況のなか――
普通に高校生活を送っていた“彼”もまた、性別変異の怪奇現象に見舞われた、新たな一人になるのだった。
◇
『……んで、最低あと一か月は学校も休みってことか?』
「そう。病院に行って検査したりとか、いろいろあるし」
『ははぁ……なるほどね。まあいきなり体が変わったら、調べることも大量にありそうだしな』
「……正直、学校はもう辞めたい気分だけど」
『マジで?』
「気まずくない? いきなり友達が女になったらさ、なんか対応に困るじゃん」
『……俺含めて、みんなお前のこと心配してるし、学校に戻ってくるの待ってるけどな。そんなに不安がるなって』
「……うーん…………」
『ま、自分がもしお前の状況になったら……って考えると、そう悩むのも理解できるけどさ。
「……ありがとう」
『あっ、わりぃ……。ちょっと用事あるから、いったん通話切ってもいい?』
「あ、うん。また電話するときはメッセージ頼む」
『おう。んじゃ、またな』
「……ふー」
親友との通話を終えた彼――
いや、“彼女”はため息をついてスマホをベッドに放り投げた。
男から、女になって、すでに一か月は経過している。
身体的なことについてはもう慣れたが、先の生活を考えると悩むところばかりだった。
学校は当然のように行けるはずもなく。
家で過ごしながら、病院などに提出するための身体記録をつけるだけの日々。
近所のうわさになっても困るので、基本的に外出もしていなかった。
暇を持て余す生活のなかで――
「よっと……」
ベッドの下。
そこに隠すように置いていた箱の中から、道具を取り出す。
それは――いわゆる“大人のおもちゃ”だった。
男性器を模した、シリコン製のディルド。
女になってから、自慰行為を何度も繰り返すうちに――指だけでは満足できなくなって。
通販でこっそりと、それを買ってしまったのだ。
「ふふっ……」
今からする行為への期待におもわず笑いをこぼしながら、漣は衣服を脱ぎ捨てる。
すぐに裸になって――自分の体を見下ろす。
男の時にはなかった、胸の隆起。
そして――あるべきものが付いていない、なだらかな股間部。
かつては、ずっと興味を抱いていた女体が――
今は、自分自身のものとしてそこにあった。
「よし……」
漣は机の上に置いていたノートパソコンを持つと、ベッドの上に移動させた。
そしてアプリを起動して、操作すると――
黒髪の少女の裸姿が映った。
PCに搭載されているWebカメラで、ビデオプレビューを作動させたのだ。
その画面に映っているのは、当然――漣自身である。
整った顔の、可愛らしい女の子。
それが惜しげもなく、裸体を
自分の肉体でありながらも、その魅力的な姿に興奮してしまう。
「ん…………」
自身の女性器に手を触れると、甘い心地よさを覚える。
そこは――すでに少し、湿り気を帯びていた。
「あ……♡」
その穴に、指を入れていじる。
モニターに目を向けると、淫乱な行為をしている美少女の姿があって――
余計に興奮して、恍惚とした笑みを浮かべてしまう。
ああ――なんて可愛いんだろう、自分は。
そんな自惚れにも似た思いを抱く。
はじめは拒絶的な感情に支配されていたものの……。
日数が経って、こうして……。
自慰を繰り返すうちに――
「あっ……♡」
――悪くはない。
女性器から得られる快感に
「んん……♡ んっ……♡」
濡れた指で、クリトリスを激しめにこする。
その感覚は――男性器をしごいた時と似ていた。
「んふっ……♡」
それも、好きだけど。
やっぱり――女性にしか感じられないような快感のほうが、より魅力的だった。
「
ディルドを手に取る。
最初は少しきつかったものの、毎日のように使っているうちに――すんなりと入るようになってしまったモノ。
その先端を……粘液で湿った膣口に押し当てる。
「んー……♡」
ぬぷり、とその穴を押し広げて、男性器を
自分の中に入ってくる、その物体の感覚。そして刺激。
それに感じながら――奥まで一気に挿し込む。
「あぅ……♡」
体内が押し上げられるような感じとともに、甘い刺激が走った。
膣の最奥――
子宮口の周囲にある、突き当り部分。
そこに刺激を与えることで……男の時には得られなかったような快感があることを学んでいた。
「あっ♡ お、くぅ……♡♡」
我慢できないように――ディルドを動かす。
引き戻し、奥へと押し当てる。
性行為で男がするような行為を――おもちゃで再現する。
「あっ♡ あっ♡ うぅ……♡♡♡」
衝撃を発生させるたびに、小さく喘ぎ声が漏れる。
ディルドの律動を続けながら、ふとノートパソコンのモニターを見ると――
そこには、口を開きっぱなしの笑顔でオナニーに耽る少女の姿があった。
「うぁ……♡ えっろぉ♡♡♡」
自分自身の淫乱な姿に、えへっと笑いを漏らして興奮する。
男だった時に、エロ動画をいろいろ漁ったりしたものの――
これまで観てきたどんなAVよりも、眼前の美少女の痴態のほうが官能的で淫靡だった。
「んぁ……♡♡♡」
ああ、これが今の自分なんだ――
そう認識すると、どこか背徳的な気分になって……余計に官能が高まった。
「んふっ♡♡♡ あっ♡ お、ぉ……♡」
言ってしまうと、それは男の
そう一瞬、思ったが――
「ぉちん、ちん……♡♡ きもちぃ……♡♡♡」
素直な気持ちに負けて、そう口走った。
男なのに。
女の体になって、チンコのおもちゃを自分の穴に突っ込んで。
そんな自分の姿をモニターで見て、興奮して。
そして――
「ぁは……♡♡ あーっ♡♡♡ おちんちん……♡♡ しゅき……♡♡♡」
バカみたいに淫乱な言葉を吐いて、そんな自分の痴態に酔いしれる。
そんな姿は、まさしく――
「うーっ♡ ヘンタイおんなぁ……♡」
そう言うと同時に――ディルドを強く奥に突き付ける。
「ぉ゙っ……♡♡ ぁ……♡」
甘くて刺激的で、幸せな気分になる衝撃。
それがたまらなくて――むさぼるように、何度も繰り返す。
「あ゙っ♡♡♡ ん゙っー♡♡」
行為のたびにくちゅと音が鳴って、興奮がさらに喚起される。
必死でディルドを、自分の子宮のところに突きつける姿。
その映像を見ながら、えへへっ♡ と笑う。
「ちんちん大好き♡♡♡ なぁんて……♡ この変態メスブタぁ♡♡」
自分で自分を罵倒して、愉悦に浸る。
男性器を突っ込まれて、幸せそうによがる女。
そんな淫乱なメスが――今の自分なんだ。
そう認識すると……もっと興奮して、もっと気持ちよくなった。
「ん゙ぁ……♡♡♡♡♡」
変な声が漏れるとともに、こみ上げた感覚で頭が真っ白になった。
下半身が、びくりと震える。
イっちゃった……。
そう理解しても――すぐにオナニーを再開する。
「あ゙っ♡♡ んふっ♡♡♡ きもぢぃ……♡♡♡♡」
体の熱さと、快感に、とろけるような気持ちになりながら。
男性器を模したそれで、ぐちゃぐちゃと体内を掻き乱しつづける。
「あっ♡ あー♡♡ あ゙んっ♡♡♡」
一度、イったくらいじゃ
精子を出しきったら終わりの男と違って……。
しようと思えば、何度だって絶頂できるのだ。
「ん゙ぁー♡♡♡ おっ……♡♡ うふっ……♡♡♡」
自分は淫乱なメスだから。
もっと、もっと――いっぱいイキたい。
そんな想いを抱きながら――
強く、ディルドの頭を膣奥に打ち付けた。
「お、ぉ゙……♡♡♡♡♡」
痺れるような快感。
それがたまらなくて、繰り返す。
「い゙ぃ……♡♡♡ い゙ぃ、よぉ……♡♡♡ おちんちんっ♡♡ 好きぃ♡♡ あっ♡♡♡」
欲しい。欲しい。
もっと衝撃が、官能が。
求めるがままに――ディルドを体内に突き立てて、自分を慰める。
「や゙だぁ♡♡♡ だめ゙……♡ ま、た……♡♡♡」
いくっ♡
そう感じて、ぐっとディルドを自分の中に押し付けて腰を震わせる。
力が抜けてしまって、おもわず仰向けに寝転がりながら――
それでも、まだ。
まだ足りない――とディルドを動かしつづける。
ぐちゃぐちゃと、自分の性器が乱れている。
仰向けになってしまったので、確認できないが――
きっと、その顔はひどく歪んでいて、理性の欠片もない表情をしているのだろう。
そんなメスの自分を想像すると――もっと興奮した。
「あ゙ー♡♡♡♡ こ、んっ♡ なのぉ……♡♡♡ だ、め゙……♡♡♡」
否定の言葉を漏らす。
「だめだめだめぇ♡♡♡ ゔぅ……♡♡ だめ゙、なのにぃ♡♡♡」
ダメなのに、してしまう。
そうすることを――心と体が求めているようだった。
快感と、幸福。
それに支配されて……もう自分の性器を刺激することしか考えられなかった。
「あ゙っ♡ ぁんっ♡♡♡ ん゛ぅっ♡♡ ちんちん♡ だいしゅきぃ♡♡♡」
――自分はチンコ突っ込まれて悦ぶメスなんだ。
その自覚とともに、狂ったようにディルドで膣奥を刺激する。
そして吹っ切れたように――とろけたような笑顔で、言葉に出す。
「あ゙はっ……♡♡♡ わたしぃ……♡ もうおとこ、じゃなくて……♡ りっぱなメス、だね♡♡♡」
自分をバカにしたように言った瞬間――
「あ゙ひぃ……♡♡♡♡♡」
恍惚とした表情で、がくがくと脚を痙攣させて、何度目かもわからない絶頂を迎える。
気持ちよさと、幸福感と――そして疲労感。
お腹の中に、ディルドを収めながら――
「んふぅ……♡」
漣は手を離して、ベッドで大の字になった。
――快感の余韻に浸りながら、天井を見つめて。
ただ、ぽつりと。
少し切ない気持ちで、“彼女”は呟いた。
「“ホンモノ”だと……どんな感じなのかな…………?」
それを想像すると――
膣の奥が、また熱くうずくのだった。