宿命を乗り越えて-Fin-
「……さあ、そろそろおやすみの時間ですわよリオちゃん?」
「は~い。でもお母さま、リオナまだ眠くないわ? 眠たくなるまで今日も『お話』を聴かせて?」
美しい娘がベットの側に腰かける母に目を向ける。少女はこのおやすみ前のお話の時間が大好きで、優しい母の声を少しでも長く聞きこうといつも『お話』をねだる。
それは母が知っている昔からの物語であったり、遠い外国の美味しいご飯の話だったり、世界を見守ってくれている神様のお話など、思いついたものを眠たくなるまでお話するというやんわりとしたものだった。
「それとリオナね、今日はお母様にお話しして欲しいことがあるの~」
だが、今日は娘の方から知りたいお話があるという。
「あらあら、何かしら? ママが知ってることなら良いのだけど……分からなければ
「うん? お母様は絶対知ってるから大丈夫! それにリリちゃんとかベロニカママにもうおやすみしたもん、呼んだらダメだよぉ!」
こうして『お話』をするのは珍しいことではないが、娘の方からリクエストというのは今まで無かったこともあり驚く母。しかし娘のお願いには極力期待には応えてあげたいという母心に限りというものは無い。
「それもそうねぇ……じゃあママが頑張っちゃおうかしらね!」
「うん! えーと~……お母様は、どうしてお父様を好きになったの?」
「えぇ!? ……突然どうしたのかしら? ママが旦那様を好きになった理由……?」
「そう! どうしてなのかな~って!」
……そう、限りは無いのだ!
「そ、それはどうしてもお話しないとダメなのかしら? ママもリオちゃんに聞かせるのは恥ずかしいというか、なんというか……♡」
「聞きたい~! 教えてくれるまで、リオナおやすみしたくないの~」
実のところ娘に取ってこの質問は、良く遊ぶ友達に相談し教えてもらったおねだり作戦の初手であったりする。作戦立案の彼女曰く、
『……ほぉん? それなら我し……パパとママの昔の話を教えてもらえばいいのですよ! なれそめ……というヤツです! きっと話すことが多くて時間がかかります!!』
とのこと。
もっとおやすみのお話を……母の声を沢山聞きたい自分としては持ってこいの作戦。しかも父と母の恋の話だ! 好奇心は一層盛んな歳の子が、両親の素敵なお話に興味が無いわけがない。両親達が何時から一緒にいるのか。どのようにして知り合い、どう結ばれたのか。
そんなお話をしてもらえるならば終わるまでは眠れないぞ! と聞く気合いも十分。あとは顔を赤くしたお母様から根掘り葉掘り聞き出せばよいだけ。
「まあまあ、困ったリオちゃんね? それじゃあ、ちょっと恥ずかしいけど……ママと旦那様のお話を聞かせてあげようかしら♡」
「やった~♪ お母様大好き~!!」
「ふふふっ、ママも大好きよ。それじゃあ、そうねぇ……あれはまだ、ママがお城のお姫様だった頃……女神さまが────」
こうして夜が更けていく。
……娘はその日、母の語る昔話のおかげで生まれて初めて寝不足になった。
──―
──
―
──俺が女神に授けられたガチャを得る加護は、正常な性機能を取り戻す為のリハビリ行為であったのだという。
封じられた記憶は股間に受けた致命的なダメージを誤魔化しつつ、それに耐えれるだけの肉体へと強化する為の時間稼ぎ。そして充分に身体の強化を終えた後に封じていた記憶も戻せば元通り……などど、
そして結果として加護には……ガチャの効果に加え
……要するに、子供ができるようになったのだ。
「なあ、フィオナさんや……俺がいない間に何かあった? 具体的には、我が子達の視線がお見送りの時と違ったというか……」
少々長めの仕事を終え拠点に帰ってきた俺は、愛する嫁さんに問いかける。
留守中にあったことを嬉しそうに教えてくれる彼女は娘を持つ一人の母となり、より女性としての魅力に磨きがかかったが……それでも破天荒な根っこは変わらない。悪い予感がぷんぷんする。
「ええ! 聞いてくださいまし旦那様っ! リオちゃんったら最近は私達の昔の話が聞きたいって言う様になりまして♪ 女の子は心の成長が早いと言いますけれど、あの子はわたくし以上に素敵なレディになること間違い無しですわ!! うふふふふっ……」
「……うん、待ってね? もしかしてフィオナさん、リオナその、俺たちが初めて会った時の事を『お話』して聞かせたっていうの?」
「? ……はい! 旦那様の勇ましさ含め、臨場感たっぷりにリオちゃんにお話ししたんですの♪ あの子も食い入るように詳細を知りたがるものですから、わたくしもつい熱が入りまして♪」
家に帰ってくれば抱っこをねだる娘が、急ブレーキをかけたのはそう言うわけか!?
「リーフィちゃんとセルリアちゃんにも私の真似をしてお話してあげているみたいですし……すっかりお姉ちゃんですわ♪」
「──行き過ぎた情操教育の悪循環っ!? 娘に反抗期が来たどころか、警戒される父親ってだけでもう悲劇なのに、子供ネットワークで更に追い打ちをかけられて……もう口聞いてもらえないレベルじゃない!?」
「あらっ? リオちゃんが旦那様を嫌うだなんて、そんなはずはございませんわ! だって旦那様の素晴らしいアレからナニまで、一夜では足りずに数日かけてじっくりと聞かせましたもの!!」
「数日かけてっ!? しかも寝る前にじっくり!?!? あ──っ、もう!!」
悪い予感などは当てにならなかった、もっと悪いことが家庭内で巻き起こっていたのだから……!!
「うふふっ……♪ それにリオちゃんったら、珍しく自分から『久しぶりにソルテちゃんの所に皆でお泊りしたいな~』だなんて! 自立心まで芽生え始めて、ママとしては嬉しいやら悲しいやら──」
「か、確実に避けられてるっ! そして逃げ先があのアホの所なんて、事態が悪化する未来しか見えない!? せめて弁明をしなくては……って、ハッ!?」
すぐさま踵を返そうにも、肩へと添えられる手がそれを許さない。
「──ですから、旦那様……? 今日は娘たちも居ない事ですし夫婦の時間を大切にできるわけですわ♡それに、皆さんもすぐに来ますので……♡」
「ま、待ってくれフィオ! ソルテの所に向かわせる前に子供達と話を……!!」
耳元にかかる熱い吐息。更に扉の向こうから近寄ってくる複数の足音。
「…………えっ?」
「うふふふ……♡あの子達が戻ってきてから『お話』できる内容がまた一つ増えそうですわぁ♡♡」
「あ──、うん……なるほど……」
こちらの戦力はこの身一つ。
これより部屋に現れる彼女等を相手に、不足は…………無いっ!!!
「こうなりゃ『お話』できない位に徹底的にやったらぁ!! 覚悟しろよ!? くぬぉぉぉぉ!!!」
「きゃぁぁぁぁ~~~♡♡♡!!!」
男は生きるためにガチャをまわす事を女神によって宿命付けられ、ガチャをまわして使命を果たし、宿命を乗り越えて見せた。
男はガチャを回して強くなり、愛するヒロイン達と共に確かな幸せを手に入れた!!
精が強ければ運も強い。
そんな男だからこそ、愛の限度を知らないヒロイン達が相手でもこの未来を掴み取る事ができたのだ!
……運命の女神達は、今日も彼に微笑んでいる……(遠い目
さて、これにて『ガチャ姫』は完結です。
最後まで読んで下さった方々、お気に入り登録やいいね、アンケートのご協力、感想、評価を付けてくれた方々に格別の感謝を。
この作品において今後、リビドーが溢れた末に挿絵をブッ込んだり、誤字を発見して修正する可能性は大ですが、小説本編については完全にここで終了となります。
広げた風呂敷を畳むのがこうも難しいとは……と、自身の力不足を痛感している次第です。これ以上は長くなりそうなので残りの言い訳は活動報告にでも書こうかと思います、物好きな方はそちらにお越しください。
という訳であらためまして、ここまで読んでいただきありがとうございました。