---鳥居亜樹---
タイムリープ現象のおかげで、被害が少なくなった。政府高官の思いつきで、家も土地も取られずに済んだ。なんと延焼被害を貰った政治家が、あの政府高官だったらしい。気分が良いので、一人でバイクでスケッチへ向かう。
夏と言えば、海だぁぁぁぁ~ってことで、由比ヶ浜海岸に向かった。色々な水着ってあるんだな。と、水着コレクションをデッサンしていく。蘭に合いそうなのは競泳水着かな。美和子さんはTバックかな?夏美は…スクール水着でいいか?スケッチブック1冊に水着以外にも風景や、水族館の生き物たちも加えておく。
そして、帰路に着こうかと思うところで、俺は再びあり得ない者を見つけてしまった。この熱い日差しの中、網タイツにバニー姿の女性である。蘭の時同様、俺以外誰も興味を持っていないようだ。ブラやパンツのラインが無く、ノーブラ、ノーパンのようだった。これ、ガン見ポイントでしょうに。スタイルも形も蘭や美和子さんと遜色は無いし、色艶もいい。こっそり、後ろから距離を縮め、頸動脈を締めて、意識を刈り取って、手早く緊縛して、バイクで家にお持ち帰りした。
「また、おにいちゃん、女の子を拾ってきたの?」
「江ノ島で捕獲した黒ウサギだぞ~」
手早く、解体ならぬ脱衣をさせ、お風呂で汚れを洗いながして…この兎を喰うか?
「ねぇ、その子と私達、どっちが良いの?」
風呂場に蘭と、何故か美和子さんが乱入した。手引きしたの夏美か?!二人の後ろからニヤけた顔でVサインを飛ばしてきた。
「いや、ひとそれぞれ良さってあるんだよ」
水を拭い、客間のベッドに放置した。
「あの子って、女優の桜島麻衣って人じゃないかな?」
自分の部屋から雑誌を持って来た夏美。確かに似ている。が、写真では服の下が見えない。あっ!指紋…雑誌から指紋パターンをスキャンして、拾い物と照合してみた。あ…一致したよ。
「桜島麻衣って、自殺したんじゃ」
と、美和子さん。人気絶頂の中、急に消えた有名人で、自殺説が流れたらしい。こういう時は探偵さんに調べて貰うか。依頼をメールしておく。
暫くすると、探偵さんから連絡があり、状況が分かった。学生生活を楽しもうとして女優業を休業したのだが、学校で無視され続けた。妬みや僻みからくるイジメに近かったようで、悪意と距離を置くためか、次第に自ら空気を演じるようになり…思秋期症候群が発病したようだ。
「おにいちゃん、どうするの?」
「一番いいのは、全国放送で主役を演じることだな」
生きていると再認識するのが、効果的だと思う。俺のコネを使うか…蘭と美和子さんの目をかいくぐって、遊べないし…
◇
夢を見た。俺の目の前で、桜島麻衣が恐怖に怯えている。俺は菜箸で、乳首を摘まんだ。そして、つまみ上げた乳首を口に運び食してみた。歯ごたえはタコのようで、味はミルクボンボンのようなで…麻衣の股間に顔を埋める蘭。その蘭の股間には美和子さんの顔が埋まり…
向こう岸では、高木刑事と安室さんが下半身でチャンバラを繰り広げている。見たくも無いシーンである
◇
目覚めると、蘭と麻衣が全裸で俺を左右から挟み込んでいた。なのに、下品なチャンバラをみたせいで、アレは拗ねているし。
蘭は左側である。左から見れば、俺は元カレにソックリらしいから。
「これ、痛くないの?」
俺の傷跡をなめている麻衣。喰われるのかな?現実では俺が恐怖を感じていた。
それから2週間くらいして、俺のコネにより、女優として復帰の目処が付いた桜島麻衣。俺の会ったことが無い父親の弟を頼り、麻衣をCMに使ってもらったのだ。
「亜樹君の伯父さんが、あの佐田グループの次期当主とは意外ねぇ」
って、だいぶ表情が柔らかくなってきた麻衣。
「会ったことは無いよ。俺の母親と俺を捨てて、鈴木家の分家筋から嫁を貰ったらしい。その後、死んだのかな?」
「私は恩人を捨てないからね」
俺の傷を舐める麻衣。俺の傷って、旨いのか?自分では舐められないので不明だが。
「女優に戻るなら、無茶は出来ないよな?」
「無茶って?」
「女体盛りの器になってもらうとか?」
夢で見たシーンを思い出すが、衝撃的なダメージを受けた下半身チャンバラが脳内で再生されていく。これじゃ無いんだよ。見たいのは…
「そうだね。ちょっと無理かな?女優を引退したら、いいけど」
じゃ、飼い猫でテストをしておくか。ちょっと年増なのだが、どうだろうか?
---佐田悟---
私には兄がいた。野望に満ちた男だった。鈴木財閥の分家筋の娘をたらし込み、婿養子の立場であったが腹ぼてだった妻と離婚し、鈴木財閥の分家を自分の物としようとした。だが、佐田家も鈴木家もアイツにそんな権限を与えることは望まず、私の義理の姉である離婚された妻の実家、神代家の暗部により兄とその新妻は処分された。
亜樹君が生まれた頃、鳥居という小説家が義姉と再婚したと風の噂で聞いた。佐田家の当主は安芸桜という女絵師の技と感性に惚れ込み、彼女の後ろ盾になっていた。その関係から兄は絵師の身体に惚れて婿養子という条件を呑んだのだが、彼には芸術が分からなかったのだ。そのせいで、鈴木財閥の分家の財力に魅了され…
私の義姉である亜樹君の母親は、亜樹君が幼少の頃亡くなった。いや、亡くなったのを知らなかった。死亡したと聞いたのはだいぶ経った後だった。幼少の亜樹君がどう生き延びたのかを知るのは夏美という妹だけである。父親になった鳥居は自分の書斎に籠もりがちで、離れを義姉の作業場と思っていたのかもしれない。そもそも息子がいたという認識があったのかも怪しい。
彼女の亡骸を発見したのは、鈴木画廊のオーナーだった。作品の納期が越えても連絡がなかったので、様子を見に行くと、幼子二人が寄り添って寝ており、その傍らには初代安芸桜のミイラ化した遺体があったそうだ。
その後、鈴木画廊のオーナーが鳥居の元を訪れると既に、あの女優が娘二人を連れて同棲したそうだ。初代安芸桜の死亡の知らせを聞いて、あの女優が待っていたとばかりに、鳥居との婚姻届を出しに行ったそうだ。もしかすると、亜樹君の母親は、あの夫婦に…今となっては分からない。鳥居家の闇である。
鳥居亜樹の家族構成には、夏美という妹の存在の謎が残るのだが、そんなことはどうでもいい。亜樹は私の甥であるのは間違いない。
そんな亜樹から頼みをされた。皆の記憶から消えてしまった若き女優を助けて欲しいという。手段としては、佐田ホテルのCMに出演させて、全国放映して記憶を呼び醒ますと言う。桜島麻衣…確かに人気のあった女優である。私の記憶の中でも、死亡していた…それが、生きていたとは…
「まかせろ」
と、私は亜樹の願いを叶えることにした。
◇
亜樹の書き上げた絵コンテの通り撮影し、全国放送枠のCMとして流してみると、彼女の健康美が大変魅力的で、とても好評であり、ホテルへの問い合わせが増えた。
「君を佐田グループの芸能部門へ正式に移籍させた」
「ありがとうございます」
「今後の活躍を期待している」
「はい、がんばります」
嬉しそうに亜樹を見つめている桜島麻衣。
「ところで亜樹君、文化庁と話し合いをしてね、あの敷地を『安芸桜記念公園』にするそうだ土地は摂取、評価額は正式な鑑定をして、買い上げになった。思い入れのある離れは、移設する方向で、離れと母屋のレプリカを公園内設置して、記念館にするそうだよ」
個人所有のままでは、保全がままならないとした文化庁が、まるまる買い上げることにしたそうだ。亜樹君の不利にならないように、彼の思い出をこれ以踏みにじらないように。
「引っ越し先は?」
「たぶん、神代家の保有する神社の裏手になると思う」
彼の母親の実家は、この国の神事を司る神代家であり、彼の後ろ盾の1つである。神代家の前当主は死の間際に、跡取りに鳥居亜樹の妹である鳥居夏美を指名した。ここでも夏美という少女の存在の謎が残るのだが…私には関係ない。他家の問題である。