---鳥居亜樹---
駅前に美術館を建設していると言う。ここは駅前から伸びる坂の途中にあるので、建設現場を上から覗けていた。作業風景をデッサンしていく。
神社への道路の舗装も始まり、温泉旅館の坂側の一角に喫茶店をオープンするそうで、改築工事も始まった。それは、俺の「美味しいコーヒーが飲みたい」から始まった改築工事である。寂れた温泉街に美味しい珈琲を求めてはダメだろうか?ダメだった。美味しいコーヒー豆すら、隣町に無いし。都会まで出ないと飲めないなんて…って、鈴木画廊のオーナーに愚痴を零したら、佐田家がうごいてくれたのだった。
美術館の隣には、温泉リゾートが出来るそうだ。寂れた温泉街の潰れた温泉宿が潰されていく。と思ったら、歴史的な建設物は移設するそうだ。ここよりも奥地に温泉旅館を作るのに再利用だという。そうなると、神社の傍にも温泉旅館が出来るのかな?
敷地内にある池の畔から、桜の木を臨み、デッサンに入る。毎年、春には桜の絵を納入しないといけないので、冬の初めから始めるのだった。どんなシチュエーションにするかな?
そうだぁ!桜は真面に描いて、湖面に女体が見えるとかはどうだろうか?さざ波とかで歪んでいて、目をこらさないと見えないとか…色々なアイデアから何枚ものデッサンを描いていく。
あっ!湖の畔に、ペガサスに乗った全裸の天使がいたら、どうだろうか?
---来生瞳---
新宿駅から中央本線に乗り、小淵沢駅で佐田鉄道に乗り換え、終点まで乗る。そこは『佐田リゾート』という駅であり、私達が今後住まう地である。駅前からバスに乗り、『旧佐田家保養所』で降車すると、『喫茶キャッツ・アイ』が目の前にあった。預かっている鍵で店内に入ると、木の香りが清々しかった。
「店の厨房をチェックして、住居の方もチェックしようか」
姉の言葉で、キビキビ動く私と愛。
カラン
ドアベルが鳴った。開店前なんだけど…
「珈琲飲めますか?」
「ごめんなさい。開店は一週間後なんですよ」
と、答える私。
「そうですか、来週来ますね」
そのまま、出て行く青年。
「彼が、二代目安芸桜ね。顔が特徴と一致するわ」
と、姉。姉によると顔の右半分に事故による怪我の後が残っているそうだ。
「怪我って、原因は?」
「通り魔による襲撃らしい…それも三度も。不幸体質なのかもしれないわ」
---佐藤美和子---
鳥居家の闇は深かった。戸籍を遡り、出生届けまで辿りついたのだが…
「あの女優の娘は双子で、晴美と春美だという。たぶん、片方が影武者であり、アシスタントなのだろう」
そうなると本ボシは?
「科捜研の調査の結果だが、双子の父親は、初代安芸桜の最初の亭主の可能性があるそうだ。尚、その最初の亭主だが、佐田家現当主の長男で、現在行方不明だそうだ」
そうなると、亜樹君は佐田家現当主の孫になるのか。
「それって、亜樹君を狙っているのは、その男の可能性もあるんですか?」
高木刑事が質問をした。最近、亜樹君を弟の様に思い始めたそうだ。
「生死がわからぬ。消された可能性もある。白鳥、説明を頼む」
「はい。初代安芸桜が亜樹君を身籠もっている最中に、婿養子の立場で有りながら離婚をして、その日に、鈴木財閥の分家の娘と婚姻届けを提出したとのことです。尚、あの女優の子供達の父親が彼だとすると、初代安芸桜の目を盗んでの不倫関係の末に出来たことになります」
どこまで、闇が広がるのだろうか?あれ、そうなると…
「夏美ちゃんは誰の子?」
「それなんだ。それが謎だ。鳥居氏の婚姻後に、娘が晴美と春美から晴美と夏美に、戸籍上は変わったようだ。戸籍を操作した者がいる」
私のつぶやきに警部が反応した。
「厄介な案件になったな。まさか、鈴木財閥と佐田財閥が絡んでくるとは…」
「警部、初代安芸桜の実家は?」
「調査中だよ。一般家庭とは思えないな。亜樹君の相続財産を考えると…」
確かに、都会の一等地にあんな広大な土地を持つなんて…
---鳥居亜樹---
「う~む、ますます狂気が浸み出していますね」
と、鈴木画廊のオーナー。今日は、作品の引き取りにみえた。アトリエが広くなった分、作品も巨大化傾向で、バイクでは運べ無いサイズが多かったので。
今回の目玉の作品は、新設される美術館へ行くことが決定した。なんてことは無い絵であるが、10億という価格が付いたそうだ。一本の桜の老木、バックを黒で描いただけである。その老木は目をこらしてみると、あら不思議、桜島麻衣に見えてしまうのであった。
タイトルは『桜、舞い』。腕のような2本の枝の先には5本ずつ細い枝があり、その先端には桜の花が1つずつ満開で咲いている。胸の様な瘤が二つあり、その頂には1つずつサクランボが実っているのだった。桜の老木は暗い色合いの茶色で描き上げ、桜の花とサクランボだけは明るい色合いで目立てさせてある。
「若い女体を老木にするとは…それも佐田グループのイメージ女優を抜擢するとは、あっぱれです」
同じ趣向で鈴木財閥には、銀杏の老木で目をこらしてみると鈴木園子に見える絵を進呈済みである。
「そうそう、相談役より、園子お嬢様をモデルにする件は了承されましたので…ふふふ」
鈴木画廊のオーナーが悪い笑みを浮かべていた。身内が陵辱される絵って見たいものなのだろうか?現実にはあり得ないから、良いのかな?
◇
夢を見た…街中で鈴木園子を見かけて、虐める夢であった。個人的には美和子さんがいいのだが…園子の彼氏の目の前で調教していく。媚びを売るように舐めさせ、咥えさせ、味合わせる。そんな園子の後ろから彼氏の巨大なトマホークが園子の内側へ向かって放たれた…
◇
目が醒めると、部屋には誰もおらず、大放出していた俺だけがいた。汚れを落とすために温泉へ…パンツは誰にも見られず、無事に洗濯機へ。
温泉には先客がいた。あれ?男湯に入るのって、俺だけじゃないのか?これって不審者か?後ろから音を立てずに忍び寄り、一気に両脚を引っ張って、湯の中に引き摺り込んだ。突然、湯の中に引き摺り込まれ、不審者が暴れている。湯の中で相手の身体をチェックすると、女体のようだった。湯の中で口を口で塞ぎ、一気に空気を相手の肺にに吹き込んだ…苦しみ藻掻く不審者、無抵抗になったようなので、湯の外へ引きずり出した。
不審者は、長い黒髪の女性で、各パーツがうすピンク色で未使用のようだ。人工呼吸を施し、味見をしてから、女湯の脱衣所のベンチに置いた。
---来生瞳---
朝、目覚めると、女湯の脱衣所にあるベンチの上で寝ていた。そんなに疲れていたのかな?昨晩の記憶が曖昧である。湯船に入っていると、引き摺り込まれた。両脚の自由が奪われ、湯船の底で溺れた気がする。でも、そんな訳無いか。夢よね、そう夢よ。
脱衣籠から着替えを取り出し、着衣をして、住居へ向かった。
「瞳、昨晩はどこに行ったの?」
「母屋の温泉。夜風が気持ち良かったわ」
「そうなんだ。昨晩、男湯に不審者が現れて、カレが成敗したらしいわよ」
男湯?あれ?温泉って1つじゃ無いの?
「男湯も露天?」
「何を言っているの?当たり前でしょ。隣合っているんだから」
まさか、その不審者って…