---安室透---
久しぶりに温泉郷に戻ると、佐田リゾートホテルがオープンしていた。その隣の美術館もだ。俺の宿は、目の前の豪華リゾートホテルでは無く、亜樹の家である元温泉旅館である。その中の1室を俺の部屋としてキープしてある。
あれ?町医者が開業している。宮野医院…えっ?宮野医院?!まさかなぁ…偶然の同名だろうな。と何気なく通り過ぎようとした時、
「あれ?零君?ねぇ、零君だよね?」
あの懐かしい…初恋だった…の女医の声が、俺の背中に突き刺さった。
「まさか、宮野先生ですか?」
振り返ると、あの天使が俺の前に降臨していた。
「零君だ!ねえ、明美!零君がいるよ」
「えぇぇぇぇぇえ~!」
喫茶キャッツアイから、遠い昔に見た覚えがある少女の未来系が飛び出して来た。
「こんな偶然ってあるんだね」
って、明美が俺に抱きついて来た。宮野先生と同じ匂いだ…
「なんで、零君がここにいるの?」
「僕、ここの主に仕えていますので」
と元温泉旅館を指差した。
「亜樹君の下で働いているんだ。あっ!もしかして、亜樹君の言う探偵さんって、零君の事?」
「そうです。主な勤務地は東京なんですが、休暇の時に戻って来ます」
宮野先生と明美に両腕をホールドされ、喫茶キャッツアイに連行さえて、積もる話を色々した。
宮野医院がここで開業したのは、亜樹の保護者連中からの依頼だったそうだ。何度も頭を怪我している亜樹を心配して、ペインコントロールが上手い宮野先生の旦那さんの厚司先生に話が行き、条件面を話している時に、行方不明だった宮野先生の姉が見つかり、姉妹の2家族の面倒を見ることで、移住を決意したそうだ。
「姉の家族はガード面の仕事で、私達の家族は医療面が仕事なのよ」
まさか、こういう展開を読んで人材を集めていたのだろうか?俺のボス、鳥居亜樹…公安からの指示は、逆らわず、出向扱いにすると言われた。国家権力にも動じないどころか、逆に制御すらできる勢力。訊いた話ではMI6すら手懐けたと…バチカンが後ろ盾にいるとか…この国に留まらない権力図であった。
鳥居亜樹…コイツの正体は何だ?
---鳥居亜樹---
佐田リゾートホテルがオープンすると、冒険と称して私有地に無断で潜入する若者が増えてきた。ジャガーにイタズラされた時は殺意が芽生えた程である。
が、犯人の殆どは、森の中で変死体となって発見されていた。俺の怒りはどこにぶつければいいんだ?!
「獣道にあるから、夜道で猪とか熊に遭遇してんだろうね」
と、夏美。確かに夜道は危険である。アイツらは鼻が効くしな。
俺の家の敷地に無断で入るケダモノ対策として、威嚇用のエアライフルを設置した。クマさんの頭を貫通出来る威力である。屋根に何カ所か設置してからは、被害は無くなった。
最近、朝、起きると、猪やシカなどが仕留められている。ありがたく解体し、食すことにする。
---安室透---
自称冒険家達の遺体を亜樹が目にする前に片付けていく。暗部の仕事である。まさかである。あの天使の宮野先生もあの組織に居たという。宮野家一同、死体処理は慣れた物だった。
「零君、これも医療の為だからね。活きの良い内臓は、移植医療で有効利用出来るよ。コイツらみたいなクズの場合、肺と肝臓は使い物にならないけど…」
佐田家の新たな裏稼業、臓器医療を担っているそうだ。高額な請求はせずに、適切な価格で販売だという。販売価格には移植代も含まれているとか。厚生省は見て見ぬ振りとか…
「いい?心が腐っていても、内臓は腐っていないから。善良な人々の健康の為よ。割り切りなさいね」
と、俺を諭す先生…
---来生瞳---
お昼時になると毎日やってくる。そして、ランチを食して、アトリエに戻る日常…たまに、置いて行く薄い本…危険である。その内容は病んでいると思う。私と蘭ちゃん、麻衣ちゃんとの3Pって何?彼の好みは黒髪ロングでスレンダーな女子なのか?泪ねえ、愛が登場する話は少ないし。
そもそも、彼に全裸を晒したことが無いのに、なんで正確に描かれているんだ?むむむ…
「あぁ、瞳さん。亜樹君のスキルって、服の上からでも全裸が見えちゃうらしいですよ。だから、下手に恥ずかしい下着はNGですよ」
え?服を透過して下着が見える?蘭ちゃんの見せてくれたスケッチブックには、色々な下着だけがデッサンされていた。
「下着に集中していると、他は何も見えないらしいです。一番怖いのは、コレですよ」
これは、皮膚の中…血管だけで全身が描かれていたり、内臓だけで全身が描かれていた。
「あっ、これCMでも使っていますよね」
って、愛。
「えぇ、私の身体から1枚ずつ層が剥がれ落ちていくCMですよ」
と、麻衣さんが恥ずかしそうに説明してくれた。デッサンした日はダメな日だったらしく、ファーストテイクでは、下り物をデッサンされてNGになったらしい。
「そんなスキルってあるの?」
って、呟いたら、亜樹君がスケッチブックにデッサンを始めた。最初に、その日付けていた下着の上下を、続いて全裸の私を…
---江戸川コナン---
久しぶりに博士の元を訪れると、灰原がいなくなっていた。
「灰原は?」
「家族が迎えに来て、連れて帰ったよ」
アイツの両親って、組織の者だったよな?
「無理矢理か?」
「いいや、円満に付いていったぞい」
どういうことだ?
「小さいままか?」
「完全な解毒剤で元の姿に戻っておったぞ」
え?ちょっと待て。じゃ俺はどうなるんだ?アイツがいないと、戻れないんだが…
「どこに行ったか分かるか?」
「あぁ、名刺を置いて行ったぞ」
名刺には『佐田医療財団 宮野医院』とあり、所在地の住所が書かれていた。だがそこは、あのアンタッチャブルな地域だった。