---鳥居亜樹---
預金額が1000万に到達した。税金で支払う納税預金とは別である。当分、納期を気にせず生きられそうだ。夏美は、あの女性のフィギュアを作り、鈴木画廊に売りにいくらしい。原型を作るより良い、一点物の方が高く売れる。まして、あの絵とセットにすれば…夏美の顔に悪い笑みが浮かんだ。脳内では金勘定か?
俺の母親の安芸桜っていう絵師は、桜をモチーフにした作品が多い。なので、鈴木画廊からの要望には桜が付きものである。
「あぁ~、彼女が欲しいなぁ」
高校に通わない俺に彼女が出来るわけは無い。かといって、ナンパする度胸も無い。今夜も脳内保存で…
薄い本の版元から陵辱物の依頼が入った。レンタルでAVでも借りてくるか。財布とサングラスを持ち、家を出た。
「新一!みつけたぁぁぁ~」
後ろから女子の声が聞こえた。どこかのカップルが修羅場かな?次の瞬間、頭と首にダメージが入った。
気づくと、病院のベッドの上だった。なんで、俺はここにいるんだ?
「おにいちゃん、大丈夫?」
夏美と顧問弁護士の妃英里先生がが心配そうに俺を見ていた。
「俺、どうしたんだ?」
「ごめんなさい。私の娘が…勘違いをして…亜樹君にハイキックをプレゼントしたみたいなの」
ハイキックって、プレゼントする物なのか?
「娘本人に謝罪させたいんだけど、今警察だから…」
「俺は何で襲撃されたの?」
「今まで気づかなかったけど、娘の彼氏に似ていたのよ」
はぁい?
むち打ちに、頭部裂傷、そして脳震盪のおまけ付き。全治1ヶ月の診断だ。
「ごめんなさいね。頭に傷が残っちゃうわね」
夏美によると、毎日妃先生が見舞いに来てくれているようだ。ようだって、俺は意識が無い時があるらしい。なんか、再検査の結果入院が伸びそうだよ。妃先生の娘さんは、執行猶予付きになったらしい。現在は自宅謹慎中らしい。
入院して初めて気づいた。尿道に挿管って痛いったらありゃしない。二度と入院しないようにしないと。
---江戸川コナン---
蘭が俺に似ている男を病院送りしたそうだ。その相手は妃先生が顧問を務めるヤツだった。責任を感じている蘭に掛ける言葉が浮かばない。しかも、初犯とは言え、路上で背後から頭部へのハイキック…一発で書類送検、そして執行猶予付きながら傷害容疑で、有罪判決が下されたようだ。もし…被害者が俺だった場合でも、同じように病院送りだろう。
蘭は正体不明の覗き犯にイラ立っていたらしい。そして、その犯人を工藤新一、俺だと辺りを着けたらしい。まぁ、或る意味、正解である。一緒にお風呂に入っているから。でも不可抗力だよ。まったく。こんな身体で無ければ、蘭と大人の階段を昇っていたと思うし。
謎の薄い本…小学生の俺には手に入らないので、蘭が部屋から出た隙に持ち出して来た。これって…モデルが蘭って言われても納得してしまいそうな出来である。ここまで妄想で似るものなのか?ほくろの位置、アンダーヘアの刈り具合など、見ながら描かないと描けないレベルである。
「コナン君にはまだ早いわよ」
薄い本に熱中するあまり、蘭が入室したことに気づかなかった。俺の手から薄い本が奪われた。
「園子に訊いたの?まったく…」
薄い本と共に、部屋を出て行く蘭。当分、怒りは収まらないだろうな。
---毛利蘭---
家の下にあるポアロに向かった。園子と会う為だ。また、薄い本を仕入れてきたそうだ。現在、警察の監視下に置かれ、同じ敷地にあるポアロしか行けない。まったく、どこのどいつが覗いていたのか?やはり、新一が濃厚な容疑者であるな。
「蘭、待った?」
「私も今来たところよ」
園子の持って来た本では、新一とお父さんが薔薇展開していた。眼が点になる…
「ねぇ、これって同じ作者なの?」
「最後のページを見なさい」
最後のページを見開きにすると、股間の前で両手を組み、なんとも言えぬ表情をしている全裸の私がいた。鉛筆画であるが、妙にソックリである。背景には、新一とお父さんの濃厚な…えぇぇぇぇ~、なによこれ!!!
「版元は分かったわ。鈴木出版のアングラ部門だった。ごめんね、蘭」
「ねぇ、出版停止とかに出来ないの?」
「売れ筋だからね。無理っぽ」
このシリーズが売れているのか。
「で、覗き犯は見つかったの?」
「ちょっと、蘭、落ち着きなさいよ。アンタ、警察の監視下なのよ。そんな殺意剥き出しの顔したら、捕まるよ~」
そうだった。落ち着かないと…