---佐藤美和子---
東京に戻り、目暮警部に由美が寿退社することになったと報告をした。由美は現地で花嫁修業に入るらしい。正確には巫女修行である。あそこで儀式をするには巫女になることが条件だったらしいので、由美は太閤名人の希望に沿い、巫女になること決め、聖域で結納式を挙げられたそうだ。
「お相手は誰なのかね?」
「有名人なので、名前が出せません。結婚すれば、ニュースになるような相手ですよ」
目暮警部に別室に連れ込まれ、仕入れた情報をお話している。
「で、夏美ちゃんの件は、分かったかね?」
「う~ん…何となくですが、亜樹君の実の妹のようです」
「そうか…そうなると、もう一つの謎が出てくる。鳥居姓は元々誰の者なのかだ。コチラでの聞き込みでは、夏美ちゃんは神代家に名を連ねる者だそうだ」
あれ?そうなると亜樹君もなのか?あの家系図は…太閤名人の名前が出せないので、家系図のことは出せないと判断したのだが。
「それはどこ情報なのですか?」
「君には、言え無い筋だよ。下手をすると消される筋だよ。国家の闇というか…」
なに、それは怖い…知りたくも無い…
---鳥居亜樹---
久しぶりに大都会、東京に戻ってきた。麻衣がお願いがあるって、俺を呼び出したのだ。あと、夏美はフィギュア人形の材料の買い付け、そして、蘭は里帰りである。俺だけ、麻衣のマンションへ向かった。
「お姉ちゃんは、まだ帰って来てないよ」
高校生アイドルの豊浜のどかがいた。麻衣の妹であるが、俺の好みではなく、食指は浮かず、透視なんかしないよ。
「ねぇ、薄い本のお土産は?」
「最近は描いていないよ。ハードカバーの締め切りがキツくてね」
担当編集の鈴木さん曰く、感動秘話、麻衣と翔子の物語を書き上げている最中である。挿絵程度のイラストは描いているが、薄い本レベルの物は描いていない。書き上げているストーリーにそぐわないイラストになりそうだし。
「じゃ、のどかと麻衣の2Pでも描くか?」
「え?おねえちゃんと…」
そんなキラキラした目で見つめないでくれ。のどかでの妄想が出来ないんだから…
◇
麻衣は同い年くらいの少女をお持ち帰りしてきた。
「彼女は、一ノ瀬ちづる、駆け出しの女優なの」
あぁ、中々美味しそうな身体である。のどかと違い、ごく自然に、全裸姿が見えていた。
「ねぇ、彼女売れると思わない?」
「うん、売れるよ。のどかよりも…」
「はぁ?」
のどかに睨まれた。
「で、彼女をどうしたいの?」
「彼女のおばあさまの容体がよく無いの。おばあさまにちづるちゃん主演の映画を見せてあげったいって…」
それはそれで感動秘話になりそうだから、麻衣…これ以上、俺に仕事を押しつけないでぇぇぇぇ~。
「ショートの映画作れない?」
「エロいのなら」
ばき!
麻衣にスリッパでGを潰す感じで叩かれた。
「おばあさまに見せるのよ。エロは抜きで!なにか、シナリオは無い?」
無いことは無い。ラノベ作品でまだ実写化していない物はある。
「彼女、苦悩人なんだよ。ヒーローショーのバイトもしているし、レンタル彼女のバイトまでして、アクターズスクールの費用や生活費を稼いでいるのよ」
聞き慣れない言葉が耳に達し、訊いてみた。
「ねぇ、レンタル彼女って何?」
「えぇっと、プラトニックなお付き合いな彼女を演じて、お客様に喜んで貰うお仕事です」
「相場は?」
「3時間…15000円…です」
「じゃ、3ヶ月くらい借り切るよ」
「え?」
「大丈夫、彼はお金持ちだから」
って、のどか。確か、のどかのグループの売れ残りチケットを買い上げたことはあるが…
「その間に、身の回りをきれいにして。その後、麻衣と同じ事務所に入ってもらって…それまでに台本を書き上げておく」
「亜樹、ヒロイン陵辱系はダメだからね」
「そういうのは2作目以降で…」
「え?」
ちづるが固まっている。麻衣とちづるを並べて…
「あぁ、直ぐに身の回りをきれいに出来るなら、2週間でクランクインだから」
「台本は?」
「ハードカバーの『空気騎士~エアナイト物語』がある。麻衣の為に書き上げたヤツ。ヒーローショーに出ているなら、麻衣より躍動感のあるシーンが撮れると思うんだよ」
---一ノ瀬ちづる---
「祖母に女優としてスクリーン上に立っている自分の姿を見せることが夢です」
オーディションの面接でそう言ってしまい、主演女優の桜島麻衣さんに声を掛けられて、結果、事務所の移籍をした。家も引っ越した。レンタル彼女であった痕跡を消す感じで…
移籍した事務所は出来たばかりの為か、所属女優は私と麻衣さん。で、あとは売り出し中のアイドル「スイートバレット」がいるだけ。だけど、専属作家には鳥居亜樹先生がいる。ラノベでも推理小説でも万能な作家さんである。薄い本まで描いているのは知らなかったけど…
彼の言う通り、2週間でクランクインした。撮影はほぼ一発勝負に近い。麻衣さん曰く『プロなんだから、ワンテイクから決めないとダメ。予算が膨れる原因だからね』って。
1ヶ月後には小さな小屋で上映が出来、祖母に見せることが叶った。ストーリーはヒーロー物だけど、もの悲しさを含んでいた。優れた姉と比べられるのがイヤな妹が空気に溶け込み、誰にも認識されなくなる。優れた姉役に桜島麻衣さん、悪い魔女に米国の若き天才女優であるクリス・ヴィンヤードさん。そして、主人公のエアナイトが私というVIPな配役だった。私以外は。あの世界的な女優、工藤有希子さんがちょい役で出演してくれたそうだ。
「どう?おばあちゃんは喜んでくれたかな?」
「えぇ、ありがとうございます」
「佐田グランドホテルと、佐田リゾートホテルのシネマホールでの上映が決まったし、国際線で上映も決めたから。って、おばあちゃんは飛行機は無理かぁ。佐田グランドホテルのスィートを借りるから、家族で上映をみておいで」
と、麻衣さんの彼氏からチケットを貰った。
「いいんですか?こんなに」
「麻衣じゃアクションシーンはまだ無理だったから、あの台本は肥やしになっていた。それが表に出たんだ。みんなハッピーハッピーだよ」
---鳥居亜樹---
『エアナイト』は大ヒットをかましてくれた。これで当分、投資に回せるお金が出来たかも。
「ねぇ、ちづるちゃんと寝たい?」
「麻衣がいればいいよ」
蘭は里帰り中である。彼氏と揉めているのかもしれないし。それに、ちづるの姿は脳内保存済みだし…麻衣とちづると何かの3Pの絵は下書き済みだし…