---江戸川コナン---
鳥居亜樹の家に行くと言う。俺と服部は同行する旨を伝えてある。これで、蘭と接触できそうだ。
バスで1つめの停留所で下車して、療養所の受付で手続きをして、面会の予約をとるようだ。アイツは何様のつもりだ?会うだけで予約がいるって…
待ち時間を利用して、付近の散策に出た。隣との境界は塀だけである。監視カメラは見当たらない。俺と服部は難なく塀をクリアして、鳥居亜樹邸の敷地に入った。
「おい、ここは隣の家の敷地だぞ」
服部の親戚の男子。俺達は無言で家の方へ踏み出した。その時、微少な弾着音を聞き、音の先を見ると、真っ青な顔の服部の親戚の男子がいた。
「うっ…警告無しにいきなり狙撃とは物騒な家だな、平次」
「あぁ、怪しい臭いがプンプンだろ?」
どや顔の平次だったが、次の瞬間、スイカ割りのスイカのように、平次の頭部が爆ぜた。狙撃を頭部にって、無茶しやがる。隣の療養所に、ここの惨事は伝わっていないようで、待合室にいる連れ達は談笑している姿が見えた。
「マズい、逃げろ、坊主…」
服部の親戚の男子は息絶えたようだ。先ほどの弾丸は毒薬入りだったようだ。着弾点右鎖骨の下辺りか…プロの仕業か?
「うっ!」
何も気配を感じずに、首筋にスタンガンを受けたようだ。
---七草真由美---
「申し訳ありません。面会は、明日になります」
受付の女性がそう伝えて来た。
「どうしてですか?」
「冒険者達…これではわかりませんね。常識を知らない若者達が、隣の敷地に入り込み、悪さをしたそうで、これから現場検証なんですって」
ここに来る前に聞いた。このエリアでは自称冒険者を名乗り、関係者以外立ち入り禁止の領域に入り、お宝を探すゲームが流行っているらしい。このエリアは、駅前にホテルと美術館があり、それ以外の場所だと、この療養所と、隣の喫茶店、向かいにある医療施設以外は私有地で立ち入り禁止になっていた。だが、ホテルの施設に飽きた一部の者達が、私有地に入り、お宝、所有者の持ち物を盗み出すゲームと称する遊びが横行したいるらしい。
「あれ?服部君達は?」
見回すと、問題児3名が消えていた。まさか…アイツら…
「その侵入者はどうなったんですか?」
「森の方へ逃げたらしいです。この辺りは物々しくなるので、一旦ホテルにお戻りください」
そうこうしていると、警備員らしき者達が療養所周辺を調べていた。救急車が数台、救急医療センターに入っていく。怪我人が出たのか?
「この辺りの森にはクマが出るんです。温泉地故、暖かいものですから、冬眠はまだ先なんです」
それは冬眠前の食欲旺盛なクマに襲われる危険が高いってことなのか。この場にいる者だけでホテルへ戻った。戻ったが…服部君達と連絡が取れずにいた。東京にいる父へ連絡をして、情報を収集してくれように頼んだ。私の父は警察庁の人間であるから。
夜中近くに、その父から連絡が入った。
「侵入した3名の死体が森の中で見つかったそうだ。だいぶ食い荒らされていて、そのまま荼毘に付すそうだ」
◇
翌日、この辺りでの葬儀を取り仕切っている神代神社に向かった。そこには、巫女姿の深雪がいた。
「深雪…何をしているんだ?」
「巫女ですが。見て、おわかりになりませんか?お兄様」
ずいぶんと可愛らしい巫女を前にして、困惑している達也君。
「遺体をご覧になりますか?」
警察関係者の方だろうか、そう私達に確認にきた。代表して私と達也君で確認をした。それは目を背けたくなる惨状だった。内臓が無くなった上半身。太ももは抉られ、肋骨には咬み痕が生々しく残っている。
「DNA鑑定の結果、頭を丸々喰われたのが、服部平次君で、頭部の半分を喰われたのが服部刑部少丞範蔵君、その靴だけしか無いのが江戸川コナン君です」
服部君の親戚の男子、服部平次は警察のデータベースにDNAパターンがあったそうで、直ぐに判別出来たそうだ。あとは消去法らしい。
「子供の江戸川君は丸々喰われたとみています」
神社に併設された焼き場で焼かれる3人…なんで、禁止領域に入ったのだろうか?好奇心か、冒険心だろうか?
「真由美、ちょっと…」
父に呼ばれた。なんで、ここにいるのだ?これって、犯罪絡みなのか?
---司波達也---
七草先輩の父上に呼ばれ、彼の車の後部座席にのりこんだ俺と七草先輩。彼は公安警察のトップらしい七草弘一氏である。
「服部平次は鳥居亜樹を調べていたそうだ。彼は西の高校生探偵として有名なんだそうだ」
まさか、鳥居亜樹を調べる為、隣の敷地に侵入したのか。
「達也君に訊きたい。君は鳥居亜樹をどこまで知っているのかな?真由美に聞いたのだが、妹さんは彼の婚約者候補らしいな」
「いえ、お見合いをして、彼の元での生活を経験しているだけですよ。作家や絵師って職業は普通の人と生活のリズムが違うってことで」
「そう、真夜さんに聞いたのか」
この人は、叔母様を知っているのか?
「彼とお見合いをするのは大変なんだよ。うちの真由美でさえ、まだ実現していないのだからね」
「お、お父さん、何を言っているの?見も知らない男性にお見合いを申し込んでいたの?」
動揺している七草先輩。
「彼の持つ力は世界を征服出来るほどだ、それも平和的にね。ただ、彼には野心がまるでないのが、玉に瑕だがね。それ故、彼を狙う家系が多いのも事実だ」
「それは後ろ盾の話ですか?彼個人の力ですか?」
「無論、後ろ盾の話だよ」
「まさか、あの3人は消されたと?」
「可能性は否定しない」
「服部君たちは殺されたの?」
七草先輩が弘一氏の胸ぐらを掴み、詰め寄った。
「可能性の話だ。証拠は無い」
証拠は煙となったか…
「冒険者達の末路は皆、獣に喰われたことによるのだ。ここには子供専用の内臓移植センターがある。偶然にしては出来すぎだろ?」
出来たての死体から内臓を奪い、ドナー待ちの子供達に配っている…のか?不自然に内臓が消えるとマズいから、獣のせいに?
「そこで、お願いがある。司波達也君、鳥居亜樹の懐に飛び込んで貰えないだろうか?」
俺にスパイをしろと?