---七草真由美---
見合い相手が入学してきたが、魔法師と見なされず一般人枠であるH組に配属された。父曰く、彼らの魔法体系が魔法師と違う為らしい。この学校では、魔法が使えない者に対し、差別が存在しているが、大丈夫であろうか?
彼らと会う機会が無い。私のいる校舎に出入りできない為だ。H組は別校舎で、校舎間の移動は禁止されていた。彼らの方から会いに来ない。連絡先をしらないし。どうしよう。こちらから申し込んだお見合いなのに、何もアクションが起こせない。父は何かに焦っているようだ。
「今度の連休に会いに行って来い」
と、父が行き方のメモを渡し、命じてきた。学校へは通いらしいので、学校の近くに住んでいるのだろうか深雪さんと行ってみるか。
◇
深雪さんと待ち合わせ、八王子の隣のエリア、駒王町から電車に乗る。地下鉄のようだ。こんな場所に地下鉄なんかあったっけ?駒王町から一駅で終点西域に着いた。西域って、どこなんだろうか?聞いたことの無い地名である。電車だと思っていた乗り物は、床下からモーター音が聞こえず、リニアのようだ。プラットホームから、地上へ出ると、鳥居の前に出た。どこかの神社なのか?鳥居の前に亜樹君が待っていた。
「ここからは、車です」
車に乗り込み、森の中を進んでいく。
「ここは?」
「先ほどの鳥居の辺りは、ウチの土地です。駅と鳥居と森と参道しかないですけど」
うん?家は無いのかな?深雪さんが不安げに車窓を見ている。一面が森である。三十分ほどすると、大きな神社の裏に出た。
「ここが神代神社です」
と、説明された。神代神社とは父によると、この国を守護する神を奉る神社だという。その場所は一族の者しか知らないと言う。
神社を過ぎると、峠道にはいり、下っていくようだ。広い道にでると、湯煙が立ち上っているのが目に入った。
「麓は温泉地なんですよ。俺達の住んでいる場所は、元温泉旅館でね」
街らしきエリアにはいると、大きな建物が何棟か見えた。
「現在、駅前に佐田グループがホテルを建設していて、少々騒がしいです」
駅?乗ってきた路線と違うのか?坂の途中にある温泉旅館の駐車場入る。
「この元旅館の離れに住んでいます」
大きな屋敷のような建物。庭園があり、池がある。ずいぶんと遠くに来た感じである。朝一で自宅を出て、もう夕方である。こんな場所から、毎日通っているのか、彼らは…
---司波深雪---
駅のあった鳥居の場所、その辺りから空気が違っていた。厳かな感じが皮膚を突き刺す感じであった。森の中の道、生き物の気配を感じ無かった。ここはこの世なのか?CADは機能しないようだし。世界が違うような。サイオン粒子が存在していない感じである。
森の中で意識がとび、気が付くと彼らの住居に辿り着いた。
「長旅で疲れたでしょ?温泉に浸かって、疲れを癒やし、それから夕飯にしましょうか」
◇
客間らしき部屋に案内され、真由美さんと一服する。
「ここはどこナノかしら?八王子の近辺だと思っていたのだけど」
学校へは通学していると聞いていた。
「彼らの家は、小淵沢の先と聞かされてました」
小淵沢には四葉家の本邸がある。
「そうなると、あのリニア列車で、遠くに運ばれたのかしら」
多分、逃げ場はないだろう。結界で囲まれている感じがする。
「とりあえず、温泉に入ってきましょう」
元旅館の為か、廊下には案内板が多くあるので、迷子にはならないだろう。
温泉は男女別の掛け流しの露天風呂である。脱衣所、洗い場共に広い。湯に浸かると、全身の力が抜けていく。一瞬でのぼせたようになっていく。マズい。これは危険である。肌を刺す刺激が心地よい。身も心も湯に預けていってしまう。溜まっていたナニカが吸い出されて、軽くなっていく。ダメだ、戻らないと、戻れなくなる
貪欲にナニカを食べている。美味しい。食べれば食べるほどに、何かが変わっていく。抱えていたプレッシャーが昇華され、消えていく。心が軽くなり、、幸せな気分に浸っていく。
身体の中でナニカが蠢き、身体の中が塗り替えられていく。もう戻れないだろう。
◇
「おはよう、深雪」
彼が耳元で囁く。耳の中に彼の生暖かい吐息が入って来た。
「おはようございます。旦那様」
新しい朝の始まりである。
---宗方一弥---
真由美の身体から離れ、朝湯に向かう。全身真由美の体液塗れである。よくここまで溜め込んでいたな。きっと、亜樹の方も同様だろう。世俗の汚れを出し切り、聖杯化し、魂を新たな身体に移し終えた。彼女達の本体は、聖杯化し、宝物庫へ大切に保管した。彼女達の身体はホムンクルスに置き換わっている。今後は神社で巫女でもしてもらうか。