---宗方一弥---
連休明け、学校に行くと、深雪の兄の司波達也他数名と、真由美の友人である渡辺摩利が、H組を訪れた。
「深雪と真由美さんはどうした?」
「家で巫女の修行をしているけど」
神社の正式の巫女になるには修行は必要である。アルバイトじゃないんだから。
「婚約する前に、巫女の適性を調べないとダメだ。イザ結婚となって、巫女ができないんじゃ、神社の嫁にはなれん」
「今じゃないとダメなのか?」
「世俗の垢に塗れたら、手遅れだよ」
何を常識的なことに疑問を持つんだ?汚れは軽い方が落としやすいんだぞ。
「二人に会わせろ」
って、命令系かよ。
「神社まで来たら、会わせられる。折角浄化したのに、世俗に連れて来られない」
「世俗って、なんだ!」
大柄の男が、殴り掛かっていた。亜樹がエアバレットを首筋に打ち込むと、意識を刈れ沈黙してくれた。
「何をしやがる」
今度は赤髪の女が特殊警棒で襲って来た。警棒を腕でパリィすると、亜樹がサンダーバレットを彼女の敏感な部分に撃ち込み、これも沈黙させた。
「君達は、一般人に容赦ないねぇ。お話にならない。じゃあな~」
俺と亜樹はその場から転移して離脱した。
---司波達也---
目の前から消えた二人。転移術か?現代魔法師に無理な魔法である。術式が不明であるから。
「達也君、彼らは何者なんだ?」
渡辺先輩に訊かれた、エリカとレオが一瞬で意識を刈り取られている。何をされたんだろうか?
「彼らは本物のウィザードです」
「ウィザード?」
「魔法使いの最高峰の賢者ですよ」
「賢者って、お伽噺じゃなくて?」
現代魔法師からしたら、賢者はお伽噺クラスの存在である。CADなしで、多種多様な魔法が行使できる存在であるから。
◇
翌日、渡辺先輩と一緒に、真由美さん、深雪の元へと向かう。エリカとレオは検査入院となった。小淵沢駅で、佐田鉄道に乗り換えて、終点の佐田リゾートホテル前まで乗車。問題はこの駅からだ。神社まで、バスが出ていない。ここからは徒歩しかないようだ。リゾートホテル近くのビジネスホテルにチェックインをして、翌朝向かうことにした。今から出掛けると、山道で夜になるらしい。リゾートホテルはまだ建設中だった。街自体が開発中なのか、街灯が少なく感じる。
駅のロータリーにはバスもタクシーさえも、乗り入れていない。まるで、楽に来られないようにしているようだ。ビジネスホテルって、なんのビジネスだろうか?疑問が多い街である。
街を散策してみた。リゾートホテルの裏には病院が建設中だった。『宮野医院』と看板が掛けられている。個人病院なのか?温泉とセットで湯治客目当てだろうか?その病院の道路を挟んだ逆側には立派な門を構えた屋敷がある。表札は無いが、この辺りの大地主だろう?この屋敷を過ぎた辺りから、山道ぽくなっていた。
「あっ、端末の電波が入らないわ」
と、渡辺先輩。たしかに、情報端末に電波がとどいていない。駅前まで戻っても電波が入らない。ホテル内もダメだ。固定電話しか使え無いようだ。ホテル内にはwifiがあり、ホテルでネットは繋げられるようだ。
---渡辺摩利---
温泉に入り、寝床に入り、ウトウトしてくる。ふと甘い香りを感じると、金縛りにあった。浴衣が脱がされていく感覚。掛け布団が外され、外気に皮膚がさらされているようだ。空気が全身を舐めていく。そんな刺激で達しそうになる。なに、これ?誰かに腰を掴まれ、谷間に顔を埋められる感覚…達しそうになると、感覚が薄れ、また感じてくる。地獄である。達して楽になりたい。悶々とする身体。誰か、楽にして…
朝、目覚めると、着込んだ浴衣が濡れていた。布団まで。脱がされた形跡はないが、身体が刺激を求めている。自分で自分でイジメ、悶々さを追い出していく。
朝風呂を浴び、服装を整え、達也君のいるホテルの玄関へと向かう。
「おはようございます。よく寝られましたか?」
達也君に訊かれ、頷く。
「さぁ、向かいましょうか」
二人で神社を目指す。
◇
山道…足腰に来る物がある。服を着ているのに、空気に素肌を舐められている感覚がある。マズい、立ってきた。達也君に気づかれないようにしないと。また、あの悶々地獄が訪れたようだ。呼吸が荒くなっていく。首元から入り、背筋を下っていき、お尻の沢を伝い、洞穴近くの敏感なセンサーに達し、私を弄ぶそよ風…心が解けていくようだ
「鳥居が見えて来ました」
達也君の声で、正気を取り戻す。鳥居の後ろには石段があり、竹のトンネルに覆われ、先が見通せない。いったい、どのくらいの段数があろのだろうか。鳥居を潜り、石段を登っていく。竹の枝が胸を誘惑してくる。その度に私から何かが1枚1枚剥がされていく。
---宗方亜樹---
竹のトンネル…外界の者がここに到達する為の関門である。ここで、名の無き神を讃える気持ちがないと、精神攻撃を受け、精神を真っ白にされていき、人形のように意思を持たない存在になる。
「大漁だな」
神主の亘に声を掛けた。
「彼らを囮に、影の者達が追尾していたからね。公安やエスの類いだろう。モグラにして返す?」
「美味しそうなのはとっておいてね。シエスタはしたがりなんだけど、テクがないから」
シエスタばかり愉しんで、俺にっては苦行である。
「分かった」
---七草弘一---
真由美に会いに達也君が向かうとのこと、手下達を追尾させ、神代神社への潜入を試みた。が、全滅だという。他の組織たちも同様だという。MI6、FBI、教会の暗部たち…一人も戻ってこなかった。
これでは確実に彼らから敵認定を受けてしまう。どうするか…警視庁に丸投げするか。