このお話はPIXIVにも投稿しています。
普通のASMRではなく、文字という情報の最小単位であなたの脳に快感を想像させるお話なので、
Another Sensory Mellow Romance(第六感で味わう蜜愛)
の略となります。まあ、これは気にしないで大丈夫です。
私は、あなたたちの妄想力を信じます。この異次元的な試みを開始するにあたって、一番最初は、やはり彼女しか思いつきませんでした。
では参り――いえ、潜りましょう。
――白上フブキは憂慮した。それは、キッチンで晩ご飯を作ったフブキが「ご飯だよー」と誘いに行った、恋人の部屋で湧き上がった懸念であった。
その男はヘッドフォンをしているせいで、「おぉい、ご飯だってば!」とドアをノックして開けた自分に気づかず――パソコンに食い入るような目つきで配信画面にむしゃぶりつき、掃除屋のシャチが魅せつけるおっぱいの谷間に夢中になっていたのだ。
「…………まーた浮気してるし……んっとにもう……!」
……以前から、気にはなっていた。彼自身は優しくて、自分が必要とするときには絶対に近くに居てくれる、自慢の恋人ではあったが……ちょいとばかしスケベで、特にでっかいおっぱいに目がないという特徴があり、すぐに自分以外の女性に興味を示してしまう悪癖もあった。
最近は特にその浮気癖が酷くなっており、自分に向ける性的な意欲が消極的になってきている。イチャイチャと愛を語り合う時間はたっぷりあるのに、身体を重ねる回数がどんどん減っているのだ。そして、空いた時間にはエッチなバラエティー番組やエロゲを堪能するようになり、最近ではホロメンのややエロい配信にも手を出すようになった。
ホロライブには人気アイドルが多数在籍しており、強い個性をさらに主張して自分の〝売り〟としている。それがちょっとエロ方面に偏っているメンバーもそれなりに多く、動画共有サービスのルール上でキワドイところを攻める、ある種のお約束的な芸風もある。
その昔は〝エロライブ〟と呼ばれていた――一部ライバーは自分からそう呼称していた――ことからも、プロジェクトが拡大した要因のひとつであることはフブキも知っていたし、否定するつもりはなかった。むしろ、自分から振ることはほぼないものの、下ネタへの耐性はかなり高い方だという自負もあった……。
……それはまあ確かなのだが! 同棲している家で――自分の目の前で! 公然と他の女に鼻の下を伸ばされるのは、まったく別の問題だろう!
というわけで額に青筋を浮かせ、頬をピクつかせたフブキは――彼のヘッドフォンをがぽっと外し、ギクリと肩を縮こまらせた背中に抱きつく。
「……クロヱちゃん、かわいいよね。私と夕ご飯のことなんて、もうどうでもよくなっちゃうもんね」
耳元に寄せた唇から、雪華のように舞った冷たいウィスパーボイスを頭の中に響かせる。
その局所的な猛吹雪に揉まれ、流れるように椅子から転げ落ち、完璧な土下座を見せた恋人。ロッ〇マンのエンディング直前レベルで見慣れたその姿に、フブキはため息をつくことしかできない。
後輩に申し訳なく思いながらも、さすがにNTR――推し変とも言う――の気配を放置できなかった。センシティブな配信画面を閉じて……手錠のように繋いだ手を引っ張って、温かいご飯が待つダイニングに戻ったのだった。
――――――
忘れられない敗北感を味わった後日のこと。収録の空き時間で事務所に戻っていたフブキは、自分の慎ましくも美しい胸を撫でさする。
膨らみが無いわけではないし、ナマで触れたときのしっとりした手触りや、ぷにゅぷにゅな瑞々しい柔らかさ……ふんわりと上向いたカタチにだって自信はある。
みとママが生んでくれた、痩身として完璧なスタイルに文句の付け所など存在しないのだが……。
「うーむ……火力は十分なのに……弱点特効だけが足りないんだなぁ……」
敢えて言うなら〝あまりにも無駄がなさすぎる〟のかもしれない……豊満で肉肉しい身体つきを好む異性には、やや淡泊な印象を与えてしまうのは否めない。その対象に恋人が含まれているのは、女としてだいぶ複雑な気分ではあった。
フブキはKカップの幻想を夢見たときもあれば、まつりに揉まれすぎてFカップぐらいまで育ったイフの姿を感じたときもある……が、それらは〝自分〟ではなかった……ような気がしていた。このバーチャルワールドは無限の可能性を秘めているからこそ、曖昧な概念が干渉し合うことがあるのだ。
(……私にその可能性があるなら……ぜひ巨乳になっておきたいよなぁ……)
恋人は「フブキのおっぱいが一番好きだ」と何度も言ってくれてはいる……というか、問題が起こった日もそうだった。だが、その半日後には、ころね風に言えば〝他の女〟のところに行ってチンチンをモチモチにさせていたのだ……その優しさをどこまで信じていいのかわからないところがあった。
……そもそも、彼が見せている〝それ〟は本当に優しさなのか……?
自信が喪失していく心に不安が押し寄せ、一気にマイナスの感情が吹き荒れる。
「ふいー。お疲れ様でーす」
「……あ。おはよう、すいちゃん」
「あー、フブキちゃんだー☆ おはようございまーす!」
暗くなりかけた世界に、彗星の如き光が舞い込んだ。
事務所の扉を開けて帰投したのは、世界レベルの歌姫となったスーパーアイドル――星街すいせいであった。
その邂逅は昼過ぎではあったが、アイドル事務所のお約束的なあいさつと軽い会釈を交わす。
フブキは、その小さな動作ではまったく揺れない……すいせいの胸部に、つい目が行ってしまった。
「――ちぎろうか?」
「んぇっ!? や、なに……えっ……ちぎっ……な、なにを……!?」
「やー、フブキちゃんはすいちゃんが羨ましいのかなって☆ 今すぐにでも用具入れのチェーンソーを……」
「ひえっ……え、遠慮しときますっ! いや、羨ましいっていうかね、すいちゃんに憧れているのは確かなんだけどもっ……や、あの、よくわかんないけどさ……! あは、あははっ……!」
フブキは会話が繋がらないことよりも、ケロリと怖いことを言ってのけるすいせいの眼光を避けることを重視した。
「なぁんだ」と残念そうにしながら応接ソファに身体を預けたすいせいは、持っていたバッグの中から台本を取り出して読み始めた。胸イジリは、ビジネスパートナーでもある『わりと巨乳なピンク巫女』のせいで慣れてしまっているのだ。
「あ、それって……前の配信で言ってた、今度のドラマのやつかい?」
「おっ、さすがフブキちゃん、よう見とる! そうそう、こいつがちょっとクセのある役柄でさ……歌唱パート以外のところ、しっかりインプットしておこうと思ってるんだ」
すいせいは苦笑し、時計を気にしながら収録の準備を進めていた。どうやら、ここでマネージャーが合流するまでの隙間が、彼女の数少ない自由時間になっているようだった。
何はともあれ、危機は去った。(あっぶねぇ、巨乳を夢見て虚無になるところだった……)と胸を撫で下ろしたフブキは、激務の合間でも気を抜かないすいせいの横顔を見やる。
片耳に引っ掛けているイヤホンをカリコリと掻きながら……その端正な顔立ちの美少女は、ふっと優しげに頬をゆるめた。
(……あのイヤホン、よく着けてるけど……いつも何を聴いてるんだろ……? やっぱり、新曲とか歌ってみたの音源なのかな……?)
フブキがじゃれつくようにそれを確かめようとしたとき、とんでもなく必死に抵抗された過去があった。それだけ大切な〝音〟なのだろう……かなり仲良くなったフブキも気を使って、それだけは聞かないように努めている。
フブキが最近気づいたことだが……あのイヤホンをしているときは、『すいせいがリラックスをしたいとき』のようだった。フブキ以外の同僚が近づいたときには、そのイヤホンを即座に外してしまうからすぐにわかる――あの無防備な姿を自分に晒している事実だけでも、すいせいから特に心を許されていることがよくわかっていた。
すいせいは国内どころか世界を股にかける歌姫として活躍しており、こうして事務所に顔を出せる機会もかなり少ない。そして、フブキが気軽に〝あの話題〟を振れる数少ない相手の1人でもあり……共通の話題があるからこそ、仲がグッと縮まったという経緯もあった。
「……星街さんや。恋人さんは元気ですかな?」
「ぶふっ……!? ちょっ、急に……こ、こんなところで言わないでくれない……!? 一応オフレコなんだけど……!!」
台本を読む手も止め、すいせいは周囲に視線を散らす。フブキの他に誰も居ないことを確認してから、「……まあ、元気すぎるぐらい……っすね……」と恥ずかしそうに答えた。
すいせいはこの事務所に所属する前から、運命共同体のように繋がった同級生の男性と共に過ごしている――フブキはそのことを知っていた。着替えのときに、胸に刻まれた情熱のキスマークを見つけてしまい、すいせいも白状せざるを得なかった。
その秘密を知ってしまったときに、突然ハンマーを取り出したすいせいを安心させるために、フブキも「自分にも精神安定剤的な存在がいる」と打ち明けることになった。そしてお互いに、あまり大っぴらにできない話題としていろいろ吐き出して、効果のあるストレス解消を図っていたのである。
「……ということは……昨日のオフもしっぽりと……???」
「――あはっ☆ ご想像におまかせします☆」
「なるほど、相変わらずヤりまくりだったわけですな……おさかんだね、おさかん!」
「ち、ちがっ……だって、向こうが何回出しても終わってくんないから……! そ、そういうフブキちゃんはどうなの……!?」
イヤホンをポケットに突っ込み、赤くなった耳たぶを触りながらすいせいが反撃に移る。
その切り返しが思った以上に深く入ったのか――「ぐはっ……!」と呻いたフブキが、視線をかすかに落とした。
「その反応は……まさか……」
「……おっぱいが欲しいんだ……ほしまちぃ……! 私はやっぱり、巨乳にならないといけないんだよぉ……!」
「そっちも相変わらずかよ……。まー、いろいろ大変だよね……カレが浮気性だったり、身体的な好みに差があったりするとね……」
「およよ……。最近なんかさぁ、白上から言わないとそういう気分になってくんないしさぁ……昨日なんてクロヱちゃんの配信でチン……おったててるしさぁ……! なんかもう、飽きられてる気配すら感じるよね……はは……」
「おやっ、今回は意外と真剣に悩んでるっぽいね……でも、そうだなぁ……」
フブキから事あるごとに「チチを盛りたい!」的な相談を受けていたすいせいは、フブキの細身な身体を見やる。
声に似合う可愛い顔。儚い美しさを魅せるモノクロームな体毛に、あざといケモ耳。どこをどう見ても完璧な、アイドルらしい引き締まった容姿。だからこそ、その悩みに「こうした方がいい」という答えができない残酷さが滲み出ていた。
「……フブキちゃん……捨てられる前に、捨てちまうか?」
「別れる前提かよっ!? それはさすがに……ね……? 私はね、フツーに……その……彼を愛してるもので……」
「わかってる、冗談だって。その人、フブキちゃんが死ぬほど病んでたときに、ずっとファンレターを書いてくれた恩人なんでしょ?」
「…………うん……」
フブキは膝を抱え、耳をぺたんと畳んで……自分が過去に見せてしまった〝弱さ〟を反省する。
……それでも、過去の自分を強く諫めることができず、恋人への感謝と愛情を再確認するばかりだった。
――――――
ホロライブは今でこそ超有名になった事務所だが、フブキが所属した当初はまだ事業規模がかなり小さく、予算も少ないために……自分の力で乗り越えなければいけない壁が多かった。
これまでの人生では必要なかった配慮や挑戦を繰り返し、少しずつ活動の幅を広げる毎日を続けた。そのペースは本当に、本当に少しずつ、小さすぎる一歩を積み重ねるようなもので……一つひとつが細かい砂粒をつまんで、大きな山を作ろうとするほどに果てしないものだった。
終わりの見えない下積み作業に心をすり減らして、毎日の配信で身体を追い詰めて……摩耗した心身が、ベキリと折れる寸前まで消耗していた時期があった。
……ちょうどその頃だった。手書きの便せんを青い封筒に入れ、黒猫のシールでとじた手紙が届くようになったのは。
同じ場所の消印で、かっきり3日ごとに届く。休みの日も、そうでない日も、絶対に途切れなかった。
投函から数日前に行われた配信の内容についての感想や、お気持ち表明には前向きな気遣いを伝えるという、ファンレターとしては比較的オーソドックスな内容が書かれていた。
残念ながら、文字単体はあんまりキレイではない……けれど、読むことを不思議とイヤに思わない、温かみのある文字の並びをしていたように思えた。
最初は、熱心なファンからのありがたい手紙としか感じていなかった。それが何度も届いて、何度も中身を読むうちに……それが普通のファンレターではないことに気づいてしまった。
配信や活動に対しての感想が主体で、情熱的な言葉が何枚分もの便せんにたくさん並んでいるのに、まったく表現が被らない。そのときに自分が一番評価してほしかったところを的確に褒めてくれ、自分が口にした不安は、まるで自分のことのように心配して励ましてくれた。
それは、画面の向こうにいる相手を真剣に想い続け、全身全霊で臨まなければ実現できないことだった。そして、フブキがその手紙を大事に読んでいたからこそ、そこにあった異常な温もりに気づけたのだ。
フブキとしては、その手紙にある『ちょうどいい距離感』が一番気に入っていた。自分がナイーブな発言をしてしまったときや失敗をしたときも、必要以上に杞憂せず、踏み込んでほしくないところまでズケズケと入らず……ステージ上に立つアイドルと、観客席で見守るファンのような適性距離を保ちながら、フブキに『ずっと応援しています』と伝えてくれていた。
……〝好きな人〟が〝愛している人〟に変わる前は、お化粧をしていない素顔をあんまりマジマジと見られたくないものだ。必要以上に心配して、杞憂までしてくれる熱い気持ちはありがたいが……大切に想っているからこそ、フブキはファンたちに、配信で見せるところだけを見てほしくて、伝えたいことだけを聞いてほしかった。
信じられないことに、その嬉しい現実がずっと続いた。1ヶ月が経ち、2ヶ月が経っても終わらない。配信で何も言わなくても、何も見返りを用意できなくても、手紙が途切れることはなかった。
それが甘くて残酷な夢だと言わせないように、フブキに告げた『約束』を守り続けてくれていた。念願だった1stライブにも来てくれたらしく、今までにないほどの厚みの手紙で、溢れんばかりの感動を共有してくれた。
……嬉しくないわけがなかった。手紙に涙が落ちないように気を配ることが難しくて仕方なかった。
フブキはその定期便のような黒猫印のファンレターを心待ちにするようになり、密かな活動の支えにしていた。
そのときに欲しい言葉が、いつもそこにあった。自分のことを気遣ってくれる優しさと、確かな愛が文字に表れていた。
自分が苦しいときに、一緒に苦しんでくれているような気がした。自分が嬉しいときに、自分以上に喜んでくれているような気がした。そう思わせるほど、文字に感情が浮き出ていたのが楽しくて……その向こうにいる人が、子供みたいで可愛らしいと思えた。
そんな気持ちがあったから、なのだろう。紙を通して伝わる温もりが、どのような人から発せられているのかが気になった。
消印が残された郵便局の近くで行われたイベントに参加したとき、休憩時間にぶらりと立ち寄って、少しだけ待ってみた。
アイドルとして売れ始めた、大切な時期だったにもかかわらず……そんな男っ気を孕むリスクを、自分から背負いに行ってしまった。『その手紙がなければ、今の自分は存在しなかった』と自信を持って言えてしまうほどだったから。
狐耳が隠れるように帽子をかぶって、カフェで買ったアイスティーを飲み……ソワソワとしながら、(まーねっ、そんな偶然……あるわけないか……)と期待せずに待っていた。すると、程なくして――大学生ぐらいの爽やかな青年が、郵便局の入り口で、青い封筒をバッグから取り出した。
いつも封筒から逃がしていた黒猫のシールが目に入ったとき――世界が、時の流れを忘れたように煌めいた。
フブキがその背中を追いかけたときに、かしゃん、とアイスティーが地面を濡らす。冷たい氷は衝撃に耐えきれず――まるで光の華のように散り咲いて、その運命的な出会いを彩った。
――――――
「…………ずっと、一緒に居たいんだ……あの人と……」
フブキは、一瞬たりとも忘れたことがない思い出に、心からの微笑みを浮かべた。
手紙の差出人は、人付き合いが苦手で恥ずかしがり屋なクセに、感情の起伏も、人恋しい気持ちも激しい『自称フリーター』の男性だった。不安定なところばかりで、財力もなさそうで見た目も普通……なのだが、『フブキのことを全力で考え、全力で受け止めてくれるひと』だった。
最もそれを感じられたのは、初対面の時だった。その男はフブキとの出会いにそれなりに驚いていたが……フブキが思っていたほどにドラマティックな反応はしてくれなかった。だからこそ、逆に印象に残っている――。
『……よかった……。少しずつ元気になっていたのは、気のせいじゃなかったんですね』
――男は自分の喜びよりも、フブキの精神的な回復への安堵を優先したのだ。ずっと活動を追ってきた駆け出しアイドルが、目の前に居るというのに。
そのとき、フブキは全てを察した。この人はアイドルのファンである前に、〝私〟の身を案じ――喜怒哀楽に共感し、心底からの愛を向けてくれていたのだと。
そうしたこともあって、フブキはその男とプライベートな連絡を取るようになり、お互いのことを深くまで知り合うようになった。男は下心を見せず、秘密も約束事も全部守ってくれた……フブキはすっかり安心し、信頼できる相手の傍で安らぎを得られるようになっていた。
愚痴をこぼせば朝まできちんと受け止めてくれるし、嬉しいことがあれば一緒に飛び上がるほどに喜んでくれる。忙しいときには無償で家事を代行してくれるし、遠征が必要になったときでも愛猫たちの面倒をしっかり見てくれる。
いろんな女の子に色目を使う欠点があっても、その減点部分だけでは覆せないほどのイイ男で、フブキのことを最優先に考えてくれる人物だった。
出会いから半年ほどが経った頃に、相思相愛をそのまま関係性に表すことになり……ふたつの唇の感触同士を教え合って……いろいろなことを経て、現在の同棲状態に至っている。
恋人として、疲れ果てたフブキを幾度も包み込んだ男についてだが……男のことをベッドの上でたくさん知ったフブキが、客観的に評価すると――『いいひと』としか言えなさそうだった。
誰にも嫌われないために努力しているからこそ、同時に誰の一番にもなれない半端者だった。女性に告白をすればキープにされ、大切な友人だと思っていた人の結婚式には誘われず、みんなの誕生日を盛大に祝うが自分は家族以外に祝われないような、ザ・残念な思い出ばっかりのひとだった。
フブキにファンレターを送り始めたのは、『たまたま配信を見かけたときに、顔で笑って心で泣いていたように見えた女の子に、必要だと思ったことをしてあげただけ』だと語った。
フブキは、その不器用で価値観が壊れている男に、唯一無二の安心感を覚えた。
――『この人は、きっと私を裏切らない』。そう信じて、自分が求めていたものを心に満たしてもらって……今日まで、元気に活動を続けてこれたのだった。
「……すっごく優しくて、気が利く人なんだよ……。ただ、女の子にフラれまくってオタクになって、エロゲばっかりやってた人だから……トチ狂ったほどにスケベで、性欲がとんでもなくて……ちょっと浮気性ではあるけど……」
「うっ――う~~~ん……! やっぱり何度聞いても後半の欠点がデカいんだよな~……!! 前半はまあ、うん……って感じなんだけどな~……!!」
すいせいはもどかしそうにバリバリと頭を掻いた。ちょっと夢見がちな恋愛関係で、10年後が不安になるほどにフレッシュすぎる甘酸っぱさに満ちているものの……メンタルを病んでいるときに沁みる優しさの充実感は自分もよく知っていたために、その〝きっかけ〟を否定することなどできなかった。
フブキが慕う理由も、必要としている要素もわかるからこそ、とてつもなくもどかしい。『元々肉体的な要素に惹かれ合っていたわけではない』という致命的なすれ違いを正してやれそうになかった。
フブキから聞いた話によると、彼のPCの偽名ファイルの中には女の子のエッチなイラストがたくさん保存されており、どんどん増えていくのだという。それも、フブキとは見た目が大きく異なる、カラフルでおっぱいがばいんばいんな子ばっかりなのだとか。
すいせいとしては『二次元も浮気判定なのか……』と思わなくもなかったが、自分たちが暮らしている世界のことを考えると不思議と納得できた。そして、『今度帰ったらあいつのスマホのエロ画像でも検閲すっか』と被害が拡大することになった。
「むおー……どうすりゃいいんだ……! 最近だとさァ、3回ぺースだったのが1回まで減っててさァ……! このままだと、そのうち完全なレスになっちまうよぉ~っ……!」
「あー、回数が減るのはガチの兆候らしいね……そのうちゼロになるのも時間の問題ってヤツか……」
彼氏と会う機会が少ないすいせいとしては、フブキの言っているだろう(月に)3回のペースでも多い方だと思ったが……この事務所に所属する前の、時間にまだ余裕があった頃の『ヤバかった時期』のことを思い出し、『他人のことは言えねぇな』と痛感していた。
許されるなら、できる限り愛し合い続けたい。まだまだ青春を謳歌したい年頃の乙女として、その悩みは深刻と言わざるを得なかった。
「頼むよ、ほしまち……私、恋人のこと相談できる相手がホントに少ないんだ……! お前さんだけが頼りなんだよ……!」
「いや、そう言われてもなぁ……。うちの方はそういう問題が起こったことは……まあ、特にないし……」
すいせいは、少し前に起こった『NTR未遂事件』(命名・星街)のことを一瞬思い出したが、その後の円満な遠距離生(性)活には何も問題がないのは事実だった。
それどころか、久しぶりに我が家へ帰ったときには……もう、以前よりも激しく求められることが多くなったほどなのだ。ちょうど、昨晩のようにアブノーマルなプレイに興じる回数も必然的に多くなり、情事の温度も上がったような……。
「…………あ。もしかしたら、なんとかなるかもしれないよ?」
「マジかっ!? うおおおっ、星街様、すいちゃん様っ……! 白上に教えを……救いを、なにとぞ……!」
へいこらと星を拝む民草に、天球の女王は一瞬だけ得意げに胸を張った――が、今から自分が提案しようとしたことを恥ずかしく思い、すぐに態度を改めるすいせいだった。
――――――
クロヱの3Dお披露目配信を下品な目で見てしまい、フブキの怒りを買った数日後のことだった。
どこか気まずい――というか、フブキがやけに無口だった――夕食の後、2人分の皿洗いをしていたところ、彼女が背中にそっと抱きついてきた。
「……それ終わったら……あなたのお部屋で、待っててください」
少し息を詰まらせたように、緊張を孕ませた吐息が耳をくすぐる。その妖しい感触に骨を抜かれ、危うくコップを割るところだったが――つるりと逃げたペアグラスの片割れを、なんとか空中でキャッチする。
動揺を誘った言葉の真意を確かめようとしたときには、フブキはトテトテとダイニングを後にしてしまった。
……まさか、昨日の件でお仕置きをされるのではないか……また、ツンツンとした態度で「ほんとにもーね、どうしよーもないエッチさんなんですからー……」と、以前のように1時間ほど小言を言われるのではないか……。
俺の背筋をぞわりと這った、濃厚な予感が心を重たくさせる。フブキのお小言タイムは、彼女にそんなことをさせて申し訳ない気持ちでいっぱいになるからイヤなのだ。
付き合い始めてからわかったことだが……フブキは独占欲が非常に強く、他の女性を一瞬でも〝そういう目〟で見ようものなら「開けろぉいっ! 浮気警察だっ!」と取り締まってくる。もちろん、言い訳は通用しない。
その監視網がまた厳重で、本当に抜け目がないのだ。きつねらしく、野生の勘で浮気心の香りを察知しているらしい。
自分の人生に重たさを与えてくれるほどに絡み付く愛は素直に嬉しいのだが、大学生になった頃からの趣味だったエロゲやエッチなイラスト鑑賞も浮気判定になってしまうのが少し難点だった。
――「じゃあ、フブキのエッチなイラストを見ればいいんだ!」。俺は当然のように、その答えに帰結した。
さすがは人気の二次元アイドルで、投稿サイトにはたくさんのエッチなイラストがあった――のだが、即日でフブキにバレた。
所持していたAVが見つかったときよりも圧倒的に早かった。まるで掃除に入ってきた母親のような嗅覚の鋭さで背後に忍び寄り、ハイライトが消えた目で、めちゃシコに煌びやかだった男の夢から光を奪う。
『このイラストみたいに、白上がオジサンのおち×ちんに媚びて腰を振ったら、あなたは喜んでくれるんですか? それとも、ひょっとこみたいなお口でスケベにじゅぽじゅぽすればいいんですか?』
『……ねーえー、どうなんですかー? どーして答えてくれないんですかー?』
……思い出すだけでも身震いするほどの圧だった……。あんなことを言われたら、もう素直にエロい気持ちで見れないだろう。トラウマとまではいかないが、脳細胞には間違いなく恐怖のキズが刻まれていた。
仕方がないので、フブキのために自分の趣味を捨てることにしたのだが……これが思うように上手くいかない。どこぞの女騎士のように、エロいコンテンツをエンタメとして楽しんでいた俺には、エロを求める心が人生の要素として組み込まれてしまったのだ。
しかし、こんなヘンタイ野郎が恋人では、フブキが悲しんでしまうだろう。このままではいけないと思った俺は、自分の性欲を制御する訓練を始めた。
フブキとしこたまエッチをすればいいのだろうが、多忙な彼女にそこまでの負担を強いるわけにはいかない……そして、頻度を増やしたくない理由は他にもあった。
……しかしながら……やはり、慣れないオナ禁などしない方がよかったのだろうか。クロヱのおっぱいは見事なものだったが、普段なら平気で見れる程度のエンタメ的なエロさだった……はずなのに、つい夢中になって勃起までしてしまった……。
……いけない。思い出すだけでもクるものがある。これではお説教タイムが伸びて、フブキのやきもきが増してしまう。それは、本当によくないことだ。
俺は余計な雑念を振り払って、フブキに指定された通りに自室で待機した。
しばらくすると、部屋の戸がノックされる。入室の許可を出すと、「しひっ、しゅつ礼します……!」とカミカミなフブキがいくつものアイテムを持って入室してきた。
人を殴るのに適した角を持つスマホ。画面でビンタをできそうなタブレット。首に引っ掛ければ窒息させられそうなワイヤレスヘッドフォン。そして、指に嵌めたらメリケンサックのような凶器になりそうな謎のリング。
……まさか、それらを使って浮気のお説教をしようと……?
「お、お説教なんてしないよ!? 私をどんな人……いや、きつねだと思っとるんだ!? いつもそんなことしとらんやろがい!」
今までのお小言が説教ではなかった事実に一番驚いていると、フブキはいそいそと何かの準備を始めた。
スマホに配信者側の設定画面を映し、タブレットには見慣れた――いや、ちょっとだけ違うような――ウェブサイトを映した。
「この前、事務所で会ったすいちゃんにおすすめのサイトを教えてもらいまして……会員制の、エッチなことをしていい動画共有サービス……らしいです……」
そういえば、海外のサイトではそういうことをしている人もいると聞いたことがある。つまりは……フブキの裏アカ、ということになるのだろうか。
……もしかして……みんなに隠れて、エッチな配信とかを……? それはちょっと見てみたい気も……。
「ぬにゃっ……!? ち、違いますっ……さ、さっきアカウント作ったんですよっ……!? あなたのために、白上……がんばって、いろいろ調べたんですからね……?」
下ネタに耐性があるフブキでも、これは話をするだけで死ぬほど恥ずかしいもののようだ。耳をぺったりとしおらせて、顔から火が出そうなほどに赤面している。
「もぉ~……! どうして私が、自分からエッチなことをしようとしなきゃいけないんだよっ……! 意味わかんねーぞっ、ばかっ……!」
ずんずんと強めに胸を小突いてきたフブキが、俺をベッドの縁に座らせるように押し込んだ。そして、ワイヤレスヘッドフォンを俺の頭にかぶせて……伸縮自在なリングを人差し指に嵌め、それに唇を寄せた。
「あー、あー……聞こえますかー?」
……? おかしなことに、隙間ではなくヘッドフォンのスピーカーからフブキの声が聞こえる。
マイクを持っている様子はないが……フブキは、こちらの反応をうかがいながら、人差し指をASMR用のマイクに見立てて顔を動かした。
「こっちのお耳が……みぎ耳さん、ですね……? それでぇ……こっちが、ひだり耳さんかな……?」
右に、左に、ふんわりと。フブキが顔を振った方向から、バイノーラル化して届く音声に耳が包まれる。
普段の月末ASMR配信で『こんな風に配信しているのかな?』と妄想していた通りの、あまりにも可愛らしすぎる動きでマイクチェックをしていた。
「ふふっ……♪ これ、嵌めたものをマイクに変える装置なんだそうです。えーちゃんの自信作で、ダイアフラムがどうのとか言ってたんですが……むずかしい話は、今はべつに気にせんでもろて……うん……」
そんな超技術は聞いたことはないが、おそらくバーチャルワールドならではのものなのだろう。女の子がふたなりになれる薬があるぐらいなのだ、人体がマイクになっても何もおかしくはない。
フブキが持っているASMR配信用のマイクは、もっと大きくてゴツイ見た目をしていたはずだが……あれよりも音質が高く、さらに臨場感があるように思える。
フブキが指先を、こしょこしょっ♡と撫でると、しょわしょわと響く音が耳孔いっぱいに広がって、甘い刺激に変わっていく。
指マイクに唇を寄せて、はぷり……♡と側面を唇で食むと、耳を覆う抱擁感とかすかな水音が響いた。はみはみと口を波立たせれば、ジェルボールを握ったような密着して擦れる音が、じゅわじゅわと耳の中を転がっていく。
「はふぅ……ん、ふむっ……♡ んっ……あなたのお耳に……あまがみ、しちゃってるみたいですねっ……♡」
スリスリとマイクを撫でさするマッサージと合わせた、とろけるような囁き声が脳まで浸透してくる。フブキが指を手のひらで包むと、両耳を――ぎゅう~っ♡とホールドされたような温もりまで感じられた。
手の動きに合わせて、ヘッドフォンの中の世界がギュッと縮まったり、開くように広がったりするような感覚に陥る。極上のASMRで体験できる、聴覚を突き抜けた快感が得られていた。
「とまあ、こういう便利ですんごい物なのですがっ……! この子をですね……違う、棒状のモノに付けちゃおうというのですよ……!」
フブキは俺の脚を開かせ、その間にすっぽりと収まった。そのポジションに入ってしまうと……先ほどの『棒状のモノ』がだいぶ意味深な発言に聞こえてしまうのだが……。
「何をするつもりなのか」を問うと、フブキは視線を逸らしながら唇を尖らせた。
「……まあ、なんというか……彼氏とのマンネリをどうにかするには、普通にエッチをするだけじゃなくって……刺激を生むための工夫が必要だと聞きまして……。それで、『私にできること』と、『あなたの趣味』をガッチャンコしてみようかなー、と……」
フブキの『マンネリを感じている』ような言葉にはかなり肝が冷えたが、フブキには俺の返答を聞く余裕がないらしく、緊張した面持ちで股間に熱い視線を注いでいた。
ズボンのチャックに、迷う手指を掛けて……パンツの中から、まだ柔らかい状態の男根と陰嚢を取り出す。
「……すん、すんっ……♡ あなたのおち×ちん、すっごく……ニオイが、濃いんですよね……♡ 頭がクラクラしちゃうんです……♡」
異性との交際経験がなく、初夜にシーツを赤く汚していたフブキが――男根に寄せた顔を、淫らにとろけさせていた。清楚な雰囲気の可愛らしい顔にはほんのりと朱が差し、生きている女の子の体温を生々しく感じさせる。
フブキがそのオス臭いすえた香りが好きなのか、それとも、それだけペニスのニオイが性的な魅力を孕んでいるのかはわからない……が、恥ずかしがり屋の白い頬が赤い情欲に満ちていく様子に、女体の本能の疼きを感じた。
たおやかな指で陰部を撫でられ、つまむように揉まれると、少しずつ陰茎に血流が巡っていく。血管が浮き、膨らみ始めた興奮の脈動を見て、「……っ……♡」と息を呑んだフブキが、咳払いをしながら先ほどのリングを取り出した。
「こ、これを……おち×ちんに、ハメちゃいますっ……! ん、しょっ……えいっ……♡」
にゅっと不自然に伸びたリングが、コンドームを付けるような仕草によって、ペニスの根元に吸い付いた。
決して窮屈ではなく、食い込まずに表面に張りつくような優しいフィット感でゴムの付け根よりもゆるく感じる――放尿や射精も違和感なく行えそうだ。
「これで……あなたのおち×ちん、ASMR用のマイクになっちゃいましたねっ……♡ んっ……はふ……♡ ふぅ~……っ……♡」
フブキがペニスに向けて息を吹きかけた瞬間――脳がビクつくほどの刺激が、両耳の穴を繋ぐように突き抜けた。
超絶に上手いASMRで、本当に耳かきをされているような快感を覚えることはあったが……この濃密で、余韻が残る甘美な電流はその比ではない。
男根をもみもみと愛撫するいやらしい手つきが生む快感も、当然のように与えられる。フブキがマイクの感度を確かめるように、つつぅ~っ♡と指を滑らせるだけで腰が勝手に跳ねてしまうし、ぞわぞわとする音が耳にも届くのだ。
「ふふっ……♡ どんどんおっきくなっていきますねっ……えっちで、わるーいおち×ちんめっ……♡ あなたなんて、こうやって……っ……イジイジ~ってしてやるぅっ……♡」
フブキがムクムクと育っていく勃起をこするように撫でると、ペニスにむず痒い性感が走ると同時に――こわわっ♡しょわっ♡ほわわわわぁっ……♡と、愛撫の音色が耳元に反響する。
通常のASMRが生む癒やしに加えて、男の原罪をゾワゾワと刺激する性感も兼ね備えている。身体だけでなく、頭の中から湧き出た興奮が全身を巡り、足の指先まで真っ赤に過熱する。
こんなに燃え上がれたのは、好みの絵柄で、好みのキャラで、好みのシチュエーションが描かれた最高のエロ同人を読んだとき以来だろう……。
俺の脳が――男としての魂が震えて、勃起がかつてないほどに隆起した。
「う、わはっ……♡ こんなに、でっかいの……反り返らせて……っ……♡ えっち星人めっ……白上にこんなグロいの見せて、どうするつもりなんだっ……♡」
フル勃起を前にして、フブキは楽しそうににんまりとしていた。マイク化したペニスにさらに顔を寄せて、その香りを擦りつけるように、やわらかなほっぺで頬ずりをする。
「んへ、へっ……♡ すり、すりっ……♡ こんなことするの、あなたのおち×ちんだけですからねっ……♡」
もち肌が陰茎と擦れて……しゅにしゅに……♡と、耳の溝を指先でなぞるような、音だけでも心地よさが膨らむ快感が伝わってくる。
毎日トリートメントをしている、繊細に艶めく髪の毛が鈴口に触れ……溢れていた我慢汁を吸って透明な蜜糸を引いていた。
甘える彼女からの愛を一心に受け、唯一無二の幸せが、しゅわしゅわとパウダーサイズの気泡になって広がり……全身を撫でるように、舐めるように広がっていく。
「それじゃ、はじめますねっ……♡ んっ……ちゅ、ぷっ……♡ ちゅるっ……ちゅっ……♡ んっ……ちゅぷゅっ……♡」
陰茎の皮を剥いてから、亀頭や裏スジ、エラに唇を寄せて、吸い付くようにキスのあられを降らせるフブキ。雪の花びらがやわらかく粘膜に張りつき、ちゅうっ……♡と覆い被さった。
亀頭の表面を走る、痺れるような性感が肉棒の内側まで染み込んでくる。腰が勝手に跳ねるほどの気持ちよさで、勃起がさらに膨らんでいく……男根を愛撫するフブキの頭に手を添えて、支えにしなければ快感に耐えられそうもなかった。
「っ……ぷ、ぁっ……♡ はぁ、ふぅ……いっけねぇ、夢中になるところでした……はふぅ……♡」
髪を撫でる刺激で我に返ったフブキが、陰茎から少しだけ離れる。その突然のおあずけに、反り返っていた怒張がビクビクと不満を漏らす。
「あれま、ずいぶんとワガママさんなおち×ちんですねっ……! だーめですよぉ、こっちにも準備というものがあるんですから……♪」
俺の自制命令に従うつもりがなく、本能的にイライラして鎌首をもたげていた亀頭が……なでなでと先端を嗜められた。
敏感な部分に唾液と我慢汁を強く塗りたくるような手淫に、腰が抜けるほどの快感が走り抜け――さらに耳の中で、くちゃくちゃっ♡とフブキの汁が糸を引いていた。
しゅわぁっ、と脳が液体になるようなアブない快感が、頭の前側から溢れ出す。目の焦点が勝手に散り、無様すぎる顔を晒すところだった。
「あ、すみません……! この子がマイクになってるの、すっかり忘れてました……てへへっ……♡」
故意なのか、そうではないのか……それはフブキにしかわからない。そんな彼女はスマホとタブレットを持って、準備ができていることを確認し……俺にタブレットを手渡してきた。
そこには、いつもの配信画面――によく似ているがいろいろと偽物っぽい――が映っていた。そして、スマホ側のカメラに映っているフブキが、画面越しにこちらを見ながら手を振っていた。
フブキは妖艶に目を細めて、俺のお腹にスマホを立て掛ける。勃起ペニスが真ん中で反り立つような画角の動画を生配信し……そこに、ひょっこりと美少女きつねの顔が映り込んだ。
この配信画面により、AVやエロゲでよく見る……女の子の顔がアップで映えるフェラチオシーンのようなアングルと、リアルタイムの光景が融合して完成していた。
「あなたのPCの画像フォルダ、お口で……その……こういうアングルでおち×ちんを咥えてるやつ、すごく多いじゃないですか……。だから……あなたの好きな視点で、お口エッチをナマ配信しちゃおうかなー、と……はい……!」
なんでもありのバーチャル世界ならではの提案。それが起こした、飛躍的すぎるアイデアの革新に感動すら覚えた。
AVの一人称視点はリアルな感覚でフェラチオを眺められるが、肝心な女優の顔や舐めている陰茎が遠く見えてしまう。だからこそ側面を映したり、横上の視点からペニスをしゃぶる角度で魅せるやり方で臨場感を足したりしているのだが、あくまで映像的な魅力に留まるのだ。
かといって、エロゲのスチルのようにカメラを寄せてしまえば、絵面の良さと引き換えにリアル感は薄くなる。横のアングルで見せ槍的な描き方をすれば、当然没入感は薄くなる……このフェラチオのジレンマには以前からやきもきしていたのだが、フブキのアイデアにはそれらの古い壁をぶっ壊す力が満ち溢れていた。
「……こ、こんなエッチな配信、他の子のところじゃ絶対見れませんよっ……!? だから……ね……あの……その……白上のこと、ちゃんと見ててほしいんですよ……!」
やきもちと恥ずかしさで混乱しているのか、目をぐるぐるとさせていたフブキは勃起ペニスをギュッと掴み――カメラ目線を保ちながら、亀頭に吸い付くようにキスをした。
タブレットから目を離してフブキを見下ろすと……彼女もこちらを見て、「ど、どーだっ……! 白上だって、エッチにできてるやろがいっ……!」と真っ赤になった顔をぷるぷると震わせていた。
……なんて可愛らしい強がりなんだろう。『1人が視聴中』という文字が、その愛しくて最高にエロティックな表情を独占できている事実を伝えてきて、心に最高の昂揚感を与えてくれる。
どうやら、彼女の言っていた『工夫』というのは、ここまでが1セットのようだった。自分の配信とエッチなASMR……そして、俺が好きなアングルで、ペニスにご奉仕をしているフブキの顔を見せてくれるらしい。
まさに、フブキの魅力を詰め込んだエロスのフルコース。この世界ならではの淡い夢想が、閉じた現実の限界を突き破って、希望のように花開く。
「う、うぅ……こんなんで、ビクビクっておち×ちんを喜ばせちゃってさぁ……困ったモンだ、ホントに……」
フブキは若干ニヤニヤしながら、ちょっとイヤそうにペニスをつついて、「……ふぅ~っ……♡」と吐息を亀頭に這わせてきた。
タブレットに映るフブキとペニスが、しょわしょわと耳を撫でる風圧が、股間を走る甘い疼痛と勃起の脈動が――感じられたもの全部が、俺の心身を最高潮まで滾らせた。
「……わ、悪い子には、お仕置きだっ……! はぁ……んぁ……はふっ……♡ あー……は、ぷみゅんっ……♡ ふむぁ……んふぅっ……♡」
フブキは、陰嚢に手を添えながら竿をそっと握り、何度もキスをしてから――はっぷり……♡と、亀頭を覆うように粘膜を頬張った。その瞬間、耳がすっぽりと覆われたように聴覚がこもって、浮遊感に似た快感の世界に潜り込んでいく。
「はふぅ……♡ んっ……んっ……んぷゅっ……♡ くぷるるっ……ふむぅ……♡」
リアルタイムに映される画面の中。見慣れたアングルで――フブキが俺の陰茎を愛おしげにしゃぶっている。ペニスを舐められる感触と、目の前のフェラ映像が連動している……こんな贅沢が許されるのか、不安になるほどに幸せだった。
唾液で濡れた舌が、チュロチュロと亀頭を舐め回す。その円を描く動きに合わせて、頭の内側をなぞるような刺激が這い回った。
脳の近くで、粘つく泡がぷちゅっ♡ぷちゅっ♡と弾けるような。あるいは、耳の奥に入り込んだフブキの尻尾の先っぽが、クリコリと鼓膜の近くをいじめるような。言語化することが億劫になる、官能に直接訴える性感が、凄まじい奔流となって押し寄せる。
――俺は間違っていた。何かを突き詰めれば、いずれその世界の完璧になると思い込んでいた。
でも違った。フブキの口淫は、それぞれの自立したエロスの要素を、愛情というベクトルで束ねている。ひとつの物事では辿り着けない領域にある、無限に潜れる奥深さを教えてくれていた。
下ネタを受けることはできるが、自分からふれようとすることが少ないフブキだからこそ……このぶっ飛んだ発想で、完璧を超えた究極を体現するフェラチオ体感ストリームを完成させたのだ。
「くぽっ……くぽぽっ……♡ んっ、りゅぅっ……ふみゅっ……♡ ぐぽっ……ん、へぉ……♡」
フブキの与えてくるフェラチオの音圧は、幻想的な甘美を生んでいた。セリフで想像させるタイプではなく、本能に訴えかけてくる催眠音声に近い魅力が満ちている。
フブキが頬張っていた亀頭を、我慢汁の糸を引かせながら吐き出し……ペニスに唇を寄せて、音を立てながらキスをする。唾液が伝う肉竿をぐちゅぐちゅっ♡としごいてから、太いストローを食むように、窄めた口で亀頭に吸い付いた。
ちゅぽんっ……♡ じゅぽっ♡じゅぽっ♡にゅぽぽっ♡くちゅ、るるっ……♡ ちゅわわっ……くちゅわわぁっ……♡
「んっ……ふぅ、ふぅっ……♡ んっ……♡ん、んっ……♡ ほぉぇ……ひぉひぃ、へふぁ……? んく、ぷっ……にゅりゅっ……♡」
手コキ亀頭ついばみから、再びペニスを頬張るように深く咥え込んで――ぐぽっ♡ぐぽっ♡と頭を振るように、フブキがディープスロートを始める。
ヘッドフォンの中でこもる蜜音が、彼女の漏らす音吐と反響して……脳の奥まで染み込んでくる。まるで、自分の思考が丸ごと食まれて、糸を引く蜜肉の中にとっぷりと包み込まれるようだった。
まるで、自分自身がペニスになったような……脳内がバグって、現実が歪んでいくような感覚に満ちている。肉壁と粘液に包まれ、フブキの舌に愛されて、全身が脈動しているような凄まじい没入感に襲われる。
リアルではない。ありえない。だからこそ、今、脳が実際に感じているこの刺激に、細胞レベルで惑わされている。エロ系ASMRの真骨頂をここに感じた気がした。
「んっ……♡ ちゅる、るりゅっ……♡ んふっ……ふぅっ……♡ くぷゅ……くみゅっ……♡」
フブキが一生懸命に口奉仕をしてくれているのが伝わる。全身に響くほどに、ぬっちゃぬっちゃと性感がべったりと神経を覆い尽くす。
脳内麻薬がドバドバと湧き出して、目の焦点を合わせることすら難しくなる危険な快音だった。こんなもの、外の世界では絶対に再現できないだろう。
「はくぷっ……んっ……♡ うりゅりゅっ……んっ……!?」
――画面越しに、目が合った気がした。男のイチモツを美味しそうにしゃぶっているところを目撃されたように、フブキが肩をビクつかせる。
その照れ仕草を見て、恥ずかしさを共有した電流は……昔のASMR配信のときのような……胸を甘酸っぱい気持ちよさが駆け抜けた刺激によく似ていた。
「んっ……♡ ぷぁっ……あ、あんまり、ジロジロ見ないでください……! は、恥ずかしいですから……ちゅ、くぷっ……ん、ふぅ……♡」
マイク化したペニスを通じて、フブキの声に滲んだかすかな照れすらも鮮明に伝わってくる。
ずっと可愛いと思っていたフブキの声が、顔が、心が……もう、全部が今まで以上に愛しく思えて仕方がない。
顔の動きに合わせて揺れていた髪を、人型の耳にそっと掛け直す。女の子らしさがグッと高まる仕草が、俺の心を鷲掴みにする。
「んふふっ……♡ ちゅぽっ……んぱっ……♡ ちゅっ、ちゅるっ……♡ ふみゅ、んっ……くちゅぷっ……♡」
こちらの視線に気づいているのだろう……あざとく、にひっ♡と笑ったフブキがイジるように亀頭の先端をついばんでくる。
こちらの反応を楽しむように、亀頭のエラの溝をなぞるように舌先を這わせて……唇でしごくように刺激してきた。
「ぐぷりゅ……ぷぁっ……♡ はぁっ……ふぅ……♡ あなたは、こういうの好きみたいですからっ……♡ すぅ……はぁ、ふーっ……♡」
……俺の趣味嗜好を受け入れ、寄り添おうとしてくれているのだろう。自分が最も心地良く感じる風圧が、鈴口の谷間と脳内を吹き抜ける。
緩急のあるフェラチオに負けて、俺が情けない呻き声を漏らすと……フブキは満足そうに笑ってから口奉仕に戻った。
肉棒をぐっぽり♡と咥え込んで、唇をイソギンチャクのように窄ませながら男根をしゃぶってくれる。少しだけ下品に寄せて……それでいて、自分らしい上品さは失わずに、肉竿から泡立つ我慢汁を濾し出させた。
裏スジをチュロチュロっ♡と舐められると、前頭葉をくすぐられるような快感に見舞われる。狭まった喉奥付近で、舌と口蓋に、ごりゅごりゅっ♡と密着させられると、頭がパンクしそうになる重たい快音が膨れ上がっていく。
ちゅくっ♡ぬちゅるっ♡ にゅっちゅ♡にゅちゅぷっ♡ にゅむにゅむっ♡にゅろろろぉっ♡
ペニスをねぶる性感が、五感をぐちゃぐちゃに掻き回す。遠慮や我慢というものが、煩わしくなっていく。
理性を唾液と舌でぐちょぐちょに融かされ、敏感な神経を直接ねぶられるようだった。背中と腰が快感から逃げようとしても、耳に留まる快感がねっとりと絡み付いてくる。
そんな快感に、長時間耐えられるわけがなかった。限界が近づいた俺はタブレットを置いて、フブキの頭に手を添え……喉奥を優しく小突くように、ピストンを開始する。
「んっ……♡ んぐっ、うぶぅっ……んりゅっ、りゅぷっ……♡ ぐぶっ……うぅっ……ん、んんっ……♡」
フブキも俺の動きに合わせて顔をズラし、唇で加える圧を調整してくれた。絶妙な吸い付きで、ぬるぬるの口粘膜に包まれて――一気に欲望を解き放った。
「んぐむぅっ……!? んぐ、ぷっ……うぶっ……うううっ……! んっ……くっ……♡ んきゅっ……こくっ……こくんっ……♡」
喉奥付近で震えて精液を吐き出す亀頭を、フブキは苦しそうにしながらも受け入れ続けてくれた。目をギュっとつむって、重たそうに喉を鳴らし……どうにか、口内に溜まろうとする白濁を飲み下していく。
数分間にも及ぶ大量射精を終えて……フブキはペニスを吐き出した。精液臭い息で深呼吸する口内では、てっぷりと濡れた舌肉に、精液と唾液が混ざったゲル状の白濁が残っていた。
「はーっ……♡ は、ぁーっ……♡ お、溺れるかと思いましひゃ……はふぅ……ふぅ……♡」
フブキは「ん、んっ……♡」と余っていた性汁を飲み下し、お腹に立て掛けていたスマホとタブレットを脇にどけた。
どうやらこれでフブキのご奉仕は終わりのようなのだが……すっかり昂ってしまっていた衝動が、俺の身体を衝き動かす。
「えっ――ひゃっ……あっ……!? あ、ちょっと……待って――あうんっ……!」
後片づけをしようとしたフブキをベッドに引きずり倒し、その上に覆い被さった。意外と露出が高い衣服を引き下ろし、ぷるんっ♡と乳房を露わにさせる。
そこまで大きくはないが、しっかりとした膨らみが花のように柔らかい母性を香らせる。その双丘の頂点では、色素が薄い乳輪と、粒が大きめでつまみやすい乳首が、ぷくっと膨らむように咲いていた。
「あ、あの……もう、1回出しましたよね……? まだ、私と……エッチ、できるんですか……?」
いつも射精1回で我慢しているというのに、『できない』という答えがあるはずなかった。フブキの問いの真意はわからないが……その何とも言えない表情に向かって頷くと、フブキは恥ずかしそうに目をつむって、俺の愛撫を受け入れてくれた。
しっとりと手指に吸い付く、世界で一番好きな乳房をしっぽりと堪能してから……乳首をピンとはじいて、フブキの顔を上げさせる。そのまま、自分に着いたままだったヘッドフォンを外して、フブキの人型の耳にすっぽりとかぶせた。
「あ、ぇ……? 待って、これまだ接続切ってな――ひゃ、あぁっ……♡」
フブキの息を詰まらせるぐらいに射精したというのに、収まる気配がない勃起を握る。その表面に残っていたフブキの唾液を肉棒に擦り付けると……ぐちゅぐちゅとはしたない音が響き、少女の可愛らしい耳まで犯していく。
「あっ……あぁっ……♡ だめ、ですよ……こんなのっ……おち×ちんの音、すごく近くて……あうぅ……♡」
さすがに、今までに体感したことがない刺激のようだった。肉棒を唾液ローションでシコる音を聴きながら、フブキはおずおずと、自分に向かって欲望を膨らませているイチモツを見て「……へんたい……」と困り顔を浮かべて恥ずかしがった。
そんな愛くるしい少女のケモ耳に口を寄せて、普段なら口にできないほど恥ずかしい愛の言葉を囁くと――フブキは肩をピクピクと震わせて、力なく嬌声を漏らし始めた。
「や、ぁっ……んっ……♡ やだっ……やだぁっ……♡ そんなのっ……ズルいですよぉっ……♡」
くすぐったそうに耳を畳もうとするのを阻み、吐息を吹き掛けると、フブキがイヤイヤと恥ずかしがりながら甘えてくる。手は俺の首に甘く絡んで、もっと近くに、と抱き寄せようとしてきた。
「はぁっ……あ、んっ……♡ きてっ……私の近くに、もっと……あっ♡ふ、ぁっ……♡はぁああっ……♡」
上半身でフブキに密着しながら、下半身の衣服を脱がしていく。フェラチオの生配信で相当興奮していたらしく、フブキのショートパンツの中は大洪水になっていた。
ショーツが吸いきれずに溢れ出した蜜液が股座をべったりと濡らしており……下着を引き抜くと、ねっとりとした糸が秘部と布地の間に引いていた。
フブキの淫裂は触られると、すっかり緩んだヒダが指を抵抗なく受け入れた。膣口をノックされると、キュンキュンと指に吸い付き、トロトロに煮詰まった愛液をはしたなく垂らす。
マイクとして機能している男根を、濡れそぼってヒクついていた秘部に張りつかせ……ずぶずぶっ、と突き入れていく。
「ふあぁああっ……♡ いま……おみみ、じょわじょわって……♡ はぁっ……んぁあっ……♡ ふにゃっ……にゅいっ……きゅうんっ……♡」
フブキの耳では、自分の秘部を男根が犯している蜜音がバイノーラルで溢れていることだろう。それがどれほどの快感を生んでいるのかは……フブキの口元に溢れた唾液と、きゅう~っ♡と吸い付いてくる淫肉が教えてくれた。
無数のヒダが亀頭を迎え入れ、濡れた蜜壁で愛撫をしながら奥まで引きずり込んでいく。なんの引っ掛かりもなく、竿の根元に嵌まったリング付近まで肉棒を飲み込み……こちゅんっ♡と子宮口と鈴口がキスをした。
「ぁ、ぁあっ……♡ しゅごいっ……あなたの、おち×ちん……私の、ナカにっ……あっ♡あっ……♡ はにゅ、ぁああっ……♡」
フブキの膣ヒダがざわざわと絡み付いてくるため、入れたまま動かずにいても射精してしまいそうだった。
フブキを満足させないうちに、セックスを終えるわけにはいかない。ペニスをむしゃぶる膣壁に抗い、スケベに快感を求めてくる女陰に向けて抽挿を開始した。
くっちゅ♡くっちゅ♡ ぬちゅぷっ♡ずっ、ずっ……じゅろろろろっ……♡ じゅぷっ♡じゅぷっ♡ぐちゅううっ♡
愛蜜で満ちた肉壁を、キノコの笠のように張ったエラでこそいで愛液を掻き出し……閉じかけたヒダの門を割り開くように侵入する。その原始的な営みを繰り返し、フブキの腰を悩ましげに揺らさせた。
「ぅ、ぁっ……!?♡ あっ……あっ……あああああっ……!!♡ や、ぇっ……これ、だめっ……は、ぁああああっ……!!♡」
オイルローションが手の中で踊っているような、癒やしと潤いの音色が鼓膜にまとわりついて、ねっとりと刺激する。ぐちゅぐちゅっ♡と頭の中を掻き混ぜる音が、フブキの脳神経をドロドロに融かそうとしていた。
ケモ耳の近くから聞こえる、抽挿と連動していた熱い吐息も、フブキを内側から昂らせているようだった。ピストンを重ねて、蜜壺を掻き回して愛液を垂らすたびに……加速度的に快感が膨れ上がっていく。
ベッドが軋むほどに激しく、腰をぶつけるような深さで男根が女陰を貫く。最奥を、ぐぷちゅっ♡ごりゅりゅっ♡と抉ると、華奢な肩が縮こまって、漏れ出た蜜声とともに歓喜を表した。
理性を吐き捨てるほどに、本能と衝動だけで心身を燃やし尽くす。目を閉じてうっとりと快感を味わうフブキをもっと……もっと深くまで悦ばせるために、ひたすらに力強く怒張を突き入れた。
「んぁっ、ああっ……♡ やぁっ……おみみも、あたまも……お股も、おかしくっ……ぅうんっ……!!♡ も、もう……キ、ちゃうっ……キちゃいます、からぁっ……!!♡」
汗が胸板を滴り落ちて、フブキの肌をベタベタに汚すほどまで燃え盛った頃に、フブキの淫肉が忙しなく蠢き始めた。
もう、限界が近いのだろう……ちょうどよく、俺の射精欲も昂りの極限に達そうとしていた。
「あ♡あっ♡はぁああっ……♡ ひ、ぁっ♡んぁああっ……♡ キて、くださいっ……たくさん、私にっ……ぁっ、ぁあっ……ひぁあああああああああっ!!♡」
フブキの膣内が強く狭まった瞬間――お互いの我慢が弾けて、男女の絶頂が重なった。2度目とは思えないほどの精液が肉竿の中を流れ、キュンキュンと収縮するフブキの最奥に子種を吐きつける。
フブキの切ない呼吸に合わせて、みっちりと埋まっていた膣口から逆流した精液が溢れ……ぷしゅっ♡と噴き出した少量の絶頂汁と混ざって融け合った。
「はぁーっ……♡ はぁ、ああっ……♡ ふ、ぅっ……すっごいの、キちゃいました……ぁっ……んっ……♡」
鼓動をぶつけ合うような不揃いの脈動が、天に浮かぶような大きすぎる余韻の中で少しずつ重なり……密着して抱き合った瞬間に、完全にひとつになった。
フブキの温もりを感じる。自分を包み込んで、受け止めてくれる包容力を感じる。一度味わったら、二度と離れたくない甘美に酔い痴れた。
「はふぅ……ふぅ……えへへっ……♡ 今日のは、なんか……すっごい激しかったですね……ん、ぁっ……♡」
フブキは俺の肩に頭を擦り付けて、強く抱き締めてきた。こちらもそれに応えながら、荒れていた呼吸を整えていく。
「んふっ……♡ こうして、出した後もイチャイチャしてくれるの……嬉しいです……♡ あったかぁい……♡」
射精後と絶頂後の余韻が抜けるスピードは、男女で異なっているらしい。俺たちはその分の差異を、お互いの温もりを感じ続けることで埋め、事後を愉しむようにしてきたはずだった。
しかし……最近は、性欲を自制しようとするために、こうしてゆっくりとフブキの体温に浸かることを避けてきた。そのブランクもあって、フブキとのハグは驚くほどに心地良い、性的ではない快感も生んでいた。
それからしばらくのあいだ、甘えてくるフブキと繋がったまま過ごしていたのだが――俺の中で目覚めた衝動は、当然のように『日課』を思い出してしまう。
「……ん、ぁっ……♡ なんか、また……硬くなって……♡」
フブキは、とろけさせた目をこちらに向けて――きゅっ……♡と膣を締めて、『いつもの』を誘ってきた。
「……んふふっ……♡ これから、どうしますか……? もしアレだったら……前みたいに、もう一回付き合ってあげてもいいんですよ……♡」
俺はフブキの妖艶な顔に誘われて――精液でぬかるんだ膣肉を、再び刺激し始める。
フブキの楽しそうな嬌声を聞いて、彼女との溺れるような性交に浸った俺は……やっぱり、この子への性欲は我慢できないのだと再認識したのであった。
――――――
合計3回分の精液をフブキに吐き出した後のこと。半裸のままで後片づけを始めようとしたフブキが、唐突に動きを止めて……ちょいちょいと手招きをしていた。
それに従って、ベッドに正座をすると――対面したフブキは女の子座りのまま、股間をティッシュで押さえながら……言いづらそうに口を開いた。
「あの……事務所の女の子たちが魅力的であることは、白上もよーくわかっておるつもりですが……女の子として、複雑なものでして……。大好きなあなたには……私を、最優先に想ってほしいのですよ、うん……」
そう続けたフブキは、胸元に置いた手をギュッと握りながら目線を落として……素直な気持ちを吐露していた。
「なのでぇ……えっと……目移りしちゃうのは、まあ、許しますっ……! でも……さ、最後には……さっきみたいに、ちゃんと……白上のハートに戻ってきてくださいねっ……! これだけは、約束してください……!」
俺としてはフブキの元を離れているつもりはないのだが……彼女からしてみたら、俺はそういう不貞をはたらいている人間に見えているらしい。だから、ここは素直に了承した。
フブキは、頷いた俺の頭を、ぎゅうっ……♡と強く抱き締める。柔らかいおっぱいで顔を包んでから、耳元に口を寄せ……「約束、ですよ…………ん、ちゅっ……♡」とリップ音を鳴らしてくれた。
……そのキス音は、どんなに質が良いASMRよりも心に響いた気がした。脳髄が喜び、魂の奥底まで刻まれるほどの甘美が全身を揺らす。
フブキは骨抜きになった俺の顔を見て、もう一度、照れくさそうに微笑んでいた。
――――――
その後、フブキは彼氏と膝を突き合わせて、真面目にエッチな話をすることになった。
そこには小一時間の紆余曲折とおびただしい量のノロケがあったため、キモの部分を要約する。
男がクロヱのおっぱいに欲情していたのは紛れもない事実なのだが――その以前からフブキとセックスの回数を減らしたのには、ある理由があった。
大前提として……フブキが自分のことを心底から愛してくれていることが、なんだか申し訳なく思えていた背景があったようだ。
白上フブキは、自分の所有物ではない。みんなで愛すべき存在で、可愛くて最高のアイドルだ。
そうわかっているし、すこん部たちの応援があって活動できている事実を曲げることもしたくなかった。だから、程良い距離感を保ちながらも、フブキが情欲を持て余したときには全力で付き合うようにしたい――そう考えていた。
ただ、それだけではなかった。男は、自分の中にあった『当たり前』が失われるのを恐れていたという。
フブキを愛しく思い、その気持ちの分だけ強く抱き締めると……フブキが腰に絡ませてくる脚や吸い付いてくる粘膜を伝って、与えた以上に熱い愛情が帰ってきて、心が満たされる。
フブキと顔を合わせながら身体を重ねて、心に一番近い場所で絶頂を共にする。どれだけ繰り返しても、その多幸感に慣れる気配がない――それどころか、もっと深い底なし沼にハマるような没入感があった。
欲しがれば、欲しがるほどにフブキが応えて、溺れるほどの愛情で受け入れてくれる。舌を絡ませ、額と擦り合わせて、ぐちゃぐちゃになった凹凸を満たし合わせてしまうと……これまでの人生を忘れそうになる。
そのせいで――配信中のフブキを見ていると、ライブのとき以上に遠く感じるようになってしまった。
フブキのことを理解するには、フブキに近すぎず、遠すぎない場所で、客観的に頭と心を使う必要がある。それは、『こまめだが回数が多すぎず、内側に踏み込みすぎないファンレター』を出し続けた男が、経験から学んでいたことだった。
――そういうこともあって、フブキを欲しがる気持ちを我慢していただけなんだ。フブキのことを支えるために、客観的な視点を保ちたかったんだ。
――でも、無理だった。フブキが可愛すぎて、エロすぎるから……明日から、もう我慢できそうにないよ。
とても言いづらそうに、全ての本音を語り終えた男の向かいには――顔を真っ赤にして、嬉しさと恥ずかしさで胸がいっぱいになって、泣きそうになったフブキの幸せそうな笑顔が咲いていた。
――――――
ある日のこと。ドラマの撮影を無事に終えたすいせいは、『すいちゃん、ちょっと時間作れないかな……?』と心配せざるを得ないメッセージを送ってきたフブキに呼び出されたのだが――。
「あ~っ♪ すーいーちゃんっ! こっちこっちー♪」
「っ――あー! 今日、歌の収録入ってたんだったー! いっけなーい、忘れてたー☆」
――そのデロデロのニマニマに融けた表情を見て、すいせいは即座に踵を返した。
「待て待てほしまち! 今日の収録は夕方だろぃ? 彼氏クンから聞いとるぞ!」
「あっ、お前らいつの間に繋がって……! そうか、あいつのスマホに見慣れない連絡先が追加されてたのは……!」
「私の偽名ですな、うん。というか彼氏のスマホの中身めっちゃ見とるやん! すげぇ束縛してんな!?」
「こんなんべつに束縛とかじゃないしー、フツーの愛だしー。そもそも向こうだって黙認してくれてるしー」
「完全に同意取れてるワケではないのかよっ!? いや、こえーっ! ほしまち、こうぇーっ!」
やけにテンションが高くダル絡みをしてくるフブキに付き合わされ、すいせいは頬を引き攣らせながら肩を竦めることしかできなかった。
有名人御用達のプライベート・カフェに入店したふたりは、飲み物を持って防音個室に入った。
クリームたっぷりの抹茶ラテのように甘ったるいノロケをするフブキと、テキパキと話をさせようとするすいせいの攻防が続く。30分ほどをかけて、ようやく事の顛末が語られた。
「……ふーん? それじゃ、いろいろと上手くいったみたいだね?」
「そーなの! すいちゃんが教えてくれた通りね、エッチに工夫したおかげで彼の心に近づけて……以前より、もっと……くふっ……♡ にゅふふふっ……♡」
「うーわっ、すんごいニヤニヤ顔だ……! へいへい、ご馳走様……ま、お互いにヘンタイの彼氏持つと大変だな……」
すいせいはアイスティーをグリグリといじめて、氷たちに冷たい歓喜の声を湧かせた。
「この氷の音もそうだけど……音から感じる気持ちよさって、なぜか代替できるものがないんだよね。たぶん、人の感覚に基づくものだから、なんだろうけどさ」
「そう、だね……歌姫がそれを言うと、説得力がマシマシだなっ……!」
「いやいや、そんな。ドスケベASMRの功績を残したフブキちゃんの方が強いと思うよ、マジで」
「そ、そんなの功績にしたくないよ……! でも、まあ……なんというか……さすがにネ……? あの……音の分野にはね、ちょっと自信つきましたよ、うん……」
ASMRは他のメンバーも武器にしており、その使いこなし方で尖った個性を創出していた。
フブキもすこん部たちのために恥ずかしいのを我慢しながら実施し、いろいろな工夫をしてきたのだが、「ホントにこれが最適解なのだろうか……?」という不安は常にあった。
しかし、今回のフェラチオASMR大作戦で、一人の心をガッチリと鷲掴みにできたのは間違いない。あとは、自分を好いてくれているファンたちの愛を信じて、『気持ちよくなれる音を届けるように頑張ればいい』と理解できたのは、とても大きな収穫だった。
「っていうかさ、フブキちゃん」
「なんだい?」
「この展開さ、初期のクッキング〇パで見たから、もっと違う展開にした方がいいんじゃない?」
「できるわけねーだろっ!? 私の人生をなんだと思ってやがるんだっ!? ネタかぶりだとしても、なんでそんなに古めなんだよ!」
「フブキちゃんと彼氏の情事がコッテコテだからじゃね?」
「そ、そうなのかな……? 他のカップルのコト、あんまり気にしたことないけど……漫画とかだとフツーだと思うんだけどな……」
「……あー……まあ、そこが基準だとねぇ……」
すいせいも漫画は嗜む方であるため、フブキが違和感を覚えない理由がよくわかった。
それに加えて、自分と恋人も運命的な出会いをした立場なので、フブキのことはあまり言えない場面でもあった。
すいせいは、「ま、お互いに納得できてるならいいんじゃね?」と、アイスティーでお茶を濁したのだった。
「とにかく、以前のペースに戻れてよかったんじゃない? レスの危機は回避できたでしょ?」
「う、うん……それどころかさ、1日5回まで出してくれるようになって……えへへっ……♡」
「うんうん。月に1回のペースから5回まで回復………………は……? 今、『1日』って言った……?」
「え? うん……あれ、言わなかったっけ……? 以前は1日に3回ペースだった……って…………あれ……?」
「……ぁん? じゃあ、レスを危惧してたときも毎日1回は……………………はーッ……!? なんだよこのドスケベきつねがよぉ……!!」
「急に罵倒されたが!? えっ、や、だって……1回だと足りなくない……!? 彼のエロゲだって、4回ぐらいはヤッてたよ……!?」
「その二次元基準で考えんのマジでやめな!? なんだよ、心配して損したーっ……!」
すいせいは薄々気づいていた。デロデロに爛れたふたりが愛の巣で同棲しているのに、愛し合うのがひと月に3回のペースであるはずがない、と。『まあ、1週間で3回ぐらいのアツアツ具合なんだろうな』とお約束的な展開を期待していた。
しかし――フブキの重たくて貪欲すぎる愛と、いろいろとぶっ壊れている恋人には常識など通用しなかったらしい。そもそも、恋人がフブキの不満を正しく理解しているのかすらもわからないレベルだった。
「っていうかさ、毎日ヤッてたら彼氏クンだって『ちゃんと役目果たしてる』と思って当然じゃん!! フブキちゃんが欲求不満だっただけじゃんかよ!」
「ち、違うよっ……!? だって、他の子にムラムラする元気が余ってるなら、私に向けてくれないとおかしくない……!?」
「言いたいことはわかるけどさ……それ、ちゃんと本人に言った……?」
「言えるわけないだろっ!? 恥ずかしすぎるよぉ、そんなのぉ……!」
汗をかくほどに顔を真っ赤にして、しゅーん、と項垂れるフブキ。そのモジモジする可愛い生物と対面していたすいせいは、呆れてものも言えなくなっていた。
今回の騒動を総合的に見ると、恋人側に問題があるとすれば『フブキのこと全肯定しすぎ』、『ぶっ壊れレベルで気遣いしすぎ』ぐらいのものだろう。
他の要因は……ほとんど、フブキ側の愛が重すぎるせいで起きた『かなり一方的な考えの相違』に留まる。すいせいはそのように確信していた。
「はー……彼氏クンも大変だなぁ……。心身ともに貪欲な恋人に付き合い続けるなんて……相当愛が深くないとできないだろうに……」
「えへへ……♪ 相思相愛ってこと、なんですかねっ……♪」
「お前への褒め言葉でも、慰めでもねーんだよなぁ」
すいせいは、歪みきっているのに何故か噛み合っている、ふたりの狂った恋愛事情に少しばかり辟易としていた。
その隙に、唐突に「それでさァ、昨日なんかさァ……」と盛大で長くなりそうなノロケを始めたフブキの幸せそうに緩んだ頬を見ながら……すいせいは頬に指を添えた。
実は、すいせいは先日、いろいろな裏技を使ってフブキの恋人にコンタクトを取っていた。連絡先を手に入れ、話を聞いたことで知り得たことだが……どうやら、彼はただのフリーターではないようだ。
彼はタブレットが1台あればできるクリエイティブな仕事をしており、実はかなりの収入もあるとのこと。フブキを生涯養えるぐらいのお金と資産が貯まったら、全部を話してからきっかりと仕事を辞め、プロポーズをする予定まで教えてくれた。
その職業は古くから存在するきちんとした仕事なのだが、フブキだけには話せない事情があった。
――『フブキは創作上の人物にも嫉妬するし、俺はリアルでも女性関係の仕事があるから、確実に浮気だと思われるんですよ』。
男は二次元と三次元を股にかけるポルノ作品専門のマルチなライターで、『業界の超新星』とも噂される鬼才であった。すいせいが「まっさか~?」とSNSのDMで確認したところ、その嘘のような証言が事実であることが簡単に確認できてしまった。
そうなると――ファンレターで発揮していた文才が、自分以外の女のためにも使われていることになる。それを知ったフブキの心境がとんでもなく荒れそうだというのは、すいせいにも容易に想像がついた。
そのため、「バイトに行く」と偽っている時間に、制作活動や出版社へのアナログ的な入稿を済ませているのだとか。
悪い人ではなさそうだし、フブキの引退後もしっかり面倒を見られる人だということだけはハッキリとしている……それはまあ、いいのだが……。
(……それがバレたときにも、今回みたいに大騒ぎして……私も巻き込まれるんだろうな……)
すいせいは、将来的に起こりそうな癇癪の火種がチラチラと見せる揺らめきを感じながら……一喜一憂を表情に出して、彼の魅力について熱く語るフブキを眺めた。
すいせいの助言によってフブキが生み出したアイデアは相当ヤバいものだったらしく、彼氏の裏職業に良い意味で大きな影響を与えたと聞いた。「どんだけ変態的なことを思いついたんだよこのドスケベきつね!?」とツッコミたいところだったが、自分や恋人まで悪影響を受けるのも困るので黙っておいた。
……つまる話、現時点で他人事ではなくなってしまったため、すいせいとしてもその情事に最後まで付き合う覚悟を決めている。取り越し苦労の悩みや糖分の過剰摂取ぐらいなら、甘んじて受け入れるつもりだった。
「……ま、彼のことをそんだけ好きなら大丈夫じゃね?」
「きゅ、急になんだよっ……!? まあ、ね……今も胸がギューってしてるぐらい、好きなんですけれどもね……♪」
女は女で、男は男で。青臭くて甘酸っぱい恋愛を好んでいるのだから、ハッピーエンドに向かおうとする努力はするだろう。
そういう漫画じみた恋愛の仕方は、どうしてか嫌いになれないし――こうして貴重な時間をかけてでも見守る価値があるらしい。
にへにへと恥ずかしそうに笑うフブキのせいで、何も食べていないのにお腹がいっぱいになったすいせいは……どこか満足したように、薄く微笑んでいた。
おわり