悩むことはもちろんある、だって若いから。
でもま、なんとかなるのが世の中だから。
愛さえあれば、どうにでも。
きっとこれは、夢なんだ。都合の良い夢を見ているんだ。
俺に組み敷かれた千夏先輩の潤んだ目は、まるで催促するようで。それに導かれるまま、でも焦らすようにゆっくりと腰を進めていく。
蕩けきったオンナノコは僅かな抵抗と共に俺を受け入れて、それと同時に千夏先輩が甘い声を漏らす。俺だけが知っている、その声。僅かに腰をくねらせただけで、それは悲鳴にも似た喘ぎに変わっていく。
動けば動くほどに千夏先輩はどんどん上り詰めていく、何度も何度も白目を剥いて絶叫して。その度に膣内は痛いほどに締め付け、それでも俺は止まらない。
「大……喜く、んっ、もう……ダメぇ……。壊れ……ちゃう、から……っ」
懇願する声はでも、甘く絡み付いてきて。それに誘われて、射精感がようやくやって来た。
このまま、射精する。今日も千夏先輩の中を、俺で染め上げる。
愛してるから、この人を独占したいから。
そう思った、まさにその瞬間。
目の前が、ガクンと崩れ落ちた。
気が付くと俺は、天井を見上げていた。カーテン越しに射す、晩秋の爽やかな朝陽が感じられる。
俺は一人、ベッドの上。あれは全て、夢だった。それだけの事、それだけなんだ。あんなにも燃え立つようだった身体は寝起きのローギア、すっかり冷めきって。いや、でも一点だけは熱を保ち続けていた。
夢の名残か単なる生理現象か、
――と。
カチャリ、と小さな音を立ててドアが開いてそして。
「あ。起きてたんだね、大喜くん」
いつものように、千夏先輩が入ってきた。少し前までは考えられない事だけど、今の俺たちにとっては日常のことだから。
千夏先輩の手は無遠慮に布団を持ち上げ、自己主張していた
「じゃ、今朝も頂くねー」
蠢く舌が俺に絡み付くその感触に、起き抜けの身体が敏感に反応していく。ぞわりと込み上げてくる衝動は堪えきれるものじゃない、俺の意思なんて薄紙一枚の役割にも満たない。
じゅぷじゅぷと激しく音を立てながら、千夏先輩の頭が俺をくわえたまま上下に揺れ動く。早く早く、と目で訴えながら。
それに抗える程の気力が、俺なんかに有るわけがない。
ほんの数分、いやもっと短いかもしれない。呆気なく俺は、千夏先輩の口の中で射精してしまった。
「ん、んー、……っ」
嬉しそうに目を閉じ、喉を鳴らして精液を呑み下す先輩。
そして中に残った分まで吸い上げて、やっとその顔が俺から離れた。
「ふう……、ごちそうさま。じゃあ私、先に下りてるからね。二度寝しちゃダメだよ?」
口元を拭いもせずぱたぱたと出ていく背中を見送って。俺は一人、ぽけっと閉められたドアを見つめる。
どうしてこうなってしまったんだろう、と思いながら。
切っ掛けは、俺の勇み足なんだろう。約一ヶ月の同居中断を経て、千夏先輩が猪股家に戻ってきてくれたあの日。俺は後先考えず千夏先輩に、告白してしまった。
この先気まずくなる、負担になる、そんなのは言い終えるまで頭から完全に消えていたくらいだ。
とにかく、言ってしまいたかった。この気持ちを胸に仕舞って置けなかった。
例え跳ね退けられてもいい、雛だって俺にそうしたんだ。
勇気を振り絞った俺の言葉を、千夏先輩は黙ったまま聞いてくれて。最後まで聞き終えてようやく、口を開いた。
「そ……っか。そうなのか。大喜くんが、私を。そっか……」
その口振りからは否定も肯定も感じ取れなかったけど、でも。その後先輩は、行動で示してくれた。
俺を抱き締め、力一杯のキス。これが肯定の意思でなくて、なんだというのか。
ただ、でも。
俺の身体は勢いに負けて後ろに倒れていき、それでも尚千夏先輩は力を緩めない。
背中がベッドに着地し、身体が完全に倒されても。千夏先輩と俺の唇は密着したまま、離れない。
俺の視界に光が戻ったのはそこから十数分の後、千夏先輩がやっと顔を上げた時だった。
唇どころか口内全てを千夏先輩の舌に犯され、酸欠も手伝って身体が全く動かない俺。そこに千夏先輩は、少しずつ服を緩めながら迫ってくる。
なにかがおかしい、と気付いたときには遅かった。
俺はその日、そのまま先輩に――抱かれてしまったのだ。
そりゃ、気持ちはいい。千夏先輩と過ごす夜は、狂おしいほど幸福だ。今ここで死にたい、とさえ思うほどに。
身体の隅々まで千夏先輩の所有物になっていくのが、何よりも心地いい。
でも、だ。時々思ってしまう。俺はこれでいいのか、男としてどうなんだろう、とか。
俺は翻弄されるだけで、何も出来ないままだ。千夏先輩に愛されて、それで幸せになっているだけ。最初は
……千夏先輩は「経験者」で、だから俺をリード出来るんだろうか。もしそうだとしたら、そうなら――
先輩を好きな気持ちは、何一つ変わらない。変わらないけど、なんだか納得はし難い。
俺は、どうすれば良いんだろう。
「……バカップルだ。正真正銘のバカップルの片割れがノロケ話、聞かせやがる」
人の真面目な相談を一蹴し、匡はいつものように冷ややかな目で俺を見ている。
こんな話が出来るのはコイツだけなのに、毎回こうだもんな。まさか雛のアホには言えないし、て言うか言ったら殴られる。俺がセクハラ野郎みたいになっちゃうじゃないか。
まったくメガネの癖に薄情過ぎる、お前のメガネは飾り物かよ。
「要するに現状、自分がリードされっぱなしなのが納得いかないんだろ。でも安心しろ、お前は生まれながらの受けだ。受けて受けて受けまくる総受けにゃんこ、千夏先輩には絶対勝てないんだから諦めろ」
人聞きの悪いことを滔々と言いやがるメガネ相手に、溜め息一つ。纏めないでほしいけど、確かにそうなんだよ。
でもそれを自覚した所で、どうすればいい。
そもそも俺に、あの魔人を御せるわけがない。
考えは堂々巡り、ただ回るばかり。ああ、バカって辛い。
悩んでも迷っても、夜は来る。モヤモヤした部分もあるけど、それ以上に期待してしまう時間が。
風呂から上がって暫し、ソワソワしながら俺はベッドに腰かけている。いつものように千夏先輩が来てくれるのを、待っている。昼間あれだけグチグチ言っておいてこれだ、俺もやっぱり相当だな。
俺は千夏先輩が好きで、紆余曲折を経て結ばれて。幸せで幸せで仕方ないけど、なんだか不安になってしまっている。このままただ流されるだけでいたら、いつか千夏先輩は俺を――
でもまあ現時点でそんな徴候はない、と言うか先輩からはスゴい勢いで伝わってきている。好き好き大好き愛してる、の圧倒的なラブパワーが。そうでもなけりゃ、朝っぱらからあんなことしないよな。
毎朝のようにああやって目覚めの一口をねだりに来るし、学校帰りに路地裏へ引きずり込まれた事もある。風呂上がりに突然跨がられたりもした。それこそ女の子の日でもない限り、千夏先輩は毎日毎日俺を求めてくれる。
それはとても嬉しくて、幸福で。だからこそ、何も返せていない自分に腹が立ってしまうんだ。俺の中にある不安の芽は、きっとそこにある。
――と。
「大喜くん、来たよー」
俺の悩みを知ってか知らずか、朗らかな笑顔でやって来たのは大好きな人。いつものように、シャツ一枚の千夏先輩。さすがにもう風邪ひくんじゃないかな、いくらなんでも。最近冷えてきたし。まあでも、どうせ脱ぐんだし身体動かすんだし、なあ。
……いや、そうじゃない。そうじゃないんだけど、でも。
「んー……っ」
千夏先輩の唇が迫ってくると、その考えは頭の隅へと追いやられてしまった。
こういう所なんだろうな、俺の悪い所は。
結局俺は、流されている。悩んでも愚痴っても、自分から動いていない。
気持ちいいキスをしながら、心が粘ついていくのが分かる。ああ、良くないな。本当に。
ベッドの上で二人、逆さに重なりあって。何処かささくれだった気持ちは抱えたまま、でも目の前の光景がそれを押し潰す。顔の目の前まで迫っているのは、先輩の全て。そして同じように先輩の顔の前には、俺が突きつけられているわけで。
こんな状態で、余計なことなんか考えられるものか。そう、考えるべきじゃない。
「あー……むっ」
小さな声と共に、熱くしなやかなものが俺に絡み付く。そして包み込まれ、舐め上げられ。千夏先輩が俺を愛してくれている、それが何より嬉しい。それ以外、考えたくない。
激しいストロークで俺を攻め立てる先輩、その動きに合わせて白いお尻が上下に揺れる。このままむしゃぶりつきたい、そう思いながらも俺は動き出せない。
ちょっとだけ、いつもと違う事をしてみたい。そうしたら、もしかしたら、――この人を驚かせるくらいは出来るかもしれない。ほんの少しだけ、千夏先輩を上回ってみたいから。
じっとりと湿ったオンナノコの、その上。薄く色付いたすぼまりを目指し、そっと指を這わせていく。怒るかな、怒るだろうな。でも千夏先輩は集中してくれているし、気付かないかも。或いはこっちも「経験済み」だったり……?
怯えつつ指は進み、あと僅かな所までにじりよったその時。
押し潰されるような痛みが、俺の下半身を貫いた。
「大喜くーん、ナニしてるのかなー……?」
表情は見えないけれど怒りが混ざった声の先輩が、俺を握り締めている。それがハッキリと分かる、それほど強く。
高まっていた性感が痛みに変換され、なかなかに辛いけど。でも、でも。
先輩の言葉の方が、ずっと痛い。
「あのさ、不意打ちしないでね。私にだって準備があるんだから」
準備、か。つまり手順さえ踏めば、先輩は
いや、別に俺が気に病むことじゃない。
先輩がどんな人だろうと、過去に何があろうとも。
俺は千夏先輩が好きだから、
俺のそんな決意はでも、先輩の次の言葉に当たって空回りしてしまった。
「そういうの、まだ
俺を握ったまま言うその口調は明るくて、朗らか。内容はともかく。
今言っているのが真実なら、千夏先輩は。それは……。
「あ、……の。千夏先輩って、こういうの経験済みなんじゃ……?」
思わず疑問を口に出してしまった俺の下半身に、再び鋭い痛みが走る。感触からいって、握り潰さんばかりの力で玉を掴んでいるようだ。痛い痛い、猪股家が絶えてしまう。
「あー、私が遊んでるみたいに言ったー。私は大喜くんしか知らないし、えっちのやり方は動画とかで覚えたんだよ」
検索すれば幾らでも出てくるからね、という先輩。
言われてみれば、確かにそうだ。今時ちょっと調べれば、大抵の事はすぐ分かる。つまり千夏先輩は経験があったわけじゃなく単に
でも、じゃあ。
俺が口を開くより早く、千夏先輩が言葉を紡ぎだした。
「私もね、ずっと大喜くんが好きだったよ。だから、大喜くんを喜ばせたいの。もっと気持ちよくなってほしいし、可愛い顔をもっともっと見たい。その為なら、恥ずかしくても頑張れるんだよ」
――俺は本当に、何処までバカだったんだろう。
勝手に思い詰めて、わけが分からない事ばかり考えて。
もっとシンプルでよかったんだ、それで十分なんだ。
言いたいことは言おう、そうするべきだから。
「あの、千夏先輩。……少しだけ、お願いがあるんですが」
今までとは違う、向かい合う姿勢。いつもは俺に跨がってくる千夏先輩を、逆に組み敷くような。夢で見たのは、こんな感じだっただろうか。
上手くいくとは思えないし、白けてしまうかもしれない。
それでも俺は、自分から千夏先輩を愛したい。そう言った俺の顔を、千夏先輩は優しく撫でてこう言ってくれた。
「うん。大喜くんがしたいように、していいよ」
そして。
仰向けになって開かれた脚の間、トロトロと涎を垂らすオンナノコ。真っ赤に充血したそこは、今か今かと俺を待ってくれている。
これまで何度となく、入った場所。でもこうやって自分から分け行っていくのは初めてだし、先端を押し当てると思った以上に狭く感じる。ここに、毎晩のように入っているのか。これが俺を、呑み込んでいるのか。
ゆっくりと腰を進めていくと、段々と分かってくる。ああ、そうだ。この絡み付く、そして押し潰す感じ。いつもと同じ、大好きな人の中。
「ん、……あー……ぅ」
千夏先輩が漏らす甘い吐息を受けながら、その唇へキスをする。キスしながら、進んでいく。
背筋のぞわめきは収まらない、気を抜けばすぐにでも射精しそうだ。普段なら、それでいい。普段ならそれで千夏先輩は「お疲れさま」と俺にキスをして、そして後始末して部屋へ戻る。でも今夜は、そうなりたくない。
気合いで輸精管を固く閉じて、先輩の中を激しく掻き回す。突き上げる度に、そして腰を引く度に先輩の口からは嬌声が溢れ、その腕は俺を抱き締めるように背中へ爪を立ててくる。
しばらくするとその声からも表情からも、余裕は消えていった。
「あ"、……ぁう"、ぎ……いぃひっ!」
そして声は声で無くなり、低く唸る獣の呻きへ変わっていく。
顔は涙と汗でドロドロになり、膣内は万力のような凄まじさで俺を締め上げる。
きっとこれが、千夏先輩の本気。今まで見せてくれなかった、快感を貪る顔。
俺だけが見られる、俺しか知らない姿。それを見て尚、俺は止まれない。もっと、もっと。もっとこの人を深く知りたい、もっと愛したい。
その思いを込めながら突き上げた、その時だった。
ガチガチに張り詰めて先輩の奥を叩いていた俺の先端が、何かにめり込んだのだ。
僅かに腰を引いて再度突き込むと、更に少しだけ深くめり込むのが感じられた。まるで固い輪の中に自分を捩じ込んでるような、不思議だけど気持ちいい感覚。
「――!! っ、ダ……、そ、……こ、入っちゃ……!!」
ビクンと硬直した先輩が声を上げるのと、ほぼ同時に。俺は何かを貫いたような感じと共に、更なる深みへと入り込んだ。
先輩部分、雁首より先が袋のような部分に包まれている。そう感じながら腰を引いた、……つもりだった。
「あれ、……え? 抜けな……い?」
何かが雁首にがっしりと食い込み、俺を離さないのだ。完全に固められている訳ではないから小刻みなピストンは出来るけど、思うように動けない。
何がどうなっているんだろう、そう思ったその時。千夏先輩が囈のように、呟いた。
「そ、こ……ぉ、赤ちゃんの……お部屋ぁ……」
それが耳に届いたその時、背筋を快感の稲妻が走り抜けた。そして理解する、今自分が何をしているのか。千夏先輩の一番奥、最も神聖な場所。そこを、征服した。俺は今、千夏先輩の子宮に包まれている。
それが、楔になった。
ドクンと拍動が脈打ち、一気に爆発する。
雁首への締め付けさえ力尽くで振りほどく暴力的な圧力が尿道を駆け抜け、勢いよく精液が放たれる。逃げ場のない、子宮の中で。
「あ"ーっ、おぐ、当た……ってぇ! こ"われ、破裂す……!!」
こらえ続けて濃度も量も凄まじくなった精液の奔流が、先輩の中で渦巻いている。それは目には見えないけれど、感じられるもの。止まらない射精の勢いで、先輩のお腹が膨れていく気さえする。
その思いが更に興奮を呼び、後から後から造精が活性化してしまう。
終わりの来ない射精の中、千夏先輩が白目を剥いて動かなくなってようやく俺は。
「あー……う、あぁ……」
千夏先輩の中から自分を引き抜き、それでもまだ出続ける精液でその腹を、胸を、そして顔を汚していく。
幸せすぎて、死にそうだ。最後にそう思いながら、俺の視界はブラックアウトした。
二人して気を失ったまま、何時間か経っていたらしい。
意識を取り戻して最初に見たのは、ほっぺを膨らませた千夏先輩。
「……大喜くんのばか、死ぬかと思った。あんなに奥まで入れるなんて」
形だけむくれながらぺちぺちと俺を叩くその姿は、とても可愛い。こんな顔もするんだな、この人。
と言うか普段は上からのし掛かってるのに、あそこまでは入んなかったんだよな。なんでだろう。
まあ、良いか。これから時間をかけて、知っていこう。
お互いまだまだ、知らないことだらけなんだから。
笑いあいながらそんな事をぼんやりと考えていると、千夏先輩がイタズラな笑顔を浮かべてきた。
「ね、大喜くん。……卒業したあとも一緒にいたいって言ったら、どうする?」
それはとても魅力的な話だ、是非そうあって欲しい。
俺はこれからも、千夏先輩を好きになり続けるから。
「こっちからお願いしたいですよ。俺とずっと、一緒にいてください」
俺はこの先も多分、この人には勝てないんだろう。でも、それでいい。それがいい。
きっとそれは、何よりも幸福な結末だから。
「さすがにあれがクセになると困るかな」
「……それについては申し訳無いです」
「早めに赤ちゃん欲しいし」
「それについては全力で頑張ります」