我慢は身体にも、心にも悪いから。
だからそう、仕方がない。
人間そうそう耐えられはしないから。
思えば遠回りをしてきたものだ、本当に。
変わるのが怖くて踏み出せず、でも今のままではいられない。戻る道も最早無い。そんな状態で長々と、よくもまあ。私という人間は相当に相当だ。
一緒に過ごしている間、どれくらいにチャンスがあっただろう。ほんの僅かな勇気さえあれば、それを掴めた筈だ。蝶野さんに悪いとか居候としての立場とか、そんなものを気にして何も出来なくて。その隙に蝶野さんが大喜くんに告白し、私は自分の愚かさを思い知る事になった。
そしてそれを呑み込む暇さえなくやって来た、同居の中断が追い討ちをかける。大喜くんが、すぐ側にいてくれない。それだけの事が私にとって、堪え難い程辛い。
もっと早く、気付くべきだった。動くべきだった。
だからそう、もう二度と迷わない。
私はもう、止まらない。
呆然としたまま仰向けに横たわる大喜くんを見下ろしながら、そう誓う。
同居再開の日は、思ったよりも普通に過ぎていった。そしてそれが、とても落ち着く。まるで
中でも一番落ち着くのは、大喜くんが自然に接してくれる事。何を聞くでもなく、まるで昨日も一昨日も一緒にいたかのように過ごさせてくれる。学校で毎日会ってはいたんだけど、ね。
みんな何事も無かったように、ごくごく自然に溶け込ませてくれる。問題があるとしたら、私の方だ。
あのマンスリーマンションは広めではあったけど、部屋数は多くない。と言うか少ないから、さすがに私が一人になれるほどのスペースはないのだ。思春期真っ盛り担いだ金太郎であるこの私としては、お母さんと同じ部屋で寝起きするのはちょっと堪える。ぶっちゃけ、オナニー一つ出来ないのが一番辛い。あの人烏の行水だから、お風呂中にってわけにもいかないし。
そういうセンシティブな面は見せたくないし見たくない、母娘とは言え。いや母娘だから、だな。
猪股家でもそんなに頻繁には出来ないものの、大喜くんの気配にさえ気を付ければどうにかなったんだけど。約一ヶ月の禁欲生活は、さすがに厳しかった。
だから再同居の初日、さっそく大喜くんの部屋に忍び込んでオナニーしてしまったんだ。割と長風呂な大喜くんがいない間に、こっそりとベッドに染み付く
もし見つかってしまったら、と思いながらも身体の奥から快感が溢れて止まらなかった。ああ、これは不味いやつだ。身を任せてはいけない衝動だと気付いても、指が止められない。人差し指に中指が寄り添い、柔らかい粘膜を抉っていく。
ダメだ、これ以上はダメだ。大馬鹿がやることだ。白濁していく意識を力尽くで繋ぎ止め、強引に指を引き抜いて身体を叩き起こす。
全力で身を翻し隣室へ飛び込んだその数秒後、階段が軋む音がやって来た。大喜くんが上がってきた、その音が。
それを聞きながら胸を撫で下ろすも、自分の考えなしっぷりが嫌になる。間一髪、なんてレベルじゃないけどどうにか助かりはした。今回は、なんとか。
でも毎回上手くいくわけがない、でも我慢も効きそうにない。どうしよう、と思いながらも興奮が静まらないのが何より困る。
本当にどうしたものか、それが問題すぎる。
醒めない火照りをどうにかしようと、声を殺してオナニーに耽ったまま、気がつけば朝が来ていた。
ろくに休めもしないまま浴びる朝陽は脳に堪える、今日が日曜で良かった。こんな体調での登校は辛いし、だからって休んだりしたら余計な心配をかけてしまうし。ああ、少しは後先考えろ私。
とは言え部屋でいつまでもゴロゴロしているわけにはいかない、なんせ居候じゃけぇ。下に降りて一応由紀子さんにおはようを言って、朝御飯も食べないと。いつもより少し遅い時間になってしまったから、ちょっと良くないかもな。せっかく作ってもらってるんだし、美味しいうちに食べないと勿体無い。うちのお母さんと違って料理上手いしね、由紀子さん。
――と。
「あ、おはようございます千夏先輩」
「あー……うん、おはよう」
珍しく台所にいる大喜くんに声を返すも、内心穏やかな筈がない。昨日キミの部屋に忍び込んでオナニーしました、なんて言いやしないけどさ。言いやしないけど、バリバリに意識はしてしまう。あれこれ溢しちゃってたかもしれないし、と言うか垂れてるだろうし。
なんとか平生は装わないと、そう思って話しかけようとしたその時にふと気付いた。
家の中が、やけに静かなことに。
大喜くんのお父さんは朝早くにはもう仕事に出ているけど、由紀子さんの声が聞こえないのは珍しい。お爺さんもいないようだ。
「なんか母さん、さっき出掛けたんですよ。じいちゃんもなんか友達の所行ってくるって」
俺今朝は寝坊しちゃって、さっき朝食べたとこなんですよ。そう言って笑う大喜くん。
え、と思ったが時計はもう9時近い。いつもより少し、どころかかなり遅いな今朝は。
……しかしこの家の人たちは、私たちを何だと思ってるのやら。実の姉弟でも、もうちょっと気を遣わないかな。小学生じゃないんだから、さ。
二人きり、休日の朝から二人きり。
こんな時間にでて、すぐに帰ってくるという事も無いだろう。そうなると、そうなると――。
「そっか、そういう事か」
全て理解して私は、そっと大喜くんの後ろへと回る。要するにこれは、
それなら、チャンスは掴むべきだろう。このまま悶々としていたら、私が持たない。
まだ寝起きの余韻が残っているのか、気づきもしないで呑気に洗い物をしている大喜くんの背中に手を伸ばし。
――全力で、しがみついた。後ろからのベアハッグに近い、そんな格好で。
「ふぇっ!? あの、先輩な……にをっ」
狼狽する大喜くんを、更に強く締め上げる。胸が圧迫されてちょっと痛いけど、そこはまあ我慢だ。幸いボリュームに欠ける部位だ、問題ないわ畜生。
そのまま腰に力を込めて、僅かに私より背が高い高いを持ち上げていく。腕力には自信があるんだ、伊達や酔狂でバスケ部のエースは張ってない。
さすがに異常さに気付いたのかもがこうとする大喜くん、その背に頭突き一閃。
「ちょーっとだけ、良い子にしてようねー」
……で、だ。このまま階段を昇るのは辛いから、大喜くんをリビングに引き倒してみたわけだけれど。
逃げ出す処か文句一つ言えないまま震える大喜くんを見下ろしていると、予定とは違う感情が沸き上がってくる。
なにこの可愛い生き物、すっごい可愛い。可愛くて可愛い。語彙力を失うくらい、圧倒的に可愛い。
愛しい、そして
これが世に言う、愛と言うものなのだろう。多分。
気がつくと私はその衝動に突き動かされるままに、大喜くんの薄く色付いた唇にキスしていた。
ファーストキス、という縁の無い単語が脳裏を過ったのはほんの一瞬。それよりもずっと大きかったのは、粘膜が触れ合う快感。大喜くんの中へと分け行って、その奥を探っていく愉悦。
そうか、キスってこういうことか。あんまりロマンティックな行為ではないんだな、そりゃそうか。レモンの味なんかするわけない、か。
でも良いや、気持ちいいんだから。そしてそれは、大喜くんも同じようだ。さっきから私の身体に、熱い何かが押し当てられているから。
キスしながら手を大喜くんの下着の中へと進めていくと、その身体がイヤイヤをするように僅かに揺れた。そんな事したって、やめてあげたりはしないんだけど。程なく私の指はその中にある、熱の中心地へと辿り着く。
「わ、あー……こうなるのかー……」
私の握り拳で一つ半、といった所か。思ったよりずっと大きい、大喜くんの――オトコノコを弄ぶとすぐに可愛い声が上がってきた。触る処か見たこともないけど、まあ場所が場所だから扱い方に大きな違いは無いだろう。優しく撫で擦っていけば、すぐ気持ちよくなってくれる筈だ。
そしてその予想は、すぐに果たされた。
「あ、あ……っ、ダメぇ……っ」
女の子みたいな可愛い喘ぎが漏れた、それに遅れること数秒。私の手の中でオトコノコが震え、とくとくと何かが迸った。
思わず離してしまった手を顔の前に持ってくると、熱い粘液で濡れている。これがきっと、精液だ。大喜くんは私の手で、気持ちよくなったんだ。
なんだか誇らしい気持ちで見やる大喜くんは、すっかり青ざめている。……まあ、ね、これが逆だったら首吊ってるよ私。でも、だ。私にとってこれは、不愉快でも何でもない。愛しい事だ。
私は一度そっと身を放し、真っ青なまま涙を流す大喜くんへ改めてキスを落とした。
「ねえ、大喜くん。私、大喜くんが欲しいな。……良いよね?」
返事は来ないけど、大喜くんの頬は赤く染まっていく。これが何よりの、同意の証だ。
大喜くんのオトコノコは、相変わらず逞しく聳えている。見ているとその、ちょっとだけ不安だ。
入るかなぁ、あんなの。まあ指だって最初から入れられたわけじゃないし、こういう事は馴れと勢いだろう。小さい頃はただショーツの上から擦るだけだったけど、小学生になってから綿棒で入り口をそっと弄るのが好きになって、気が付けば指を深く入れるようになっていった。それに夕べからずっと弄り通しで解れてるわけだし、どうにかなるかもしれない。
――今さら日和るわけにもいかないんだし、ね。
「んー……」
大喜くんへ馬乗りになる姿勢で、オトコノコの先端へと私の入り口をあてがっていく。
このまま腰を落とせば、それで良い。私の奥の奥、疼く熱の根源まで一気に届くだろう。
大喜くんをこうやって
「あ、ぅ……あぁ……っ」
ギチリと私の中が押し広げられ、熱い塊が通っていくのが伝わってくる。聞いていたような痛みは全く無い、むしろゴリゴリと膣壁が擦られるのが気持ちいいくらいだ。
そして数分かあるいはそれより短い時間を経て、私のお尻は大喜くんへと着陸を果たした。
視線を落として脚の間を見ると、オトコノコはもうほとんど見えなくなっている。あの大きなものが、先端から根本までほとんど全部入ったのだ。
圧倒的な質量、そして焼けるような熱さ。これは、スゴいな。知識としてしか知らなかったけど、セックスってこんなにスゴいのか。ああ、何で我慢なんかしていたんだろう。もっと早く、こうしていれば良かった。
ピッタリと粘膜が密着しあい、息もできない。でももしこれで、動いたら――どうなってしまうんだろう。
私は好奇心のまま、動き出していた。
何事にも上手くいくやり方と言うのがある、それは誰かに教わるより自分で体得するものだ。
私は大喜くんに跨がったまま、上手な動き方を模索していく。スクワットの要領でリズミカルに腰を振ると大喜くんもあんあん喘ぎ、腰を落としたまま揺するように左右へ動くと甘い吐息が漏れてくる。こうやってオトコノコを支配するのは、どうも性に合っているらしい。
頭の芯は甘く痺れ、どんどん意識が淀んでいく。
このままずっとこうしていたい、とぼんやり思い始めた頃。大喜くんが、呻くような声を立てた。
「ダメ、抜い……て、出ちゃ、いま…っ」
その言葉の意味を頭が理解するより早く、私の中でオトコノコがガクガクと震えた。そしてオトコノコでさえ届かない更なる深部目掛け、何かが叩き付けられていく。その凄まじい熱波は、まさしくさっき手の中で感じた精液のそれ。
大喜くんが私の中に放った精液が染み透り、脳まで焼き払わんばかりに身体を染め変えていく。
何がダメなんだろう、これこそ最高に気持ちいいじゃないか。
でももっと、もっともっと欲しいな。そう思いながら再び腰を動かそうとした、まさにそのタイミングで。
「あ、……れ?」
ガクンと全身の力が抜け落ちた。へなへなと大喜くん目掛けて身体が倒れていくのが、止められない。
なんとか体制を立て直そうにも、手が震えて仕方がない。
心配げな大喜くんの声を遠くに聞きながら、私の視界は暗く閉ざされていった――。
「……千夏先輩は、もう少し頭を使えるようになってくださいね」
失礼な事を言う大喜くんから受け取った二本目のポカリを煽りながら、私は空のペットボトルでその頭をポカリ。ポカリだけに。
オナニーと微睡みを繰り返して身体がガタガタの状態で、その上朝御飯も食べずに激しい運動をしたせいで私の健康状態は限界を迎え、いわゆるハンガーノックに陥ったようだ。ひだる神が憑く、というのはこういう状態なんだとか。
さっき一本目をがぶ飲みして低血糖は脱したから多少はマシになったけど、まだ動くのは辛いから大喜くんにあれこれやってもらっているとこ。
「あのですね千夏先輩、ご飯食べたらちゃんと病院行ってくださいね? 妊娠とかなったらどうするんですか」
そしてお説教も受けているとこ。まあ、確かにね。私としたことが頭に血が上って考えてなかったけど、膣内射精には妊娠というリスクがある。
それは正論ではあるんだけど。
あるんだけど、でも。
「そしたら、大喜くんのお嫁さんになろうかなーなんて。蝶野さんに刺されそうだけど」
「ハイハイ、Niceboatにならないでくださいよ」
ぬう、軽く受け流されてしまった。
――まあ、良いか。
「大喜くん、動けないからお風呂に入れてください」
「要介護先輩って呼ばれたくないなら、自分でしてくださいよ」
笑いながら放って寄越したお握りをかじり、私は考える。
休日はまだまだ続く、明日までは
これからもっと、大喜くんを愛そう。もっと大喜くんを抱こう。
それに楽しい日々は、この先も終わらない。
一歩ずつ、踏みしめていこう。