美夜が、俺を裏切った。
俺のスマホに、美夜から電話が掛かってきた…。
「んんっ…ヒロ君…聞こえる?わたしね…今…阿久津君と一緒に居るの…。」
「あっ!あっ!…んん?今ね…阿久津君のおちんちんが、わたしのオマンコに入ってるの…すごく気持いいの…。」
「ホント…童貞で…ヘタレなヒロ君とは大違い…あ!イク!イっちゃう!…イくーっ!」
「…………。」
それからスマホから、俺も知っている男…阿久津の声が聞こえてきた。
「悪りぃな
「安心しな、ヘタレの童貞なお前に代わって、俺が美夜チャンをシッカリキッチリガッツリ満足させてヤッからよ。」
そしてまた、美夜がスマホに出た。
「ねえヒロ君、わたし今凄く気持いいのっ!こんなに、こんなにわたしを気持ち良くしてくれる阿久津君が、わたしの運命の人なの!ちっとも気持ち良くしてくれないヒロ君なんか好きになったのは…何かの間違い…ああっ!」
「ちょっと!急に挿入れないで…!ううん!いいの!そのまま突いて!ガンガン突いてッ!ああ!いい!いい!」
「いい!いい!もう、もう気持ち良くないヒロ君なんて要らないっ!気持ち良くしてくれる阿久津君がイイ!わたし、わたしもう、阿久津君の物になりますうぅ!」
「つーわけだ間ぁ、今俺たち、美夜の部屋に居るけど…俺たちのラブラブっぷり、見学に来るかぁ?思う存分シコらせてやるぜ?来たくなったらいつでも来いよ、歓迎するぜぇ…。」
…俺は電話を切り、金属バットを手にして…部屋を出た。
殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺
殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺
殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺
殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺
…これがこの時の、俺の頭の中だった。
殺意と暴力の塊となった俺は、美夜と阿久津が居る美夜の部屋に向かって驀進していた。
美夜を殺す、阿久津を殺す、道を遮るヤツも殺してやる…。
…すると、誰かが道を遮った。
顔は見えなかった。
誰であろうと知ったことか。
俺は金属バットを振りかぶり、打ち下ろした。
金属バットは…俺の手からはじけ飛んだ。
高い音を立て、地面に落ちた金属バットは…折れ曲がっていた。
「昂ぶっているな…まずは、鎮まってもらうとしようか。」
低い、女の声がした。
そこで俺の記憶は途切れた。
************************
俺は見知らぬ部屋で、見知らぬ女を犯していた。
女の体は、褐色の肌で…とにかく大きかった。
巨体だったと言っても良かったろう。
俺はいきり立った俺のモノをその女に突き立て、腰を打ち付けていた。
「ん…んんっ…良いぞ…もっと…もっと私にぶつけるんだ…もっと乱暴にしても…ああっ!」
わけがわからない。
それでも俺はこの女に腰を打ち付けることを止められなかった。
「ああ…ああ…ああ…。」
俺は覚えず声を漏らした。
何かが来そうだと感じていた。
「あ…っ!また…出そうなのか…?…出せ…そのまま…私の、中に…出せっ…ああっ!」
女に言われるまま、俺は女の中に精液を放った。
「あああっ!」
俺が女の中に出すと、女の方もその巨体を仰け反らせた。
中に出されて、絶頂に至ったようだ。
女はその巨体を仰け反らせ、痙攣させた後…ベッドにその巨体を「落とした」。
巨体をベッドに落とした勢いは強く、ベッドが壊れるんじゃないかとも思えた…。
俺は自分のモノを女から引き抜いた。
女のものから、白い液体が零れ出た。
…結構な量だ。
俺が…出したのか…?
俺は周囲の状況を見聞きし、考えるということを思い出した。
その様子を見てからか、ベッドに身を横たえていた女は、ゆっくりと身を起こして、言った。
「…鎮まった…ようだな…。」
女の顔には、見覚えがあった。
女は、人間じゃなかった。
女は艦娘の…武蔵だった。
「お前は…結構力があるのだな…。」
武蔵は俺の後ろに視線を向けた。
俺も後ろを振り返った。
そこには、折れ曲がった俺の金属バットが置かれていた。
「これほどの力を以て…お前は何を打ち砕こうとしていたのだ?」
…艦娘は、人間より頑健で力も強い。
まして、戦艦武蔵となれば…そもそも金属バット程度でどうこうできる相手じゃない。
俺は目の前の武蔵を恐ろしいと思った。
だがそれは、武蔵が強いから、じゃない。
「ひとつ…私に、話してはくれまいか?」
武蔵の声、話し方は…何と心が…安らぐ…。
俺は金属バットで武蔵に打ちかかって、ここで武蔵を犯していたというのに…。
そんな俺に…何処までも…穏やかに…。
…俺は…美夜から掛かってきた電話のことを…美夜を、阿久津を殺そうとしていたことを…武蔵に、話してしまった…。
「…美夜とやらは、お前という恋人がありながら、阿久津とか言う男に肉体を許した、か…。」
「それでお前は、美夜を裏切者と断じたわけだな…。」
俺は頷いた。
「正直言って、他の男と交わったことで裏切者と断ぜられたり、殺してやると言われてしまうのは、私も辛いな…。」
俺は武蔵を恐ろしいとも思っていたが、心は安らいでもいた。
やっとのこと、という感じではあったが、俺は武蔵に問いかけた。
「どういう…ことですか…。」
武蔵は答えた。
「私にも、伴侶と言える存在が居るんだ。」
「!!…そ、それって…!」
「そうだ、私は伴侶が居る身でありながら、お前に肉体を許したということになるな。」
俺は拳を握りしめた。
この武蔵も、美夜と同類…誰にでも股を開くような女…!
「私のような女は許せないか?私のような…そう…ビッチ、は。」
「ゆ…許せません…よ!あ…あなたは…自分の伴侶に、悪いと思わないんですか!自分の伴侶を裏切ってるとは、思わないん…ですか!」
「思わんね。」
「……!」
怒りで頭に血が上りそうになった。
敵わなくてもいい、この武蔵も殺してやりたいと思った。
(この直前までその武蔵と交わっていたことは、棚に上げてしまっていた。)
…だが武蔵は、どこまでも穏やかに話を続けた。
「セックスという営みは人間にとって(そして艦娘にとっても)、大きな意味を持つ大切な営みだと思うか?」
「あ…当たり前でしょう!」
「だからこそ、伴侶や恋人以外の相手と、軽々しく行うべきことではないと、そんな軽い営みではないと、そう思うのか?」
「そうです!」
「伴侶が居る身でお前に肉体を許した私は、セックスという営みの意味を、大切さをわかっていないと思うか?」
「わかってないじゃないですか!わかってるんなら…俺と…こんな…!」
「私にとっても、セックスは大切な営みだぞ。」
「だったら!だったら何で…!」
「お前はセックスという営みが大きな意味を持つ大切な営みであるから、普段は距離を置くべき、特別な営みだと思っているようだが。」
「私はセックスという営みが大きな意味を持つ大切な営みであるからこそ、もっと身近で、気軽な営みであるべきだと思っている。」
「それこそ、飲み食いすることと同じくらいに、睡眠を取ることと同じくらいに、身近で気軽で大切な営みだと、な。」
「絶頂という感覚は、天がヒトに(そして私たちに)与えた恵みだ。むやみに距離を置くべきものではない。」
「そしてその恵みを分け合う相手を、特別な相手とやらに限定しなければならない理由はないと思う。」
「それこそお互いに受け容れられるのなら、自由に、気軽に恵みを与え合うのが本当なんじゃないかとも思う。」
「…まあそもそもセックスという営みにどう接するかという問題に、唯一絶対の解というものはないのだがな。」
…言い返してやりたかったが、現に恋人でも何でもない武蔵の中に何度も射精していた俺には、何も言うことは出来なかった。
それでも、俺は何とか言葉を絞り出した。
「…それじゃあ…こういうことは恋人と、特別な相手とするものだと信じてきた俺がマヌケだったってことですか。…あっさり阿久津に靡いて、阿久津に股を開いた美夜は正しいってことなんですか…。」
「私から見ればお前が間抜けに見えるということは否定しないが、それを言うならお前から見れば私はふしだらなビッチに見えるのだろう?それはお互い様というものだ。」
「だが美夜とやらがお前にしたことには、私も強い嫌悪を感じる。」
「えっ…それは、何で…。」
「セックスというものは『気持ち良い』を分け合って、親愛の情を交わし合う営みだ。艦娘と艦娘を、人間と艦娘を、そして何よりも人間と人間を結びつける営みだ。」
「実際私は自分が好いた相手、自分を好いてくれる相手となら誰とでもセックスする。」
「繋がりが強い相手だけでも、私は五股架けている。」
「五…五股!?」
「そうだ、まあ何と言っても私は誰にでも股を開くビッチだからな。…だが五人とも、こんな私を良いと言って受け容れてくれる。私はそのことに強く幸福を感じているよ。」
「だが美夜とやらは阿久津とかいう男とセックスすることで、たったそれだけのことでお前との繋がりを断ち切った。しかも悍ましい侮蔑の言葉と共に、な。これは私から見れば、セックスという営みに対する冒涜に他ならない。」
「…本当に恥ずべきことではあるのだが…どうにも美夜とやらに対する憤りを抑えられぬ。」
武蔵にとっては行きずりの俺に股を開くことより、何股も架けることより、美夜に対して怒りを覚えることの方が恥ずべきことらしい…。
武蔵は折れ曲がった俺の金属バットを見て、俺に言った。
「お前は美夜と阿久津を打ち殺そうとしていたのだったな。」
「…まだ美夜と阿久津に復讐しようという気持ちがあるのなら…私が手助けをしても、構わないか?」
***********************
翌日の午後、大学構内。
(言い忘れていたが、俺も美夜も阿久津も大学生だ。)
俺は美夜と阿久津の前に立った。
「あ…っ、ヒロ、くん…そ、その
俺の横には武蔵がいた。
美夜の問いかけには、俺に代わって武蔵が答えた。
「私はこいつのセックスフレンドだ。昨夜、こいつが突然私に声をかけてきてな…誘われるままホテルで一泊したんだが。」
「初めてだったそうだが、なかなかどうして素晴らしい一夜だった。私はすっかりこいつの虜になってしまったよ。」
「セックスフレンドって…!昨夜突然声をかけたって…!ヒロくん!どういうことなの!」
「ああ、貴女が美夜さんか。
美夜は息を飲んで黙り込んだ。
「『気持ち良くないヒロ君なんて要らない』のだろう?だったら私がこいつを貰っても、貴女から文句を言われる筋合いは、ないと思うがな?」
武蔵は俺に視線を向けて、続けた。
「それにしても、本当に凄まじい一夜だった。お前、本当に初めてだったのか?私もそれなりの人数とヤってきたが、初めてでお前ほどヤれるヤツは見たことがないぞ。」
俺は当惑していたが、武蔵は俺の肩に腕を乗せて…。
「さあ!まだ昼過ぎだが『夜戦』と行こうか!…じゃあな、あんた達はあんた達でよろしくやっといてくれ。」
美夜と阿久津は…言葉もなく驚愕していたようだ。
そんな二人に背を向けて、俺と武蔵はその場を離れた。
美夜と阿久津の姿が見えなくなった所で…。
「まずはこんなところか。」
武蔵は俺に「復讐の手助けをしても良いか?」と言った。
それでこの日武蔵がしたことは、美夜と阿久津への自己紹介だけ。
美夜も阿久津も、動じてはいたようだが…。
これで俺の「復讐」が成ったと言えるのだろうか?
俺は武蔵に問うた。
「…どうもスッキリしないんですが…。」
しかし、俺が疑問を持つであろうことは、武蔵には想定の内だったようだ。
武蔵は平然として答えた。
「まあそうだろうな。」
「お前はもともと、金属バットで美夜と阿久津を殴り殺すつもりだったのだろう?」
「だがそれを成し遂げたところで、その後のお前はどうなる?」
「あの二人を打ち殺すことに、お前が自分の人生を捨てるほどの意義はないと思うぞ。」
「だから私はあの二人に、人生の全ての局面においてしくじり、自滅してもらうことにした。」
「ただ自己紹介をしただけ、というのは確かにスッキリしないやり方だが…。」
「孫子も言っている。」
「故に善く兵を用うる者は、人の兵を屈するも、戦うに非ざるなり、とな。」
「できるだけ汗をかかず、危険を最小限にし!バクチを避け!戦いの駒を一手一手動かす!それが『真の戦闘』だ!…という言葉もある。」
「要は手荒な真似をするだけが復讐ではないということさ。」
復讐は合理的に・スマートに、ということらしいが、俺としてはこの説明だけではスッキリしなかった。
「でも今の自己紹介が、あの二人の自滅とどう繋がるのか…。」
武蔵は続けて答えた。
「美夜から見れば、お前は美夜に去られた直後に私というセックスフレンドを得た。」
「美夜から見れば、お前は
「そう、私がお前のセックスフレンドとして美夜と阿久津の前に立ったのは、
「私が自分を、お前のセックスフレンドだと言って自己紹介したとき、美夜は明らかに動揺していた。」
「この暗示は、効果があったと推測される。」
「そして阿久津にしてみれば、
「おそらく阿久津は早々に美夜を…つかまされたカスを捨てようと考えるだろう。」
「自分に価値がないと怯える女と、価値のない女を捨てようとする男。」
「この後この二人が具体的にどうなるのかは私にもわからないが…あまり良い結末を迎えることはないだろうな。」
それから武蔵は俺にいくつか指示を出した。
・これから一週間、美夜と阿久津には絶対接触しないこと。
・電話は着信拒否、メールは無視、連絡先リストから美夜と阿久津を削除すること。
・美夜、阿久津との接触を避けるために必要であれば、武蔵の勤め先…海神警備・岩川台営業所にある甘味処「間宮」を利用すること。
・学内の出来事に注意を払うこと。
・美夜と阿久津の動向について何か情報が入ったとき、あるいは一週間経っても二人に何も動きがなかったときは、甘味処「間宮」で武蔵と協議を行うこと。
たいして難しい指示じゃない。
俺は忠実に、指示に従った。
そして一週間と待たず、四日後。
思いがけない情報が俺の耳に入った。
…美夜が、阿久津を刺したのだ。
驚いた俺は、転がるように甘味処「間宮」に駆け込んだ。
(武蔵は電話やメール、SNSで誰かと話すのは好まないらしい。)
丁度武蔵は、店の中にいた。
「何だと!?」
俺からの報せを受けて、武蔵も驚いた様子だった。
そして武蔵は自分のスマホでニュースを確認した。
「…美夜は現場でほぼ現行犯逮捕…阿久津は病院に収容されるも、死亡確認、か…。」
「…あの美夜という女…そこまで浅薄だったのか…。」
こうして美夜も阿久津も破滅したわけだが…それで祝杯を挙げてやろうという気分にはならなかった。
そんな俺の気分を見透かしたのか、武蔵は俺に言葉を掛けた。
「お前は何も気にすることはない。」
「確かに私の『自己紹介』が、何らかの形で惨劇の切っ掛けにはなったのだろうが。」
「私の『自己紹介』をどう捉え、どう対応するかは、あの二人が自分で判断・選択することだ。」
「…そして二人は勝手にこんな選択をした。」
「お前はこの四日間、二人と顔を会わせることはおろか、二人からのメッセージを受けることすらしていないんだ。」
「お前は、この四日間にあの二人の身の上に起こったこととは文字通り何の関わりもない。」
「二人は結局
これで俺の復讐は成ったのだろうか…。
「そうだな、お前にはあと二つほどやってもらわねばならないことがある。」
「二つ…?」
「そうだ、そしてこればかりは私も手助けすることは出来ない。」
「それは…?」
「まず、美夜と阿久津のことなど早々に忘れてしまうことだ。」
「今の気分では難しく感じるかもしれないが。」
「阿久津は死んだ。もうお前の人生に姿を見せることはない。」
「美夜も…あんな性根で立ち直ることは無理だろう。このまま刑務所に放り込まれれば、お前との繋がりも自然消滅する。」
「だからまずは、二人のことはさっさと忘れてしまえ。」
「そしてもう一つは…お前がこのまま生きて、幸福になることだ。」
「幸福に暮らすことが最高の復讐である、という諺もある。」
「だから阿久津や美夜のことなどさっさと忘れて、幸福に生きて、復讐を完成させるんだ。」
…それから俺は武蔵とは会っていない。
そしてまだ道半ばではあるけれど…俺の復讐は完成に近づいている。