※この作品はR-18です。

継母の連れ子が元カノだった、いまは僕の父親とヤってる   作:大中小太郎

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エピローグ(挿絵追加)

 

 

「水斗……水斗っ」

 

誰かが呼ぶ声で、目を覚ます。

長い、長い夢から、目を覚ました。

 

(誰、だ?)

 

ぼんやりと目を開くと――父さんがいた。

 

「っ!?」

 

慌てて跳ね起きる。

なぜ父さんの顔を見てこんなに驚いたのかは、僕自身にも分からない。

 

「なんでこんなところで寝てるんだ?」

 

父さんは父さんで、僕に首を傾げていた。

 

「え?」

 

見回すと――リビングだった。

僕はリビングのソファーで横になっていたらしい。

ベッドほど寝心地がよくないので、背中が少し痛い。

痛いということは、夢ではなく現実だ。

 

「ああ……ごめん。父さん」

 

反射的に謝る。

なんだか、この父には、少し悪いことをしてしまった気がする。

 

「大丈夫か?」

 

父さんは訝しげな顔をしていた。

そりゃ、息子がクーラーの効いた部屋ではなく、居間のリビングで寝ていたら、悩みの一つも疑うだろう。

 

「ああ、大丈夫。昨夜、飲み物を飲んだ後、寝ぼけてここで寝ちゃったみたいだ」

 

僕は昨夜のことを思い出す。

そう……たしか、このソファーに用があったんだ。

でもその用を果たす前に、夜中の白昼夢に襲われて、無意識のうちにソファーで眠ってしまったのだろう。

そうして朝まで、いまのいままで……あの夢を見ていたようだ。

 

「なにをやってるんだか」

 

父さんは呆れた様子だ。

仕事に行くために目覚めたところ、リビングで寝ていた僕を発見して起こしたというわけか。

 

「夏休みはもう終わったんだぞ。学校に行く支度、しなくていいのか?」

「ああ、そっか……うん」

 

そう、昨日は夏休みの最終日だった。

長かった夏が終わり、新しい学期が今日から始まるのだ。

 

「その、父さん?」

「ん?」

「変なこと聞くけど、ここ最近、よく眠れてるか?」

「そりゃまあ、快眠だけど?」

 

なぜそんなことを聞かれるのか分からない、という顔だった。

 

「まさか父さんがストレスで不眠症になってるとでも思ったか?

 ははは、何を言うかと思えば。由仁さんと再婚して幸せ絶頂のこの時期に?」

 

なんか心配されたのが嬉しいという顔をし始めたので、不愉快な気分になった。

でも、間違いなく、父さんだ。

そう、父さんとは、こういう顔で笑い、こういう声で話す人だ。

 

(全然、似てないじゃないか)

 

夢の中で気付けなかったようだけど、あっちの『父さん』は、とんだ大根役者だった。

 

「峰くーん? 机のこの書類、もっていかなくていいの?」

「え? ああ、そうだった。ありがとう由仁さん」

 

リビングの外、寝室の方から、由仁さんの声が聞こえた。

父さんはその声に応じて寝室に駆け込んでいく。

そのやりとりだけで、分かる。

あれこそ、父さんと由仁さんだ。

 

「…………」

 

僕はリビングに誰もいなくなったこの瞬間に、ソファーの下を探る。

すると、夢の中で一度見付けたその場所に――あった。

五角形に折りたたまれた紙だ。

慎重に折り目を開いていくと、畳まれていた紙に名前が記されている。

 

『伊里戸水斗くん』

 

紙も、筆跡も、夢で見たものと同じだった。

 

「まったくもう……」

 

こんな紙きれ一枚に、随分と困らされたものだ。

まあ、なにをどう困らされたのかも、既に靄が掛かったように思い出せなくなっているのだけど。

でも、この紙を処分しなきゃいけないことだけは、よく覚えている。

僕は紙を持つ指に力を込めて、逆方向に力を加える。

びりっと、何の抵抗もなく、紙は破れた。

重ねてもう一回、半分に裂く。

念入りに、細かい紙吹雪になるまで、入念に破いた。

 

「…………」

 

その瞬間、音も無く、映像も無く、何かが消えていく。

僕の頭の中から、長い夢の記憶が、跡形も無く消えていく。

誰が何をしていたのか、どこで何が起きていたのか、全ての夢の内容が消えていく。

痛みもないし、感触もない。

夢を忘れる瞬間なんて、誰も知覚できない。

きっとこの現象は、僕だけではなく、夢に関わった全ての人間に起きただろう。

自覚的にその引き金を引いた僕だけが、少しだけそれを実感できた。

 

(まあ、でも……学ぶものもあったのかな)

 

紙吹雪になった紙を屑籠に捨てて、僕は息をつく。

あの夢を見なければ気付けなかったものがある……そんな気がする。

だからといって感謝はないけど、ただの悪夢ではなかった気がする。

 

「水斗くん? 洗面台、いま空いたから、歯を磨いちゃいなさい」

 

リビングを出ると、由仁さんが声を掛けてくれた。

年相応の肌年齢と、素朴な明るさの、いつもの由仁さんだった。

 

「ああ、ありがとう」

 

いつものような敬語は、使わなかった。

そろそろ、常にとは言わないまでも、ちゃんと『お母さん』として接していい時期だろう。

僕は由仁さんの反応を見ることなく、洗面台へ。

 

「あ……」

 

入れ違うような形で――彼女と会った。

結女だ。

いつの間にか目を覚まして、歯を磨いていたらしい、簡素なルームウェアの結女だった。

結女は僕に気付くと、まだ整っていない身なりのせいか、少し気恥ずかしそうな顔をして、

 

「お、おはよう……」

「ああ、おはよう」

 

不思議なくらい自然と、気負いのない声が出た。

結女が一瞬だけきょとんとするくらい、いまの僕は普段と違って見えたらしい。

 

「洗面台、使っていい?」

「うん、いいけど……」

 

結女とすれ違って洗面台の前に立ち、歯を磨き始める。

結女は軽く僕の様子を見た後、その場を後にした。

――いつもの結女だった。

変に色っぽくもないし、淫らでもない。

たまに不愉快だけど、いまも大切な、僕の元カノ。

これからも一緒に暮らしていく、伊里戸結女の、なにも手を加えられていない姿だった。

 

(……とりあえず、身なりだけでもしっかりしておかないとな)

 

夏休み明けの今日から、改めて、結女と共に学校に通う。

ことさら粋がるわけじゃないにしても、まあ少しくらい、髪型に気を配ってみようと思った。

 

――夢には意思があるという。

現世のルールで見れば『悪意』としか取れないような、意思があるのだと。

でも、悪夢の中にある『真意』を掴んでしまえば、悪夢にも『意味』があるのだろう。

 

だからどうか、夢の中の『僕』よ、いましばらく眠っておいてくれ。

いつか、お前という形で溜め込んでいたものを、少しずつ、よい形で実現していくために。

あんな夢を見なくても済む現実を、僕の手で整えるから。

お前に預けて、お前から届く熱情はきっと、そのためにあるはずなのだから。

 

そんなことを考えながら、僕は冷水で顔を洗う。

清涼な水を顔に浴びせると、脳裏にあったその感傷は、夢の残滓と共に、洗い流されていく。

 

邯鄲の枕は終わりを告げた、胡蝶の夢から人間に戻った。

真夏の夜の夢は幕を引いて、シュレディンガーの猫は眠りに就いた。

 

かくして――僕こと伊里戸水斗は、今日もよい夢を見るために、朝を迎えるのだった。

 

 

○

 

 

顔を洗っている間、玄関あたりから、声が聞こえた。

 

「あ、峰秋おじさん。おはようございます」

「ああ、おはよう結女ちゃん。僕はちょっと急ぐから、ご飯は由仁さんたちと食べてね」

 

結女と父さんの声だ。

耳は拾っていても、意識には届かない程度だったので、僕は実質的に聞いていなかった。

 

「そうですか。気を付けてくださいね――」

 

夢は無意識の出来事。

例え記憶に残らなくても、そういう心の情動があったという事実までは消えない。

夢そのものを忘れてしまった僕は、そんな発想もまた、忘却の彼方に置いてきてしまった。

 

 

「――お義父さん」

 

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

【完】

 





ご一読いただきありがとうございました。
短いですが、エピローグだけ別話にさせていただきました。

改めまして、無駄に長くなった拙作にお目を通していただきまして、
まことにありがとうございました。

タイトルを聞いた時点で元カノ✕父親というNTRを思いついて、
思いついたものを身勝手に書き殴り続けること、気がつけば30万字以上、
ざっとラノベ3巻分くらいの文章量となりました。

こうして振り返って見ると、エロシーンは台詞や行為がパターン化したり、
終盤は手前勝手なペルソナ展開が絡んで迷走気味だったり、
全体的に推敲が不十分だったり構成もクソもなかったりと、腕の不足を感じるばかりです。

こんな、ただ書きたいものだけを書いて満足したような二次創作に、
ここまでお付き合いくださいました方々、誤字報告をくださった皆様、そしてご感想をお寄せくださいました皆様に、深く感謝を申し上げます。

また刺激される原作に出会えるまでは、適当に二次エロやオリジナルを書いていきたいと思います。

以上、大中小太郎でした。
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