―そこに響く「音」の種類は限りなく少ない。
-猛烈な吹雪の音
流氷が互いにぶつかり、砕け、海へと落ちていく音
焚き木が燃やされ、割れる音
そこに住む生物の営みの「音」は、強大な自然の働きにより殆どがかき消されている。
たった1つを除けば―
「お忙しいところ、お呼び立てして申し訳ございません。」
セリカが若干申し訳無さそうに頭を下げて言った。
「いえ、私は大丈夫です。」
私は軍服のボタンを直しながら、セリカに労いの言葉をかけた。セリカの髪も若干乱れていることから、彼女自身も休暇中に呼び出しを食らったのだろう。
「早速ですが、今回の任務の説明を始めてもらってもいいですか?」
「ええ、分かりました。」
そう言うとセリカは、手元の資料のページをペラペラとめくりながら話を始めた。
「先程、北極航路連合の海域から異常なシグナルが検出されました。この時期は吹雪が強く、パニシングの影響がコロコロと変わるのでシグナルの強度も日によって変わってしまうのですが、そのシグナルは空中庭園が今まで計測を続けてきた中では類を見ない強度でした。」
「空中庭園のシステム上、そのシグナルの発信源を完全に特定できるわけではないのですが、少なくともこれがパニシングによるものとは考えられません。」
「となると、守林人かそこに住む人間からのシグナルだ・・・と?」
「その可能性が高いです。守林人の皆さんからのシグナルでしたらまだいいのですが、そこの住人からのシグナルだった場合、北極航路連合に何らかの問題が生じている可能性があります。」
「そのため、指揮官にはグレイレイブンとともに、現地に行って何が起きているのかを確かめてきていただきたいのです。場合によっては住民保護や外部勢力との戦闘もこなしていただきます。」
「なるほど・・・。出撃自体は構いませんが、今リーは工兵部隊と別の任務に行っていますので、全員出撃とはいかないのですが・・。」
「その点は心配ありません。」
会話を遮ったのはリーの通信だった。
「指揮官。こちらリーです。先程今回の作戦に関するファイルをアシモフから受信しました。作戦内容上、人員補充をしたほうが賢明と判断したため、すでに追加の人員を派遣するよう依頼済みです。僕もこちらが片付き次第そちらに向かいますが、ひとまずはよろしくお願いします。」
「本当に仕事が早いなぁ・・・。」
私はリーの手腕に感心し、うなじをなでながら答えた。
「本来は僕も作戦に加わるべきでしたので、それができない以上このぐらいはしますよ。それでは、指揮官。健闘を祈ります。」
そう言うとリーの通信は途切れた。
「指揮官、追加の人員についてですが・・・」
セリカが話を再開した。
「まず、今回ルシアには黎明の、リーフには流光の機体を配備しました。あまりに情報が不足しているため、上級機体の割当が適当だとハセンさんが判断しています。」
「そして、これに加えてアイラとともに行動をしてもらいます。」
想定外の発言に、思わず私は目を丸くした。
「どうして?」
「そんなの、面白そうだからに決まっているじゃない!」
名前を呼ばれるのを待っていたかのように、私達のもとにアイラが駆けてきた。
「パニシングじゃなくて、人間か守林人のシグナルだったんでしょ?これが本当だったら、パニシングによる侵食以降も地球に滞在し続ける人たちからなにか新しい発見があるかもしれないじゃない!」
「調査じゃないんだけどな・・・。」
鼻息の荒いアイラをたしなめるように私は答えた。
「調査じゃなくたっていいわよ。指揮官と一緒にいるだけでも新しい発見がたくさん生まれてくるの!だから、一緒に行動させてもらうわね!」
そこまで言われると、これ以上否定しようがない。
「仲が良くって羨ましいですね。それでは指揮官、出撃の準備を・・・・ってわっ!?」
あなたのことも大好きよー! と言ってセリカにハグを始めたアイラをおいて、私はその場をあとにすることにした。
部屋を出る直前にふと彼女たちの方を見ると、セリカがアイラの大きな乳房に窒息しそうになっていた。
「仲がよろしいようで。」
その言葉に、セリカが抵抗するようにピクリと耳を動かした。
グレイレイブンの待機室に入ると、2人はすでに準備に取り掛かっていた。
「話は伺っています、指揮官。」ルシアがいつものように真剣な目つきで言った。
「まだ出発前なんだし、もう少し気を緩めてもいいよ。」
「しかし、今回はリーがいませんし・・・。」
「ですから、なおさらリラックス、ですよ。」
リーフがルシアに声をかける。
「リーさんの抜けた穴は、ルシアだけでどうにかなるものではないです。だから私も頑張りますし、今回はアイラさんもいますから。」
「確かに・・・。お気遣い、ありがとうございます。」
ルシアの表情が、心なしか綻んだように見えた。
「アイラは構造体が持つセンサー以外にも、芸術家としての独自の嗅覚がある。こういった探索のときにはすごい役立ちそうだね。」
私がそう話すと同時に、アイラが待機室にやってきた。彼女の手には大きなバッグが2つ抱えられている。激しいハグの反動か、胸元の露出がいつもより激しくなっている。
「ちょっと、アイラさん!すごい格好になってますよ!」
リーフが顔を赤くしながらアイラに近づき、服を整える。
「ごめんごめん。ちょっと「お楽しみ」をしてきたから・・・♡」
その意味を曲解したリーフとルシアの顔が更に赤くなる。
「おいおい、誤解するようなことを・・・」
「なぁに?指揮官も私にされたかったの?」
意図的な発言か、それとも生粋の天然さが働いているのかはわからなかったが、とりあえずこれ以上会話を続けるべきではないことだけはわかった。
顔を赤らめつつ頭にクエスチョンマークを浮かべるアイラと目を丸くするルシアとリーフを横目に、私は黙って支度を続けることにした。
その後、無事空中庭園から北極航路連合のエリアへの移動が終わり、私たちは移動を開始した。
季節柄仕方ないが、非常に激しい吹雪が私達を襲う。
ルシアたちは温冷覚の感覚センサーを遮断しているため、白くしなやかな脚をのぞかせるスカートを履いていても全く問題ない。極論、全裸でも移動だけは可能だ。武器がないため何かあったら大変なのだが。
「指揮官、ヒートジャケットの充電は大丈夫ですか?」
リーフが私を気にして声をかけてくれた。充電残量はまだまだ余裕があった。
「念のため、バイタルもチェックしておきましょう。」
リーフが私の額に手を当てる。
その時、構造体とのリンクにジャミングが起きた。
通信異常を検知し、ルシアとアイラもこちらに寄ってきた。
「指揮官、大丈夫ですか!?」
私は声が出せなかった。
明らかに視界がおかしい。
・・・なぜだ?
なぜ彼女たちは皆裸になっているのだ?
額に手を当てているリーフの腕をたどる。程よく育った二の腕の付け根あたりには、きれいな腋とふっくらとした乳房が見える。
心配そうにこちらを見るルシアに目を向ける。武器を構えて臨戦態勢を取っているため、その股には軽く膝を曲げているために女性器の外見が完全に露出している。乳房もこちらから完全に見えており、乳首の主張がかなり激しい。
外敵から指揮官を守ろうと背を向けるアイラの背中からは、はみ出す大きな乳房と、いかにも安産型の尻が見える。乳房は強風によって風下方向に偏っており、時折乳首も確認できる。大きな乳房と尻、そして手に構える大鎌の主張はかなり強烈だ。
しかし、彼女たちの顔は至って真剣だ。
これは現実なのか、それとも・・・?