※この作品はR-18です。

寄生虫   作:Rオウ

1 / 7
第1話 帰省

「ごめんねぇ由紀美。今年は聡太を預けるような形になっちゃうけど」

 

「気にしないで、姉さん。家が賑やかになっていいわ。今年もよろしくね、聡太くん」

 

「はい、由紀美叔母さん、よろしくお願いします」

 

「あら? 由紀美、今年は聡太にお姉さんって呼ばせないの?」

 

「……まあさすがに30超えたらね、自分でもちょっとキツイかなと。それに去年はそれで凛の視線がすごく痛かったし」

 

 長時間バスに揺られて今年の夏も浜田聡太は叔母さんの家にやってきた。

 この家は母の実家でもあり、時期的に帰省ということになるが、今年は聡太だけ夏の始まりから夏の終りまで由紀美叔母さんの家に厄介になるのだ。

 

 久しぶりに顔を合わせた三十路姉妹が聡太を間に挟んで玄関で長々と話す間、聡太は母と叔母から誂(からか)われ続けて居心地が悪かった。

 

 やがて聡太の母が聡太の肩をぽんぽんと叩く。

 聡太が見上げると母がにっこりと笑う。

 相変わらず母と由紀美叔母さんの顔は聡太にも見分けがつかないほどそっくりだ。

 一卵性双生児って齢をとってからもこんなにそっくりなままなんだなと感心する。

 

 全然生活環境も違うはずなのに、大きなおっぱいも、細くくびれた腰もそこから拡がる大きなお尻まで体型から何から全て同じだ。

 これで髪型も同じであったなら見分けのつく人は誰もいないだろう。

 母さんは軽くパーマをかけたボブなのに対して叔母さんは長い髪を首の後ろで軽く結んでいる。

 

「じゃあ母さんはこれで帰るからね? 聡太、由紀美叔母さんに迷惑かけちゃだめよ? それに凛ちゃんと鈴ちゃんと仲良くするのよ?」

 

「分かってるよ、お母さん」

 

「じゃあ、もうバスの時間だから母さん行くわ。8月の末に迎えに来るけど、こっちで宿題はちゃんとやるのよ?」

 

「もう! そんなに念を押さなくても僕はちゃんとやるよ」

 

「ふふふ」

 

 そう言って、母親は帰って行った。

 またあのバスに揺られて何時間もかかるかと思うと母さんも大変だなと聡太は思う。

 

 手を振って別れを告げた由紀美叔母さんがにっこりと微笑んで、聡太の手を引いて家の中に入る。

 

「凛と鈴は多分もう少ししたら学校から帰ってくると思うわ」

 

 母親と同じ顔と同じ声で叔母がそう言った。

 最初からこうだったから、昔から、そして今もそういうものだと思って違和感は感じない。

 

「今日が登校日だったんですね。てっきり叔母さん家についたら鈴ちゃんに飛びつかれるかと思ってました」

 

「凛も鈴も聡太くんが来るのを楽しみにしてたからね」

 

 聡太は叔母さんの家のいつもの部屋に案内された。

 毎年帰省のときは一週間くらいしか泊まらなかったけど、今年はここに一ヶ月もお世話になるのだ。

 

 山登りも沢遊びも、母の目が届かないからなんでもやり放題でウズウズする。

 もちろん母親に言われたように宿題もちゃんとするつもりだ。

 そもそも学校の成績の良い聡太は、宿題を苦と思っていない。

 

 聡太は午前中、電車とバスの移動で長時間椅子に座って窮屈で仕方がなかった。午後はおもいっきり体を動かしたい。

 そうだ、午後は一年ぶりに川で泳ぎたいな。

 もう水泳パンツに着替えてしまおう。

 

「由紀美叔母さん、僕もう、水泳パンツに着替えるね」

 

「あらあら、気が早いこと」

 

 聡太は叔母の前で、Tシャツと短パン、そしてパンツまで一息に脱ぎ捨てた。恥ずかしさなど無い。

 由紀美叔母さんは母の妹で、しかも母親そっくりで見分けがつかないくらいだ。羞恥心など感じようもない。

 叔母の視線が自分のちんちんに向けられたような気がしたけど、どうでもいい。

 僕の裸なんか由紀美叔母さんは気にもしないだろう。

 

 なので全裸のまま、カバンの中に入っているはずの水泳パンツを探す。

 カバンの用意をしてくれたのは母親なので、聡太にはカバンの中のどのへんに仕舞ってあるか分からず水泳パンツを取り出すまで時間がかかってしまう。

 

 そんな聡太を横から由紀美が微笑ましそうにずーっと眺めている。

 

 

 

「いたあぁぁあああああ!!」

 

 聡太は背後から不意打ちタックルを食らって部屋の中に全裸でひっくり返ってしまう。

 庭先に現れた影が一瞬のうちに部屋の軒先から駆け込んで聡太に抱きついたのだ。

 

「聡太兄ちゃん、会いたかったぁ!!」

 

 聡太の腰に抱きついているのは真っ黒に日焼けしてショートカットがよく似合う鈴だった。

 颯太より学年は一つ下で、鈴は小学3年生で今は8歳だ。夏の終り、8月31日に9歳の誕生日を迎えるので一年のうち少しの間だけ颯太と鈴は同い年になる。今年は、夏の終りの鈴の誕生日まで聡太が滞在すると教えられてから、鈴のハイテンションが継続している。

 

「もう、鈴! 聡太がひっくり返ってるじゃない」

 

 鈴の後から現れたのは姉の凛だ。今年小学6年生になる。

 日に焼けた肌は妹の鈴と同じだが、長い黒髪を三編みにして落ち着いた印象がある。

 だけど今は大きな丸い目がくるくると楽しそうに動いていて、1年ぶりにやってきた従弟に会えて相当嬉しいようだ。

 

 だけど会えて嬉しいはずの颯太から戸惑いつつ少し目を逸したのは、聡太が全裸でひっくり返っているせいで股間のおちんちんが丸見えになっているからだろう。凛は去年まで聡太と一緒にお風呂に入っていたくらいなのに、今年は随分と態度が変わっている。

 聡太の小指ほどの子どもちんちんなど全く意に介さなかったのに。

 

 その娘の変化を目ざとく発見した由紀美叔母さんは娘の健全な成長を喜んで微笑んでしまう。

 今年12歳になる娘の凛はまだ初潮が来ていないが、胸が最近少し膨らみ始めたようだ。

 今年も聡太くんと一緒にお風呂に入るのかこれはちょっと面白くなってきたかも、と母親の立場と第三者的な野次馬根性がふと頭をもたげた。

 

 

 

 ◇◇◇◇◇◇

 

 

 

「じゃあ行ってきまぁす!」

 

 凛と鈴、そして聡太の三人全員が水着に着替えて家の敷地から飛び出していった。

 それを笑顔で送り出す由紀恵。

 

 近くを流れる渓流は夏はこの辺りの子どもたちの格好の遊び場だった。渓流としては穏やかな方で、村の歴史数百年を遡っても子供が溺れたなんて話は聞いたことがないのであまり心配はしていない。

 昔はもっと子どもたちが大勢いたが、今は少子化が進み、娘の凛と鈴を除けば小学校の生徒は数人しかいない。

 特に高学年には男子がいないため、凛や鈴にとって一番身近な男の子は聡太くんになる。

 

 自分の子どもの時のことを考えると少し寂しい話だ。

 

 ここは交通の便の悪い山間部の田舎の村だ。

 私と姉の子ども時代ですら、同年代の男の子の数は少なかったが、私たちにはあの人がいた。

 だけど凛と鈴には……かけがえのない思春期に気になる男の子すら身近にいないのは良い環境とは言えない。

 

 きっと男子が少ない環境だと凛も鈴もそのうち颯太くんを意識しだしてしまうかもしれない。だけど、もし凛か鈴が聡太くんを選んでしまった場合、どうしようかと思い悩んでしまう。

 まだそんな齢ではないし、進学して環境が変わったり、大人になる過程で多くの男性と出会うだろうから杞憂だとは思うが……。

 

 

 

 聡太くんも大きくなれば、父親と……あの人と似てくるんだろうか。

 亡き夫の面影を聡太くんにこっそり重ねてしまう自分の気持ちは娘二人にはとても言えそうもない。

 

 私でさえこうなのだ。

 ──姉は、聡太くんをどういう目で見ているのだろうか? 

 

 

 







 
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。