考えなさすぎるのは良くない、でも考えすぎも良くはない。
ゴールが見えたからこそ動けない、でも動かなければ辿り着けない。
結局のところ、女は度胸ですよ。
交わすキスはいつだって、熱く優しい。
口からお互いの熱が伝わり合い、身体の芯が焼けていく。
ああ、でも。これは永遠には続かない、続けられない。いずれは疲れ果て、終わってしまう。いつだってそれが、少しだけ寂しい。
――良くないな、全く。
余計なことばかり考えてしまう、こんな事でどうするんだ私は。
今この瞬間を、楽しもう。
あの日からずっと、私たちはそうしてきたんだから。
私はきっと、生涯忘れない。その眩しい眼差しを、その声を。ただ涙が溢れて、止まらなかった。
好きと伝えて、好きと返されて。それだけの、格好悪いやり取り。お互い顔をクシャクシャにしながら泣き合い、抱き締め合って。
私たちの幸福な、そして悩ましい日々はああして始まったのだ。
私は大喜くんが好き、大喜くんは私が好き。そんなシンプルな構図なら、それで良かったのだけれど。でも私たちの間には、蝶野さんがいた。大喜くんの事が好きで、私にとっても大事な後輩という――厄介なポジションに。
だからそう、大喜くんの姿が見えない時間は不安で仕方なかった。私がいない間に蝶野さんが大喜くんに迫っていたらどうしよう、なんて失礼なことさえ考えてしまったり。でも力尽くで遠ざけるとかそんなのも心苦しいし、大人気無さすぎる。
人を好きになるって、大変なんだな。
――まあ、そんな話なのだけれども。
「……バカップルね。正真正銘のバカップルの片割れが、ノロケ話聞かせてくるわ」
「聞くんじゃなかったぁ……」
私があれこれ悩んでいるというのに、幼馴染みとその妹は揃ってゲンナリした顔をしくさってくれた。いや、私だってあれこれ聞いてあげてるよね花恋。あと姉の友達って言う結構強めの立場にいる私に、信じられないアホを見るような目を向けるんじゃありません菖蒲ちゃん。
あとまだカップルではないのよ、面と向かって気持ちを確認しあったわけじゃない。たぶん恐らく、という段階。そうなるまであと一歩、という所。
そんな距離にいながらも、私はいまだにちょっと不安。蝶野さんがもし本気で押してきたら、周囲を巻き込んで自分達の交際を既成事実化出来るのだから。私の場合は色々立場もあって、あんまり公言できそうにないのに。
そして大喜くんは、蝶野さんを完全に袖には出来ない。というか蝶野さん、「千夏先輩を好きなままで良いし、付き合うとかは考えなくて良い。私が大喜を好きなだけ、それで良いよ」って考えらしいから振りようが無いんだそうな。あの子もあの子で相当だ、どうすれば良いのやら。
その辺を彼氏持ちの花恋と常時蛸足配線の菖蒲ちゃんに相談しているのに、その呆れっぷりはなんなんだ。
「とっとと付き合っちゃえば良い、って菖蒲何回も言ったよぉ。ちーちゃんが足踏みしてるだけでぇ」
いや、はい。そうなんですけど、ね。
親同士仲が良いし一緒に住んでるし、付き合うどころか明日「息子さんを私にください」とか言ったら由紀子さんは二つ返事で大喜くんをお婿に出してくれるだろう。本人は微妙な顔するかもしれないけど。それくらいに私たちは近くて、でも。
だけど、近いからこそ――怖い。
今の暖かな関係が崩れてしまうかもしれないし、それに万が一億が一――大喜くんが私に向ける気持ちが
「まあ、……ちーがそういう顔するのも分かるよ。私も健吾と付き合う前は、そうだったからさ。ずっと友達で仲良くて、それを失いたくないから保留し続けてた」
花恋はさっきまでの呆れ顔から、真剣な表情。そうか花恋、針生くんと小学校以来の友達なんだよね。高校二年生になって「友達」から「恋人」になった、その間にも色々と話は聞かされた。不器用だけど真っ直ぐに、手探りで進もうとしている幼馴染みを応援しようと、私もあれこれ世話を焼いたものだ。
役に立てたかどうか、それは分からないけど。
「だけどね、ちー。自分の気持ちを押し殺して過ごすのは、辛すぎるんだよ。ちーにはそんな思いしてほしくない」
それは、知っている。花恋がどれほど悩んだか、苦しんだか。側にいてあげられなくても、親友だからずっと感じていた。
だからこそ、こう言ってくれているんだ。ならば私は立ち止まってはいけない、心配をかけている花恋たちの為にも。
いっそ考えるのをやめてしまおうか、私は悩みすぎているのかもしれない。
菖蒲ちゃんも前に言っていた、動き終わってからゆっくり考えれば良いと。
ならば私は――。
すっかり階下は静まり返り、何の物音もしない。
外から射し込む月明かりだけが照す中で、私たちは見つめあう。と言うとロマンチックでもあるけれど、実際にはそんな美しいものではない。寝ようとしていた大喜くんをベッドに組み敷いている、それだけなのだから。
自分が何をしているのか、勿論分かっている。こんな夜這い紛い、というか夜這いそのもの。到底許されるわけがない、けれど。
今の私に必要なのは、きっとこの勢いだ。大喜くんを、
「あ、の……千夏先輩? えーと、あー……一体……?」
困惑しているであろう大喜くん、しっかし薄闇の中でもちゃんと可愛いなこの子は。まったく、うっかり和んでしまうじゃないか。
そうじゃない、そうじゃないんだ。
考えるな、感じるな。言ってしまえ。あとで何が起ころうと、それで良いから。
「好きです」
ただ四文字を吐き出した瞬間、頭の奥が沸騰するように熱くなる。
その熱は大喜くんにも伝わっているのか、その顔は暗がりでも分かるほどに赤くなっていく。
そのまま、永遠にも近い数瞬を経て大喜くんは、小さく口を開いた。
「は、……い。俺も、先輩が好き……です」
弱々しく、でも決意に裏打ちされたその言葉。それは私を決壊させるに、余り有りすぎた。
不意に視界は涙に歪み、身体の力が抜け落ちていく。それでも残った僅かな力だけで、私は大喜くんを抱き締めた。そして大喜くんもまた、涙を頬に伝わらせながら私を抱き返してくれている。
不格好で、滅茶苦茶で。それでも幸福に包まれて泣き続けていた私は、ふと気付いた。
何かが当たっている、と。
「……?」
抱き締めあう身体の、下の方。腰というか下腹部に、何やら硬く熱い何かがある。
何なのか確かめようと私が身体を僅かに揺らすと、大喜くんは小さく声をあげ気まずそうに目をそらした。
その態度が、――なんとなく私に理解させてくれる。ああ、そういう事か、と。
大喜くんは男の子で、だから当然その……そういうのが有るわけで。確か興奮すると何だか形が変わるとかなんとか、そんな風に聞いたような聞いていないような。まあ、大して興味を持ったことがないからぼんやりとしか知識はないけど。
つまり大喜くんは興奮して、私と何て言うか……そういう行為をしたいと考えているわけだ。そしてそれが恥ずかしくて、気まずそうにしている。
そっか、そうなのか。
再び大喜くんを抱き締め、顔を寄せあって。その頬にキスをして、そして。
「良いよ。……大喜くんがしたい事、して良いよ」
か細い月光の下で、私は大喜くんのベッドに横たわっている。脚を広げ、まるでおむつを変えられる赤ん坊のように。
こんな汚ならしい場所を他人に晒して良いものか、とは思う。思うけどでも、お互い様でもあるから。私も大喜くんも一糸纏わぬままだから、丸見えなのは向こうもだ。
大喜くんのその……オトコノコは暗がりの中でもありありと分かるくらいに、その存在を主張している。太く反り返り、今にも破裂しそうだ。
あれが入ってくるのか、それはちょっとだけ怖いかな。でもまあ、なんとかなるだろう。菖蒲ちゃんなんて小学生の頃からいろんな男子としてたそうだし、小学生に出来て高校生に出来ない道理はない筈だ。……多分、きっと。メイビー。
イメージを膨らませながら、私は大喜くんが入ってきやすいように
「あ……っ」
想像以上の速度で込み上げてきた快感に、思わず声が出てしまう。普段はあんまり弄らないし、ちょっと触ったくらいでそこまで気持ちよかったりはしない。でも今日は、いつもとは違う。違いすぎる。
このまま掻き回したら、どんなに気持ちいいだろう。一瞬脳裏を過った誘惑はでも、すぐ頭の奥へと消えていく。
オナニーがしたいんじゃない、私は大喜くんとしたい。セックスを、するんだ。
隙有らば深くへと入ろうとする指をどうにか食い止めながら、私は大喜くんへと呼び掛けた。
「ね、大喜くん。見える……かな、ここ……。ここに、入ってきて…………」
言葉は無く、聞こえたのはただ息を飲む音だけ。
それでも意思は伝わっているのだろう、大喜くんは意を決したようにそっと私に重なってきた。
ずにゅり、柔らかい圧迫感と共にやって来る僅かな痛み。身体の中心部へと異物が差し込まれてくる非日常の感覚は、でも決して不快には思えない。むしろ熱くて優しくて、とても心地良い。もっと奥まで私を知って欲しい、もっと根本まで大喜くんを知りたい。その想いだけで、胸がいっぱいになりそうだ。
――いや、でもま。和んでばかりもいられないかな。大喜くんが、暗い中でもそれと分かる程に追い込まれた顔をしているから。
男の子が、というかオトコノコがどういう風に
いつもそうなんだな、大喜くんは。優しくて真面目で、でも何処かで空気読めなくておバカさん。人の事は言えないけど、さ。
気を遣って我慢して、それで潰れていく。そういう所だけ、似ているのかな。
「大丈夫、だよ。好きな風にして良いから、ね」
重なりあう身体を掻き抱いて囁くと、それがきっかけになったように大喜くんの身体が大きく震えた。そしてそれは、私の中でも巻き起こる。
「あ、あー……、あぁ……」
拍動と共にお腹の一番深い場所目掛け、何かが迸っていくのが分かる。きっとこれが射精、――なんだろうな。快感に呑まれてく大喜くん、そして私の身体も膣内射精の快感に酔わされてしまう。胎内で弾けていく一滴一滴が、快感を刻み込む。一秒未満の絶頂が、絶え間無く押し寄せてくる。意識がズタズタに切り裂かれていく、あまりにも暴力的な快楽がそこにある。
目の前は闇すら染める白い霧がかかって、もうなにも見えない。
ただただ腕のなかにいる大切な人を抱き締めながら、私は獣のような声で喘いでいた――。
「――で。告って押し倒して、そのまま一発ヤッちゃったと」
「菖蒲でもそこまでしないけどなぁ……。ちーちゃんドスケベすぎー」
ぬう。現在私は友達とその妹に白い目を向けられ、ちょっとだけ居心地悪い思いをしている。
背中を押してもらったしせっかくだから頑張ったのに、この連中と来たらまったくもう。
まあ、はい。そりゃ考え無しでしたとも、それは分かってますとも。
でもまあ、どうにか進展させたんだから私を誉めて頂きたい。頑張ったよ私。
実際大変だったのは、その後だったし。
流れとは言え
……最終的には「「全部大喜(くん)が悪い!!」」ってことで、二人息を合わせて大喜くんを殴って終わったんだけどね。うん、だって悪いのは大喜くんだもん。私悪くないもん。
とは言え同居の事とかを暴露しようとしなかった辺り、蝶野さんも悪い子じゃないんだよね。次の恋が上手くいくように、祈ってあげる気持ちも無くはない。
「たまに思うけどちーってさ、特殊なタイプのアホだわ」
やれやれ、と言わんばかりの態度で溜め息一つ。でも花恋の顔は、呆れてはいるが微笑んでいた。
ああそうですよ、私なんかそんなもんですよ。
幸せなんだから、それで良いさ。
毎晩の事ながら、この時間は待ち遠しい。
長いキスを経て、重なりあう瞬間はやっぱり幸福だから。
それに今日は、ちょっと趣向を変えていくつもりだし余計にそう思うんだろう。
唇を離し、でもいつもとは違って私は大喜くんに背を向けた。そして四つん這いになって、――お尻を高く突き上げる。
「あの、……まあそりゃ興味ありますけど。ホントに良いんですか?」
自分でしてみたいって言っておきながら及び腰な大喜くんに、軽く蹴り真似をしつつ。私は手をお尻に回して、その肉を押し拡げて
ここでセックスする、というちょっとだけ過激なプレイの話をしたのはついこないだ、色々と
あれこれと準備して、お腹の中もキレイにして。こっちも勿論経験済みの菖蒲ちゃんに、お尻向けのローションとかも教えてもらった。むしろあの子がしたことないプレイってあるんだろうか、一通りぜんぶやってそう。
上手くいくと良いけど、まあ失敗してもちょっと痛い思いをする程度だ。それくらい、なんでもない。
「ほら、早く。大丈夫だから、さ」
お尻を振って誘うと、想像通り照れながらもやって来る大喜くん。素直で大変よろしい。
そしてグッと押し当てられたオトコノコの先端が、お尻を押し拡げて入ってくる。オンナノコに比べて入れにくそうなものだけど、お風呂場でしっかり解したせいか割合すんなりと。
普通は絶対に何かが入ってくることなんか無い、穢れた場所を愛されている。その事実は興奮するけど、でもちょっと腰が辛い感じ。いやこれは、背筋の方かな?
あとはやっぱり使う筋肉が違うからか、何だかやたらと呼吸が荒くなってしまうのが少し恥ずかしい。それにローションを入れすぎたのか、さっきからぱちゅんぱちゅんとお尻がリズミカルな音を立ててるのも。
頭の芯が痺れていく、この感じは悪くないんだけど。
後ろを向けているから大喜くんの様子は伺えないけど、一心不乱に腰を振っているしきっと気持ちいいんだろうな。
……今度大喜くんのお尻も使ってみようかな、花恋は針生くんにしてみたらしいし。ただ「これ以上やられると、俺メスになる」って、二回目以降は拒否されたとか。
まあ、良いや。考えるのは後で。
「ね、大喜くん。どうかな、こっち。ちゃんと気持ちいい?」
「は……いっ、千夏、先……輩は全部、気持ちい、ぃですっ」
本当に大喜くんは素直で真っ直ぐな子だ、こうやっていつも本気をぶつけてくれる。
このまま大喜くんが一回射精したら、一緒にシャワーを浴びてキレイにしようかな。そしたら今度は、オンナノコの方を愛してもらおう。どっちが気持ちいい?って聞いたら大喜くん困るだろうな、でも困った大喜くんも可愛いから。
二回戦三回戦、疲れきって動けなくなるまで愛し合おう。
抱き締めあって眠って、朝になったら二人で朝練に行く。部活も恋愛も、大事なことに変わりはない。どちらも完璧に、とはいかないかもしれないけど。それでも、二人一緒にいれば大丈夫。
今日も明日も明後日も、この幸せな日々はきっと終わらない。
相変わらず菖蒲ちゃんがビッチ枠です、だってまだ分かんないし……。