同作をpixivにも投稿しています。
注意点
二次設定、独自設定、独自解釈等があります。
オリキャラ(名無し男)との絡みになります。
1.
「ふふん、ふん、ふーん……」
隣で楽しそうに鼻歌を奏でながら、久侘歌は夕焼け特有の物寂しさを払ってはブーツの足音を軽快に響かせ、翼や尾羽をふりふりと揺らす。
人里での買い物を終え、久侘歌の家がある妖怪の山へと帰る道すがら、彼女はいかにもご機嫌と言った様子で歩を進めていた。その姿ははしゃぐ子供のようで可愛らしくもあり、ニワタリ神の白い象徴達が橙色の光を浴びて輝き、神々しくもあり。
「さっきから随分ご機嫌だけど、何か良いことでもあった?」
「おやおや、忘れてしまいましたか? 私でも覚えているのに」
にこにこと笑顔で隣を歩く久侘歌にそう尋ねると、彼女は自信ありげにふふんと鼻を鳴らし、一歩前にとんと踏み出してこちらを振り向く。
「最後に寄った魚屋さんのおじさん、何て言ってました?」
後ろ向きに歩きながらの問いに自分の右手にある、買い物籠の中の魚を見やり、ふむと記憶を振り返る。
まず今日のお勧めを聞いて、店主に『こいつがお勧めだ』と威勢のいい声で言われ、それに久侘歌が興味を示すと、『今ならおまけもするよ』と景気よく続き、それなら――と、会計をして……。
ああ、もしかして。
「会計の時に言ってた、いつも一緒でおしどり夫婦だね、みたいなやつ?」
すると、久侘歌は「正解です」と笑顔で頷く。あの店主の豪快で大袈裟な性格上、あまり深く考えての発言ではないと分かっていても、自分達をそう評して貰ったのが余程嬉しかったらしい。
「まだ夫婦ではないんだけどな」
自分達は恋人同士だし、いずれは、と思ってはいるが、まだ正式にその関係までは進んでいない。
苦笑しつつ歩く自分の隣に、久侘歌はまたぴょんと軽く跳ねて並ぶと歩幅と向きを合わせて、一緒に歩いていく。
「まあまあ、険悪に見られるよりも仲睦まじい方がいいではありませんか」
久侘歌がそう言うと、彼女の頭から「ぴ!」と高い声がした。
「ふふっ、この子もそうですよって言ってますよ」
久侘歌の、ワンポイントと呼称するには少々大きい赤い髪の上で、一匹のひよこが、小さな両翼を持ち上げていた。
この子は神の使い見習いで、久侘歌の門下生とも言うべきひよこ――名前はまだ頂けていないらしい――だが、まだ人語を喋れないので久侘歌の通訳が必要だ。しかし、最近は自分も大凡ながら言いたいことが分かってきており、確かに先の鳴き方は彼女の発言を肯定するものだった。
「久侘歌」
それならと荷物を持っていない手を久侘歌の方に差し出すと、彼女は頬を少し緩ませて、自らの手を絡ませて繋ぐ。
そうして連れ添い歩く自分達は、側から見ればどんな関係に見えるだろうか。それは、きっと。
家へ戻った後も、自分達は食事の準備から晩ご飯に風呂と、その大半を二人と一匹、いや、三人で過ごした。但し、風呂だけは全員一緒では手狭なので、まずは久侘歌とひよこが、その後に自分がと分かれてだが。
「あれ? あの子は?」
風呂から上がって居間に戻れば、そこには久侘歌が居るのみで、ひよこの姿がなかった。
「貴方がお風呂に入ってる間におやすみしましたよ。明日、朝早いですから」
「ああ、そういえば明日からしばらくは閻魔様のところだったっけ」
「はい。朝一番で是非曲直庁に」
久侘歌は居間の片隅に置かれた、通り道用の小さな穴が空いた蓋つきの箱を見やる。きっと、中に敷かれたクッションの上で静かに寝息を立てているのだろう。
それなら心配いらないな、と久侘歌の隣に腰掛ける。居間の中央に置かれた卓袱台の上には、既にお茶の入った湯呑みが二つ用意されていた。自分が風呂上がりに喉を潤す際、あまりお酒は飲まないと知っている久侘歌だからこその気遣いがあった。
「ありがとう」
「いえいえ」
お礼を言ってから、有難く茶をくいと呷る。ほんのりと苦い、冷たい爽やかな感覚が体を満たしながら腹へと沈んでいく。久侘歌も自身の湯呑みを両手で持つと少し傾け、ふう、と静かに息を吐いた。
「さて、どうする? 俺達も今日は早めに寝る?」
「ですねぇ。それで、朝にあの子を見送ったら、お散歩でもしましょうか。明日はお休みですし、ゆっくり過ごしたいですね」
久侘歌はもう一度くいと茶を呷って、こちらを上目遣いに見上げる。その頬は、茶の冷たさに反してほんのりと赤く染まっていた。
「でも、寝てしまう前に、しましょうね? 今日はあの日ですから」
「ああ、そうだったの?」
「はい。危険日、ですよ」
久侘歌は自らの下腹部にそっと手を添えて、小さく頷く。そう、彼女の言う“あの日”とは、所謂危険日のことである。
人間と妖怪のような他種族同士での妊娠のしやすさは、その種族にもよるが危険日でようやく人間同士の妊娠しにくい日に近いくらい、というケースが多い。それも、神様ともなれば、人間と見目の異なる部分を持つ妖怪以上に難しいらしい。
そうなるともはや、危険とは一体、とも思うが、そういう事情もあってそれこそ夫婦のように一緒に過ごし始めてからは、子作りに励む日々を送っていた。
そして、危険日となれば言わば頑張りどころでもあり、気持ち的にもやはり高まるものがある日だ。
「ですから、今日で授かるくらい、沢山愛してくださいね?」
こちらの体にしなだれかかり、普段の溌剌とした声でなく、しおらしい声色で言う久侘歌。彼女から伝わる温かな体温と、仄かに漂う風呂上がりの髪の甘い匂い。広げた白い翼もふわりと添えられて、柔らかな感触が心地良い。
日中の明るく元気な様子とは違い、ここで押し倒したくなるほどに淫靡な雰囲気を纏う久侘歌の姿に、心臓がどくんと跳ね上がる。
しかし、ひよこが寝ている以上それはぐっと堪えて、湯飲みに幾らか残った茶を一息に全て呷る。腹に沈む冷たさが、体中をくすぶる熱に温められ溶けて消えた頃、改めて久侘歌を寝室へと誘った。
2.
「それでは、よろしくお願いします」
「お願いします」
綺麗に畳んだ衣服を傍らに置いて、整った布団の上に腰掛けた自分達は、生まれたままの姿で久侘歌の音頭に合わせて軽く頭を下げ合う。
お互いに相手への敬意と思いやりを忘れないために、といつしか恒例となった、房事前の挨拶。それを終えると久侘歌は柔和に笑ってそっと後方に倒れ、早速布団に身を預ける。
「重ねてになりますが、前戯の方もお願いしますね。いつも通り、貴方のお好きなだけして頂いて構いませんので」
非常に魅力的な文句とともに差し出される、久侘歌の極上の肢体。身長は女性としては平均ほどながら、乳房は平均では収まらないくらいとなかなかに実っており、神様とはいえ溌剌としてあどけない雰囲気を持つ性格と成熟した肉体とのギャップを生じさせている。お腹周りは健康的にきゅっと引き締まってくびれがある一方、お尻はほんのちょっとだけ肉が乗って可愛らしい丸みがありと、非の打ち所がない体つきだ。
そんな体躯の下半身、すらりとした脚の付け根に陰毛はふわりと僅かに生えるのみで、その僅か下方には、今日までの自分との交わりの深さを思わせないほどに幼げな外見をした、まだ綻びの見えない一筋の亀裂がある。
そして、やはり目を惹くのは、ほんの少し黄色の混じった白い翼と尾羽だろう。久侘歌が人間とは違う種族だとはっきりと伝えるものながら、忌諱の気持ちは一切湧き上がらず、むしろ神々しさに魅入られてしまう。
今日のような危険日に行う性交は、久侘歌の膣内に一滴でも多く精子を注ぐため、彼女からこちらへの前戯はあまり出来ない。多少弄ったりはしても、射精までは至らないのが殆どだ。
そのせいか、『自分ばかりしてもらうのも悪い、それならせめて』と、彼女はこちらが満足するまで前戯に付き合ってくれる。
これから久侘歌を、愛する女性を孕ませるための性交をするのだと考えるだけでも相当なのに、好きにしていいとまで言われれば、毎度のことながら早くも心臓の鼓動は高鳴り、愛欲が大きく湧き上がっていく。
その昂ぶりに身を任せ、久侘歌にがばりと覆い被さる。頭一つ分しか離れていない、間近で見る久侘歌の表情は優しい微笑みを湛えているが、赤い瞳には既に情欲の炎が小さく灯っていた。
そんな久侘歌の肉体に早速――と行く前に、まずは彼女の唇に自らの唇をそっと触れ合わせる程度のキスをする。
「んっ……。私からも、お返しです」
すると、向こうからもちゅっと軽い口付けが返って来て、久侘歌は小さくふふっと笑う。
勿論、彼女の肢体を早く味わいたい気持ちはある。でも、どうせ時間はたっぷりとあるし、本人が付き合ってくれると言うのだから、何も焦る必要はない。
なのでお次は、久侘歌の少し黄色がかった白く柔らかな髪に右手を伸ばし、髪を指で梳いていく。
「あっ、ふぅっ……」
風呂を終えてしばらく経っているとはいえ、水気の残滓に幾らか纏まった髪の毛をほぐす度、指の間を白糸がさらさらと指の間を流れる。同時に、侘歌は気の抜けたような声を漏らし、髪に乗せた甘いシャンプーの香りがほんのりと舞う。
向かって左側の前髪から、側面、頭頂部と手櫛を入れる位置を少しずつずらし、また前まで指が戻ってきたところで、彼女の頭髪でも特に目を惹く、赤く色付いた部分に手を沈ませる。
普段はもこっとしているが、他と同じく風呂上りで少し大人しくなったそこを、わしゃわしゃと混ぜるように手を動かしては、手櫛で乱したばかりの髪の毛を整えていく。
「あっ……、ん、ん~……」
鼻にかかった甘えた声を漏らして、頬を緩める久侘歌。その姿は見た目以上に幼く見えて、とても庇護欲をそそられる。
「こうやって弄られるの、好きだよね」
「だって、気持ちいいですもん」
頭髪を綺麗に整えるだけなら櫛を使った方が効率がよく、そもそもこんな風にかき乱す必要もないが、彼女はこの一連の行為がとても好きらしい。
「まあ、俺も好きだけどね。久侘歌の髪、触り心地凄くいいし」
「ふふっ、そうですか」
もっとも、自分も好きだと返すと、彼女は嬉しそうに笑う。
それからしばし、久侘歌の髪をわしわしとかいぐりしていたが、流石にずっと続けるわけにもいかないので、そっと右手を離す。
「あ……」
久侘歌は心地良い時間の終わりに切なげな声を零れさせるが、その半端に開いた口を再びの口付けで塞いでやると、また甘えた鼻息を漏らす。
そのまま続けざまに二回、三回と啄みを真似たキスをした後、次は口元へ、次は鎖骨近くへと、唇を落とす位置を少しずつ左斜め下へと下げていく。
飛び飛びに道筋を描く口唇がやがて辿り着いたのは、男なら誰しもが夢中になる柔らかな膨らみ。仰向けの体勢ながらあまり形の崩れていないハリのある柔肉は緩やかな山を思わせ、その乳丘の頂点では、鮮やかな赤を示す髪色や瞳の色とは違う、肌の白さと溶け合ったかのような色の薄い桃色の突起がぷくんと膨らんでいた。
そんな、美しくも可愛らしい乳首に、近付けた唇でキスをする。
「んっ、あっ、はぁっ……」
その口付けに合わせ、右手でも反対の乳房を柔く鷲掴む。手の平から少し溢れるボリュームを持った乳肉は程よい弾力を返し、それを受け止めてくれる。
魅力の詰まった乳房を右手で揉みほぐしてはたぷたぷと手の中で弾ませて、その質感を愉しむ。五指に吸い付いて伝わって来る、柔乳の感触は幾度味わっても夢中になってしまうもので、それは今日も変わらない。
勿論、その間も乳首には唇に行っていたようなバードキスを繰り返す。但し、今回は数回の後に止めたりはせずに、口内に乳頭を含ませたまま、舌をそこへ触れさせる。
「はぁんっ! ……ん、あっ、ぁん……」
唇よりもぬめる生暖かい粘膜との接触に、久侘歌は高い声を上げる。だが、不意に溢れてしまったのが恥ずかしかったのか、すぐにそれを抑えると静かに感じ入る声に変えて、身を捩って快楽に身を委ねる。
久侘歌の可愛らしい反応に自分も気をよくしつつ、手と口で乳房を味わい続けていると、次第に双丘の頂点は固く尖り始め、存在感を示していく。
そんな乳突起を、指では摘まんで軽く捻るように捏ねてやり、口では唇を乳輪に張り付かせて咥え込み、ちゅうちゅうと吸う。
「あぁぁっ、んっ……! もうっ、私のお腹を大きくする前に、貴方が赤ちゃんになってどうするんですか」
久侘歌のその言葉だけ受け取れば相当に呆れた様子の台詞だが、口調は穏やかな笑いが多分を占めており、こちらの頭を掻き抱いた手にも、制止の意図はなさそうだ。
なので、指先で乳首を転がすのも口内で味わうのも一切手を止めずに責め続ける。
「はぁっ、あんっ……! でも、もしも赤ちゃんが出来たら、こんな感じなのでしょうか。予行練習にしては、んっ、あぁっ、些か大きすぎる気もしますけれど」
久侘歌は嘆息しながらも、添えた右手で頭をよしよしと撫で始める。穏やかな口振りと、優しい手つきから齎される温かさは、元来の柔和な気質も合わせて非常に心落ち着くものだった。
乳房への口愛撫はあくまで前戯の一環のつもりだったものの、子が産まれるよりも一足先に味わう久侘歌の十二分の母性に思考がふわふわと浮つき、すっかり蕩けてしまう。
彼女の言う通り赤子よろしくまだ出はしない母乳を求めて、ちゅぷっ、くちゅ、と水音を立てて乳突起をしゃぶる。手では乳肉をむにゅむにゅと揉みしだいて感触を味わい、固く尖った乳首を指先で弄り、その度に上がる彼女の少し高い嬌声に聞き惚れる。
このまま延々と浸っていたいくらい、心地良い時間。だが、これだけしていても当初の目的は果たせぬと、乳房から口を名残惜しくゆっくりと離して、久侘歌の緩い拘束からも抜け出して彼女の瞳を見やる。僅かに潤んだ赤い眼は、こちらをじっと、暖かく見つめていた。
「もうおっぱいはいいのですか? 欲しければまだ構いませんよ?」
「……正直に言えばもっとしてたいけど、ちょっと止めどころが無くなりそうだから」
小首を傾げて、唾液に濡れた自らの乳房をぽよんと軽く持ち上げた久侘歌にそう返すと、彼女はくすくすと笑い、撫でる先が無くなって空いた右手を淫唇へと持って行く。
「では、次はこちらですか?」
「うん。でも、その前に」
自分も乳房を弄っていた右手をお腹、へそと滑らせ、同じ場所を目指す。しかし、その一歩前で一度手を止めて、下腹部を緩く撫でさする。
「ん……、はあぁっ……」
まだもう少し先だが、これから子種を注がれる箇所へのお腹越しの愛撫に、久侘歌は静かに息を吐く。
二人の遺伝子が交わり合った受精卵を育てる、大事な器官である子宮。孕ませる行為直前のこの愛撫は、ここに子を宿すのだと強く意識してしまうのか、久侘歌は早くも表情をほんのりと蕩けさせ、期待に満ちた熱っぽい視線を送って来る。
「そんなに撫でちゃ駄目ですよ。……もう、かなりうずうずしてるんですから」
久侘歌はこちらの手に右手を重ねると、普段の快活な様子を思わせない――いや、普段との落差があるからこそより引き立った――妖艶な微笑みを見せた。
神様としての神気が上乗せされた、人ならざる者ゆえの妖しさに魅せられてごくりと生唾を呑み込み、お腹越しに子宮を撫でていた手を更に下に滑らせる。
ほんの少しだけ生えた柔らかな陰毛を通り過ぎ、秘唇に指先が触れる。既にそこは淫靡に彩られるのを待ち切れずに垂らした涎でぬらりと濡れており、まとわりつく粘液の熱さが彼女に魅了されて浮ついていた気を幾らか戻す。
「んっ……。優しく、お願いしますね?」
久侘歌の言葉にしっかりと頷きを返してから、まずは淫核へと手を伸ばす。これだけ濡れていればすぐに膣へ入れても良さそうだが、それではあまりにも味気ない。
柔らかな媚肉の中でも硬さを携えたクリトリスを、可愛がる気持ちを込めて、大事に愛でてやる。指先でソフトタッチを繰り返して弱い刺激を何度も与えては、指で軽く圧したまま円を描くように捏ね、敏感な秘芽を言われた通り優しく弄ぶ。
「んっ、くぅんっ……。ひうっ! あっ、はぁぁ……」
久侘歌は真っ赤な瞳を潤ませてきらきらと輝かせ、半端に開いた口から溶けそうなほどに甘ったるく色付いた吐息を漏らす。
溌剌として澄んだ通りのいい声が、時に人妖に対し教えを説き導く声が、今は自らの法悦を伝えるためだけに使われている。それも、翼をぱたぱたとはためかせ、鶏ないし鳥というよりも子猫や子犬を連想させる高い声を響かせながら。
「あっ、んっ! あっ、ああぁぁっ!」
やがて、久侘歌は一際大きな啼き声を上げて、体をぎゅっと強張らせる。そして、全身をだらんと弛緩させると、腰をかくかくとだらしなく揺らす。絶頂を迎えたのは明白だった。
ぼんやりとした表情でこちらを見つめ、荒い呼吸を繰り返す久侘歌の頭に手を伸ばして、髪を緩く梳いてやる。すると、彼女は表情を少し落ち着けて、ふわりと口角を緩めた。
「……っ! あっ、はぁあっ……」
だが、淫核を弄っていた手を下へ滑らせて垂れていた愛液を指先に纏わせ、濡れそぼった膣穴へ中指をぬるりと潜らせると、久侘歌は驚きの声とともに潤んだ瞳をこちらを向ける。
その顔は快感の余韻を残しながらも困惑の色も見て取れて、さながら「まだするんですか?」とでも言いたげだ。
そんな半端に開いた久侘歌の口元に唇を近付け、そっと塞ぐ。
「ん、んっ……」
こちらが顔を少し傾けて斜めにした、久侘歌が好む角度でのキスを彼女はすぐに受け入れて、向こうからも啄むようなキスが返ってくる。
それに合わせ、膣内に挿入した中指も更に奥へと進ませていく。気分はもとより、肉芽での絶頂を迎えて身も心も出来上がった膣内は、指一本とはいえ抵抗なく指を根本までしっかりと呑み込む。
久侘歌が言った、疼いているという言葉に嘘偽りはないようで――もっとも、疑ってもいなかったが――、媚肉は指全体を引っ切り無しに締め付ける。これほど待ちわびていた膣壺に、精液なんて出はしない指を挿入したのは少し悪かったかなと思いながらも、その分気持ちよくしてやろうと指を動かしていく。
「んっ、ん……。あむ、あっ、ん……!」
指を軽く前後に出し入れしたり小刻みに揺すり、快感を与えつつもこれからの本番のために膣内を柔らかくほぐす。肉壁を摩擦し、ひだに溜まった愛液が攪拌されて蜜壺はぐちゅぐちゅと淫らな水音を奏で、静かな夜の寝室に艶を添える。
その音は自分だけでなく、久侘歌にもしっかりと聞こえているのだろう。それが恥ずかしいのか、どれだけ膣内を掻き回されようともバードキスを止めなかった彼女の動きも鈍くなってしまい、やがて殆ど口付けが返ってこなくなってしまう。
なので、その羞恥や強張りを少しでも取り除いてやろうと、彼女の体を包むように覆い被さり、左手は頭に手を回してよしよしと撫でてやる。
「……ちゅっ、ん、あむっ、ちゅぷっ……」
すると、久侘歌の強張りは徐々にほぐれていき、向こうからもこちらの頭に手を回して緩く抱き付いてくる。これくらい積極的にしてくれるならと、ここまでこちらが握っていたキスの主導権を彼女に完全に譲り、自分は指愛撫に専念する。
膣道のひだを丁寧になぞっては指先で媚肉を圧し、指を軽く曲げて膣壁を小刻みに掻いてやると、キスの繋ぎ目に溢れる嬌声が大きくなっていく。
「……んっ、ちゅっ、あん、っ、ぁむ、ぁぅ……!」
それでも熱心な口付けを止めない久侘歌の秘裂を指で愛していると、彼女は一瞬だけ、今までよりも僅かに大きく体をびくっと跳ねさせた。その反応に、恐らく、と思い、久侘歌の頭を撫でていた手の指先で軽くとんとんと背中を叩く。
言葉を用いない、たったそれだけの行為ながら、こちらの意図は伝わったようで、久侘歌もこちらを抱く手の強さを僅かに上げる。
それを受けて、膣壁を撫でていた指先の動きをほんの僅かに強くする。それは、言うなれば最後の一押しとして。
「んっ! あっ、んんっ~……!」
その瞬間、久侘歌はくぐもった声を上げて、二度目の絶頂を迎えた。それにより膣内が収縮して指を柔肉できゅうと締め付けてはびくびくと脈動し、指愛撫の邪魔にならない程度に広げた脚を快感の余韻に震わせる。
寝転んだまま、うっすらと汗の浮いた乳房を呼吸に合わせて上下させ、はあはあと荒く息を吐く久侘歌。彼女には絶頂の余韻にゆっくりと浸ってもらい、その間に自分は体を起こして指をそっと引き抜く。
指には白く濁った愛液がべったりとこびり付いており、収めていたものがなくなった膣穴はゆるりと閉じたかと思えばぱくぱくと何度も開閉を繰り返し、そのたびに奥から粘っこいどろりとした蜜を溢れさせて、布団に濃い染みを作っていた。
「久侘歌、気持ちよかった?」
辺りには久侘歌の、色艶に満ちた発情した甘い香りが溢れ、孕ませたいという牡としての本能と情欲を強く煽ってくる。けれど、今はそれ以上に庇護欲が勝り、弱々しく肢体を投げ出す久侘歌の頭から頬をさらさらと緩く撫でながらそう尋ねると、彼女はその手を取って頬擦りし、甘える瞳をこちらに向けた。
「とても、気持ちよかったです……。でも、その……」
「うん。じゃあ、しようか」
言葉を濁らせて少し視線を下げた久侘歌が何を言いたいのかは分かっているし、自分ももう我慢は出来ない。なのでそう返すと、久侘歌は、はい、と小さくともしっかり頷く。
いよいよか、と息を呑み、彼女の体に再び自らを重ねるべく体勢を変えようとした瞬間、久侘歌は「待ってください」と呟いた。
「私が上になってもいいですか?」
「……大丈夫? イッたばかりで疲れてない?」
「大丈夫ですよ。むしろ、次は私の番だって思うとやる気満々です!」
胸の前で拳をぎゅっと握って、張り切った様子で言う久侘歌。そんな彼女の様子に少し頬を緩ませながらも了承を返し、久侘歌の指示通り布団に体を横たえる。
「ふふっ、○○さんの方も、とろとろってしてますね?」
久侘歌はぴんと天井を指してそそり立つ陰茎に顔を近付けて目を細めると、早くも先端で珠を作るほどに溢れた我慢汁を指先で崩して、亀頭にすりすりと塗り付ける。
細い滑らかな指に敏感な亀頭を撫でられ、今日初めての性器への刺激につい腰を少し揺らしてしまうと、久侘歌は根本を緩く掴み抑え、先端にちゅっとキスをした。
「もう少しだけ我慢ですよ。これから、いっぱい気持ちよくしてあげますから、ね?」
久侘歌は体を起こすと布団に膝立ちになってこちらの体の上に跨り、分身の根本に淫唇を触れ合わせる。そして、肉幹に手を添えると、自身の下腹部に押し当てた。
「こうしてみると、私の子宮にちゃんと届いているんだって改めてよく分かりますね。大体この辺りですから、ばっちりです」
肉幹を押し当てた下腹部を下から指でなぞり上げていき、亀頭の先端よりもやや下で止めると、そこに線を引くかの如く指を横切らせる久侘歌。
自分が膣内射精をすれば、精液はしっかりと彼女の子宮内に一滴も余すことなく注がれる。それをお互いに再確認したところで、久侘歌は肉棒の根本をしっかりと抑えると、腰を持ち上げて割れ目と先端を触れ合わせた。
たっぷりとほぐされて大量の蜜を滴らせた秘部は熱く、膣穴にぷちゅりと亀頭が押し当たると、一足先に先端だけを飲み込んだ。
「では……」
久侘歌は静かに、たったそれだけを呟くと、腰をゆっくりと下ろしていく。先程までの明るい調子は鳴りを潜めており、これから本当に子作りをするんだと、この交わりで孕むかも知れないことへの緊張を確かに感じさせた。
「ん、んっ……」
久侘歌の胎内に繋がる道を、怒張が少しずつ押し広げて進む。亀頭からカリ、肉幹と徐々に姿が見えなくなっていくのに合わせ、それらに粘液を湛えた温かいひだがそこかしこから絡み付いて、早くも快感を送り込んでくる。
「あ、あぁっ……!」
やがて、亀頭は最奥、子宮口へと辿り着くと、久侘歌はぶるりと全身を僅かに震わせる。自分も、既に味わっている快感に加え、それ以外の感情でも背筋がぞくりと震えた。ここが、久侘歌が自分との子を宿す場所。これから、子種を注ぐ場所。こうして危険日に交わるのも初めてではないのに、毎回強く意識してしまうのは雄の本能だろうか。
「ん、はぁっ……。やっぱり、○○さんのおちんちん、危険日はいつもより大きい気がしますね」
「久侘歌も、いつもより狭い気がするよ」
「両方かも、ですね」
「だね」
二人して言い合い、小さく笑い合う。一旦ここまで収めればもう先程までの神妙な様子はなく、久侘歌は穏やかに微笑んでいた。動く気配がまだ無いのは、本人が言ったように普段以上に敏感な膣内に、陰茎の感覚が馴染むのを待っているのだろう。
こちらも経験則でそれは分かっているので、催促せずにじっと待っていると、久侘歌はこちらに向かって両手を伸ばす。それをこちらからもそれぞれ両手を伸ばして繋ぎ絡ませて応えると、彼女は嬉しそうに頬を緩ませた。
「それでは、沢山して頂いた分、お返し出来るように頑張りますね」
久侘歌は握り合った手の力をほんの僅かだけ強め、腰をゆっくりと上下に動かし始める。膣肉で分身を優しく撫でる緩やかな速度ながら、往復の度にじわじわと性感と感覚が高められ、密着する膣内の感触や熱が更に大きく伝わるようになっていく。
次第に久侘歌の上下運動は激しさを増し、腰だけでなく全身を跳ねさせて陰茎を扱き始める。揺れる体に合わせて体躯に比べよく実った乳房はぷるぷると弾み、丸みのあるラインを描くお尻の向こうで、白い尾羽がふわふわと舞い踊って美しい。
それらの光景に目を奪われつつも快感を享受していると、久侘歌は妖しく笑う。
「気持ちいいですか? でも、もっと気持ちよくしてあげますからね?」
久侘歌はそう言うと前傾に上半身を傾けて怒張を深く呑み込ませ、小刻みな動きで腰を揺する。
膣奥の肉ひだがカリ首や裏筋を丹念に摩擦し、同時に鈴口には子宮口をぐりぐりと押し付けて、精液をねだってくる。
「く、ぅっ……!」
「ふふっ、いい声……。あっ、ん、喉は、何も問題無さそうで、はぁっ、何より、ですね」
思わず漏れ出てしまった情けない声に、久侘歌は艶っぽい笑みを見せて冗談を飛ばす。
肉体的にも精神的にも完全に主導権を握った彼女は、腰を絶えず動かして肉棒を刺激し、息が乱れ始めたこちらの様子を喜悦とした表情で見下ろしていた。
「気持ちよさそう、ですね? でも、私もこれ気持ちよくて、大好きですっ……! だから、まだまだ、しますねっ……!」
今まで受け身だった分もあるのだろうが、責めっ気の強い、少し珍しい久侘歌の姿。だけど、その根底にあるのは、子供を授かるべく子種を求めて奉仕する気持ちなのは違いない。
そして、それと並び立つ、快楽を求め肉欲を満たそうとする欲望。彼女の体が揺れる度に響く喘ぎ声と、興奮に紅潮した頬が、単純に子作りだけを目的とした交わりでないと語っていた。
もっとも、それは自分も一致しており、より久侘歌に気持ちよくなって欲しい、乱れて欲しい、その思いに任せてこちらからも久侘歌の動きに合わせて軽く突き上げる。
「はあっ、あぁんっ! あぁあっ!」
久侘歌は不意の突き上げに握り合った手の力をぎゅっと強めるが、一切動きは止めずに腰を振り続ける。
普段以上に絡み付く膣ひだに怒張を撫でられながら、ぬるぬるの柔肉を突き上げてこちらからもぐちゅぐちゅと捏ねてやる。そんな、生殖器同士の睦み合いはお互いに等しく快感を生み出して与え、その動きを絶やさせない燃料となって二人に供給され続ける。
「はぁんっ! あぁっ、んっ、気持ちよくて、腰が、勝手に動いちゃうっ……!」
久侘歌は閉じていた翼を快感の捌け口を求めるようにばさりと広げ、しかし同時に更なる快感を求めて、尾羽ごとお尻から腰を上下させる。
勢いの増した腰振りと突き上げの度に、久侘歌の最奥を亀頭がこつこつと繰り返し叩く。そこは、彼女が挿入する前に間違いなく届くと言った彼女の子宮であり、その感触はそこに精液を注ぎたいという欲求を急速に大きくさせた。
「あっ、ん、〇〇さんの、びくっ、って、膨らみましたっ。もうすぐ、あぁんっ、出そうなんですねっ?」
危険日の敏感な膣内は、陰茎の微細な反応すらすぐに感じ取ったらしく、久侘歌は喘ぎ混じりに笑みを浮かべた。
「私も、もうすぐですから、〇〇さんもっ……!」
「分かった、じゃあ……」
続く久侘歌の言葉に頷き、今まで以上に押し込むつもりで突き上げ、これから目の前の子宮に注ぎ込むと彼女の体にも伝えてやる。久侘歌の方も、奥を強く小突かれる度にびくんと体を弾けさせるが、一切腰を止めはしない。
「っ! 久侘歌っ、イクっ……!」
「私も、あっ、イッ、イクっ……! あっ! ああっ、はあぁっ~……!」
怒張から伝わる快感が最高潮に達し、全身を駆け巡る快楽に任せ、危険日の久侘歌の子宮に向かって、膣内射精を行う。それとともに久侘歌も大きな嬌声を上げ、絡み合わせた手をぎゅっと握り締めた。
性交の終点として迎えた、二人揃っての絶頂。それは多大な性的快感を生み出すのは勿論だが、自分は久侘歌を孕ませるための子種を然るべき場所へ注ぎ込み、久侘歌は膣内を繰り返し収縮させて精子を搾り取っていく。
「く、まだっ、出るっ……」
牡としての本能に任せ、久侘歌に種付けすることだけを、一滴でも多く注ぐことだけを考えて、子宮へと精液を追加し続ける。
「あ、はぁっ、あっ、んっ……」
一方、受け入れる久侘歌も自分と変わらないらしく、絶頂の余韻と膣内射精の感覚に浸りつつも分身を膣肉で甘く締め付けており、少しでも陰茎の脈動を増やそうと尽力していた。
「っ……」
「ぁん……、ふふっ……。いっぱい、出ましたね……」
長く続いた射精もやがて治まり、それら全てを受け入れた久侘歌は汗の浮いた赤い頬を緩ませて、下腹部を優しい手つきで撫でる。
自らの胎内を満たす、二人の愛の結晶を形作る遺伝子を慈しむような久侘歌の姿。
そして、自分も彼女と同じく、愛おしみたい相手が居るので、絶頂に乱れた息を整えつつ握り合った手を軽くくいと引く。その所作だけで久侘歌は察し、そっとこちらに倒れ込んで来た彼女の体を、一旦手をほどいて左手は背中に回して抱き寄せ、右手では後頭部をよしよしと撫でてやる。
「久侘歌、お疲れ様。すごく気持ちよかったよ」
「いえいえ、〇〇さんこそいっぱい注いで下さって、ありがとうございます」
久侘歌は朗らかな声色で言うと柔和に目を細め、その暖かな笑顔に絆されて自分も腑抜けているであろう笑いを返す。肉棒を抜かないまま、お互いに緩く抱き締め合って、穏やかな時間がゆっくりと流れていくのを静かに味わう。
けれど、時間が経てばまだ冷めやらぬ興奮に復活するものもあり。
「……ね、〇〇さん、まだ、出せますよね?」
射精を終えたばかりにもかかわらず、自らの膣内で脈打った陰茎を久侘歌も感じ取ったのだろう。笑顔を崩さないまま冗談っぽく、しかし、まだ足りないと更に子種を求める淫靡さも幾らか乗せた言葉で尋ねる彼女への言葉に、勿論、と大きく頷く。
「じゃあ……。久侘歌、体、起こすよ」
そう声を掛けてから久侘歌の華奢な体を抱き抱えたまま、上体を起こして布団の上に足を広げて座る。
「次は、〇〇さんがしてくれるのですか?」
陰茎は抜かないままでいわゆる対面座位の形になると、今までの経験からだろう、そう尋ねた久侘歌に対し、自分はしばし考えてから首を軽く捻った。
「自分も、久侘歌も、って感じかな。今日は、いつもとは少し趣向を変えてみようかなって」
「趣向を変える、ですか?」
おうむ返しに尋ねる彼女に頷きを返す。
「このまましばらく、お互いに下は殆ど動かさずに、他のところに触れ合ってゆっくり気分を高めていくっていうやり方なんだけど」
右手で久侘歌の頭から後頭部、うなじ、背中と緩い手つきで撫でさすっていくと、大凡の言わんとすることが分かったのか、彼女はこくりと頷いた。
「なるほどです」
「まあ、俺もこういうやり方もあるって話に聞いただけだから、どんな風になるかは分からないけど、試しにね」
言いながら、久侘歌の髪を弄っていた右手を結合部近くに持って行き、淫核に軽く触れてみる。
「あっ、んっ……! 触るだけなら、こういうところでも、いいんですね」
「とは言っても、久侘歌の方は俺のに触れるのは難しいだろうから、気持ちよくなってくれればそれで十分だよ。そうすれば、こっちも気持ちいいからさ」
「ぁんっ……」
クリトリスに押し当てた指先を軽く揺すると、久侘歌はまた小さく声を漏らし、膣内が軽く締め付けられる。
「ほら、こんな感じで」
「で、でも、これでは、また、してもらうだけになってしまいますっ……!」
「気にしない気にしない。さっき頑張ってくれたから、そのお返し」
「ひゃっ……!」
少し不満げ言う久侘歌にそう返すのに合わせ、再び秘芽を弄っていく。挿入しながらでも支障なく行える、クリトリスへの愛撫に小淫唇はひくひくと震えて、膣肉も陰茎を甘く食んでくる。膣内が蠢いて結合部に僅かな隙間が出来れば、そこからは二人の性液が混ざった白濁が零れ落ちた。
「んっ、あぅ……、そんなに見られると、恥ずかしいです……」
そんな光景をじっと見ていると、弱々しく久侘歌は唸って頬を真っ赤にしてしまう。何とも嗜虐心をそそる姿ではあるが、今は頑張った彼女へのお返しでもあるのでその気持ちは抑えておく。
「じゃあ、こっちがいい?」
淫核から指先を離して、幾らか付着した粘液を布団で拭ってから、彼女の頭に手を伸ばしてまたわしゃわしゃと荒く撫でてやる。
「あ、はぁあっ、ん、はふっ……」
前戯以来の、ついさっきまで味わっていた性感とは違う心地良さは久侘歌には不意打ちだったのか、気の抜けた声を溢れさせ、頬を緩めて瞳を蕩けさせる。
そのまま髪の毛を整えつつ後頭部へと手を回していき、翼の方へ手を伸ばす。
「んっ、そこは、特に優しく……」
「大丈夫、分かってるよ」
元より肝に銘じていても安心して貰えるように改めてきちんと返事をし、久侘歌の翼に触れる。彼女が鳥の神様だと特に強く意識させるそこはしっかりと手入れが行き届いており――もっとも、自分も手伝ったりするのだが――、手にしなやかながらもふわりとした感触が伝わってくる。
「ん……、あふっ……、翼、当てちゃったらごめんなさい……」
「気にしなくていいよ」
指で羽根を一枚ずつ根本から梳くように撫でると、それを邪魔しない程度に翼がはためく。翼の付け根から上端に指を這わせてやれば、背中を捩らせて翼も広げ、軽く羽ばたく。
久侘歌が空へ飛び立つ前なんかに見せる、白い翼を広げたその姿は、たとえこんな時だろうとも神々しく美しい。でも、やはり一番最初に、一番強く思うのは、“可愛い”という我ながらのろけた感想だ。
体を動かせない分を翼で発散するような所作に心を和ませつつも、次は尾羽へ手を向かわせる。
「ひゃぅ……、お尻も、ですか?」
愛らしいさえずりを漏らした久侘歌に頷きを返し、すらりと長く伸びた尾羽を撫でていく。根本から先端まで――と言いたいが先端までは届かないので、手が届くところまでを一本一本、順番に優しく梳いてやる。
翼と似た感触ながら、それよりかさらりとした尾羽の感触は負けず劣らず心地良く、触っているだけの自分でさえ気持ちいいくらいだ。
時には尾羽の根本を掻いてやり、時には尾羽から少し手をずらして滑らかな桃尻も撫でてみたりと、抱き寄せた彼女の肢体と、これらの愛撫をする度に窄まりを強くする膣内を堪能する。
「久侘歌、こういうのでも締め付けてるね」
「だって、優しく触って頂けるの、気持ちいいですから……」
自身の体を弄られる度、膣壁が柔く蠢いて、きゅっと陰茎を締め付けているのは久侘歌にも分かっているのだろう、頬を赤らめて恥ずかしそうに言う。そんなことない、厭らしく触るからだと誤魔化したりせず、正直に気持ちいいと言ってくれる彼女が愛おしくて思わず頬を緩めると、久侘歌は更に頬を赤くした。
「わ、笑わないで下さい……」
「ごめんごめん。可愛いなーって思ったらつい」
この返答に、恥ずかしそうに俯いていた久侘歌はあうぅと相変わらず可愛らしく唸り、顔を伏せてしまう――が、次の瞬間には揺らいでいた翼を一段と大きく広げた。まるで、威嚇するかのような所作に、思わずひるんでしまう。
「つぎっ、次は私の番ですっ! 私だって、〇〇さんの好きなことくらい知ってるんですからっ!」
色々な感情が臨界点を超えたのか、久侘歌は湯気が出そうなくらい顔を赤らめてやけくそ気味に声を張り上げた。
「じゃあ、お願いしようかな」
そんな姿がまた可愛らしいのだけど、と思いつつも言わないでおいて、一旦久侘歌への愛撫を止める。
「〇〇さんっ、覚悟して下さいねっ!」
張り切った様子で久侘歌は言うと、こちらの後頭部に手を回す。勢いに任せた語気に反してその手つきは優しく、頭をそっと掻き抱かれて胸元へ抱き寄せられる。
むにゅ、と顔に触れる、久侘歌の双乳の柔らかさ。主導権を与えて早々心地良い感触に心奪われ、膣内に入れっぱなしの分身が僅かに跳ねてしまう。
「こうされるの、〇〇さん大好きですよね?」
久侘歌は回した手で頭をよしよしと撫でて、広げていた翼でもふわりと覆って抱き締める。さっきまでの逸っていた気持ちは一切ない、とても穏やかなものだった。
前戯でも散々弄り、夢中になった彼女の程よく実った乳房に顔を埋め、同じく堪能していた翼にも包まれる。加えて、騎乗位を経てほんのりと汗の浮いた体躯からは、牡の本能を刺激する牝の甘い色香が漂い、思考が火照ってしまう。
それらはまるで久侘歌の温かさや存在全てを全身で感じるようで、体の奥から心地良い熱がじわりじわりと満たしていき、体温が上がっていく。
「〇〇さん、こちらを向いてもらえますか?」
その最中、不意に久侘歌は撫でるのを止めると、上を向いてと促す。浮ついた脳は彼女の言葉を言われるまま受け入れ、声の主を見上げる。
視界一面に映る、久侘歌の優しい表情。もし自分が雛鳥ならば、刷り込みなど関係なく親鳥だと思ってしまうほどに、母性的で温かい彼女の姿。
それに見惚れていると、不意に唇に柔らかな感触が訪れる。久侘歌からキスをされた、と気付くのに少し時間が必要なくらい、思考はすっかり蕩けていた。
彼女は首を少し傾けて――久侘歌お気に入りの角度だ――、繰り返し口付けを落とす。舌を使ったりキスを返すことを促したりもしない単純なバードキスを、啄むように、愛おしむように何度も何度も唇を重ねていく。
柔らかな肢体、撫でる手つき、翼に、これでもかと愛されてひたすらに甘美な口付けを享受し続ける。それは何もかもが蕩けるほどに心地良くて、幸福感に溺れ沈んでいくのが混濁する頭でも分かる。
戻れないかも知れない、そう分かっていても忌諱の意志はなく、いつまでもこうされていたい、と心の奥底から思ってしまうほどに気持ちいい。そんな快感が全身をくまなく満たして怒張もどくどくと脈打ってしまうが、久侘歌のとろとろにほぐれた膣肉は、肉欲の塊すらも柔らかく包んで優しく食い締めながら撫でてくれる。
そんな風に久侘歌からの愛を一身に受ける、至福の時間。しかしそれは、他ならぬ彼女によって終わりが告げられてしまう。
「んっ……」
久侘歌はそっと唇を離して至近距離でじっとこちらを見ると、優しくも少し悪戯っぽく笑う。
「〇〇さん、だらしない顔してますよ?」
久侘歌にそう言われ、頬の熱量が一気に増す。それに少し遅れて、慌てて緩み切っていたであろう顔を右手で覆い隠すと、そんな仕草が愉快だったのか、彼女はまたくすくすと笑った。
「ふふっ、〇〇さんも、とっても可愛らしいですよ」
「確かに、これは恥ずかしいな……」
「でしょう?」
反撃成功といった様子で楽しそうに笑う久侘歌につられ、自分も笑う。
そうして、お互いに緩い空気のまましばし笑い合った後、久侘歌はこちらの手に自らの手を添えて、さらりと撫でた。
「それでは、続き、しましょう? 私も、また撫でて欲しいです」
ほんのりと頬を染めた久侘歌に催促され、彼女の肢体へと手を伸ばす。淫核や乳房、それに加え髪や翼、尾羽も弄ってやると、久侘歌はそのどれもにいい反応を返す。
「あっ、ん……。もっと、私に、触れて下さい……」
しっとりとした声でもっととねだる久侘歌の方も、こちらの頭を緩く抱き締めて、愛撫の手つきを褒めるように淑やかな愛撫で返してくれる。
性感を与え合うのは勿論、それ以上にお互いを慈しみ合う交感に相手を求める気持ちは確実に昂っていき、様々な感覚が鋭敏になっていく。
そして、前戯の際にも行ったように久侘歌の下腹部を撫でてやると、彼女は熱っぽい吐息を長く吐いた。
「あぁ、ん、はぁあぁっ……。やっぱり、今日みたいな日にそこを触って頂くととてもどきどきしますね。普段なら、もっと落ち着く感じがするのに」
昂る様子を見せながらも穏やかに表情を緩める久侘歌の、すべすべの肌をしたお腹の奥に鎮座する子宮も撫で、またクリトリスも柔く弄る。
「あっ、んっ……。あ、あぅう……」
種類の異なる快感に膣内は甘い締め付けを断続的に返し、また腹部に戻って次はこちらを手の平で軽く圧すると、久侘歌は翼ごと体をぎゅっと縮こまらせて、力の抜けた声を漏らす。
次第に彼女がこちらを愛撫してくれる手つきがたどたどしくなってしまうが、それでも手は一切止めない。子を宿す箇所を撫でられて悦ぶ久侘歌がとにかく可愛くて、クリトリスを弄び、乳肉を揉み、翼や尾羽を繕い、子宮までもを愛してやる。
膣内射精を経て、既にたっぷりの子種を蓄えた子宮をとんとんと叩く度に久侘歌は身を捩り、その少しの動きでさえ、ぐじゅぐじゅに熟れた膣内と硬度を維持し続ける肉棒が摩擦し合い、溶け合うような快感を生み出す。
早く、この蜜壺を掻き回してやりたい、突き込みたい。そんな欲望がずっと頭の中で鳴り響いて、もう抑えられなかった。
「……久侘歌、もう我慢するの、無理かも知れない」
そう切り出すと、久侘歌はこくりと頷いて、潤んだ瞳をこちらに向けて声を震わせた。
「私も、私ももう駄目ですっ……。さっきからずっとお腹が疼いてて、頭の中が、貴方でいっぱいでっ……。だから、早く動いてくださいっ……!」
お互いに抑えきれない思いを確認し合い、愛撫の手を一旦止めて久侘歌をしっかり抱き留める。久侘歌も、こちらの頭を抱き留めていた手を下げて肩へと移して、ぎゅっと掴まる。
ともに体勢を改めたところで、下半身に少し力を込める。久侘歌にも言った通りお試し的に初めた今回の行為だが、さてどうだろうと不安は少々期待は大目に抱いて、びくびくと跳ねる屹立と蠢く膣肉に急かされ、腰を動かしていく。
「あ、あぁっ、ひゃあぁぁっ……」
粘っこく張り付く熱い柔肉は、陰茎が抜けてしまうのを嫌がるようにぴったりと吸い付いて簡単に離そうとはしない。自分も名残惜しい気持ちを刺激されながらも徐々に引き剥がしていくと、少しでも長く触れ合いたいのか膣ひだや肉粒、膣壁全てが健気に絡んでくる。
この時点で背中が粟立つほどの快感に襲われながらも、分身を中ほどまで引き抜く。愛液をべっとりと纏わり付かせた肉幹に触れる外気は、汗を浮かせて体温も高まった二人だけの熱がこもった空間にもかかわらず、冷たく感じてしまう。
ここまででも、まだピストン運動の半分。そう、腰を押し込んで膣最奥を突き上げるのが残っている。
「はぁんっ! あっ、あぁっ~……!」
僅かに亀頭が前進しただけで久侘歌はびくんと体を弾けさせ、包み込んでいた膣肉がまたちゅうちゅうと口付けを浴びせてくる。ひだもにゅるにゅると蠢いて奥へ奥へ誘い、結合部からは絶えず分泌される愛液がどろどろと溢れ出す。
長い愛撫で完璧に出来上がった膣内が、陰茎の僅かな動きですら快感を得ていると分かるほどにひくつく様にある種の感動すら覚えてしまう。一方、自分も研ぎ澄まされた神経全てが屹立に集中しているのではと思うほど、膣壁の微細な脈動も伝わってきて気持ちいい。
最奥まで挿入した肉棒を半分辺りまで抜いて、再び差し込む。このたった一往復だけで、あっさりと絶頂してしまっても可笑しくないほどの快感が駆け巡っていく。
そして、それは久侘歌の方も一緒、もしくはそれ以上なのか、荒い呼吸と甘ったるい息を漏らすことしか出来ていない。
「久侘歌、ちょっとペース上げるよ」
その声掛けに言葉での返答はなかったが、彼女はこちらにしがみ付いて、頭を力無く揺らしてこくこくと頷く。
まともに声を出せずとも律儀に答えてくれた久侘歌のため、もっと突き入れたい欲望を今この瞬間は抑え、彼女を深くしっかりと抱き留め、背中から回した手で頭をわしわしと撫でてやる。
「あっ、はぁっ……」
元々快感で緩んでいた表情を更に緩ませ、幸せそうな声を漏らす久侘歌を存分にかいぐりした後、改めて彼女を抱き留め、再度腰を動かしていく。
「ひあぁっ、あっ、んんっ、あぁんっ!」
ペースを上げるとは言っても、普段のピストンよりもやや遅い。だが、これでも十二分なくらいであり、久侘歌の口からは絶えず喘ぎ声が溢れ出す。
押し込めば柔肉壺の全てが余すところなく陰茎を摩擦し、引けばカリ首は勿論、浮き出た血管にすらぷりぷりの肉壁が絡んでくる。元々、危険日は普段以上に絡み付いてくるのに、ここまで高めた分が相乗効果の如く何倍にも膨れ上がらせ、もう既に陰嚢からは精液が昇って来ていた。
しかし、ここで出してはまだ半ばだと、全てを注いで孕ませるにはまだ足りないと、腰をもっと深めに動かして快感を貪っていく。
「おくっ、あぁっ! しきゅう、そんなに突いちゃ、あっ、あぁっ~……」
最奥を亀頭で強めに小突かれ、久侘歌はだらしない声を上げて脱力し切った体をこちらにもたれさせる一方、膣内は子宮に押し当てられた亀頭をそこから離すまいと、入り口から膣奥までを強烈に締め上げてくる。もっとも、大量の潤滑油に塗れた蕩けた肉ひだによるそれは、捕捉よりも抱擁を強く連想させた。
そんな可愛らしい反応に、こちらからも子宮口に亀頭を押し付けてぐりぐりと穿ってやると、久侘歌は翼を二、三回ばさばさと羽ばたかせて、こちらの背中に回して覆う。
「〇〇さんっ、せーし、早く出してっ……、〇〇さんとの赤ちゃん、欲しいっ、欲しいからっ……!」
子作りの快感に顔を真っ赤に染めて瞳には涙も浮かばせ、ぴんと広げた翼も使って必死にしがみ付き、子種とそれが実ったものを求める久侘歌。そんな彼女に愛おしさが止めどなく湧き上がり、それはとうに限界を迎えていた我慢への一押しとなって、久侘歌との交わりで得る快感と幸福感、愛欲を臨界点まで瞬く間に導いた。
「っ! ぐっ、あぁっ!」
「あっ! ああぁっ! イっ、イクっ、あっ、ああぁあっ!」
溜めに溜めた絶頂にくぐもった声を上げ、久侘歌の危険日の子宮へ向けて二度目の射精を行う。彼女も僅かに遅れて、――まるで、膣内射精が呼び水になったように――絶頂を迎え、甲高い嬌声が上がって両手と翼に思い切り抱き締められる。
「あ、中で、びくびくって、あっ、はあっ……」
本日二度目ながら勢いも量も一度目と殆ど変わりない射精を受け入れ、絶頂の快感に全身をびくびくと痙攣させる久侘歌。射精による陰茎の跳ねですら新たな快楽を得ているようで、分身が脈打つ度に子宮へと白濁が追加され、その震えと精子を注がれた刺激に膣内が蠢き、それでまた精液を注いで――と繰り返しては、自分は小さな唸り声を、彼女は色付いた喜悦のさえずりを零していた。
そして、延々と続くかと思われた射精がようやく終わると、久侘歌は、はあっ……、と熱のこもった溜め息を漏らし、抱き着いた翼をぱたぱたとはためかせる。
「〇〇さん、お疲れ様でした」
「久侘歌も、お疲れ様」
絶頂の満足感に浸りながらも労いの言葉を掛けてくれた久侘歌にこちらからも返し、頭をまた撫でてやると、彼女は肩口に頬擦りして甘えてくる。
そうして、お互いに落ち着くまで翼と手でお互いに撫で合っていたが、やがて久侘歌は体を少しだけ離して、小さく笑った。
「〇〇さん、ちょっと手を貸してくれますか?」
手を貸して、と言われこの状況で何か手伝うことがあるのだろうかと少し考えたが、どうやら文字通りの意味だったらしく、久侘歌は頭を撫でていた方の腕をぺちぺちと叩く。
言われるままにその手を久侘歌の前に持って行って預けると、彼女はその手の手首を掴んで、手の平を自身の下腹部へ宛がった。
「分からないとは思いますが、今、私の子宮は貴方の子種でいっぱいですよ。できちゃうかも、ですね」
もしかしたら、今日の交わりで受精卵が、ひいては新しい命が芽生えるかも知れないことを嬉々として受け入れ、久侘歌はにこにこと嬉しそうにする。
一方、自分はそんな風に喜ぶ久侘歌に対し可愛いと思うと同時に一抹の欲情も覚えてしまい、誤魔化すようにお腹をすりすりと撫でた。
すると、彼女はこちらの腕を掴んでいた手を撫でる手の甲に滑らせ、二人の手の平をそっと重ね合わせる。
「もし、赤ちゃんを授かってお腹が大きくなったら、こうしていっぱい撫でてあげてくださいね」
「……今みたいな最中に?」
「ち、違いますっ! 普段の、日常生活での話です!」
冷静に考えればそう分かるだろうに引きずった欲情のせいかつい聞き返してしまうと、彼女は翼をばさばさと震わせて否定する。
「そもそも、赤ちゃんがお腹に居るなら、その、えっちはお預けになるでしょうし……。残念ですけど……」
「一応、体調や方法にも寄るけど、妊娠しててもきちんとすれば大丈夫らしいよ」
唇を少し尖らせて、もじもじと不満気に呟かれた言葉にそう返すと、久侘歌は「え」と小さな驚嘆を見せた。
「そ、そうなんですか?」
「まあ、勿論ちゃんとお医者さんと相談してになるけどね。でも、絶対に駄目とは限らなかったとは思うけど」
「そうでしたか。それなら、嬉しいです……」
久侘歌はほっとした様子でそう言った後、少し遅れて自身の発言内容に気付いたのか、顔を真っ赤に染めた。
「い、いえっ、その、えっちしたいわけでは……」
手をぶんぶんと振って、先の発言を否定しようとする久侘歌。まさに今、その性交の最中なのに、と思ってしまい、つい笑いそうになるが何とか堪え、慌てふためく久侘歌の可愛さに免じて助け船を出してやる。
「俺はしたいよ。子供を授かった後も、生まれてからも、こうやって愛し合いたいけど」
久侘歌のお腹を優しく撫でてから、次はまた彼女の頭に手を伸ばしてよしよしと撫でてやる。久侘歌もフォローだと分かっているのだろう、恥ずかしそうにあううと声を漏らすが、上目遣いにこちらを見やった。
「わ、私も、です……」
正直者な久侘歌に堪えた笑いが少しはみ出てしまうと、彼女はこちらの胸元に頭を埋めて赤い顔を隠してしまう。そんな久侘歌の白い髪を、彼女が頭を上げるまでずっと緩く撫でていた。
3.
前回、人里へ買い出しに行った日から数日後。今日もその日と同じように買い物に出掛け、それを終えた後は、夕日の橙色に染まる帰り道を久侘歌と二人並んで歩いていた。
……の、だが。
「久侘歌、ずっと静かだけど、何かあった?」
斜め下に視線を落とす久侘歌の方に顔を向けて尋ねる。買い物を終えてからずっと彼女はこの調子で、話を振ったりしても生返事しか返ってこないのだ。
最初の内は「物静かだなあ」なんて呑気に考えていたが、流石にそろそろ気まずくなってきたし、このまま家についてしまうと尋ねるタイミングを逃してしまうかも知れない。ということで伺いを立ててみたのだが、聞かれた久侘歌はばさっと翼を広げて、勢いよくこちらを向いた。
「わっ、忘れたんですか? あ、あんな風に言って、あんなことまでしたのに……」
一寸ぶりに向かい合った久侘歌の顔は耳まで真っ赤に染まっており、言葉も困惑と照れが入り混じって震えていた。
彼女の言う、あんな風、あんなこと。それは、まず。
「魚屋?」
「そうですっ!」
夕焼けの橙を幾らか拝借した白い翼が再びばさりと広がり、久侘歌の大きな声が響く。やはり、最後に寄ったあの魚屋での一件か。
前回、自分達二人をおしどり夫婦だと評したあの魚屋。今回もそこに寄った際、二人で今日の晩ご飯に頂く魚を物色していると、またもや店主に『相変わらず仲良しだね』なんて言われたので、隣に居た久侘歌をぐいと抱き寄せ、「最高の奥さんですから」と返したのだが。
「まっ、まだ、私は、奥さんではありませんし……」
「こっちとしてはそのつもりで一緒にいるんだけどなあ」
「それは、その、私も、ですが……。何も、あんなところであんな風にして言わなくても……」
「仲睦まじいのはいいことだって言ってたのに」
その時、久侘歌の頭から「ぴ!」と高い声がした。
「ほら、この子もそう言ってる」
自身の以前の発言を踏まえた反撃と、口論と呼ぶにはあまりにも平和な言い合いにひよこもこちらに加勢し、一瞬で状況は久侘歌不利と言ったところか。
「……とにかく、駄目っ! ですっ!」
あえなく二体一となった久侘歌は自棄気味に話を締め切って、ぷいとそっぽを向いてしまう。
「ごめんごめん、もう二度としないから」
店主の調子に合わせての魚と一緒に売られた言葉も買ってやった、くらいの感覚だったが、軽はずみなことをして怒らせてしまったなと反省しつつ、遺恨を残さないためにも早々に謝罪すると、久侘歌は少し慌てた様子でこちらを向き直して手をぶんぶん振った。
「い、いえ、その、公の場では控えて下さいというだけですから、二度となんてそんな……。あまりそういう姿を外で見せるのは恥ずかしいし、はしたないというだけで……」
そこまで言うと、久侘歌は一度視線を斜め下に下げた後、改めてこちらを上目遣いに見やる。
「それに、私だって嫌では……、いえ、嬉しかった、ですし……」
尋ねた時よりも幾らか朱の薄まった、しかし、まだ赤さをはっきりと残す頬のまま、もじもじと言う、久侘歌の表情と言葉。それは、こちらの気持ちを大いに盛り上げるには十分すぎるものだった。
「……だ、駄目ですよっ。この辺りはどこから天狗が見ているか分かりませんからっ」
自分の思慕の高揚を久侘歌はすぐに感じ取ったらしく、瞬く間に釘を刺されてしまう。こちらとしては魚屋でした時以上に彼女を抱き寄せて、そのままお姫様抱っこでもしてやりたいくらいの気持ちだったのだが、流石に明日の朝刊、何なら今日の夕刊に載るのは避けたい。
せめてここが妖怪の山からもっと離れた場所ならば、と悔やんでいると、その思いを察してか久侘歌はこちらに手を差し出した。
「ですから、今はこれでお願いしますね?」
はにかんだ笑顔で言う久侘歌にすぐに頷きを返して、その手に自らの手を絡ませて握る。彼女ははにこりと笑い、頭上からは「ぴ!」と高い声がまた響く。
そうして、家族みんな揃って夕焼けに彩られながら、家へと帰っていった。