今作はサグメ視点の話になっております。
同作をpixivにも投稿しています。
注意点
二次設定、独自設定、独自解釈等があります。
オリキャラ(名無し男)との絡みになります。
1.
『せっかくの休日なのに地上になんて、本当にお疲れ様です』
多少の違いはあれど知人の月人や部下の玉兎にこんな風に言われる度、私はそれほどでもないと返しながらも、内心では可笑しさとちょっとした優越感を抱いてしまう。
だって、皆が口を揃えて、一切の疑いを持たずにこう言うのだ。誰も気付いていないのだろう。それほどでもない、というのが謙遜ではなく、本当にそのままの意味だと。
八意様、もしくは地上部隊の玉兎達への連絡業務。こちらと先方、どちらからの要望かはその時々でまちまち。名目上、私達はこれで地上へと時折出掛けている。
決して、嘘ではない。名目とは言っても本当に顔を出すし、報告もするし受ける。結果的に報告内容は『異状なし』でも、それに越したことは無いので何一つ問題は無い。そもそも、これは業務とは言っても“私自身の意志で”“個人的な休日を使い”“勝手に”行っているので、文句や勘繰りを受ける謂れもない。
私はこの連絡業務を『私達』と表現した通り、私の補佐を務める直属の部下、もう一つ付け足すなら、恋人である彼と行っている。そう、言わばこれは、連絡業務を口実にした逢瀬だった。
そして、明日、約二週間振りにその予定が入っている。二人っきりで地上へ出向いての、大事な連絡業務が。
槐安通路を利用して地上へと向かい、お昼を少し過ぎる頃に到着。お昼ご飯は鈴瑚がお勧めしていたお食事処で済ます。一番お客さんが多い時間帯は過ぎているので、スムーズに着席、注文、食事と滞りは無い。
その後、清蘭と鈴瑚がそれぞれ出店している団子の屋台へと向かい、様子を確認。鈴瑚には教えてくれたお店が美味しかったことも報告。合わせて、二人の団子も――売り上げが負けているらしい清蘭の方を多めに――購入し、彼と食後のおやつに頂いた。時間的にも、丁度ぴったりだ。
もはや、お決まりとも言えるこの流れ。あとは八意様のところも残っているが、そちらは明日の午前の予定になっている。
八意様は永遠亭にて非常に優秀な薬師として活躍しており、地上でも忙しい身。なので、診療が始まる前、と言いたいところだが、槐安通路を用いて地上に行くまでに掛かる時間の都合上、それは一日目では難しい。なので、一日目は地上部隊、二日目午前に永遠亭、の流れである。
実を言えば会いに行くのは診療時間が過ぎた夜でも構わないのだが、こう割り振れば少なくとも一泊、場合によってはそれ以上の滞在が可能になる。言ってしまえば体のいい口実だ。因みに、この方法を提案してくれたのはある月人姉妹の姉であり、協力は地上部隊の二人と永遠亭の皆々様。月にしろ地上にしろ、身内の協力者は心強いうえに有難い。それに、自分達だってあの姉妹や部下の恋愛事情を踏まえて色々と立ち回っているので、持ちつ持たれつだ。
そういうわけで、一日目はこれで早くも業務終了。つまり、ここからは秘密の逢引の時間となり、彼と私の立場も対等となる。
屋台近くの長椅子に二人並んで腰掛けて、串団子の最後の一本を口にしながら、彼にこれからの予定を尋ねる。いつも通り、口数は少なめに。
私と同じく最後の串を口にしていた彼は、咀嚼と僅かな逡巡を挟んだ後、腹ごなしも兼ねて少し散歩しましょうか、と提案した。
特に断る理由も無い、そう思い頷きを返す。だけど更に、その後のことも続けて尋ねた。
すると、彼は視線を斜め下に逸らして、右頬を二回掻いた。いや、その、と声を幾らか濁らせて。
そんな風に狼狽える彼は可愛い反面、男らしくはっきりと言って欲しい、なんて複雑な心持ちが湧き上がる。
だから、私は構わないのよ、とだけ呟いた。無言で待つのは彼だけに頑張らせて悪いから、こちらの気持ちは先に伝える。けれど、伝えるのは気持ちだけ。直接口にするのは、彼にして欲しかった。
そんな駆け引きが功を奏したか、彼は一瞬だけ息を詰まらせた後、もう何も刺さっていない串を空の袋に放り込む。そして、強張りつつも真剣な顔をこちらに向けると、私にだけ聞こえる声量で囁いた。
その言葉が私の耳に届き、しかし通りの喧騒にすぐに掻き消されてしまう。その頃には彼はもうこちらを向いてはおらず、ほんのりと赤い横顔が通りを歩く人々を見つめていた。照れているのだろう。だって、その一言は地上でも月でも、人目のある場所で言うには憚られるもので。
だけど、私は人目も憚らずに彼の肩に頭を預け、彼の背中に翼を回して数回はためかせる。私自身も望んでいながらも、秘した台詞を言ってくれた彼を讃える気持ちと、自分も逸るものがある気持ち、その両方を伝えるのに言葉では足りなかったから。
嬉しくも恥ずかしくも、きちんと彼にはそれらが伝わったらしく、彼は私の肩に手を回すとぎゅっと抱き寄せてくれた。
2.
人里の端の閑静な通りの、更に奥まった立地に存在する、ある長屋。端っこながら、いや、だからこそか安いうえにそれなりに広くて小綺麗なのに、定住している者はおらず、一時的な貸倉庫か臨時の作業場として使われるのが主だ。それか、人目を避けたい者、例えば良家のお嬢様と下人が秘め事に使ったり、だとか。
私と彼はそんな長屋の一番端の一室にいた。勿論、無断で入り込んだのではない。長期契約で借りている、私達の立派な別荘だ。一か月に二、三回程度しか使わないが、ここで過ごす時間の濃厚さで考えればお釣りが来るほどだろう。
月から持ち込んだ簡易のシャワーを備えたお風呂で汗を流して、寝室に向かう。そこには大きめの布団が一枚敷かれており、その上には彼が下着一枚という非常に簡素な格好で腰を下ろしていた。こんな風に彼が私を待ってくれている、というのは普段と変わらないけれど、寝具が見慣れたベッドではないことが、今この場が月ではなく地上であると強く意識させた。
窓から差し込む夕暮れ時特有の眩しい陽光が、彼の体躯に橙を落とす。上司部下の関係を抜きにしても丁寧で柔らかい物腰の彼だが、体格や肩幅、胸板はしっかりと男らしくて、特に筋肉質ではない中肉中背ながら、恰好いいな、と思う。
だけど、顔付きはやっぱりいつも通り少し緊張した面持ちで、未だに初々しさがある辺りは可愛らしくもあり、似た者同士だな、と思う部分もあり。
湯浴みを終えたばかりの私も纏う衣服は彼と大差無く、下着は横を紐で結んだショーツのみで上は薄手のシャツを羽織ってボタンを数個留めただけ。これから行うことを考えれば互いに全裸の方が手っ取り早いが、いきなり全てを曝け出すのは憚られるし、彼も同じみたいだからお互い様。
彼の傍に静々と腰を下ろす。外で細く響く烏の遠い鳴き声を背景に、彼は私の名前を呼んだ。仕事中の様付けではない、さん付けで。私としては敬称も省いた呼び捨てで構わないのだけれど、そこは最低限譲れない礼儀らしい。
その呼び掛けに、頷きと短い肯定だけを返す。それ以上は、何も必要ない。
傍らに置いた手に彼の手が重ねられ、私は彼を、彼は私を正面に見据え、自然と顔が近付いていく。目蓋を閉じるのは、私の方が早かった。
そっと触れ合う、二人の唇。瞬間、心は跳ねて体は打ち震える。言ってしまえば肌を合わせただけなのに、心身は多幸感に満たされていく。
触れては離れ、触れては離れと鳥の啄みを模した柔らかな口付けを繰り返す。次第にそれは触れている時間の方が長くなり、やがてもっと深くを求め、互いに舌を伸ばして触れ合う面積を増やそうとする。
唾液を湛えた粘膜が唇に倣って重なり触れ合い、小さな水音が鳴れば後は流れるように二つの舌は相手を求め、受け入れ、絡み付く。
私を私たらしめるものの一つを、彼は忌諱しない。それどころか、彼は自らも差し出して、愛し合ってくれる。
それがどれだけ嬉しいか、心打ち震えているのか、彼に教えたい。伝えたい。その一心で、私も負けないくらいに愛してあげる。
舌を動かす度にぐちゅ、ちゅぷっ、と粘膜の絡み合う淫らな水音と、僅かに漏れ出る二人分の荒い呼吸が寝室に響く。もう外で鳴いていた烏の声は聞こえず、耳には口付けを起因とした音しか届かなくなっていた。
その音色は私の体温を徐々に上げ、彼も丁寧だったキスに荒さが増してくる。二人揃ってすっかりキスの色香に中てられてしまっていた。
先に抑えられなくなったのは、彼か私か。どちらからともなく離れていく唇に名残惜しさを覚えるが止めはせず、そっと開いた双眸で唇同士を繋ぐ銀糸、瞳を閉じる前よりも紅潮した彼の顔、情欲を訴える真剣な眼差しと順に見つめる。
冷めない余韻に息を乱して、しばし見合う。彼は口を開きかけるが、その口が言葉を紡ぐより早く、私は呟いた。したいから立って欲しい、と。
彼は何か言い掛けるが唾ごと息を呑むと、言われた通りに立ち上がる。遠慮は美徳だが、事ここに至っては素直な方が美徳だ。
起立したことで彼の股間が私の目の前に来る。唯一身に纏う下着は内側から大きく押し上げられており、その膨らみの頂点は小さく震えて窮屈だと訴えていた。
それを早く解放すべく、下着の縁に手を掛けて丁重に下ろすと、縁に引っ張られた彼の男性器が弾み現れた。
生娘だった私を女にした彼の牡のシンボルに、思わずごくりと唾を呑む。まだ完全な勃起には至っていないみたいだが、過去の交わりを思い出させるには十分な輪郭を既に備えていた。
そして、脱がせると同時に鼻孔を刺激する、入浴を済ませていようとも拭いきれぬ生殖器の匂い。
とはいえ、この匂いに嫌悪感は全く無い。寧ろ、好きなくらいだ。吐く息は熱っぽさが増し、体は下腹部の芯をぞくぞくと疼かせて火照り、瞳は自分でも蕩けてしまっていると分かる、魔性の匂い。
本心を言えばもっと匂いが強い方が好みなので、彼には入浴を我慢して貰って、というのは彼も嫌がるだろう。ならば、逢引の後に二人して湯浴みをせずにそのまま、が自然な流れであるが、それは看過出来ない。彼の匂いが強い分には構わないが、私のそういう匂いも嗅がれてしまうのは恥ずかしすぎる。でも、一度くらいなら、興味はあったり。
ものの数秒ですっかり私の心を惹き付けてしまった彼のおちんちんに、右手を伸ばして軽く握る。その瞬間、彼は下半身を微動させて分身も手の中でびくんと大きく跳ね上がるが、手は離さない。
手の平を通して伝わる、灼けるような熱さと、幾らか柔らかさを残すが芯はしっかりと硬い、独特の感触。握る手に僅かに力を入れて緩く扱くと、またもびくびくと震え出し、彼も小さく嗚咽を漏らす。私の手が一往復する度に手の中で硬度と大きさを増し、少し力加減を変えるだけでも如実に反応するのが面白くもあり、可愛くもあって。
そろそろ、いいかな。そう判断し手を離した頃には、彼のものは一回りほど大きな姿に、しかし醸し出す魅力は一回りどころか何倍にも増大していた。
乱れ始めた彼の息遣いに合わせて、血管を浮かせたがちがちの分身はどく、どく、と微動し、張り出して膨らんだ亀頭は赤く艶やかに色付き、カリと肉幹の合間に深い段差を作る。先端の小さな穴から漏れる我慢汁は獣の涎を思わせ、待ちきれないと言外に叫んでいた。
だけど、まだもうちょっとだけお預け。だって、せっかくだからもっと堪能しておきたいから。
カリ首の辺りに鼻を持って行き、すんすんと匂いを嗅ぐ。脱がせた時よりも更に厭らしさが増した匂いがして、下腹部がずくんと強く疼く。そのまま竿、根本と陰毛にくすぐられるのも構わずに顔を下げつつ、重たげにぶら下がる陰嚢に手を伸ばし、丁重に軽く持ち上げた。
柔らかい皮膚の感触とともに見た目以上にずっしりとした重さが手の平にかかるが、この中に彼の子種、それも濃いものがたっぷりと溜め込まれているとなれば、そう感じるのも当然だろう。以前に交わったのが丁度一週間前で、それ以来彼は一度も出していないのだから。
陰嚢を持ち上げたまま、肉幹との境目辺りに鼻を埋め、もう一度息を吸い込む。今までで一番濃厚な匂いが私を満たし、脳内が焼けてしまうほどの灼熱が全身を駆け巡り、言いようのない感覚に襲われる。
彼の牡の匂い、手の平で味わう子種の重さ、治まらない胎内の疼きが、一匹の生物としての本能と欲望を刺激してやまない。
もう、我慢出来ない。そんな衝動が湧き上がった時にはもう体は動いていて、顔を正面に構えて口を大きくあーんと開ける。その時耳に届いた、私を呼ぶ彼の声の理由は、催促か心配か。きっと、その両方だろう。
その逸りと気遣いを嬉しく思いながら、私は目の前の男性器を躊躇なくぱくっと咥えた。
彼がくぐもった息を漏らすと同時に私の口内に広がる、牡の味と匂い。少しのしょっぱさと、後に味わうであろう精液を思い起こさせる苦み。そして、散々堪能した香りが内側から嗅覚を刺激する。
刹那、私を満たす、むせ返るほどの悦びと淫蕩の気色。既に昂り切った私の心身は何一つの嫌悪も無くもっと奥まで迎え入れ、喉奥に先端が触れるまで一気に呑み込んだ。
熱く硬い棒が奥まで満たされると、顎は開かされて息苦しく、当然いい心地ではない。でも、それ以上に喉、舌、唇、口腔、それら全てで味わう彼の分身の脈動が愛おしくてたまらない。
しかし、やはり生理的な反応は抑え難く、派手に嗚咽を漏らしたりして彼を心配させる前に頭を引く。大きな開放感と喪失感を伴ってずるんと引き抜かれた彼のものは、根本近くまで唾液に塗れてぬらぬらと厭らしく輝いていた。
こんなに深くまで呑み込んだ事実に改めて達成感を覚えるが、まだ終わりではない。続けて根本に手を添え、ある場所へと舌を伸ばす。
つん、と舌先でつつき、続けてぺろっと舐め上げたのは、亀頭と肉幹を繋ぐ箇所、所謂裏筋だ。そこをちろちろと舌先で細かく舐めると彼はすぐに震えた声を溢れさせておちんちんをびくびくと跳ねさせる。やはり、敏感なうえに弱点だと反応がとてもよくて、私も嬉しくなる。
お次はこれまた彼の弱い所、張り出したカリ首の裏側へと舌を向かわせ、溝に沿って張り付けた舌を這わせていく。
今日もこの子は、私を散々掻き回し、穿り、抉ってくれるのだろうなと遠くない未来に期待しながら。けれど今は私の番だから、ちょっとした嗜虐心に任せて苛めておく。その時にはまず、こうして余裕を持って可愛がる暇はないだろうから。
激しくはしない代わりに舌を一切止めない責めに亀頭は絶えず身動ぎし、我慢汁を先端からぷくんと溢れさせて粘液の珠を作るが、次々と漏れる汁がすぐにそれを自ら崩してとろとろと垂れ落としていく。
待ちかねた肉欲に早く早くと零れる涎を、先端に口付けて強く吸い上げてやる。彼は脚ごと下半身を大きく痙攣させて快感に上擦った声を上げ、私も嚥下する苦みに体がぞくりと粟立った。
そろそろ、欲しいな。先んじて溢れたその液体の味に欲望が深く湧き上がり、焦らしの締めにバードキスを鈴口に何度か落としてから、また大きく口を広げて亀頭を咥え込む。
そして、唾液に塗れた竿に密着させた唇を滑らせて、口腔で扱いていく。広げた舌で亀頭の裏側を撫でながら口内へ迎え入れては、カリ首が抜け落ちる直前まで引き抜くのを一つのサイクルにして何度も出し入れする。
ぐちゅっ、じゅぽっ、と口端から零れた唾液がはしたない音が鳴らすのも厭わずにフェラチオを続ける最中、彼は私の頭に手を添えて緩く撫で始めた。
気持ちいいです、上手です、と抜けない敬語で言っては時折嗚咽を漏らし、それでも手つきは優しいまま、さらさらと髪を梳いてくれる。
彼のおちんちんに奉仕するのは、とても好きだ。それは勿論、愛おしい彼のものだからというのが大きいが、こうして褒められるのも嬉しい。私の持つ口や舌がどういうものか分かったうえで、時には疎まれすらする箇所での奉仕を悦んでくれるのが、本当に嬉しい。
彼に気持ちよくなってもらうためだけに私は口を揮い、私自身を捧ぐつもりで奉仕する。口内の壁に押し付けて亀頭を頬の粘膜で愛撫し、肉幹に浮いた血管も舌で優しく撫で、時には喉奥まで深く呑み込んで脈動を口腔全体で感じては、私自身の愛欲も満たす。
まだ経験が浅かった頃は舌を這わせる程度が精々だったのに、今や口内いっぱいに広がる存在感にすっかり虜になってしまった。こんなに厭らしくなるなんてと自嘲しつつも、それ以上に彼が悦び、私自身も悦んでいる自覚に背徳感を覚え、それに病みつきになっている事実を否定出来ない。
口腔を使って愛でるのに夢中になっていると、不意におちんちんの痙攣が大きくなる。『あ、これは』と私が気付くのに僅かに遅れて、彼は乱れる息を呑み込んでから射精が近い旨を口にした。
それから私は少しだけ考えてから、今までの深いストロークから浅めだが早いものにペースを切り替え、ラストスパートを掛ける。喉奥まで呑み込んで直接体内に注がれるのも好きだけど、今日は彼の精液をしっかり味わいたい気分だった。
その時を今か今かと心待ちにしながら、扱く合間にも舌先で鈴口をくすぐって早く出して欲しいと催促する。既に彼の下半身はがくがくと震えていて、いつ射精してもおかしくない。
今日はいつもより頑張っているみたい、なんて思った瞬間、口内で彼のものが一際大きく膨らむ。それを察するのに僅かに遅れて、彼は二言だけ声を絞り出す。相変わらずの敬語で、私の名前と射精を訴える言葉を。
震えた声がそれを言い切った刹那、口内に収めたおちんちんがびくんと跳ね上がって舌に勢いよく液体が叩き付けられる。彼が絶頂を迎え、精液を吐き出したのは明白であり、分身は続けざまに痙攣しては私の口腔を粘っこい精子で犯し、満たしていく。
それらを一滴も逃がさないために唇をしっかり引き絞り、口内で脈打つ生殖器と味蕾から伝わる苦み、溢れるほどの独特の匂いを余すとこなく味わう。彼を絶頂まで導いた達成感と、その証左を受け入れる幸福感は、何物にも代えがたい。
射精が落ち着いたところで、唇の隙間から精液が漏れないように気を付けつつずるりと引き抜く。唾液でぬらぬらと光る、真っ赤に膨れた亀頭は射精の余韻と久しぶりの外気との温度差にかびくびくと微動しており、それがなんだか可愛らしかった。
私の口内を占有していたものが消え失せ、ようやく幾らか余裕が出来る――なんてことなく、一週間ぶりの射精、ひいては一週間溜め込んだ大量の精液でいっぱいだった。
ゼリーを思わせるほどにぷるぷるとした塊を伴った、非常に濃くて固形に近い精液。このまま呑み込むと喉に引っ掛かりそうなので顎を動かして噛み潰すと、塊がぷちゅ、ぶちゅ、と弾け、これまた濃い味と匂いを溢れさせた。
そうやって何度も咀嚼し、いざ飲み下そうと試みるものの、やはりと言うべきかなかなか喉を降りて行かず、生命の熱さを伴ったままゆっくりと体内へと沈んでいく。その感覚にすら私は興奮を覚えながら、注がれた白濁が全て無くなるまで存分に堪能し、はあっ、と息を吐く。もしかしたら、この吐息すら精液の匂いに染まってしまっていたりして、なんてふと恥ずかしくなったが、もう手遅れかな。
フェラチオの仕上げに、未だにぴくぴくと震えていた亀頭にちゅっと口付けて、ちゅーっと吸い上げる。鈴口とその奥に多少余らせていた一滴すら残さずに頂き、手では陰嚢を優しくよしよしと撫でる。頑張った子はきちんと褒めてあげるのが、やる気を引き出す秘訣だ。
最後にご馳走様と一言告げて口淫を締め括ると、彼はお礼ととても気持ちよかったとの賛辞とともに、私の頭をまた撫でてくれた。彼の、私よりも大きな手で撫でられるのは気恥ずかしさもあるがやはり心地いい。
そして、彼は姿勢を低くして私と目線を合わせると、次は自分からしたいと言う。小さく頷きを返して、シャツを留めていたボタンを外して脱ぎ去る。翼を通す穴の空いた特注のシャツははらりと滑るように落ちて肌を晒し、私がもう一度小さく頷くと、彼に緩く抱き締められてそのままそっと押し倒された。
彼の顔が近い。口淫に耽りながら下から覗いた時に見た快楽に耐える顔とは違う、次は自分の番だと言いたげな、男らしい表情。
けれど、彼が紡ぐ、私の体に触れる許可を求める言葉は緊張を携えた声で。
構わない、と短く返す。それに、優しくして欲しい、とだけ付け加えると、彼はこくりと頷いて、私の頬に優しく右手を添えた。
その手は数回軽く頬を撫でると、ゆっくりと下へと向かう。微弱なくすぐったさが頬から首、首元、鎖骨と移るたびに心音が増し、やがて彼の手が乳房に触れた時、心音の高鳴りは一気に膨れ上がり、口からは思わず小さく声が漏れてしまった。
最初は馴染ませるように彼はゆっくりと指を沈ませ、少しずつその手つきは激しさを伴い始める。五指と手の平全てを使って胸を揉んでは掬って持ち上げ、手の中で撓む乳房にまた指を沈ませて感触を楽しんでいた。
私はあまり、自分の胸に自信がない。見目は他人と比べたことなんてないのでよく分からないし、大きさは小さくも大きくもない半端だと自負している。でも、彼の手の平に丁度良く収まり夢中になってくれているのを見ていると、綺麗です、触っているだけで気持ちいいです、と褒められるととても嬉しい。
彼の手と口が伝えてくれる温かさから淡い快感と充足感を享受していると、指がぷくっと膨れた乳首をつついた。
不意の刺激に思わず高めの嬌声が漏れてしまうが、彼の手は止まらない。指でつんつんとつついて突起を乳房に沈ませ、指の腹で円を描くように弄られる。それらの刺激で硬く尖れば指先で捏ね、弾かれ、口を手の平で抑えているのにもかかわらず声が溢れてしまう。
甘い痺れに悶える最中、彼は片方だけ弄るのを止めた――かと思うと、彼は顔を胸元に寄せて口を開け、すっかり大きく膨れた先端を口唇で捉えた。
生暖かい空間に乳首から乳輪までもが包み込まれ、背筋にぞくりとした感覚が走るのも束の間、彼が先端をちゅっ、ちゅう、と吸い始めたのを皮切りに、指とは違う微弱な快感がまた溢れていく。
彼は強弱を付け、時に舌も使って吸ったり舐めたりと愛撫する。これも立派な前戯、とは分かっていても甘えられている印象の方がどうにも強くて、赤ちゃんみたいで可愛い、と思ってしまう。
でも、こうして私にしか見せない姿で甘えてくれるのは、実はとても嬉しかったりする。私と公を共にする以上、彼の気苦労は間違いなく大きい。私でさえうんざりする時があるのに、特別な力を持たぬ彼はもっとだろう。
だから、今くらいは好きなだけ沢山甘えて欲しい。その思いを乗せて、彼の頭をよしよしと撫でて、片翼でも包み込む。
いつかこんな風になるのかなとも、まだ何も出はしないのに気が早いかなとも思いつつ、今まさに及んでいる行為の本来の意味を考えてはどきどきしてしまう。この高鳴る鼓動とは別の、もう一つの心音が聞こえる時をつい夢想する。
そんな二つの思いと、緩くとも確かな快楽で充足感に満たされていると、もう片方の乳房を揉んでいた手が下へと滑っていく。
肌を撫でる手つきのくすぐったさと、頭をよぎる懸念に思わず身を捩る。だって、彼に口淫を振る舞っていた時から、とっくにぐしょぐしょなのは自分でも分かっていたのだから。
彼の手がショーツの中にするりと潜り込み、じっとりとした粘液を湛えた裂け目――色気のない言い方をすれば、生殖器――に触れる。
凄く濡れてますね。乳房に口付けながら呟かれたその一言は、彼に他意は無いのだろうが改めて自身の淫らさを揶揄されたように思えて、かあっと頬が熱くなってしまう。
赤熱した顔を彼に見られまいと、ぷいと逸らすがそれは悪手だった。動いたばかりに、視線を下げていた彼が顔を上げる切っ掛けを与えてしまい、あげくそれをばっちりと見られ、続いた台詞は、可愛いです、なんてもっと赤くなるもので。
もっとも、拗ねた素振りをしても彼の手は止まらない。陰唇をぬるぬると滑り撫でていた指先が、とても敏感な箇所、クリトリスに触れる。
自分のものとは違う、一回り大きくて少しごつごつした太い指。それが陰核を優しく撫で、さすり、軽く圧する。彼主導の愛撫は自らで慰める時と違ってどう弄られるのか予想が出来なくて、些細な動きや力加減だけで快楽に溶かされてしまう。
指先と口でそれぞれクリトリスと乳房を愛されて、心と体、どちらもが幸福感で満たされていく。彼が私を気持ちよくしてくれている、彼が私に夢中になってくれている、それがただただ嬉しくて、この上ない幸せだった。
しかし、不意にその喜びに欠けが生じる。胸に吸い付いていた唇が離れ、続けて指までも離れてしまう。
急速に湧き上がる寂しさ。だけど、その後に彼が呟いた、口でしますよ、の一言に、口元を抑えていた手に自然と力がこもり、鼓動がどくんと跳ねる。
彼は体勢を下げて顔を陰唇の前に持って行くと、躊躇なくショーツの紐を片方ほどいて脱がせてしまう。じっとりと濡れて張り付いていた薄布が剥がされた陰唇に、彼の呼吸による吐息が直に触れ、いかに近くで覗かれているのかを強く意識させた。
私は生来陰毛が薄く、産毛に近いものが少しくらいしか生えていない。手入れが楽な反面どうにも子どもっぽく思えて、今でもこうして曝け出すのは恥ずかしい。けれど、相変わらず綺麗で可愛いです、なんて言われると、もう上擦った声をかみ殺すことしか出来なくなってしまう。
既に火照り切って浮付く感覚とは裏腹に、太腿に添えられた彼の手の感触ははっきりと分かる。温かくて、優しい手。その手の指先がそっと動いて、私の秘部を開かせた。
開放感とともに熱い雫が垂れ落ち、体内の温度が奪われて息が漏れる。それは、自らの穴がひくついて中に蓄えた熱ごと淫汁が溢れてしまったと示しており、彼の瞳は食い入るようにそこを見つめ、そんな痴態から目を逸らしてはくれない。
自らを埋めてくれるものを求め、いやらしく蠢いているであろう穴を見られるのは、これ以上ないくらいに恥ずかしい。でも、これほど貴方が欲しいと、貴方を求めているんだという気持ちは伝わって欲しい。我ながら、我儘だ。
それから少しの間を空けて彼はこれから行うことを再度呟くと、陰唇に生暖かい粘膜が触れて全身がぞくりと震えた。
その粘膜、彼の舌は膣穴を丁寧に舐め上げ、入り口まで垂れてきた蜜を掻き出し、陰核をつつく。そのどれもに私の肉体はとても素直に反応し、これ以上ないと思うほどに溢れさせていた蜜を更に濃いものにしてしまう。
寝室に絶えず響く、粘液同士が触れるじっとりした水音と、抑えているのにもかかわらず零れる自分の声、時折秘部に口付けを落として分泌液をじゅる、じゅぷっ、と音を立たせて啜る音。それらの音量が増すたびに私の思考は蕩けていき、耳からも犯されている錯覚すら覚えてしまう。
私だって、彼の精液を飲むのは好きだ。彼の気持ち良くなった証だと思うと嫌悪など無く、あの熱は達成感と多幸感を与えてくれる。
けれど、それがされる側になると、自分がはしたなく快感に溺れた証拠を嚥下されると、頬がどんどん熱くなってしまう。
そんな羞恥などつゆ知らず彼は舌を使った奉仕を続け、より鋭敏になっていく感覚は彼の呼吸やクリトリスを掠める鼻息ですら反応してしまう。
止まない全身を巡る快感に、次第に体の奥から抗いようのない強いものが湧き上がり、膨らんでいく。足は無意識にぶるぶると揺れて、口元を抑える手に力が入らず、それらを制御しようと思っても体は言うことを聞いてはくれない。
抑圧、羞恥、幸福、渇望。色んな感情がごちゃ混ぜになって、思考が明滅する。その中で、股座に顔を埋める彼が与えてくれる快楽だけが、消えずにはっきりと残る唯一のものだった。
もう、駄目。そんな言葉が頭を過ぎるか早いか、私の中に蓄積していたそれらはまとめて爆ぜて、口からは無意識に、絶頂を示すとても短い一言が零れた。
刹那、頭を真っ白に染め、体は余すところなく満たす、多大な幸福感と強烈な快感。ふわふわとした心地良さに何もかもが包まれて、全身に力が入らない。
しかし、それも束の間のものでやがて治まり、後には極上の快感の余韻のみが残る。それでも、未だに脚は勝手に痙攣してしまっているし、力無く投げ出した手の所在はもう口元にはなく、だらんと脇に落ちていた。
さっきの声、はっきりと聞かれたんだろうな。ぼんやりとした頭で考えながら荒く息を吐いて彼を見ていると、彼はそれを知ってか知らずか、べとべとに汚れた口元を手で拭って、可愛い声でしたよ、なんて言う。
言わなくてもいいことを、という不満と、こんなことなのに可愛いと言われてついつい嬉しくなってしまった自分に対し、むーっと唇を引き結ぶと彼は小さく笑った。
しかし、その笑顔も程なくして収めると、彼は体を起こしてある部分をこちらに見せる。
それは、完全に復活した彼のおちんちん。どく、どくと激しく脈打ち、亀頭の先端からは涎をだらだらと垂れ流して、自らの欲を満たしてくれる獲物を求めていた。
お互いに言葉もないまま、私はこくりと頷くと、彼も頷いて私の前で膝立ちに構える。私は自ら陰唇に手を添えて、左右に開かせた。今だけは、膣穴を奥まで晒すのに恥ずかしさは無い。早く、彼が欲しくてたまらなかった。
見えずともぱくぱくと口を開閉させているであろう膣穴に、亀頭が充てがわられる。いよいよだ、早く、早く、と高鳴る胸が早鐘を打つ。彼は一言だけ挿入を告げる言葉を発すると、腰を突き入れた。
ぱんぱんに膨らんだ亀頭が入り口を広げ、張り出したカリがぷつぷつと肉粒を弾き、血管の浮いた硬い肉幹が膣内をこすっていく。既に全神経が、侵入する彼のものとそれと触れ合う膣内に注がれており、大きく膨張していた期待と渇望が一気に満たされていくのを実感する。
あれだけびしょびしょに濡れていても一気に突き入れたりしないのは、彼の優しさだろう。でも、膣内で逐次強まる脈動が、彼自身もこの感触を楽しんでいると言外に匂わせていた。
やがて、彼のものが私の一番奥に触れる。行き止まりであると同時に、私の最も大切な場所、子宮の入り口に。
彼はそれ以上に腰を押し込もうとはせずに、体勢だけを少し変える。上半身を前傾に倒して覆い被さるような――私からすれば、抱き締めて包み込まれるような――形だ。
再び、目前に彼の顔が来る。手を伸ばせば、いや、伸ばさずとも届く距離にある、優しい表情。これだけ距離が縮まった圧迫感や窮屈さよりも安心感の方がずっと大きくて、思わず頬が少し緩んだ。
彼は挿入した時と同じく一言だけ、続きを行う旨を口にすると、腰を前後に動かし始める。
最初は今まで殆ど変わらぬ速度で感触を確かめるみたいに。次第にそれは早さと勢いを増し、あっと言う間にすっかりこなれた腰つきでのピストン運動へと変わっていた。
結合部からは互いの肉体がぶつかる、弾けるような音が鳴る。その度に私の奥を彼のおちんちんがしっかりと貫いており、もう彼からは経験の浅かった頃の初々しさは感じられない。
もっとも、それは私も一緒。私も初心だった頃の、快感と違和感がごちゃごちゃに混ざった感覚はもはや懐かしいもので、今や一方しか存在しないと言っていい。それに加え、幾度となく彼と体を重ねた私の膣内は、自らを貫くものが愛しいそれだと分かるとすぐにすり寄って甘えだしてしまう。一突きごとに溢れる蜜や、ぐちゅ、ぷちゅっ、という音が、いかに私の膣肉が絡み付いてキスを浴びせているのか、いかに強く抱擁して離したくないと我儘を言っているのかを思い知らされる。
休みなく供給される快感に、手で抑えた口から鼻息に近い喘ぎが漏れ出してしまい、それを堪えるため覆う手の平の力を強める。
だが、その手は不意に蓋の役割を放棄した。彼の手が、私の腕を掴んで引き剥がし、口元を開かせたのだ。
声、聞かせて下さい。真正面に見据えた彼の囁きは、部屋を満たす互いの腰がぶつかる音や、そこから生まれる粘膜が攪拌する水音に負けそうなくらい小さかったのに、はっきりと耳に届く。
こんな喘ぎ程度では、私の力も作用しない。でも、普段の癖や、月で体を重ねる時は騒がしく出来ないので、ついつい遠慮してしまう。
だけど、今は。私達の関係を訝しむ者のいない地上で。目の前には彼しかいないのなら。遠慮は美徳でも、今は――。
唇を引き絞って抑えていた声は、一度緩めば後は一瞬だった。
部屋中に響く、高い嬌声。それを上げているのは、他ならぬ私だ。
気持ちいい、そうはっきりと口にするだけで。貴方がしてくれることが、与えてくれる快感が、私の声を好きだと言ってくれるのが、どれだけ嬉しいのか、一声ごとにそれが伝わってくれるなら多少の気恥ずかしさは構わなかった。
彼もそれに感化されたのか、それともお返しか、彼は私の名前とともに恋慕の情を口にする。
対し、私もすぐに返す。彼の名前と、思い慕う台詞を。快感を訴える言葉しか言えなかった口が、ようやく意味のある言葉を返せた気がした。
彼は口々に私の名前を呼んで愛欲を唱えては、頭や翼を優しく撫でてくれる。
くすぐったくもあるが、翼を撫でられるのも好きだ。乱れた羽根を繕い、指先で緩く梳かれ、上端に沿って撫でてと、優しく手入れして貰えるのは心地良い。無意識に軽くはためいてしまうのも、致し方ない。
繰り返し出し入れされるおちんちんに膣道が均され、子宮を小突かれ、最後にカリ首で反られる快感も、今だけは敬称を用いずに呼び捨てで名前を呼んでくれる悦びも、頭や翼を優しく撫でてくれる暖かさも、どれもひたすらに気持ちよくて。
彼が与えてくれる、色々な気持ちいいを、嬉しい感情を、私は彼に返せているだろうか。伝わってくれているだろうか。それを少しでもと、私は彼の名前と一緒に、色々な思いを込めた好きを何度も謳う。
やがて、彼は再度体勢を改め、覆うというよりものしかかると言った方が近いくらいに体を深く落として腰を振る。
強かった圧迫感が更に増すが、私はこれが好きだ。彼にこれでもかと抱擁され愛されている実感と、最奥への種付け以外に考えていない、欲望のままに求められ犯される感覚の両方を溢れんばかりに感じられるから。
彼の形を教え込まれた膣内をこすられる度に快感が電流の如く全身を走り、最奥を叩かれる度に子宮が切なく震え、精液が欲しいと本能にねだってくる。子宮が降りてますよ、なんて耳元で囁かれて自らの昂ぶりを思い知らされることすら、今の自分には興奮材料でしかなかった。
腟奥を細かく捏ねては子宮口をこつこつと叩くおちんちんが膨張し、彼の動きが激しくなる。私も、全身を巡る快感の奔流が臨界点に近付くのを感じていた。
お互いに、絶頂が間近に迫っていると伝え合う。彼も私の絶頂の気配は察していたのだろうが、同じ気持ちだと分かっていても確かめ合いたかった。そうやって、二人が重なり合い、さながら一つの生命になった瞬間、その時は訪れた。
最高潮に達した法悦に頭はチカチカと白黒し、口からは絶頂を示す嬌声を無意識に上げてしまう。それと同時に、最奥を突き上げて子宮口にぴったりと張り付いた生殖器は大きく脈動し、その先へと勢いよく精子を吐き出した。
口淫で味わった、あの濃厚な精液が、彼の遺伝子を乗せた精液の塊が、私の胎内へ注がれていく。その光景は直接は見えず、彼も絶頂を迎えたことやそれが膣内の奥で為されたものだから、といった間接的な認識による夢想だとしても、未だに絶頂の余波にぼんやりとする脳内には、私の子を宿す部分が彼の子種を余さず受け入れる姿が浮かんでいた。
口で奉仕した後とはいえ、たっぷりと溜め込まれていた精液は量も勢いも全く衰えはない。彼の嗚咽じみた声に合わせてびくびくと跳ねる分身の感触は膣肉にはっきりと刻まれ、種付けされていると強く実感させてくれた。
ぼんやりと、できてしまうかも、と考えてしまう。休みの都合上、あの日に合わせるのは難しいが、今日は偶然にもとても授かりやすい日だった。彼にも、今回の日程では恐らく、と事前に伝えたが、こうして地上に二人でいて、手荷物に避妊具なんてものは無くて、こうして交わっているとなれば、つまりそういうことで。
私は今日、彼の子を孕むかも知れない。でも、それでも、構わなかった。いや、その言い方は適切ではない。構わない、じゃなく、とても喜ばしい、嬉しいことだ。
こればかりは私にどうこう出来ないし、しない。口にすればどうにかなる可能性はあるが、使いたくはない。今すぐでなくともいいから、月の女神だとか、舌禍だとか、そんなものは関係ない一人の女として、愛する彼に孕ませてほしい。自身が纏う様々なものをかなぐり捨てた私を、愛して欲しい。なんて、身勝手だろうか。
やがて、彼の漏らす声が詰まった嗚咽から荒い呼吸へと変わり、膣内で脈打っていた分身の震えも落ち着いていく。
私も乱れた呼吸を鎮めながら、顔に汗を浮かせた彼と見合い、軽めに唇を重ね合う。そして、二人して小さく笑ってから、彼はまた腰を動かし始める。
だって、彼のものは未だに硬いままで、私だって満足はしていない。なら、当然まだまだ終われない。
咎める者も時間も場所も何もない二人っきりの空間で、私達は未だに落ち切らない夕焼けに包まれながら、今しばらく溢れる愛欲に身を任せ続けた。
3.
月の都では夜になっても、街中に点在する照明のお陰で夜の風情を壊さない程度かつ出歩くのに困らないくらいには明るい。一方、地上の人里の夜の光源は月に星に家屋や居酒屋の明かりと、月のそれに比べれば毎日が闇夜と言えるだろう。
私と彼はそんな人里の外れの通りを手を繋いで歩いていた。先程、人里から少し離れた屋台で遅めの夕飯を済ませてきたところで、これから借家への帰路の途中だった。そして、二人の話題と言えば、先の食事についてだ。
外の屋台で鰻を食べる、なんて初めての経験だったが、流石鈴瑚が絶対に行った方がいいと言っていただけあって、とっても美味しかった。あの子はやはり美味しい店を見つけるのが上手だ。目利きの腕は勿論、それだけ色々と立ち寄っているのだろう。その積極性は、服や食事でついつい様子見しがちな私は見習わないといけない。
彼も私と同じく大満足だったらしく、私から言い出すまでもなく、また行きましょうね、と再訪を約束した。
ここで話題は次へと移り、この後はどうしようか――と彼と話し合う。周りには誰もいないが、夜分遅いので声は潜めて。
時間的には就寝と決め込んでもおかしくない時刻ではある。今この時刻で考えれば少し早いが、借家に着いて、明日の準備をして、布団を敷いて、としているうちにいい頃合いだろう。とはいえ、屋台の提灯の光ですっかり冴えた瞳はまだ眠気を訴えていない。
すると、月見なんてどうですか、と彼は夜空を見上げて呟き、私も倣って月を見上げる。
まん丸な満月や形の整った三日月でもない、少しだけ掛けた、言ってしまえば凡庸な月。だけど、だからこそいいかも、と思った。元々向こうに居ては月見なんて出来ないうえ、これだと尚更見ないから。もしかしたら、こんな日に月見なんて私達だけかも知れない。
どうせなら貸家の屋根にも上ってみませんか、なんて彼が言う。
頭に思い浮かぶ、二人並んで屋根に腰掛けて月を見上げる姿。私は頬が僅かに緩むのを感じながら、ええ、良いわねと頷きを返した。月では絶対に見れない月を見ながら、屋根に上るという月に居ては絶対にしないことをする。それがとても、贅沢に思えて。
そうだ、せっかくだし、お酒も少し呑もう。屋台では、初めてのお店の見知らぬお酒に万が一にも悪酔いしないように控えていた――でも、次からは是非頂いてみようと思う――ので、欲しくなったと言うのもあり。
清蘭や鈴瑚、八意様のところに手土産に持ってきていたお酒の数を間違えて、一本多めに持ってきてしまったので丁度いい。
地上から月を見上げ、月から持ってきたお酒を呑む。それもまた、私達ならではの楽しみ方だろう。
いつもとは違う晩酌の予定を立て、今日を締め括るのはまだ早いと二人して意気込む。けれど、彼は語気を少し淀ませると、もしこれもサグメさんが良ければ、と前置きする。
そして、照れの混じった声で、その後でもう一回いいですか、なんて切り出した。
私は、何の迷いもなく、構わないわよ、と返す。
勿論、こっちの楽しみもまだ締め括るには早いのだから、ね。