ももちゃんが出て来た。浴衣姿だ。もちろん旅館の浴衣なので、簡素なもので、カラフルでもないが。
やっぱり、何を着ても可愛い。
洗い立ての髪をおろして、ほんのりピンクに染まった顔が、艶かしい。
「お兄ちゃん、待った?」
「ちょっとだけ。ももちゃん、浴衣似合うね。なんか色っぽいよ」
「え?そうかな…」
「とりあえず部屋に戻ろうか。もうすぐご飯だよ」
「うん!」
食事処で夕食を食べた。懐石料理だった。
たしかに美味しかったが、僕はこれからする事を考えると、食事どころではなかった。
「なにこれ?よくわかんないけど、おいしい!こんなの初めて。お兄ちゃん、これ何?」
ももちゃんは、いつもと変わらず美味しそうに、ニコニコして食べていた。
やっぱり、意識してないのかな…よくわからない
部屋に戻ると、すでに布団が敷いてあった。
食事の間に布団の用意をするのは、旅館では当たり前だ。
でも、ももちゃんはそれを見てちょっと緊張したようだった。
ももちゃんは布団に座って、僕も座り、向かい合った。
彼女は、うつむいて、しばらく無言だった。
こんな彼女は初めて見た。
ようやく口を開いた。
「わたし、子供っぽいよね?」
「え?」
急に何を言い出すんだ?子供だから当然だろう?いや、そういう意味じゃないな。
「わたしもう12歳なのに、こんなに小さいし…しゃべり方も7歳の子みたいだって…」
「誰かに言われたの?」
ももちゃんは、小さくうなずいた。
純真な彼女にも、心の傷があるのだろう。
僕には子供いないから比較できないが…12歳にしては、発育が遅いという事か。
「誰が言ったか知らないけど、僕は、今のももちゃんが大好きだよ」
「お兄ちゃん、優しいから…」
「違うよ、僕は…」
ももちゃんは急に立ち上がり、部屋から出ていった。
僕は追いかけようとしたが…思い直した。
彼女にも、心の整理が必要なのだろう。
しばらく待った。なかなか戻らない。
さすがに心配になってきた。
部屋から出て、探しに行った。
ももちゃんがいたのは、今はほとんど人のいない、本館ロビーの片隅だった。
ソファーに座って、小声で何か言っていた。
「うん……そうだよ……わたしも、ちょっとだけ……うん………あやちゃん、ありがとう………」
僕に気付いてないみたいだ。
また、イマジナリーフレンドか…
しかも名前があるんだ…
僕は声をかけるのをやめて、部屋に戻った。
やっぱり、今日は無理かもしれない。
ももちゃんに無理強いはできないから、初セックスは、あきらめた方がいい。
そもそも僕が悪いんだ。
今日セックスするなんて宣言したから。普通、そんなの予告とかしないだろ?自然な流れでするものだ。
おかげで、ももちゃんを怖じ気づかせてしまった。
いままでしてきたエッチな行為は、ただの前戯にすぎない。風呂でチンコを触るとか、暗闇で弄り合うとか。
男女の本当のセックスとなると、話は違う。しかも処女を失うのは痛みを伴う。ももちゃんも、それくらいの事は知ってるはずだ。怖いのは当然だ。
ももちゃんが戻ってきた。
部屋に入るなり、タオルを手に取った。
「わたし、お風呂行ってくる」
「え?また?」
「だって…もっとキレイにしないと…」
また出ていった。
もしかして…いや、期待はするな!さっき、あきらめたばかりだろ?
ももちゃんの気持ちが優先だ。落ち着け。
僕は、気を紛らわそうと、テレビのスイッチを入れた。
ニュースが流れていた。北海道で、どこかの子供が行方不明になっているらしい。しかし内容はほとんど頭に入らず、やっぱりももちゃんの事ばかり考えていた。
明日は海水浴だ。また、ももちゃんの水着姿が見れる。
できれば人の少ない所がいいな。
セックスの事は、焦らなくていい。チャンスはあるさ。ももちゃんを楽しませる事だけ考えよう。
そんな事を思いながら、30分程経った時。
部屋の襖がゆっくり開いた。
ももちゃんがいた。
僕はテレビを消した。
「おかえり、お風呂ゆっくりできた?」
ももちゃんの顔からは、いつもの笑顔が消えていて、なんだか神妙な面持ちだ。