※この作品はR-18です。

Dirty Works   作:空薬莢

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――誰にでも、役目はある。
それがどの程度あるかは人それぞれだが。
だからこそ、恐れるな。恐れた者には無意味な衰退が待っている――



覚悟の必要性

2時間後――

「――と――は思う――――セ――――思う?」

グラナデさんらしき声が聴こえる。

「ど――こう――あるか――――は――だ」

これはセルゲイさんの声。

「――――理ある」

ノルシェさんの声。

耳の異常は無い。身体の節々が少し痛い程度で被害は無いか。

あるとすれば――若干、意識がはっきりしない事ぐらい。――でも、それも治ってきてる。

起きよう。何時までも気絶してはいられない。

そう思い、重い瞼(まぶた)を開く。

「……起きたか」

「おはよー♪」

「……」

出迎えは三者三様。

特に気にしない。

「えっと……どのくらい気絶してました?」

「二時間と十五分だな」

そんなに気絶してましたか……。

「そんな話は後々。本題の移るよー」

無駄話はいらないと言わんばかりに、グラナデさんが割り込んできて、こちらの返答を聞かずに話を続ける。

「取り敢えず、フィアちゃんの実力と得意スタイルが分かったよ。…………まぁ、ノルシェの言う通りだったけど、フィアちゃんは私と似てるみたい♪」

「…………はい?」

私は間の抜けた声をあげた。

背格好は似てませんよ?

「フィアちゃん?……そんなこと(、、、、、)、私以外の子には言ったら死んじゃうよ?」

「な、何の事ですかっ!?」

うわ、心読まれてるっ!?そして目が笑ってないっ!

「…………グラナデ。からかうのはその辺にしておけ」

下手に言葉を発すれば死ぬ――と、思ったところでセルゲイがグラナデさんをたしなめる。

「本気にしないでよ、セルゲイ。冗談なんだからさ♪」

「半分は本気だろうに……」

本気だったんですか。

以後、気を付けよう…………。

同性が言おうと禁句になる言葉がある、と心に刻み、話を戻す事にする。

「それで、グラナデさん。似ている、と言いましたけど……」

「うん。戦闘スタイルが。……といっても、若干違いはあるんだけどね」

若干の違い?

「個人の主観だけどさ、フィアちゃんは近距離乱戦型なんだと思うんだ。私は中距離以近の乱戦が得意だから、さ。対応距離と適正武器の違いだけ☆」

グラナデさんは一度言葉を句切り、自分の脚に着けたホルスターを指さす。

「私はさ、短機関銃(これ)とか拳銃が苦手なんだ。フィアちゃんは得意でしょ?」

「まぁ、はい……。……じゃあ、グラナデさんは何が得意なんですか?」

「爆発物☆」

「…………なるほど」

だから、二割の実力しか出せない、ということだったんですね。

「納得した?してなくても話を続けるよ。……短機関銃や拳銃ってのは大体火力不足。でも、さっきの模擬戦をした感じだとフィアちゃんは突撃銃や狙撃銃、軽機関銃なんかはマトモに当たらないんじゃないかな?」

グラナデさんの言う通りだ。5.56㎜の小口径突撃銃すら、人間大の的相手に半分近く外す。

「だから、多少外れても大丈夫。至近で撃ち込めば火力も高い散弾銃(ショットガン)の扱いを習熟しよう!」

「散弾銃、ですか…………」

確かに使った事がない。反動が強く、再装填に時間がかかるという理由で除外していた。

(……でも、元々、命中精度はあまり重要視していない武器…………ある意味、好都合?)

芯を捉えていれば、紛れ当たりがある。つまり、致命部位(ファイタルゾーン)を狙う必要もない。

今の私には、移動と高精度射撃を両立できない。そして、《F》との近接戦闘で回避力の方を選ぶなら…………良いかもしれない。

「……良いかも、って思ったね♪」

「はい」

肯定するとグラナデさんは――

「じゃ、善は急げってね。物色に行くよっ!」

「えっ!?」

私の腕を掴み、走り出そうとするが――

「待て(ウェイト)」

「おぅっ!?」

ノルシェさんに止められ、つんのめった。

「焦り過ぎ。……銃火器のストックに散弾銃もある」

「……そういうことだ。ついてこい、フィア」

二人はそう言って歩き出す。

数分後――

この便利屋において、武装は自主管理だ。

故に調達、整備、改良、も自分でやれって事になる。私の場合、弾薬調達だけは今のところしていない。給与から弾薬費が引かれた上で提供されてるけど。

ともかく、私は便利屋内の応接スペースで、

「……まず、何を重視する?」

セルゲイさんに質問を受けていた。

「何を……とは?」

「装填弾数、強装弾(マグナム)への適応、重量を含む取り回し……etc.」

つらつらと並べられる、条件。

その中で私が選ぶもの……。

継続火力(装填弾数)はある方が良いが、最悪弾倉(マガジン)の改良でどうにでもなる。保留。

強装弾――反動面の問題で除外。

取り回し――――推奨された戦闘スタイルから考えて最重要。

つまりは取り回しと(出来れば)それなりの装填弾数。

「取り回しを優先、出来れば継続火力の高い物、ですね」

「…………アレだな」

答えを聞いたセルゲイさんは席を立つ。ストックした散弾銃中に目的の物があるのだろう。

元よりノルシェさんは自室に籠った為、応接スペースにいない。何がしたいのだろう?

とにもかくにも、応接スペースにはグラナデさんと私の二人が取り残されている。

「…………」

で、グラナデさんはソファで丸くなって眠っている。……猫か何かですか。

(……疲れているのかな)

セルゲイさん曰く、かなり“飛ばした”みたいだし。どのくらいかは分からないけど。

疲れているなら、休ませよう。最近分かってきたことだけど、この仕事に休みは希少なのだから。

「…………やはり無茶したようだな」

気がつけば、セルゲイさんが戻っている。

「フィア。コイツ辺りが妥当な線だ」

そう言われ、一挺の散弾銃を渡された。

……軽い。見た感じ、箱型弾倉採用の半自動(セミオート)かな。

「型番は《CA CSG15-C》。見ての通り、箱型弾倉採用の半自動散弾銃(セミオートショットガン)だ。ガス圧利用だから装弾、排莢不良(ジャム)が起こりにくい。……扱い方は分かるか?」

「……マガジンを填めて、ボルトレバーを引く……ですか?」

手に取り、見た限りで考えた事を述べる。

「正解だ。……因みに、セミオート式は強装弾を使えない。……機構がぶっ壊れるからな。故に、一応コイツも渡しておく」

更に、もう一挺の散弾銃が渡される。

(重っ!?……いや、《CSG15-C(さっきのヤツ)》が軽かっただけ……)

こっちはポンプアクション……。確かに、威力のある弾には、頑丈さと信頼性が必要ですからね……。

それにしても、銃身と比べて筒型弾倉(チューブマガジン)が短い。剛性を高めた代わりに、装填弾数を犠牲にしたモデルですか。

「……《CA CSG12-L》。操作方法は説明不要だな」

「はい」

いつの間にかテーブルに用意されていたホルスター、12ゲージショットシェルの箱(40発入り)と10ゲージショットシェルの箱(20発入り)、マグパウチ、ショットシェル用の弾帯。

ホルスターとマグパウチを腰に巻き、二挺の散弾銃を納銃。

予備弾倉に8発の12ゲージショットシェルを装填。

10ゲージショットシェルは弾帯に収め、肩から胴に懸ける。

軽く動いてみるが、フットワークの低下は然程無い。これに突撃銃(アサルトライフル)を持てば、キツいだろうけど。

「……必ずしも、完全武装にする必要は無――」

そんな私を一瞥したセルゲイさんに助言されるが、

「セルゲイ」

ノルシェさんに中断させられた。

「依頼だな。種別は?」

「殲滅。グラナデ向け(、、、、、、)の」

流石は便利屋。切り替えが早い。

「……また、馬鹿共が暴れやがったか。グラナデ、起きろ」

僅かにだが、嫌そうに言ったセルゲイさんはグラナデさんを起こす。

「ふぁ?なぁに~セルゲイぉー」

物凄く間延びした寝起き。

「依頼だ。お前向けの“お掃除”だ」

「……い……らい……?…………ほんとっ!?やったぁっ!!ノルシェ、依頼内容のデータ寄越して!」

だが、それも依頼という単語で吹き飛ぶようだ。……戦闘狂(ウォーモンガー)ですか?

「もう送ってる」

「相変わらず早いよね~……っと。…………うわ、アイツらまだ残ってたんだ」

「残党狩りか?」

「うん。そんなとこみたい。……奴らも馬鹿だね~」

依頼内容を携帯端末で確認したグラナデさんは嗤う。

「私一人でもじゅーぶんだけどさ、訓練がてらフィアちゃんも連れていこうと思うよ。……駄目かな、セルゲイ?」

「……ウチのルールを忘れたか?『自己責任で行動せよ』」

「そーだったね。じゃ、フィアちゃん借りてくよ」

「はいっ!?」

何でそうなるんですかっ!私には発言権がないのっ!?

「場数は踏んどく方がいいんだよ☆」

「選択権ぐらいくださいよっ!?」

新入りにそんな権利などないかもしれないけど。

「フィアちゃん。楽な仕事なんて、蛆虫(うじむし)以下の価値しかない糞みたいなものだよ。……それを好む奴は蛆虫以下の俗物に過ぎないの」

急に真面目になったグラナデさんの口調。

「フィアちゃんは蛆虫以下のゴミでいいの?」

外見からは想像もつかない、辛辣な言葉。

(蛆虫以下のゴミなんて嫌だ……)

自然と怒りが湧く。

何処ぞの軍隊で言われそうなフレーズだが、人を蛆虫扱いしていい権利など無い。

「良いわけないです……」

私の口調に怒りが滲み出す。

出来る事なら、グラナデさんの顔を一発殴りたいが、そんなことすればクビは確実だろうから、心の内に留める。

中卒の子供にはなりたくないから。

「なら、参加だね。……5分で武装の準備を済まして。その後外っ!」

「はいっ!」

元気良く答え、自室に戻る。

……相手は《魔物》、だよね?

なんて思いながら――

 

 

5分後、準備を終えた私は便利屋の外に向かう。

閑散なストリート沿いに一台のサイドカー付き大型バイクが止まっており、

「遅いよぉ、フィアちゃん」

そのバイクに乗っていたグラナデに手招きされて、

「乗って」

サイドカーに乗るよう、指示される。

「分かりました」

素直に従ってサイドカーに乗り、シートベルトを締めると、

「じゃ、目的地へGo!!」

急発進。シートに背中を叩き付ける事になった。

(止めてくださいよ……)

この程度で背骨が折れるほどヤワでは無いけれど、痛い事に変わりはないんですから。

まぁ、言っても無駄だろうから言いませんが。

一応、法定速度を守りながらバイクは進み、高速道路の料金所に向かう。

「よぉ、グラナデちゃん。また、“風”になるのかい?」

そして料金所に着くなり、係員がグラナデさんに言う。

……スピード狂なんですか、グラナデさん。

「う~ん……“神風”に、かなっ♪」

死にますよ?

「HAHAHA!!冗談キツいよ、グラナデちゃん。……ともかく、楽しんできな」

係員はそう言って、グラナデさんを送り出す。

「じゃ、行ってきまーす!」

「警備隊には気を付けろよ!」

「分かってるよ♪」

バイクが再び走り出し、インターチェンジを抜ける。

「じゃ、フィアちゃん。依頼の概要を説明するよ」

インターチェンジを抜けた先、速度制限など犬も食わないアウトバーンを疾走しながら、グラナデさんは言う。

「内容はギャングの鎮圧。ここら一帯では比較的大きい《リミテッド・ヘイト》ってギャングのね。……まぁ、相手は下っ端と数人の幹部クラスらしいから、あんまり気張る必要は無いからね……っと♪」

言葉を区切り、車線変更。

「ヒャッハー!!」

直後、元いた車線をスキンヘッドの暴走族が走り去る。

「……話を戻すよ。鎮圧ってあるからには、実弾使用。つまり、殺戮って事」

「殺戮!?」

「そ、殺戮」

「…………やっぱり――」

嫌です、と言おうとした直後に、

「今更、リタイアなんて認めないよ♪」

突き付けられる短機関銃の銃口。

「リタイアするなら、この世界からリタイアさせてあげる」

「っ……!」

呼吸が浅くなる。

今、駄々を捏(こ)ねれば殺す、と言われている。

「私達は“便利屋”なの。始末する対象は基本が“魔物”だとしても、依頼次第では“殺人”も有りうるのは当然。……そんな事すら理解せずに入社してないよね?」

銃口を突き付けながら、優しく問われた言葉。

少し考えれば分かることだった。便利屋という職種である以上、報酬次第で何でもするのは当然。

何故、自分はそんな事にすら気付けなかったんだ……。

「分かってましたよ……でも、人間を殺す事だけは…………嫌です」

絞り出すように言う。本当に、人間を“殺す”のは嫌だ。

あの苦しみが甦ってしまう。

「“人間”は殺したくない、か。……なら、今回の依頼はやれるはずだね」

「え?」

「そのギャングの奴ら、大半が《F》の常習犯なんだよね。……で、知っての通り《F》の対処法は殺処分のみ♪」

《F》を使った者は確実に《魔物》へと変質する。多量に摂取すれば変質は加速するが。

つまりは、一度でも《F》を取り込んだ者は等しく《魔物》である、と言いたいのだろうか?

……一理あるかもしれない。

(……なら、確かに殺す相手は“人間”じゃない。“病原菌の苗床”だ)

殺すしかない対象。しかも、自ら望んで《F》に手を出した奴等。殺されて当然、とも言えないか?

…………それならば、確かに、殺れるかもしれない。

(そうだ、これは殺人じゃない。……“治療”)

社会不適合集団(ギャング)への、処方箋。

…………大丈夫。殺れる――いや、治療できる。

「……やれます。心配をおかけしました」

噛み締めるように言い、ホルスターから《CSG15-C》を抜き、抱え込む。

立ち向かうという意思表示。

「OK!じゃ、始めよっか♪」

私の決意を汲み取ったのだろう、グラナデさんが笑い、バイクが脇道に逸れ、

「Let's Go!!」

アウトバーンから廃墟の山へと侵入した――

 

 




――まずは拝読ありがとうございます。
今回は、新たな依頼って事で。これといって説明する事柄が無いです。
あ、設定資料もおいおい上げてきますよ。
ではこの辺りで。
興味のある方は次回もお楽しみに。
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