故に、最悪の事態は常に考えるべきである――
同時刻、エリアRos国内 樹海――
――殺す。
殺す。
アイツらは――殺す。
俺から何もかもを奪い、体よく利用し続けるアイツらは……殺して、殺して、殺し尽くし、叩き伏せ、擂り潰し、削り取り、抉り取り、踏み躙り、焼却し、灰塵とし、この世から消し去ってやらなければ。
だからこそ、今行われている、総合兵装見本市《Оружие Показать》を潰すのは有用だ。
待っていろ、クソ野郎共。
ふんぞり返ったその椅子から引き摺り落として、批判の的にしてやる。
青年はそう思いながら、樹海を疾走する。
ただ、目的地を目指して。
憎悪を胸に。
異形の身体を従えて――
一方、《Оружие Показать》会場では――
「……ってぇ…………。アンタ本当にエリアRosの軍人かよ……」
「お前が弱過ぎただけだ」
地面に這いつくばった男を一瞥し、俺は言う。
弱い犬ほどよく吠える、と諺にもあるが、事実その通り。
コイツは弱過ぎた。なにせ、ほぼ蹴り技だけでこの様だから。
技にもよるが、隙が大きく、バランスの崩れやすい蹴り技主体で戦う事自体、俺はあまりしない。徒手格闘で魔物を殺る分には、蹴り技は楽だが。
故に、蹴り技主体で戦う事は、手加減に当たる。
「…………終わり?」
背後から聴こえる、小さな声。
振り返る。
いつも通りの、無表情なノルシェが立っていた。
「……あぁ。終わりだ」
「そう。…………物色の続き、しよう」
そう言い、手を差し出してくるノルシェ。
(……繋げ、か。…………恋人じゃあるまいし)
些細な行為が重大なミスに繋がる。だから、
「……繋ぐ必要は無い。迷子はグラナデやフィアだけで充分だ」
差し出された手を払う。
俺には、その手を握る資格どころか、差し出される資格もあってはならない。
「…………残念」
手を払われたノルシェは小さく、呟く。
しかし、無味乾燥した声であり、さほど落胆しているようには聴こえない。心中ではどうかは、解りかねるが。
(……兎も角だ)
物色するなら、早い方が良いかもしれない。
「何処のブースに行く?」
「…………Shooter System」
比較的すぐの返答。
Shooter System――オプションパーツのメーカーか。
「……了解した」
俺は歩き出す。
数歩後ろをついてくるノルシェ。
足早にSS社ブースへ向かい、展示品の確認。
元より、二脚架や三脚架、光学照準器など狙撃銃、分隊支援火器のオプション製造を得意とするメーカーである同社の製品は俺も好きだ。……尤も、光学照準器はAA社製の方が好みだが、何分値が張る製品ばかりである、AA社に比べれば、SS社製はやや安価で性能が良い為、コストパフォーマンスは比較的良好と言える。
そう思いながら、二脚架を吟味する俺の横では、
「……今回は不作?」
「おいおい嬢ちゃん、手厳しいぜ。堅実とでも言ってくれよ」
ノルシェとSS社社員が話していた。
(……まぁ、確かに目新しい製品は無いな)
堅実さと斬新さは対極。
どちらが良いかは、使い手次第。
(……だが、武装に左右され過ぎるようなら、ソイツは一流じゃない)
様々な装備に慣れておかなければならないのは、当然だ。
「……で、何か買ってくかい?」
「……特に無い」
「そうかい。ま、今度はなんか買ってくれよ?」
ノルシェの方の会話は決裂したらしく、俺の方へとノルシェの視線が向く。
『他のブースに行こう』
ノルシェの眼は、そう言っているように見える。
『了解だ。……次のブースに行こうか』
俺も眼で答え、次のブースへと歩き出す――
――以上、まさかのInter Story。
これが無いと(正確には、今話の前半)、次話が理解しづらくなるかと思い、製作した次第。
では、今回はこの辺で。
拝読ありがとうございました――